裁量トレーダーのためのトリガーの考え方(1)

ご無沙汰してます。恒例のごとく、ずっとブログ更新してませんでした。

まぁ、書く気がある時と、そのモチベーションに見合った空き時間がないと、ブログは書かないのが、僕のスタイルですからねぇ。

で、今回のテーマですが、「トリガー」について回お話します。

トリガーについては、このブログで何度もお話していますが、今回はもっと突っ込んだ具体的なところまでお話していこうかと。

もちろん、このブログは裁量トレーダーに向けたものなので、「裁量トレーダーのためのトリガー」についてのお話になります。

書き始めたら、いつものごとく長くなり過ぎたので、数回に分けて解説していきますね。

それじゃあ、始まり始まり~!!

トリガーについて

セットアップとトリガー

セットアップとトリガーについては、もうこのブログで何度も言い散らかしていますから、詳細は過去ログから漁って理解してもらうとして、まぁ端的に言ってしまうと、

  • セットアップとは、売り方針なのか買い方針なのかを決める前提条件の事。環境認識から現状認識まで落とし込むことによって、この方針が決まる。
  • トリガーとは、セットアップによって売買の方針が決まったら、どのタイミングでエントリーをするかを規定するもの。

ということでした。

構文として例えるなら、

  • もし〇〇という条件を満たした場合は買い方針となり、その場合はAAAという条件がそろった場合に買いエントリーをする
  • もし△△という条件を満たした場合は売り方針となり、その場合はBBBという条件がそろった場合に売りエントリーをする

の「もし~となり」の部分がセットアップで、「その場合は~エントリーする」の部分がトリガーとなります。

セットアップはトリガーに対して優位

これも口酸っぱく言っていますが、セットアップが正しければ基本的にどこでエントリーしてもトレードは成功する確率は高くなります。

まぁ、そりゃそうでしょう。前提条件が間違っているなら、その後の行動も間違いですから。

極端な言い方をすると、セットアップが正しければ、セットアップが解除されるまでの間なら、目をつぶって適当なタイミングでエントリーしたとしても、勝てます。

本当に?

まぁ、このブログの常連さんならとっくにご存じの通り、それは本当の話です。既に「トレンドの正体」にてお話していますので、読んでない方は目をかっぽじって読みやがってください。

( ̄∇+ ̄)vキラーン

ということで、上記の記事を読んで相場の原理原則を理解できている方なら、セットアップが重要でトリガーはそこに従属するものであると腑に落ちているはずです。

しかしながら、それを知らない多くの勝てない人というのは、「トリガー=手法」もしくは「毛の生えた程度の環境認識をテクニカルで認識+トリガー=手法」と思い込んでいる方が多いんですよねぇ・・・

だから、いつまで経っても勝てないし、聖杯探しという無駄な時間を費やし、詐欺レベルもしくは完全に詐欺な連中の金づるになってしまうわけです。

ということで、

セットアップが間違っていれば、トリガーなんて意味ねーんだよ。

ってことを常に頭に置きながら、ここから先の解説を読み進めていってください。

トリガーとは効率化

繰り返し言いますが、セットアップが正しければ、基本的にどこでエントリーしても成功する確率は高くなります。

とは言え、「どこで入っても」というのは、正直なところ効率が悪すぎです。

例えば、下降トレンド中の戻り売りを狙う場合、戻り(上昇)の途中から売ってしまっても、更に価格は上がってしまい、含み損で苦しい思いをします。精神衛生上よろしくないですよね。

その逆行、まだ耐えられるレベルなら良いですが、思っていたよりも大きく進んでしまえば、恐怖によって損切りしてしまったりします。

で、損切りした途端に価格は勢いよく下がりだす・・・

なんてことは、トレードあるあるです。なので、出来るだけ逆行に曝されないポイントで、エントリーできることが理想的です。

また、結果として下がって利確できたとしても、もっと高い位置でエントリーしていれば、利幅はもっと獲れたことになりますし、仮に損切りなった場合でも、やはりもっと高い位置で売りエントリーしていれば、損切幅も小さくて済んだはずです。

この様に、リスク・リワード比(利益幅と損失幅の比率)や勝率、またメンタル面での効率化のために、出来るだけ効率の良いポイントでエントリーしようとするためのルールが「トリガー」というものになります。

セットアップの方が重要とは言え、トリガーを軽視していれば、結果としてトレードは上手くいかないことの方が多いんです。

トリガーとはトレードの効率化。非効率ではトレードもままならない。

そう覚えておいてください。

BOZ流におけるトリガーの位置づけとは

セットアップ用画面とトリガー用画面

既に何度か記事にしていますが、セットアップにはセットアップ用のチャート画面、トリガーにはトリガー用のチャート画面を用います。

で、まずは環境認識から現状認識までをセットアップ用の画面で行います。そして、1時間足の波を切り取ってトレードしたいのであれば、1時間足を用いてセットアップが整うのを待ちます。

そしてセットアップが整ったら、タイミングを計りやすいように5分足などのより小さな時間足のトリガー用の画面にて、値動きを観察し、トリガーを引くタイミングを狙ってエントリーします。

チャート画面の表示例

で、実際のセットアップ用の画面とトリガー用の画面の表示の仕方ですが・・・

そういったことは、特に規定していません。各自が相場状況を把握しやすい様に、各自が工夫をして表示します。

もちろんそれは、定番のMTF表示であっても構いません。例えば下図の様に、

日足→4時間足→30分足までを現状認識していき、セットアップのメインが30分足、5分足をトリガーとして用いてみたり、

上図の場合なら、セットアップは15分足まで落とし込んで5分足をトリガーとすることも可能ですし、

  • 4時間足がセットアップで、15分足がトリガー
  • 1時間足がセットアップで、5分足がトリガー

という風に、その場の状況に応じて分けて使える様にしてもOKです。

また、表示の仕方を、自分なりにもっと工夫することも大切です。以前紹介した例をいくつか挙げるとすると、

この様に、セットアップ画面を常に大きくして、トリガー画面を小さくしておくことで、短い時間足に気を囚われづらくしてみたりとか、

日足、4時間足、1時間足、5分足をサブ画面に常に表示しておいて、メイン画面はその都度時間軸を切り替えて使うという表示方法も考えられます。

相場における認知の仕方や判断には、個人差があります。なので、自分が最もしっくりくる表示方法を工夫するのが、その人にとってのベストな形です。

セットアップとトリガーのテクニカル

セットアップとトリガーに使うテクニカルやその設定は、同じであっても別々であっても構いません。

なぜなら、セットアップに判断しやすいテクニカルと、トリガーにおいて判断しやすいテクニカルは、アナタにとって同じとは限らないからです。僕自身、両者のテクニカルは同一ではないですし。

要するに、「どのテクニカルを使うべきか?」というのは、大して重要ではないんですよ。どんなに素晴らしいテクニカルを知ったところで、それを扱う腕がなければ、単なる無用の長物でしかありません。

大切なのは、自らが選び、検証と練習を重ねることで熟達したテクニカルを用いることなんですね。

本当に画面は分けるべきか?

しかし、ここで1つ疑問が・・・

仮に、セットアップ用のチャートとトリガー用のテクニカルが同じなのであれば、わざわざ別々に画面を用意する必要はないのでは?という疑問です。

もちろん、「絶対に分けろ」とは言いません。1つのチャート画面をその都度切り替えて用いることも、ありっちゃありです。

もっと言えば、セットアップ用のテクニカルとトリガー用のテクニカルが違っていたとしても、MT4などであれば、各時間足に各インジの表示・非表示を設定できます。なので、わざわざセットアップ用とトリガー用の画面を分けて用意する必要性はないのでは?

まぁ、それで勝てるなら、それで良いんですよ。そちらの方が自分に向いていて、それで勝てるなら、何も問題はありません。

ただ、それだと多くの人が過ちを犯します。

「セットアップが重要」ということが分かっているつもりでも、悲しいかな勝てない人というのは、いざトレードを始めようとすると、目先の値動きばかりが気になってしまい、結果的にトリガー用の短い分足ばかりをガン見してしまいます。気が付けば、より大きな時間足の状況なんてすっかり頭の中から消え去ってしまっているんです。

そしてそれが、負けを喫する大きな要因です。

なので、そういった状況を回避する意味では、セットアップ用のチャート画面とトリガー用のチャート画面は別々にして、常に同時に見える状態にしておくという工夫は、とっても大切なんですよ。

僕自身、若い頃は1つの画面を切り替えることで済ましていましたが、歳を取り記憶力が薄れてきたり、ミスが頻発するようになってからは、セットアップとトリガーの画面は分けるようにしてますからね。

基本やセオリー、原理原則を身に着けているのあれば、

トレードなんて自分のやりやすいように、やりたいようにやったら良いのさ。

( ̄∇+ ̄)vキラーン

というのが、BOZ流でしたね。そういうことです。

到達確認と反転確認

BOZ流において、エントリーポイントを決める際には、

  • 到達確認
  • 反転確認

の2つが必要でしたね。

で、この到達確認と反転確認が、BOZ流では基本的なトリガーの仕様となります。

ただ、ここで注意しなくちゃいけないことがあります。

それは、到達ポイントを設定するのは、トリガー用画面ではなく、セットアップ用画面で行うということです。

環境認識から現状認識まで落とし込んだ際、例えば1時間足の波を切り取りに行くのであれば、到達ポイントは1時間足以上の時間軸で探します。

なぜなら、1時間足の波に乗りたい場合、それよりも小さな時間足でしか確認できないポイントとは、無視されがちだからです。1時間足の波で言えばどうでも良いポイントを気にしたところで、その波には上手く乗れません。

なので、到達ポイントの設定はセットアップ用チャートで行います。そして価格がそのポイント付近まで来たら、トリガー用チャートにて値動きを観察し、到達確認と反転確認を行うことになります。

トレード・スタイルにおける注意点

以上のプロセスは、基本的にどの時間軸に対しても同じです。例えば日足をセットアップに用い、トリガーを1時間足で引くトレーダーもいるでしょうし、30分足をセットアップにして、分足をトリガーにする人もいるかもしれません。それぞれが最もやりやすい形を見つけて、トレードに臨むのが最適です。

ただ、注意しなければいけないのは、スキャルピングです。スキャに関しては、少し勝手が違ってきます。ポジションの保有時間が違っていても、トレードのロジックは原則として同じですが、正直スキャだけは違ってくることがあるんですよ。

例えば、5分足に生まれる波の一辺を獲っていこうという様なスキャの場合、セットアップは5分足でトリガーは1分足なのでしょうか?

それでOKな人は、それで臨んでもらって構いません。

しかし、スキャであってもセットアップは例えば1時間足などの大きめの時間軸を用い、トリガーは5分足にして、その5分足の波だけを獲っていくというトレードの仕方の方が、個人的には有用かな?と思っています。

いくらスキャであっても、大きな時間足は重要なんですよ。

そして、僕のスキャルピングもその様なスタイルです。スキャであっても、1時間足や4時間足は繰り返し良く見ています。

また、スキャルピングと一口に言っても実は、

  • 通常のロジック通りに到達確認と反転確認を行ってトレードするもの
  • 反転確認を行わず、ポイントに到達後の「反発」(反転ではない)を狙ってトレードするもの

の2種類があったりします。

前者の場合は、今までお話してきているプロセスを踏みながらトレードしますが、後者の場合はちょっと質が違います。

大きな時間軸において重要なポイントに価格は到達すると、必ずと言って良いほど大きな売りや買いが入ります。

例えば、4時間足において重要なサポートとなるポイントまで価格が下落してきた場合、かなりの高確率で大きな買いが入り、価格は一時的にせよ反発上昇します。サポートラインを下にブレイクしたり、サポートされて反転上昇を始めるのは、その反発を繰り返した(1度きりの時も稀にある)後のことになるわけです。

で、そんな反転やブレイクが始まるまでの間の一時的に反発した値幅だけを獲りに行くというスキャルピング・トレードのやり方があるんですよ。

そして、そんなスキャをやる場合、反転確認は不要になります。そしてその際のトリガーは、到達確認とそのポイントで止められたことを値動きで察知する技術になるわけです。

ですから、そんなスキャをやる場合は、自ずとトリガーのロジック自体が違ってきますし、また大きな売玉や買玉が入るポイントを知るには、1時間足以上のチャートを見ている必要がありますから、セットアップはやはり1時間足や4時間足になってきます。

以上のことから、スキャルピングであっても大きな時間軸は重要ですし、またスキャの種類によっては、トリガーのロジックのプロセスには反転確認を含まないものがあるということを、きちんと頭の中に留めておいておいてください。

反転確認には2種類ある

さて、実はもう1つ重要な注意点があります。この話、具体的にこのブログで触れてたかどうかは記憶が曖昧なんですが、

実は、反転の種類は2種類あるんですよ。それは、

  • トレンド中の押しや戻しがお終わり、再びトレンド方向へと進み出す際の反転
  • トレンドが終了し、そこが天底となって逆方向にトレンドが始まる場合の反転

です。

同じ「反転」であっても、この2つは全くの別物です。

前者は、大局の流れの中で一時的な逆行や停滞が起こった後に、再び大局に沿った流れに戻るときの現象です。しかし後者は、大局そのものの流れが変わってしまう現象です。

全くの別物なんですよ。

なので、それら反転の確認方法も自ずと違ってきます。

もっと言ってしまえば、前者の反転確認は「トリガー」でしかありませんが、後者の反転確認は、逆方向へとトレンドが開始したと判断する「セットアップ」ということでもあるんです。

にもかかわらず、これを混同したままでいると痛い目にあいます。トレンド中の反転確認のテクニカルを用いて、天底を責め続けたところで、それは負け数を量産していくことにしかならないんですよ。

絶対に混同してはいけませんからね。

裁量トレードにおけるトリガーとは

システム・トレードと裁量トレードの違い

自動売買を行うEAを作る場合、テクニカルに条件を与えて、バックテストを繰り返します。そうやって、勝率や損益のデーターをとり、有効な条件の組み合わせを導き出そうとする作業が行われます。

この場合、トリガーを引くのはアプリケーション、つまりコンピュータによるものなので、条件にあったポイントを正確無比にフル稼働で実行することが出来るわけです。

ということは、自動売買システムによるトレードと裁量トレードでは、決定的な違いが出てきます。それは、

  1. EAは、与えられた条件(ルール)を確実に実行するが、裁量はルール通りに実行することもしないこともできる
  2. EAは、与えられた条件(ルール)以外のことは一切考慮しないが、裁量はルール以外のことを考慮して判断することが可能

ということです。

で、多くの勝てない人が気にしてばかりなのは、1番目のルール通りにトレードできるかどうかということ。決めたルール通りにトレードしなくて負けてクヨクヨ嘆いたりする、恒例の勝てない人あるあるですね。

(もちろん、大した検証も出来ていなルールを守れたところで勝てるとは限らないんですが、勝てない人はそんなことすら気づきません)

しかし、今回ここで注目してもらいたいことは、2番目の方。与えられた条件以外のことまでも判断材料として考慮できるのかどうかということです。

あのね、僕は常日頃言っている通り、トレードはスポーツにとても良く似ているんですよ。

バッティングに例えると、EAというのは与えられた条件通りの球速とコースでボールが飛んできた場合のみ、決められたタイミングで決められた通りのバットの振り方しかしません。

しかし裁量というのは、基本や定石というのはあっても、向かってくるボールの球速やコースや変化によって、バットの振り方や振るタイミングをその都度変化させて、ヒットを狙う様なものです。

相場付きのニュアンスの違いによって、基本ルールに合致していても、トレードを見送ってみたり、また条件全てに合致せずとも優位性が高いと判断したらトレードを実行したりするのが、裁量というものなんですよ。

この点が、裁量トレードとシステムトレードの決定的な違いです。

ただし、この「ニュアンス」という言葉・・・

曖昧なので出来れば別な言葉を用いたいのですが、これに代わる言葉が正直見当たりません。

でもまぁ、そうですよね。こういったニュアンスの変化を捉えることがどれくらい出来るかどうかで、スポーツも優劣が生まれるんですから。

全ての人が、千差万別の事象を全て条件化し、それに対するベストな行動様式も全て具体化して行動できるのであれば、スポーツは身体能力を除いた全ての技術の部分において、各人の間に優劣は生まれないはずです。

しかし、実際には優劣が生まれるわけで・・・

つまり、これが上手い下手の差、技術の差になるんですね。

で、トレードもこれと同じなんですよ。

だから、同じテクニカルを用いて同じルールでトレードをしても、裁量の場合は、EA化してバックテストした結果とは同じにはなりません。

勝てない人というのは、「裁量」という名の「下手クソさ(技術力と判断力の無さ)」を加えることでバックテスト以下の結果しか出せません。

そして、裁量で勝つ人というのは、要所要所においてはバックテストの結果からは証明できない様な成果を出します。

それが裁量トレードというものなんです。

トリガーの実例をもとに

さて、ここからは実際に僕が使用しているトリガーの中から、比較的多くの人が使いこなしやすいかな、というものを1つご紹介します。

で、このトリガーの実例をもとに、「トリガー」というものそのものを理解してもらえたらな、と思います。

トリガーの具体例

トリガーに使う基本インジとパラメータ

それでは、具体的なトリガーの設定をご紹介します。

使うのは5分足と、1分足。

基本とするインジとパラメーターは、以下の通りです。

  • 5分足には、20SMA、10SMA、8EMA、ストキャスティクス(期間14)
  • 1分足には、20SMA、10EMA、ストキャスティクス(期間14)

これだけです。

(Xでは、先に公開しましたが、1分足の10EMAを誤って10SMAと表記していたようです。EMAが正しいので、混同しない様にお願いします)

ただ、実際の僕はもう歳で、結構チャートが見づらくなっているため、5分足の10SMAと8EMA、1分足の20SMAと10EMAの位置関係が見やすい様に、MA ribbonというインジを使っています。

MA ribbonは、2本のMAの間を色付き表示してくれるもので、知っている方も多いかと。

で、それらのテクニカルをチャートに適用すると、以下の様になります。

左側のチャートが5分足で、右側のチャートが1分足です。

ストキャスには、80,70,50,30,20%にラインが5本引いてありますが、あまり気にしなくて良いです。

以上が、今回紹介するトリガーの基本テクニカルとその設定になります。

実際には他のインジも使いますが、それはまた後ほど紹介するとして、トリガーを引くための基本となる設定は、まずはこれだけであると理解しておいてください。

それでは、実際にこのトリガーの使い方を説明していきましょう。

 

と言いたいところですが、ここまで来るのに非常に長くなり過ぎました。

ということで、具体的なトリガーの使い方や、その実例は次回となります。楽しみに待っていてください。

それじゃあ、また。

需給関係をベースにしたトレード入門(1)

前回は、かなり長々とオーバーシュートについてお話しましたが、今回は、そんな長文をきちんと読み切った人に向けた続編をお話しようと思います。

需給関係をベースにしたトレードの考え方についてです。

前回も言いましたが、現在海外では需給関係をベースにしたトレードのスキルが発達しています。日本においては、ここ1年くらいでようやく日本語解説が出てきた感じで、まだ一般的には知られていないのが現状です。

で、今回このシリーズでお話するのは、海外のそれらをそのまんま解説するという主旨ではありません。だって、海外のスキルを紹介するなら、僕なんかよりもっと英語が堪能で、それ専門に勉強している様な人の方が的確ですから。

前回もお話した様に、僕自身は海外のそれを知らずに、需給関係をベースにしたトレードを10年以上に渡って構築してきました。そこに現在の海外のスキルも参考にさせてもらいながら、更に精進を続けているのが、今の僕です。

なので、今回解説する内容は、海外のスキルとは完全に丸被りとはなりません。多分に僕なりの考え方がベースとなるお話です。

で、そこに海外のスキルも加えて紹介するという形にしようかと思ってます。

前知識として、読んでおいてもらえると良いかなと思うのが、まず

1番目の記事は、もう5年以上前の記事なので、今の考え方とは若干異なる部分もあるんですが、僕が相場を斜めラインよりも水平線の世界として見ていることが、ある程度分かる内容だと思います。

で、今回もまた

「そこまで基本的なこと、言わなくても分かるって」

というところから、めちゃくちゃ噛み砕いてお話します。

表面的に知識を拾っていくのではなく、もっと根本的な考え方から1つずつ身に着けていった方が、その後の伸び方が違うと思うんで。

それじゃあ、始まり始まり~!

需給の均衡と不均衡

市場における需要と供給について

どの様な市場であっても、買い手と売り手がいるのは、当たり前の通りです。

  • モノやサービスを買いたい要求や実際に買うことのできる量=需要
  • モノやサービスを売りたい要求や実際に売ることにできる量=供給

としますよね。

これと同様に、金融市場においても、

  • 買いたい欲求や実際に買うことのできる量=需要
  • 売りたい欲求や実際に売ることのできる量=供給

として考えます。

まず、これを頭に入れておいてください。

需要と供給の関係

市場においては、需要と供給の力関係が一致したところで、価格は決まります。

100円で買いたい人の量と100円で売りたい人の量が一致していれば、市場の価格は100円となります。

しかし、需要が供給を上回ったらどうなるでしょう?

結論から言えば、価格は上昇します。

100円で買いたい人が100人いたとしても、供給する側が50個しか売ることが出来ないのであれば、値段が高くても買わなければならない羽目になります。(需給を売買量から見た視点)

また、100円で買いたい人の量と、150円でしか売りたくない人の量が同じ場合でも、値段が高くてもどうしても買いたい人が出てくれば、価格は150円の値を付けます。(需給を欲求の大きさから見た視点)

いずれにせよ、「需要>供給」であれば、価格は上昇するんですね。

それと同様の理屈で、供給が需要を上回れば(需要<供給)、価格は下落します。

市場というのは、需要と供給の力関係で価格が上昇したり下落したりし、最終的に両者の力関係が等しくなったところ(バランスのとれたところ)で価格は落ち着きます。

需給の均衡とは

さて、この需要と供給の力関係のバランスがとれている状態が続いていることを、「需要と供給の関係が均衡している」とか、「需給関係が均衡している」などと言います。

この需給の均衡した状態について、もう少し詳しく見ていきましょう。

例えば、需給が安定せずに、価格が上下に不規則かつ激しい値動きをしている商品があるとします。グラフ化(チャート化)すると、以下の様になりますよね。

しかし、需給関係が少し安定してくれば、値段の開きはあったにしても、

「大体この商品なら、〇〇円から△△円の間で買えるよね」

なんて感じで、価格と上限と下限にある程度の一定感が生まれます。

チャートにすると、こんな感じに価格は推移します。

いわゆる並行レンジですね。この状態は、先程の値動きから比べると安定しており、需給関係は均衡しつつある状態と言えます。

で、この需給関係がどんどんと均衡してくると、価格の上下幅は小さくなっていきます。

この状態を、ボラティリティの観点からいうと、

「ボラティリティが縮小している」

と言いますよね。ボラの低下は、需給の均衡化が進んでいるという解釈もできます。

さらにこの状態を、「市場は売り方と買い方との戦場」という観点から見れば、

「小競り合いが続いている」

と言えるかもしれません。売り方と買い方の力関係が均衡した状態で勢力争いが繰り返されていると解釈できるわけです。

で、この需給の力関係が完全に一致して動かなくなると、いつどこでそれを買っても価格は一律同じ値段になります。

これをチャートにすると、ロウソク足は同時線どころか一本線(ロウソク足の実体もヒゲもない、横一本の線になったもの)が並ぶことになるわけですが、

ただ、金融市場において価格が完全一致した状態が続くというのは滅多にありません。そういったケースというのは、市場は開いているのに閑散としていて、誰も売買を行っていない様な時と言って良いかもしれません。

実際の相場では、売買によって多少の値幅が生まれるのが、需給が均衡した状態なんですよ。

で、それをチャートで表示するとこんな感じになります。

赤い四角で囲った部分が、実際の相場では「均衡している」と言える状態です。緑色の丸の様に、1つの均衡状態の中にも更に違う価格帯で均衡状態を作っているケースも珍しくありません。

とは言え、均衡しているかどうかというのは、あくまで相対的な判断です。他の値動きと比較した場合に、「均衡している」と判断するものですから、同じ均衡状態でもその値幅には差があります。もちろん、その期間にも差はあります。

なので、上図で赤く囲っていない局面でも、「均衡している」と判断できるところは当然でてきます。例えば、下の図の青丸部分とか。

結局のところ、この辺の判断は裁量です。どれが均衡状態なのかの判断は、各人の習熟度にもよりますし、需給関係をどの様な形でアナタが自分のトレードに採り入れるかによっても、変わってきます。

いずれにせよ、ロウソク足の値幅(特に実体)が縮小していき、価格が値幅の中央値に集約されていくような場面では、「需給関係が均衡している」と考えることができます。そして、値幅が小さくなればなるほど、より需給関係が均衡していると考えましょう。

ちなみに、この需給が均衡した状態を、日本の相場では古くから

「保ち合い」

と言います。値動きが膠着して横ばいになった状態のことですね。

また、既に他の記事でお話していますが、この揉み合い、膠着状態をボラティリティの観点から言えば

「スクイーズ」

と言います。

さらに言えば、この保ち合いを

「クラスター」

とも呼んだりしますよね。

ただ、海外の需給関係に注目したトレードは、均衡よりも不均衡に焦点を当てたものがほとんどのため、「不均衡」に対応する英語のトレード用語はあっても、「均衡」そのものを表す英語表記のトレード用語が「equilibrium」なのか(少なくとも僕の中では)ハッキリしていません。

なので、この記事においてはこれ以降、需給が均衡している状態を、そのまんま「均衡(状態)」とするか、もしくは「保ち合い」と表記してお話します。

需給の不均衡とは

次に、需給関係が不均衡な状態というのを、まとめておきます。

需給が均衡している状態が、「需要≒供給」なのであれば、そうでない状態が不均衡な状態ということです。つまり、

  • 需要>供給が続いている状態
  • 需要<供給が続いている状態
  • 需供の力関係が不規則に安定していない状態(「需要>供給」と「需要<供給」が不規則に繰り返されている状態)

になりますね。

既にお話しましたが、需要が供給を上回っている「需要>供給」の状態というのは、価格は上昇します。

逆に、供給が需要を上回っている「需要<供給」の状態では、価格は下降します。

至って難しい話ではありません。

で、3つ目の「需給の力関係が不規則に安定していない状態」ですが、これをチャート化したものは既にお見せしましたよね。こんな感じでした。

この状態も、テクニカル的に言えば「レンジ」と解釈します(過去記事にて説明済みです)。

が、需給関係が安定した状態のレンジではないため、過去の値動きから次の展開を想定しづらい状態ですので、同じレンジでもこちらのレンジは、トレード不可能な局面となります。

ただ、基本的に金融市場ではこの様な状況は、一時的なことがほとんどです。しばらくすると値動きの上下は安定してきて、需給関係は均衡した状態に近づいていきます。

さて、以上に見てきた様に、相場には需給が均衡した状態の局面と、不均衡の局面があります。これら需給関係の均衡・不均衡をもとに、実際のチャート図で見ると、こんな感じになります。

見ての通り、相場というのは、需給関係の均衡と不均衡を繰り返し続けているということが分かると思います。

ちなみに、需給関係の不均衡のことを英語圏のトレード界隈では、「Imbalance(インバランス)」と呼んでいる様です。アンバランスじゃないですからね、インバランスです。

ということで、この記事においても、これ以降は

  • 需給の均衡=均衡・保ち合い
  • 需給の不均衡=不均衡・インバランス

と表記してお話することにします。

さて、ここまでのお話で、需給の均衡・不均衡は把握してもらえたと思います。それでは、次に進んでいきましょう。

需給関係をロウソク足から読み解く

ロウソク足で見る需給関係

需給のバランスが「需要>供給」となると価格は上昇しますが、その上昇をロウソク足1本で表せば、もちろんそれは陽線となります。

逆に「需要<供給」の場合、その下落する様子をロウソク足1本で表すならば、それは陰線となります。

また、同じ陽線であっても、より実体の大きな陽線の方が、一定時間での上昇力が強いわけで、需給関係で言えば、不均衡の度合いがより強い(均衡がより大きく崩れている)と判断できます。(陰線の場合も、同様の解釈)

では、均衡状態の場合、ロウソク足1本はどうなるでしょう?

これは既にお話していますね。本来需給が均衡している場合、ロウソク足はヒゲも実体もない横1本線となりますが、現実の相場では実体もヒゲも小さなコマ足となります。

要するに、

  • 需要と供給の均衡が大きく崩れれば崩れるほど、ロウソク足の実体は長くなる
  • 需要と供給の関係が均衡に近づけば近づくほど、ロウソク足の実体は短くなる

ということです。

これも、至って簡単ですね。少し考えればすぐに分かることです。

では、次に進みましょう。

均衡時の複数のロウソク足の形成

では次に、均衡状態が保たれている間、ロウソク足はどの様にして複数形成されていくのかを考えてみましょう。

完全に需給は一致しなくとも、ほぼ均衡状態に入るとロウソク足は実体が小さくなるんでしたよね。

しかし、需給は完全には一致していないので、基本的には次のロウソク足で出来るだけ正確な均衡を保とうとします。つまり、1つ目のロウソク足が小さな陽線の場合、そのわずかな不均衡を解消するために、次の足ではそれをカバーするかの様な小さな陰線が生まれるんですね。

しかし、この陰線のコマ足もわずかな不均衡ですから、それを埋めるために次の足では陽線が生まれ、更にその陽線のわずかな不均衡を埋めるために次に陰線が生まれ・・・

というロウソク足の生成が繰り返されます。

もちろん、これは理屈を理解してもらうための教科書的な値動き解説図です。なので、実際のチャート上では、もう少し複雑です。

1つ目のロウソク足の不均衡を次の足だけで埋めることは出来ず、2本以上のロウソク足で不均衡を解消したりします。また、実体に比べてヒゲが長いロウソク足が続いたり、やや蛇行してロウソク足が並んでいたり・・・

とまぁ、色々なケースがあるんですね。

実際のチャートで確認してみましょう。下の図はポンドドルの日足です。

赤い四角で囲ったAとBは、先ほど解説した教科書的な均衡の保ち方です。陽線が出るとほぼ同じ値幅の陰線で不均衡を是正し、その陰線の不均衡を次の足の陽線で是正しています。

で、ここで注意してもらいたいことがあります。

それは、ロウソク足がつけたわずかな不均衡を次のロウソク足で是正する場合、必ずしも実体でそれを埋めた状態で終わる必要はないということです。例えば、前の足が陰線だった場合、次のロウソク足の値動きで上昇して一旦前の足の不均衡を埋めた後、次に下降して上ヒゲで終わってもOKです。

大切なのは、値動きが前のロウソク足の不均衡を埋めようとした形跡があるのかどうかです。

また、僕が図で解説しているものは、原理原則を理解してもらうために描いた理想的なものです。なので、現実の相場では必ずしも前の不均衡をピタリと埋めるわけではありません。完全には埋めきらないこともありますし、行き過ぎることもあります。あまり神経質にならない様にしてください。

で、この様なことを理解して見ていくと、赤く囲ったCとDも、容易に均衡状態だということが分かると思います。

次にオレンジ色で囲ったEとFを見て下さい。これは、最初のロウソク足を次の1本で是正しきれずに、複数のロウソク足で不均衡を是正して均衡を保とうとしている例です。これも容易に判断できると思います。

では次に、青色で囲ったところを見てみましょう。

これは、ロウソク足の実体だけを見ると、蛇行していたり上昇や下降をしている様に一見見えますが、ヒゲを含めたロウソク足全体で見ると、均衡状態だと分かる例です。これも、それほど難しくはありませんね。

ロウソク足の形はあくまで「一定期間における結果」でしかありません。その間の軌跡や次のロウソク足(期間)と連動してみることで、現在の値動きが均衡状態にあるのかどうかが判断できます。

次に、一番左側の緑色の四角で囲った局面を見て下さい。ロウソク足の軌跡から、この視覚の部分を1つの均衡状態と見ることが出来ますが、ロウソク足の実体を中心に見た場合は、2種類の揉み合いと見ることもできます(緑色で塗り潰した丸部分)。

ちょっとこの部分、詳しく解説しようと思ったんですが、かなり長くなるので割愛しますが、こういった細部もきちんと見ることで、実際のトレードにおいてはレンジ内取引にうまく活用できるようになります。

更にもう1点、解説しておきましょうか。

オレンジ色の四角で囲ったEとFの間にあるピンク色で塗り潰した部分を見てください。数本のロウソク足で下にじり下がりしていますよね。

しかし、このじり下がりした不均衡は、Fに入ると、次の陽線1本だけで是正されています。そしてFではこの陽線の不均衡を数本のロウソク足を使って是正しているという形になっています。

なので実際には、ピンク色の部分とFの両方を合わせて1つの均衡状態とするのが、正しい判断です。(ここでは、均衡状態を分かりやすく解説するために、敢えて分けてみただけです)

さて、ここまで解説してきて、何となく気づいた人もいると思いますが、

「プライスアクション」

というと、出来上がったロウソク足の形状だけに注目されがちです。実際、解説している側もその形状だけしか解説してませんしね。

でも、どんなに「プライスアクション」と横文字を使って格好つけたとしても、要するに「値動き」のことなんですよ。

価格がどの様に動いているのか、そのロウソク足の「軌跡」をたどることが大切なんです。丁寧にね。

とは言え、例えば上の図は日足ですから、デイトレするなら直近の数本、多くても10本程度の値動きを把握すればOKなことがほとんどです。

慣れてしまえば、ほんの数秒で済む作業ですよ。日足分析に、ほんの数秒の判断を加えるだけで、その日のトレードの分析は格段に上がります。

需給の均衡が崩れる時

さて、ここまでは均衡状態が続いている際のロウソク足の形成についてお話してきました。

今度は、均衡が続いていた需給が崩れる時のことを考えていきましょう。均衡状態が崩れるというのは、チャート上では一体どの様な時なのでしょうか?

需給が均衡している状態とは、小さなロウソク足が並んだ状態、つまり値幅の小さいレンジでした。

で、この均衡が崩れるというのは、下図の様な状態です。

そう、「レンジ・レイク」した時です。

レンジにも色々ありますが、値幅の縮小したレンジというのが、いわゆる「需給が均衡した状態」で、その均衡が崩れる時が、レンジ・ブレイクとなるわけです。

レンジ・ブレイクするパターンは、上図でお分かりの通り、主に2種類です。

  • 低値を徐々に切り上げて、ブレイクする
  • レンジ中の小さな値幅のロウソク足に対して、明らかに大きなロウソク足(大陽線・大陰線)が生まれて、ブレイクする

ただ、いずれにせよ実際にレンジをブレイクするのは、「たった1本のロウソク足」(上図赤い矢印)です。

まずはそのブレイクしたたった1本のロウソク足について、少し考えていきましょう。

需給の均衡状態が続いているということは、売りも買いも同程度の量で売買が繰り返されているということです。

なので、その均衡を破るだけの量の資金が流入しなければ、レンジは破られません。つまり、レンジをブレイクするきっかけとなった1本のロウソク足には、レンジをブレイクするだけの資金が詰め込まれていると解釈できます。

では、その需給の均衡が崩れるきっかけとなった証となるロウソク足を見比べてみましょう。

AとB、どちらのロウソク足が、均衡をより大きく崩したと思いますか?

簡単ですね。Aの方です。

BよりもAの方が、陽線が大きい。より大きく均衡を崩したということになります。

つまり、均衡状態にあった際のロウソク足たちに比べ、大陽線や大陰線が出現したというのは、需給関係が大きく崩れた証だということです。

ただ、ここで注意してもらいたいことがあります。

BよりもAの方が陽線が大きいということは、Aの方がより多くの買い資金が流入したのでしょうか?

いいえ、それは分かりません。だって、外為市場では株式市場の様に出来高が分からないんですから。なので、正確な買い資金の流入の量は分からないんですね。

例えば、大陽線AとBの買い注文量が同じであったとしても、Bの売り注文が多ければ、陽線は小さくなります。もっと言えば・・・

大陽線Aの買い注文量が100、Bの買い注文量がそれより大きい120であったとしても、大陽線Aの売り注文量が20しかなく、Bの売り注文量が100であったとしたら?

そう、買いと売りの比率はAの方が大きいので、Aの方がBよりもより大きく上昇しやすい、つまり大陽線を形成しやすいことになります。

要するに買い圧力と売り圧力の比率、バランスの問題です。

需要と供給の差が大きいほど、よりバランスが崩れた方が、均衡をより大きく崩したと判断することになります。

ロウソク足が大きければ大きいほど、資金の流入も大きいと思っている人は多いですが、違いますからね。ロウソク足が大きければ大きいほど、需給のバランスが大きく崩れていると解釈してください。

(資金流入の度合いを推し量る術は、無いこともありません。ただ、これを書き出したらまた長くなり過ぎたので、割愛しました)

いいですか。ロウソク足の長さというのは、資金量の大小そのものではなく、バランスの崩れ方(不均衡の度合い)を表すものであると、覚えておいてください。

市場は需給のバランスを保とうとする

先程お話した通り、需要が供給を上回り、需給のバランスが崩れると、価格は上昇します。そして、その不均衡が続く限りは、価格も上昇を続けます。

しかし、ここで知っておかなければいけないことがあります。

それは、需給関係が不均衡であっても、市場はその不均衡を手放しでは放ってはおかないということです。市場においては、需給のバランスを保とうとする力が働きます。

つまり、価格は上がっても、次には下げてくる。そうやって出来るだけ需給のバランスを保とうとするのが、市場の原理原則なんです。

  1. 需要が供給を上回る(需給の不均衡)と、価格は上昇する
  2. しかし崩れたバランスを保とうと、上がった価格は一旦下がる
  3. しかし、大局では不均衡は続いているため、再び価格は上がりる
  4. その不均衡を是正しようと、再び下がる
  5. 再度価格は上がり、また下がる

これを繰り返しながら、価格は上昇します。

「市場原理」というと何やら凄そうですが、そんなことはありません。

買えば価格は上がるし、売れば価格は下がります。需給が均衡状態であればまさしくその繰り返しで価格を同水準で保ちます。

しかし、「需要>供給」という状況でも、理屈は同様です。

買いたい人が売りたい人を上回っていれば、価格が上昇しますよね。

すると売りたい人たちは、価格が上がったのを見て、

「お!高く売れるぞ!今のうちに売ってしまえ!」

となって売りに出すので、一時的に供給は需要を上回って、一旦価格は下がります。

しかし、価格が下がれば、やはり買いたい人が買ってきて、価格は上昇するわけです。

しかも、需要は供給を上回っている、つまり全体的には買いの量が売りの量を上回っているわけですから、価格は売りで下がったよりも更に大きく上昇します。

で、大きく上昇したら、やっぱり売りたい人が出てくるので、価格は一旦は下がる。そして下がった価格を買いたい人は買って更に価格は上がり・・・

これを繰り返しながら、価格は上昇していくわけなんですね。

で、これが上昇トレンドです。崩れたバランスを出来るだけ修正しながら、それでも崩れたバランス全体は是正できずに上昇を続けている姿が、上昇トレンドなんですよ。

お手本の様な図にすると、こんな感じになります。

「需要>供給」という不均衡により①-②で価格は上昇したとしても、市場はバランスを保とうとし、②-③で一旦下げます。しかし、市場全体は「需要>供給」という流れなので、再び③-④で価格は上昇します。

ところが市場は均衡を保とうとし、不均衡を是正すべく④-⑤でまたまた価格は下げることになります。

しかし、やっぱり市場は全体として「需要>供給」という流れなので、⑤-⑥と価格はまたしても上昇していきます・・・

というのが、上昇トレンドの流れなんですね。

ただ、ここで1点注目してもらいたいことがあります。それは、この図にある青いラインです。

②の高値に引いたラインで⑤は止められていますね。

もちろん、これは教科書的な波の描き方です。青いラインに⑤は届かずに反転上昇をすることもありますし、青いラインを一旦下回った後に反転上昇することもあります。

しかし、敢えてお手本によって、基本的な値動きの原理を理解してもらいたいのですが、

③-④の上昇波の波は、②の高値に⑤の低値が到達することによって、帳消しにされていることに気づいてください。

①から⑥まで上昇する際、①-②-③-④-⑤-⑥という経路であっても、①-②-⑤-⑥という経路であっても、結果として上昇した値幅は同じです。つまり、①から⑥に至るまでの道のりでは、灰色で囲った②-③-④-⑤は回り道(寄り道)しただけのことでしかなく、結論だけで言えば、

「別に、灰色で囲ったコースは、無くても良かったじゃん!」

ということになるわけです。

つまりですねぇ・・・図にすると、

というのは、

というのと、結果としては同じことになるわけです。

大切なことなので、繰り返して言いますが、

③-④の波は上昇波なので、「需要>供給」という不均衡を表していますが、次の④-⑤の波で、⑤が②と同じ価格まで下落することで、③-④という不均衡の波は結果として、

②-⑤という横ばいの波、つまり均衡状態に是正されたのと同じ意味合いを持つことになるわけです。

市場というのは、不均衡が続き価格が上昇(下降)していても、この様にして出来るだけ均衡状態を作り出そうとしながら、上昇(下降)を続けているんですよ。

僕らが見慣れた、このジグザグと価格が波を描いて進んでいくという動きは、需給の不均衡とその不均衡を是正しようとする市場原理を表している動きなんですね。

ちょっと、ややこしいですかね?

でも、頑張ってついてきてください。

ロウソク足で見るトレンド時の不均衡是正の仕方

まずは基本から

では、今度は先ほどの上昇トレンドの波の図を、3本のロウソク足だけで表現してみましょう。以下の様になりますよね。

A、B、Cの3つのロウソク足が波の高値と低値を捉えています。

ただ、ちょっと見づらいんで、波を消してロウソク足だけにしてみます。するとこんな感じ。

先ほどの波と同じように、ロウソク足Aの高値(上ヒゲ)とロウソク足Cの低値(下ヒゲ)がロウソク足Bを丸々埋めきってしまっていますよね。

先程、波の形で見た考え方をこのロウソク足で当てはめるなら、

不均衡である陽線Bは、(次のロウソク足Cの低値がロウソク足Aの高値まで下げたことで)ロウソク足Aとロウソク足Cによって不均衡が是正されている

ということになります。

つまり、ロウソク足が1つ1つ形成される動きというのは、

1つ前のロウソク足の不均衡(陽線・陰線)を是正しようとしながら、新たにロウソク足が形成される

ということなんですね。

この図の次の展開として、Cの次に新たにDというロウソクが生まれたとしても、今度は陽線であるCの不均衡を是正するために、ロウソク足Dは一時的ではあっても、Bの上ヒゲの先(高値)に到達しうようとするんです。

まずは、不均衡が続いている(トレンド継続時)場合であっても、ロウソク足は1つ前のロウソク足の不均衡を是正しようとしながら形成され続ける、という基本形を覚えてください。

不均衡を埋め過ぎた場合も同じ

ところで、実際の相場では先の様にお手本的な展開とはならず、下図の様にCの低値がAの高値を越えてしまうことは、普通にあります。

しかし、これもAのヒゲとCのヒゲでBのロウソク足を埋めきってしまっているので、このパターンも「不均衡は是正された」と解釈することになります。

確率論と普遍性

ということで、この様に3本のロウソク足の内、その両側の足が、真ん中の足の実態の隙間を埋めるかのようにして形成されていくというプライスアクション・・・

このプライスアクションが、市場原理においては、基本となります。

ここでは上昇トレンドを例に解説しましたが、下降トレンド中であろうが、そしてレンジ中であろうが、同様の理屈でロウソク足は形成されていきます。

ただ、勘違いしてほしくないのですが、これはあくまで基本的な考え方です。絶対そうなるわけではありません。

トレードで勝てない人というのは、テストの回答と同じ様にたった1つの正解を求めたがります。しかし、トレードというのは現在から未来に対する差益を求める作業ですから、絶対的な1つの正解というのは存在しません。

未来に起きる事実とは不確実性の中にあるわけですから、確率で考えます。確率の高い方に向かって実行するのがトレードなんですよ。

唯一無二の正解を求めるのはただ自分自身が安心したいだけのことであって、確率思考に頭を切り替えられなければ、トレードで勝ち続けることは不可能です。

で、いつもそうですが、今回のお話もその確率論の中でお話しています。今お話しているプライスアクションも、絶対そうなるという話ではなく、大半がそうなるということです。

で、この確率ですが、一説ではおよそ8割程度と言われています。

ただ、僕自身が調べた結果では、前のロウソク足の不均衡を次の足で完全に埋めきるのは、正直8割には届きません。

また、局面によってバラツキが結構あるようで、「少ない時で6割、多い時で8割に届くかどうか・・・」という言い方が適切でしょうか。やはりトレンド時では不均衡を是正できないケースが多く、また値動きが荒い場合も是正されにくい様です。

(ただし、「完全に埋めきる」という解釈でのもとでの計算です。これについては、後ほど更に解説していきます)

では、例として、ちょっと下の図を見てもらいましょうか。次のロウソク足で不均衡を是正できなかった隙間をピンク色で塗りつぶしてみました。

上図の局面で言えば、是正しきれなかったのは3割弱で、その大半は不均衡を是正しながらロウソク足が形成されていっています。

この様にロウソク足は基本的に、前の足の不均衡(インバランス)を是正しようとしながら形成されるということを、まずは覚えておいてください。

さて、ここまでは理解できましたか?

かなり噛み砕いてお話しているので、理解できていると思います。

ではここで、もう一度先ほどの図を見てみましょう。

この図では①より前の波が描かれていませんが、仮にこれ以前の波は高値が②と同様のポイントで止められているとしましょう。つまり、②の高値で引いたラインが、レンジのレジスタンスだったら、ということです。

であれば、③-④の波でレンジ上限をブレイクし、⑤でこのラインを試してから再度上昇しているという波になりますよね。

つまり、ロールリバーサルです。

ということは、

青いラインがレンジ上限のレジスタンスだった場合、この3本のロウソク足はロールリバーサルを表していることが分かると思います。

要するに、レンジ・ブレイクという均衡を強く破った様な時であっても、市場は均衡を保とうとするんですね。

ロールリバーサルというのは、レンジ・ブレイクの判断として使われますが、実際の相場においては、実は特別な値動きというわけでもなんでもなく、ただ市場が均衡を保とうとする極日常的な値動きの中の1つにしか過ぎないんですよ。

不均衡を埋めきれない場合

さて、市場は需給の均衡を保とうとするのが原理であり、ロウソク足もそれに従って形成されていく、ということがここまでの解説で分かったと思います。

しかし、その確率は少ない時で6割程度、多い時でも8割ほどです。

当然、不均衡を是正できないこともあるわけです。図にすると、こんな感じなります。

Bの不均衡をCは是正できず、Aの高値まで下げるどころか、大して下げもせずに陽線をつけて終わっています。

ということは、このAの高値とCの低値には不均衡を是正できなかった証として、隙間ができますよね。

この埋められなかった隙間が、不均衡を是正できなかった箇所であり、ここにインバランス(不均衡)が残されていると解釈できます。

ただし、同じインバランスでも、2つの解釈ができるんですよ。

先程解説したお手本の様な画像をもう1度見てください。

これって結局、

これと同じだったわけですよね。

これ、ロウソク足に変換して考えてみてください。

このロウソク足の並びは、結局のところ、下の図と同じということになります。

Bのロウソク足は結果として、高値低値始値終値が完全に一致した一本線と同じ意味合いになります。

しかし、既にお話した通り、金融市場において完全均衡である一本線は滅多になく、実質的には値幅の小さなコマ足は、ほぼ均衡状態とみなすわけでしたね。

であれば、当然のごとく、

上図の様にわずかなインバランスが残された場合は、

上図の様に、AとCのロウソク足が完全にBを埋めきらなくとも、Bはコマ足状態と同じことになるわけですから、「ほぼ均衡状態」と考えることが出来るわけです。

 


補足:

上記の解説図を見て「ん?」って思った方もいると思うので、ちょっと補足しておきます。先ほど提示した2つの画像、

と、

は、正確なロウソク足図とは言い切れません。Aの終値とBの始値、Bの終値とCの始値が一致してませんからね。(株式の日足ならあり得ますが、外為市場では滅多にお目にかかれないロウソク足の並び方です)

しかし、これは解説の便宜上、「同じ意味合いになる」という理由でロウソク足を描いているため、その様になってしまっています。

これを波で解釈すると、

と同様の意味合いを持つことになるわけですから、この均衡状態の部分だけをそのままロウソク足に変換してみると、

という風に解釈できるという意味です。

「下手に手を加えると、逆に理解しづらいかな」と思い、上記の様に解説しています。

ただ、こちらの解説が理解しにくい人もいるかと思うので、違う解説の仕方を以下に加えておきます。

 

例えば、

この様にわずかなインバランスが残されている場合、どの様な解釈をするかというと・・・

ロウソク足1本の期間をずらして考えてみてください。

  • 1本目のロウソク足の終値は上図Aが高値に到達した時点で、そこから2本目のロウソク足が始まる
  • 2本目のロウソク足の終値は上図Cの低値に到達するまで続き、そこから3本目のロウソク足が始まる

この様に、ロウソク足が確定する時間をずらして考えると、

というロウソク足たちは、

という風にも解釈できるため、Bはほぼ均衡を保った状態と判断することが可能になります。

 

う~ん・・・どちらの解説が理解しやすいかは、人それぞれですかね。いずれにしろ混乱してしまうなら、ロウソク足ではなく、「波」で理解してください。


 

ということで、僕の流儀から言えば、前の足の不均衡を次の足で完全に是正できなくとも、そのインバランスがわずかであれば、「不均衡を是正した」と考えることになります。

先ほど僕は、僕自身が調べた結果では「不均衡を完全に是正しながらロウソク足が形成さるのは、少ない時で6割、多い時で8割程度」と言いましたが、この様に不完全ではあってもほぼ不均衡を是正したと考えられるものも含めると、

「市場において次の足が前の足の不均衡を是正するのは、8割程度」

となります。市場はトレンドが出ていても出ていなくとも、結果的には不均衡を8割ほど是正しながらロウソク足を形成していくわけです。

となると、残りの2割が気になるところです。つまり、

上図の様に、明らかに不均衡が是正されず、大きなインバランスを含んだ状態が、市場には2割ほど存在するわけです。

で、この埋められなかった値幅、つまり不均衡を是正できなかった値幅のことを、

「FVG(FairValue Gap)」

または、そのまんま

「インバランス(Imbalance)」

と呼びます。

現在の潮流から言うと、「FVG」と呼ばれることが圧倒的に多いです。この記事では、特に使い分けることなく、両方の呼び方を用いることにしますね。

ということで、この3本のロウソク足が織りなすFVGというプライスアクションについて、次章でもう少し解説していくとしましょう。

 

・・・と思って書き出してたんですが、今回の記事はここでお終いにします。さすがに長過ぎなんで。

次回は、FVGだけでなく、エントリーのタイミングをとるためのプライスアクションの見方くらいまでを解説出来たらな、と思ってます。

まぁ、需給関係をベースにしたトレードは、それだけに留まらないんですけどね。その辺りは機会があるたびに解説していこうかな、と。

それじゃあ、また。

波の正しい捉え方

前回の記事を昨日アップしたばっかりなんですが、仕事も休みで時間があったのと、一昨日良い題材になりそうな相場があったので、ちょっとそれについてお話でもしようかなと。

テーマは「波の捉え方」です。

それでは、始まり始まり~~!

波の捉え方

2023年11月16日午前中までのゴールドを実例に

下の画像は、一昨日の午前中までを表示したゴールド(XAU/USD)の1時間足チャートです。

で、赤く囲った部分を見てもらいたいんですが・・・

アナタだったら、この部分における価格の波をどう捉えるでしょうか?

恐らく大体の人は、ダウ理論を利用して波を捉えようとするため、波をこんな感じで捉えると思います。

下降していく波を青色で、上昇していく波を緑色で描いてみました。

ただ、ちょっと見えづらいんで、ロウソク足を拡大して解説しますね。

A地点から、高値安値を切り下げていく波を大まかに捉えていくと、上図の様に青色1からはじまり、2,3,4と続いて青色5までの波が描けると思います。

で、青色5で底値を付けた価格は、次に上昇へと転じています。

その波を緑色のラインで示したわけですが、こちらも緑色1から2,3,4と続いて緑色5まで到達するとそこからはZに向かって大きく下落しています。

とまぁ、大体の人が、こんな感じで波の把握していくんだと思います。

 

でもこれ、波の捉え方が完全に間違ってます。

 

波の捉え方にも、流派というかそれぞれ確立された理論をお持ちの方々いるので、一概には言えないんでしょうけど、

それでも、この波の捉え方は間違っています。

ダウ理論で見る場合

もう一度、先ほどの画像を見てみましょう。緑色の波に注目してください。

緑色で描いた上昇する波をダウ理論で見ていくと、

  • 青色5から緑色1の推進1波
  • 緑色2から緑色3の推進2波
  • 緑色4から緑色5の推進3波

と推進波が3つ形成された後に、5からの下落で直近低値4を下回ってZで終わっています。

ということは、推進波3つが終わった後に直近低値を価格が下回ったため、ダウ理論の解釈で言えば、ここで上昇トレンドは一旦終了。次はレンジか下降トレンドへと移行することになるはずです。

ってことは、この様な波の捉え方をしていると、この日の午後からのトレード方針は「売り方針」となるわけで、仮に上昇してきたら絶好の戻り売りチャンスが訪れたと判断することになります。

で、そんな方針でそのタイミングを5分足なんかで待ち構えていたりなんかすると、

反転下落の定番パターンである三尊(ヘッド&ショルダー)が現れ、絶好の売りのチャンスが訪れます。

「ここで売って、爆益じゃん!!」

ところが、現実は甘くありません。そんな願いは虚しく・・・

あれれ?爆益どころか、爆損じゃん。

ってな感じで、この後は強い上昇へと転じてしまいます。

 

なぜ、こんな悲劇が起こるのでしょうか?

それは、波の捉え方が間違っているからです。

もう一度、先ほど描いた波の画像を見ていきましょう。

恐らくフラクタル構造を知ってる人は、上図の青色4-5の波の中にあるオレンジで示した波の高値を緑色1が上抜いたのを見て、いち早く「下降トレンド終了」と思ったことでしょう。

しかし、オレンジ色の波というのは、あくまで青4ー青5という波の一片の中にある小さな複数の波の中の出来事でしかないんですよ。

となると、青5ー緑1を結んだ緑色の上昇波というのも、対オレンジ色の波のレベルでしかなく、青色の波のレベルで言えば、1つ下の波でしかありません。

つまり、緑色で描いた波の描き方は、青色で描いた下降する波よりも一つ下の波を描いてることになるんですよ。

言ってること、難しいですか?

難しいですよね。頭がゴチャゴチャしてきた人も、多いと思います。

それでは、もう少し分かりやすくするために、違う角度から解説してみますね。

ダウ理論で言えば、下降トレンドが否定されるのは、「直近高値を切り上げるまで」です。

上図で言えば、、下降トレンドの直近高値は青色4になりますよね。

じゃあ、その青色4を切り上げたのは、いつですか?

そう、青色3にきて、ようやく直近高値を切り上げたわけです。

となると、ダウ理論を意識して正しい波を捉えようとするならば、少なくともまずは

上図の様に、青色5から一気に緑色3までを引いた赤いラインを1つの波と捉えることになるわけです。

青4-青5の下降波の中にオレンジ色の波があるように、赤色の波の一辺の中に青5ー緑1-緑2-緑3という複数の波が存在するということですね。

しかし、ちょっと待ってください。

青5ー緑3までを1辺の波とするならば、その後の緑3-緑4や緑4ー緑5の波は、小さ過ぎやしませんかね?そんな気がしてきますよね。

ダウ理論上、1辺の波の中には、3つの推進波が存在することになりますから、

  • 青5ー緑1
  • 緑2-緑3

と数えてもあと1つ足りません。

であれば、波の捉え方としては、

青色5から緑色5までを1辺の涙として一気に引いてしまっても、何も問題はないんですよ。

であれば、このチャートの解釈は、

  • 青色の波で構成された下降トレンドは、直近高値を越えたことにより、一旦は否定された
  • しかし、Zはまだ直近低値(青5)を切り上げたとは言えないので、現段階では上昇トレンドが始まっているとは断定できない
  • ということは、この後の展開は、レンジもしくは下値を切り上げて上昇トレンドが発生するということになる
  • いずれにせよ、下げてきたらその後の反転を狙った買い方針

といった具合に、先ほどとは真逆の方針になるわけです。

で、この買い方針を立てて5分足でタイミングを待ち構えていたとしたら、

まぁ、トリガーをどうするかは人それぞれでしょうけど、僕からしたら青丸で下値を試して越えられず上昇に転じた辺りからは、分かりやすい場面でしかないわけで。

他のインジを見てもらっても、恐らく大体は機能してると思いますよ。

上図赤丸ポイント以外にもエントリー出来る箇所はいくつかありますし、多少タイミングが間違っていたとしても、もう買ってるだけでOK。大した恐怖も感じずに、価格は上がり続けてくれた展開となったわけです。

沼に嵌らぬよう

さて、波の見方、ややこしかったでしょうか?

ややこしいですよね。

そして、ややこしくて正解です。

下手にフラクタル構造が絡んでくるんで、波を正確に捉えようとすると、実際分けわからなくなったりします。

また、僕はあえて先ほどのチャートを赤い線で囲んでその部分だけを見るようにして解説しましたが、その前の波まで考慮しようとすると、また別の解釈が出来たりして、混乱が始まります。

ある程度熟達した人であっても、一旦そう思って捉えた波が、相場の値動きが進むにつれ、あとから修正するというのは、珍しいことではありません。

要するに、フラクタル構造を絡めながら波を上手くとらえるというのは、実際は難しいんですよ。

ですから、実際に波の捉え方を正確に突き止めようとすると、

沼に嵌ります。

しかし、トレードの技術を上げるために、物事を突き詰めていくというのは、正しい道です。なので、険しい道を突き進むことを、僕は否定しません。

ただ、波を捉えるという作業は、険しい道であると同時に、沼に嵌りやすい。

沼に嵌ってしまって、そこから抜け出せないのであれば、それは実際にトレードで利益を得るという目的とは違う道に進んでしまっているのと同じです。

なので、ある程度波を捉える技術は学ぶべきですが、トレードで利益を稼ぐという技術を磨くという意味での本質からかけ離れてしまうのであれば、そこで一旦波に関する学習から離れるべきだと思います。

だってね、波の捉え方なんて、正確無比に分からなくても、ある程度認識できるレベルの技術があれば、それだけで十分勝てるんですから。

レベル3で十分勝てるのであれば、無理にレベル10を目指す必要なんてありません。

僕らがやっているテクニカルというのは、座学ではないんですよ。実学であり、実務者としての腕と知識を学ぶためのものなんです。

勝てる以上の知識をご披露してドヤりたいなら、それはトレーダーではなく、「別の何者か」でしかありません。

もう1つの波の捉え方、それは「流れ」

沼に嵌らぬように。

とお話しましたが、そんな沼に嵌る前に、もっと別な波の捉え方のお話をしておきます。

これは、素のチャートで「あーでもない、こーでもない」と頭を悩ませることなく、非常にシンプルで初心者でも理解しやすい、とっても実用的なやり方です。

僕はこのブログではそれを

「流れ」

と呼んでいます。

このやり方、このブログでは既にお話していますが、結構昔のことなので知らない人も多いでしょうし、忘れちゃったって人も多いでしょう。

なので、ここでもう一度解説しておこうと思います。

「流れ」について

BOZ流、というか僕がこのブログで解説する際に用いる用語に

「流れ」

というものがあります。

この「流れ」とは、トレンドが上とか下とか、トレンドレスでレンジだとか、そういった部分的なことではなく、価格が推移する軌道全体のことを示します。

例えば、チャートに手書きでその流れを書き込むと、下図の様な感じになります。

青色の曲線でなぞった様に、価格が推移する軌道を抽象的に描いたものが、僕の言うところの「流れ」です。

価格の推移を、ロウソク足の山と谷を直線で結んだ「波」で把握するのではなく、もっと抽象的に価格の軌道を曲線で表したものが「流れ」なんですね。

で、こういった流れは、わざわざ手書きで描いたり、頭の中でイメージしてみる必要はありません。

インジを使えばOKです。

で、そんなインジは特別仕様なものでもなんでもなく、どんなチャートソフトにもデフォルトで用意されている超メジャーなインジ、

単純移動平均線

です。

単純移動平均線は、僕らに価格の流れを、端的に簡略化してそれを視覚化してくれます。

例えば75期間程度の移動平均線であれば、下の図の様に、チャート全体の大まかな流れを表現してくれます。

もちろん、75SMAで表現される流れは、大まかな流れです。

この大まかな流れの中にある小さな波をもっと的確にとらえた流れを表現したい場合は、もっと短い期間の移動平均線を使います。下の図は、20SMAです。

先の図と見比べれもらえれば分かる通り、より細かな流れを表現してくれています。

しかし、この20SMAで表現した流れの中には、さらに小さな波が存在しますよね。これを更に流れとして表現したい場合は、さらに短い期間の移動平均線を使います。下の図は、10SMAを用いて、それを表現したものです。

先ほどの20SMAを使った流れよりも、より実際の価格推移に近い流れを表現してくれていると思います。

で、波を把握したい場合、この「流れ」を用います。

先ほど闇雲に波を描いチャート図が、下の図でした。

これに、20SMAを表示して価格推移の流れを見てみると、以下の様になります。

「流れ」は緩やかな曲線です。そして、緩やかな山と谷を形成しています。その緩やかな山と谷の部分に印をつけたのが、下の図です。

赤丸部分のところは、誰もが理解できる箇所ですが、青丸部部だけはちょっと微妙です。

これを説明するには、いくつかの議論が必要になるので割愛しますが、この青丸部分にも緩やかな山と谷が存在すると仮定しておきましょう。

では、この流れの山と谷を実際のロウソク足の山と谷に当てはめて、波を考えてみましょうか。

移動平均線は遅行指標ですので、そこに表現される山と谷は、実際の値動きよりもやや遅れて表現されます。

なので、

  • 赤丸aの山は高値Aの山に相当
  • 青丸bの中にある山と谷は1と2に相当
  • 赤丸cの谷は3の谷に相当
  • 赤丸dの山は4の山に相当
  • 赤丸eの谷は5の谷に相当

となります。

ということで、この20SMAの流れに合わせた山と谷を実際の高値低値を用いて波としてラインを引いてみると、この一連の下降トレンドの波は、

と上の図の様になり、最初にロウソク足だけを見て引いた

こちらの波と全く同じ軌跡となります。

で、注目してほしいのは、この後の上昇の局面です。

最初にロウソク足だけを見て引いた波は、上図の緑色のラインでしたね。青色5を起点として、緑色1、2、3、4、5の山と谷で形成される波です。

で、この波捉え方は、既に間違いだと解説しています。

では、20SMAを用いて表現した流れは、山と谷をどう表現しているでしょうか?

そうです、この上昇する価格推移の過程において、流れは赤丸eの谷と赤丸fの山しか形成していません。

つまり、これを参考に実際のロウソク足に波のラインを引いてみると、

間違った波の引き方である1、2、3、4の山と谷をすっ飛ばして、青丸5と緑丸5を結んだ1辺の波になるんですね。

これって、先ほどロウソク足だけを見て最終的に修正を終えた波である

こちらの波の捉え方と、同一になるんですよ。

凄くないですか?凄いですよねぇ。

( ̄∇+ ̄)vキラーン

 

要するに、どうやって波を捉えたら良いかは、特別考える必要もなく、

移動平均線を引いてしまうだけで、ぱっと見だけで正しい波が把握できる

ってわけなんですよ。

これで沼に嵌ることなく、時間と労力を無駄に費やすことなく、波を正確に把握することが出来る様になったと思います。

最初の方の解説で

「はぁ?意味わかんね」

( ̄へ  ̄ 凸

となった人でも、難しく考えることなく波を捉えることが出来る様になると思います。

ちなみにここで引いた波のもう1つ下の波を見たい場合は、移動平均線ももう1つ下の10SMAを用いればOKです。

やっぱり簡単ですね。そして、実用的です。

 

複雑怪奇なモノゴトを複雑に考えても、答えは出ません。むしろ、そうやってしまうと息苦しくなり何も行動が出来なくなってしまいます。

そうではなく、複雑なモノゴトをシンプルに捉え、シンプルに考え、シンプルに行動する。

生き方もトレードも、一緒なんですよ。

 

そして、これがBOZ流!

( ̄∇+ ̄)vキラーン

 

さて、僕のドヤ顔はこの辺でお終いにしておくとしましょうか。

それじゃあ、また。