多通貨ペア監視のノウハウ(4)市場全体の動向を探る

さて、「多通貨ペア監視のノウハウ」シリーズの第4回目です。

前回は、相関を難しく考えずとも、ドルと円の軸だけを把握することで、多くのケースで市場の大勢についていけることが、分かったかと思います。

で、今回は縦軸を見ていきます。そう、欧州勢通貨と環境国通貨の動きです。

ただ、今回もちょっと頭がこんがらがってしまいやすい話が続きますので、覚悟してついてきてくださいね。

それでは、始まり始まり~!

これがBOZ流!市場のテーマの見つけ方

多通貨ペア監視の目的

このシリーズの最初の方で、相関性の見方の基本をお話したと思います。その基本的な見方は、

  • ドル
  • ユーロ

の3通貨によって構成される3つの通貨ペアのチャートから、どの通貨が買われてどの通貨が売られているのかを見比べて、通貨同士の強弱の関係を知るというものでした。

で、前回の解説では、横軸であるドルと円を見たんでしたよね。

なので、今回の縦軸解説においては、

  • まずユーロの通貨ペアを見て、ドルと円との相関性を把握する
  • 次にポンドの通貨ペアを見て、ドルと円との相関性を把握する
  • 次に豪ドルの通貨ペアを見て、ドルと円との相関性を把握する

という作業をし、そこからある方法を用いて、ドル・円・ユーロ・ポンド・豪ドルの5つの通貨の強弱の関係性を導き出す・・・

そんな解説を想像した人もいるかと思います。

でも、違います。

多通貨ペア監視において、相関関係の基本的な見方というのは、確かに必要不可欠なものです。

しかし、BOZ流の多通貨ペア監視の目的は、世間一般で活用されている通貨間の強弱をあぶりだしてランキング付けするような類のものではありません。

ここで解説する多通貨ペア監視というのは、

  • 外為市場のテーマと動意を見つける
  • それに合わせて、最もトレードしやすい通貨ペアを選択する

というのが目的です。

なので、「縦軸を見る」というのは、横軸を見てドルと円にテーマがない場合、それ以外の通貨にテーマや動意があるのかないのかを探る作業になります。

欧州勢通貨や環境国通貨がテーマとなる時

では、ドルや円以外の通貨が市場のテーマになっているかどうかを知るには、どの様にしたら良いのでしょうか?

答えは簡単です。

縦軸の通貨ペアを見て、

  • ユーロの2つの通貨ペアが共に同じ方向に値が動いていれば、ユーロがその時の市場のテーマ
  • ポンドの2つの通貨ペアが共に同じ方向に値が動いていれば、ポンドがその時の市場のテーマ
  • ユーロとポンドの計4つの通貨ペアが共に同じ方向に値が動いていれば、欧州勢通貨がその時の市場のテーマ
  • 豪ドルの2つの通貨ペアが共に同じ方向に値が動いていれば、豪ドルがその時の市場のテーマ

となります。簡単ですね。

ただし、ドルと円の両方が共にテーマに上がっている場合には、この縦軸の見方は成立しません。

この縦軸の見方が成立するのは、

  • ドルと円の両方とも市場のテーマになっていない場合
  • ドルもしくは円のどちらか1つしか市場のテーマになっていない場合

というのが前提条件になります。

では、なぜそうなるのでしょうか?

これも、相関関係をきちんと理解していれば、答えは簡単です。

例えば、市場のテーマが「ドル」と「円」にあり、その動意が両方とも「売り」であるならば、ユーロ/ドルもユーロ/円も値動きは共に上昇するからです。ユーロにテーマがなくとも、ユーロ絡みの2つの通貨ペアは、同じ方向に値が動くんですよ。

なので、ドルと円が共にテーマとなっている場合には、上記の見方は成立しないんですね。

しかし、ドルと円の両方が市場のテーマとなっていないのに、ユーロ/ドルとユーロ/円が共に上昇しているのであれば、それはユーロの買いが主導となって価格が上昇しているわけですから、市場のテーマは「ユーロ」であり、その動意は「買い」となるわけです。

また、ドルもしくは円の1つだけが市場のテーマだった場合でも、縦軸のチャートの値動きが同じ方向を向くことはありません。あるとしたら、それはその縦軸の通貨にテーマがあることが理由となります。

例えば、市場の動意が「ドル売り」にしかなく、円がテーマとなっていない場合、豪ドルの縦軸は、

  • 豪ドル/ドルのチャートは、上昇
  • 豪ドル/円のチャートは、上昇しない

となるはずです。

しかし、豪ドル/円のチャートも上昇しているのであれば、円を積極的に売る意思はなくとも、豪ドルを積極的に買おうという意思が市場にはあるということになります。豪ドルが買われているから、豪ドル/円も上昇するわけです。

であれば、その時のテーマは「ドル」と「豪ドル」にあり、市場の動意は「ドル売り、豪ドル買い」ということになります。

正確性よりも実用性をとる

ただ、縦軸の2つの通貨ペアだけを見て、

「え?それだけで市場のテーマかどうか判断できるの?」

と思った方も、いるかもしれません。

たしかに、豪ドル/ドルと豪ドル/円だけを見て、豪ドルが市場のテーマとなっているかを判断するのは、少し雑な気がします。

豪ドルが市場のテーマになっているかを判断するには、ユーロ/豪ドルなどその他の通貨も比較してからにした方が、正確性は上がるはずですし、その方が安心です。

しかし、ここで正確性を求めても、何の意味もありません。

だってね、ドルや円が市場のテーマになっていないのに、豪ドル/ドルと豪ドル/円の両方が上昇しているのであれば、それは豪ドル自身に買い意欲が集まっているということです。

仮にそれが「市場のテーマ」というレベルに至らないとしても、豪ドルに「買う」という動意が市場あるのは、事実です。

だったら、豪ドルを「買い」と判断するのは、トレーダーとして何一つ間違っちゃいない。

しかも、僕らは豪ドルに関しては豪ドル/ドルと豪ドル/円しかトレードしないんですよ。ユーロ/豪ドルを取引するなら、それも加味してその通貨ペアの状況も加味する必要はありますけど、取引しないんだから、そんな必要は全くない。

なので、僕らトレーダーは実用性を重要視していけば良いんです。

仮にその通貨が「市場のテーマ」というレベルに至っているか疑問が残っても、そこに「動意」があるのであれば、その動意に乗るのがトレーダーの仕事です。

違いますか?

その動意に乗らず、「本当にこれは市場のテーマか?」などをさらに探ろうとする行為は、トレーダーに必要な仕事ではなく、それは金融アナリストの仕事なんですよ。

市場のテーマとなっているかどうかの違い

では、市場に動意があっても、市場のテーマになっている場合とテーマになっていない場合、どの様な違いが生まれるのでしょうか?

基本的に、勝敗には関係しません。

例えば、ドルと円が市場のテーマとなっておらず、豪ドル/ドルと豪ドル/円の両方が上昇している場合、豪ドルそのものに買い意欲が集まっているわけですから、市場には「豪ドル買い」の動意があるわけです。

この場合、市場のテーマになっていようがなかろうが、「豪ドルは買い」なわけですから、その動意に沿って取引している限り、基本的に勝敗には影響しません。

ただ、市場のテーマとなっていれば、そうでない時と比べ、資金の流れはより大きくなります。なので、価格が動意の方向に進む値幅と期間は大きくなりやすくなります。

トレーダーとして気にする点は、そのくらいでしょう。

ただ、その点も実は限定的です。

値の進む幅というのは、実際は個別チャートの局面によって大きく変わります。

例えば、市場ではユーロに買いの動意がある場合、ユーロ/ドルをトレードするケースを2種類考えてみましょうか。

  1. ユーロは市場のテーマになっているが、今のポイントで買った場合、30p上に強力な抵抗帯ある
  2. ユーロは市場のテーマというほどではないが、今のポイントで買った場合、50p上に強力な抵抗帯がある

この2つ、どちらの利幅が大きくなる可能性が高いでしょうか?

簡単ですね。そう、2番目の方です。市場のテーマに上るほどなのかどうかに関係なく、買いの動意があるのであれば、値幅は基本的に個別チャートに起因します。

なので、実際のトレードにおいては、「市場の動意」があるのであれば「市場のテーマ」かどうかを知る必要は、たいしてないんですね。

つまり、BOZ流の多通貨ペア監視においては、縦軸2つの通貨ペアだけで「市場のテーマ」としても、何一つ問題ないわけです。

ただし、2つの通貨ペアを比較しただけで

「今は、豪ドルが市場のテーマだから」

とかの発言をSNS等で公表したらダメですからね。そういった市況を世間にご披露するのは、アナリストの仕事ですから。アナリストっぽく振舞ってドヤりたいなら、もっと正確に調べてから公表してください。

多通貨ペア監視の手順

ということで、BOZ流の多通貨ペア監視用の組チャートを見る場合は、必ず最初に横軸を見ます。まずは横軸を見て、市場のテーマに「ドル」や「円」があるのかを確認します。

そして、「ドル」と「円」の両方にテーマがある場合は、「ユーロ」「ポンド」「豪ドル」にテーマも動意はありませんから、縦軸を比較する必要はありません。

しかし、「ドル」と「円」の両方、もしくはどちらか一方がテーマになっていない場合は、次に縦軸を見比べて、同じ方向に値が動いている通貨を探します。そして、同じ方向に値が動いている通貨があるのであれば、その通貨がその時の市場のテーマということになり、その値が動いている方向が市場の動意となるわけです。

簡単ですね。至って簡単です。

で、市場のテーマとなっている通貨の絡んだ通貨ペアを選択し、市場の動意に合わせて売買をすれば良いだけなんですよ。

簡単ですよね。

市場はジャンルごとに動きやすい

前回も言いましたが、市場には

  • ドル
  • 欧州勢通貨
  • 資源国通貨

の4つのジャンルがあります。(「安全国通貨」というジャンルの色合いは褪(あ)せているので、「円」を1つのジャンルと規定しています)

そして、市場は各通貨ごとがテーマとなるよりも、この4つのジャンルごとにテーマが浮上する傾向にあります。

もちろん、同じジャンルの通貨であっても、国は違いますから、必ずしも同じ値動きをするわけではありません。国ごとの状況によっては同じジャンルであっても相反する動きをすることはもちろんあるわけです。

が、例えばポンドに買い条件はなくユーロのみに単独の買い条件があったとしても、それに釣られてポンドも買われたりもするんですね。

あくまで「傾向」ですが、市場はジャンルごとにお金が流れる傾向があると思っておいてください。

なお、学習用の多通貨ペア監視用組チャートでは、加ドルは表示されていませんから、環境国通貨は豪ドルのみです。加ドルを表示して豪ドルと同様に動くのであれば、「環境国通貨に動意がある」みたいな判断ができますが、豪ドルしか表示していなければ、それが定かかどうかは分かりません。

ただ、加ドルを取引しないのであれば、別に豪ドル単体に動意があるのか環境国通貨全体に動意があるのかは、知ったところでトレード自体には何の影響もありません。

学習用の多通貨ペア監視用組チャートで、豪ドルに動意があると知った時に、

「多分、他の環境国通貨も動意があるんじゃね?」

ってそんな程度の認識で、時間があれば加ドルやニュージーランド・ドルのチャートでも覗いてみれば良いと思います。

まぁ、実際にトレードしないなら、覗く必要もないとは思いますが。

とは言え、やっぱり市場は複雑

さて、BOZ流の多通貨ペア監視方法を用いれば、市場のテーマと動意を見つけるのは、とっても簡単だということが、お判りいただけたと思います。

が、言うは易し行うは難し。

確かに、テーマと動意を見つける手段だけを見れば、その手順は簡単ですが、きちんと市場のお金の流れを把握しようとすると、実際はやっぱり複雑になります。

では、ちょっと実際にチャートを見ながら、市場のお金の流れを見ていきましょうか。

頭がこんがらがる解説に入っていきますよ。頑張っていきましょう。

その前に

今回の解説は、前回に比べて、もう少し値動きを細かく見ていくことにします。

とういうのも、前回の解説は、値動きに対してかなりザックリとしたものだったからです。細かく見れば調整が入っているところも、全体的に上がっていれば「上昇」と一括りにしていました。

なぜかというと、簡易化しないと分かりづらくなるからです。細かい値動きに対して忠実に対応して解説しようとすればするほど、解説は複雑になり、分かりづらくなるだけですからね。

ただ、今回はあんまりザックリと解説すると、逆に読者さんの方が「あれ?」って疑問に思うところが沢山出てきてしまいそうなので、ちょっと値動きに対して忠実な解説をしていこうと思います。

ということで、ここからは、単にトレンドを一括りにせず、その中にある推進波と調整波を、きちんと分けて解説していこうと思います。

細かい解説になる分、複雑になっていきますが、頑張ってついてきてください。

まずはユーロ/ドルを見てみよう

多通貨ペア監視チャートの学習用組チャートの配列は、覚えてますか?こんな感じでした。

通貨ペア名は、これ以降表示しないので、覚えておいてくださいね。

では、まずユーロ/ドルのチャートに注目してみましょうか。

3本の大陽線が続いています。これ、日足チャートなんで、3日間強い勢いの上昇トレンドが続いていたということですね。日足チャートだと一気に上昇している様に見えます。

では、この部分を拡大して1時間足で見てみましょうか。

赤色の2本の縦線で囲った期間が、その部分になります。(正確に言うと、線がちょっとずれてしまってますが)

で、ユーロドルはやはり上昇トレンドを形成していますが、一直線で上昇しているわけではなく、推進波(上昇を続ける波)と推進波の間に調整波(横ばいだったり、一時的に下がったり)を挟みながら、全体としては上昇を続けているわけです。

じゃあ、この状況をもう少し細かく見ていきたいんですが、この範囲を全て解説するのはちょっと長丁場になりそうなんで、このトレンド期間の後半部分に焦点を当てて解説しますね。

後半部分の始まりに、もう1本の赤い縦線を引いてみました。

真ん中の線と右側の線に囲まれた部分を解説するんですが、この部分のユーロ/ドル、何か気が付きましたか?

推進波が3つあると思いますが、これら推進波がはじまるのは、ほぼ同じ周期です。色分けしてみますね。最初の周期が水色、次の周期が黄色、その次の周期がピンク色です。

ユーロ/ドルにおいて、推進波がはじまり調整波になってその調整波が終わるまでを1つの周期とすると、およそ12時間ごとにその周期が3回訪れているのが分かると思います。(もちろん正確に12時間ではないですよ、誤解しないでくださいね)

面白いですね。

他の通貨ペアと見比べてみよう

で、この組チャート図では、このユーロ/ドルの3つの周期と同じものを、他の通貨ペアにも当てはめて色分けしていますが、ちょっとこれらを見比べてみてください。

まず、上段のドル・ストレートですが、ユーロ/ドルの変化と同じタイミングで変化が訪れているのが分かりますよね。

それどころか、周期内部で訪れる変化のタイミングも同じです。黄色の周期を見てください。ユーロ/ドルのこの周期内部では、「推進波+調整波」で構成されてます。

で、この推進波と調整波の切り替わるタイミングは、他のドル・ストレートでも全く同じタイミングで、推進波から調整波へと切り替わっています。

偶然でしょうか?違いますよね。

では、次に下段のクロス・円の方もユーロ/ドルの周期と見比べてみましょう。

似てますね。

ただ、似てますが、若干違っています。よく見ると、ドル・ストレートの変化のタイミングとは若干ずれて変化が訪れていたりします。

(ただし、同じ円絡みの通貨ペアであっても、ドル・ストレートであるドル/円は、ドル・ストレートと同じタイミングで変化が始まっていますよ。ウッカリしない様に)

ただ、クロス円同士は、同時に変化を始めているんですよ。

面白いですよね。偶然でしょうか?

やっぱり、違いますよね。

市場全体から見る相関性

では、市場全体を通して、相関性を確認していきましょう。

まず水色の周期から。

解説しやすいように、まずは下段の円の横軸から見てください。水色の周期では、全てのチャートが上昇しています。

ということは、「円」がテーマで、「円売り」が市場の動意ということになります。

では、上段のドルの横軸は?

ユーロもポンドも豪ドルも上昇しているので、市場の動意は「ドル売りかな?」って思いそうですが、円/ドルだけは大きく下落しています。

通常、「円売り」と「ドル売り」が市場の動意の場合、円とドルは相殺されて、ドル/円(円/ドル)は横ばいになるはずです。

しかし、円/ドルが大きく下落ということは、円を売る動意が圧倒していることになります。

となると、ドルは円に対してだけ買われ、他の通貨に対しては売られているということになり、一貫性がないですよね。

なので、ドルは市場のテーマになってないと判断します。

横軸の判断では、円売りだけが市場の動意ですので、次に縦軸を見て見ましょうか。

水色の周期において、ユーロ・ポンド・豪ドルの縦軸は、いずれも上昇しています。

つまり、欧州勢通貨と豪ドル(比較してませんが恐らく環境国通貨)には買いの動意が見られるということになります。

ただ、ユーロとポンドの縦軸を見比べると、円軸で上昇している期間よりも、ドル軸で上昇している期間の方が短いですよね。円軸は、周期に入ると直ぐに大きく上昇していますが、ドル軸では多少もたついてからの大きな上昇です。そして大きな上昇が収まりだすのもドル軸の方がやや早めです。結果、円軸では大陽線が数本出ていますが、ドル軸での大陽線はたった1本で終わっています。

なので、ユーロとポンドにおいては買い要因はありますが、市場のテーマとしてはやや弱めかな?という判断になりますね。

ただ、豪ドルに関しては円軸とドル軸では同じ期間の上昇がみられます。豪ドルの方が、ユーロやポンドに比べ買い要因が強く、市場の動意が大きかったと見るべきでしょう。

では、なぜ豪ドルの買い要因は強く、ユーロやポンドは買い要因があるにしろやや弱めだったのでしょうか?

って、そんなことはどうでも良いんでしたよね。

僕らは思わず、その理由を深く考えがちです。しかし、テクニカルでトレードする僕らにとって、上げ下げの理由を追求する必要はないんでしたよね。理由ではなく、事実で僕らは動きます。

さて、それではもう少し細かくチャートを見ていきましょう。

見ての通り、ドル/円(円/ドル)を除くすべての通貨ペアでは、水色の周期に入ったところで低値をつけ、そこから上昇を始めていますよね。

ところが、ドル円だけが違います。上昇が始まるこの水色の周期に入る直前、ドル/円だけが先駆けて低値をつけています。

これは、「円を買ってドルを売る」という流れが止まったということを表しています。

ということは、それまでは「円を買ってドルを売る」というのが市場の動意だったのかもしれません。

それでは、この多通貨ペア監視チャートの見方をより良く理解していくために、ドル円が低値をつけるもう少し前の動向を、見ていきましょうか。

下の図において、赤い四角で囲った部分は、どのチャートも同時刻のものです。そして、その時間帯の終了時間をさらに2、3時間ほど引き延ばしたものが、緑色の四角で囲った時間帯です。始まり時間は同じだけれども、終了時間が2、3時間遅いのが緑色の方だと解釈してください。

では、まずドル軸を見てみましょう。

見ての通り、いずれも赤い枠の時間帯では、ドルが売られています。この時間帯の市場の動意は、「ドル売り」だったということが分かります。

では次に、円軸を見て見ます。

緑色の枠の時間帯においては、いずれの通貨ペアも下落傾向にあります。つまり、この時間帯の市場の動意は、「円買い」だったことが分かります。

(正確に言うと、ユーロ/円は下落基調は低くめで、正確に言えば「レンジ」が維持されているんですが、これを解説し出すと複雑になりすぎるので、割愛します)

ということは、赤い枠の時間帯における外為市場の動意というのは、「円買い、ドル売り」だったわけです。

では、その次。赤い枠の時間帯が終わり水色の周期に入るまでの2、3時間の間(緑色の枠の時間帯で言えば、最後の2、3時間の間)では、何が起こっていたのでしょうか?

まず、円軸を見て見ましょう。赤い枠の時間が過ぎても、そのまま下落傾向が続いています。なので、円はそのまま買われ続けていおり、それが市場の動意だということが分かりますね。

しかし、ドル軸はどうでしょうか?

赤い枠の時間の終わりをピークに上昇は止まり、やや下降が始まっています。これは、ドルが買われ出したということですね。

では、「ドル売り」から「ドル買い」に動意が変わったということでしょうか?

それはちょっと早合点です。下落が始まったといっても、その勢いは小さいわけで、積極的にドルが買われていたという印象は小さいです。

であれば、「ドル売り」から「ドル買い」に転じたというよりも、

「市場はそれまでドル売りに動意があったが、ドルはテーマから外れただけ。そのため、それまで売っていたドルの買戻しが消極的に行われていただけ」

と考える方が妥当です。つまり、

  1. 赤い枠の時間帯では「円買い、ドル売り」
  2. 赤い枠の時間が終わると、ドル売りが終了し、「円買い」のみが市場の動意
  3. 市場のテーマから外れたドルは、一時的に買戻し

というのが水色の周期に入るまでの市場のお金の流れ方になります。水色の周期に入る直前の市場の動意は「円買い」のみですからね。

では、水色の周期を改めて見ていきましょうか。

水色の周期に入った途端、円軸ではいきなり強い上昇を見せていますよね。

なので、市場の動意が「円買い」から「円売り」に逆転したことがハッキリと分かります。

しかし、ドル軸はどうでしょう?

水色の周期に入った直後から陽線になったとはいえ、円軸に比べると最初の2時間ほどはややもたついています。

つまり、テーマから外れたドルは水色周期に入る直前に買い戻されましたが、やはり動意がないため、今度は再び消極的に売られる結果からの上昇と判断できます。

で、円軸から遅れて3時間後に、ドル/円を除くドルストレート群は、上昇を強めます。

ただしこれは、先にも話した通り、ドル/円ではドルが買われているため、積極的にドルが売られているわけではありません。ユーロ、ポンド、豪ドルの方に買いの動意があったために上昇をした結果になります。

ここまでは理解できたでしょうか?

では次に、水色周期の後半部分を見ていきましょう。

水色の周期の後半に入ると、価格の上昇は失速します。

つまり、市場では円売りが一段落、ユーロもポンドも豪ドルも買いが一段落したということです。この市場の動意が一時的に収まった現象を、一般的に「調整に入る」と表現するわけですね。

ただ、この調整の入り方が、各通貨でちょっと違っています。

ドル軸では、全ての通貨ペア(もちろん円/ドルは除きますよ)において、上昇力が弱まった後、最終的に価格は下降しています。つまり、「ドルの買戻し」が起きているんですね。

ところが、円軸においては、ドル/円・ユーロ/円・ポンド/円を見ると横ばい(売ったり買われたりの繰り返し)で方向性を失っているわけですから、市場のテーマから「円」が外れたということが分かります。

ただ、ここでややこしいのが豪ドル/円です。円軸においては、豪ドル/円だけがドル・ストレートと同様に下降しています。つまり、「豪ドル売り、円買い」になっているわけです。

これ、どういう判断したら良いでしょうか?

まぁ、特に難しく考える必要はありません。水色周期の前半では、ユーロとポンドよりも、豪ドルの方が買いの動意が強かったわけですから、大きく買われた分、大きめに売り戻されただけです。

なので、この期間が「豪ドル売り」であっても、やはりそれは積極的に豪ドルが売られたというよりも、消極的な意味で豪ドルの売り戻し(円の買戻し)があったという判断でOKです。

以上のことから、水色周期の後半では、どの通貨においても通貨ペアにおいても、市場の動意は乏しくなり、「調整」に入っているということになります。

ということで、水色の周期でのテーマの流れを改めてまとめると、

  1. まずは「円売り」のみが市場の動意
  2. しかしその数時間後になると、ユーロ、ポンド、豪ドルに買いの動意
  3. その後は、市場からは動意が失われたため、各通貨ペアは調整に入る

となるわけです。

理解できましたか?

「ややこしい」と思う人は、知識だけは頭に入っているけど、それが身についていないという証拠です。理解できるまで、何度も何度も脳みそに汗をかいてください。

では次に、黄色の周期を見ていきましょう。

まずはドル軸から見ると、黄色の周期が始まると同時に再び上昇を始めています。「ドル売り」ですね。

ただ、もう少し細かく見ると、少し様子が違っています。確かに各ドル・ストレートは上昇を始めていますが、最初の数時間は緩やかです。積極的にドルが売られている感じはしません。

また、円軸を覗いてみると、黄色の周期始まって数時間は横ばいが続きます。豪ドル/円は、やや上向きかなぁ、という感じですね。

つまり、黄色の周期が始まって直ぐは、水色周期の後半に引き続き、動意が乏しいんですね。全体的に組チャートを見直すと、水色の周期後半から黄色の周期が始まって数時間の間は、要するにレンジになってるのが分かりませんか?

下図は、その期間を赤い四角で囲ってみたものです。

このチャート図を見ると、この赤い四角で囲った期間というのは、市場にテーマがないということが分かりますよね。動意が起こらないので、値動きはレンジになったということになります。

(もちろん、豪ドルだけが横ばいではありませんから「レンジ」という言葉に違和感を持つ人もいるかもしれません。しかし、先の解説からも分かる通り、豪ドルも調整に入っています)

しかし、黄色の周期が始まってから数時間後(赤く囲った時間帯が終わってから)、変化が訪れます。

ドル軸を見ると、一気に上昇を始めてますね。市場の動意が「ドル売り」となったことがわかります。

ただ、円軸を見てみると、ちょっと勝手が違います。

ユーロ/円こそ上昇を始めたものの、ポンドと豪ドルは横ばいのまま。ドル/円は下降しています。足並みがそろってないですよね。

つまり、この時の市場のテーマは「ドル」で、「ドル売り」だけが市場の動意だったわけです。なので、その他の通貨は、それそれの要因でマチマチに動いているわけです。

  • 市場のテーマに「ドル」が浮上し、「ドル売り」だけが市場の動意
  • ユーロ/円では、ユーロ単独に買い要因があったため、その過程で円が売られただけ
  • ポンド/円、豪ドル/円には買い要因も売り要因も乏しいため、横ばい

とまぁ、こんな感じでしょうかね。

しかし、この「ドル売り」も長くは続きません。3時間ほどで直ぐに失速します。

ドル軸を見れば分かる通り、ドル売りの動意はなくなり、ドルは買い戻されて、やや下落します。

で、円軸を見るとやはりユーロも失速をして売り戻され、その他の通貨ペアは横ばいを続けます。

つまり、黄色い周期の後半期には市場のテーマはなく、動意が起こらなかったということです。売るにしろ買うにしろ、そこに積極性はなく消極的な売買姿勢でしかありません。

ということで、数時間の調整期間を経て、次の周期(ピンク色)へと入っていくことになります。

では、次にピンク色の周期の解説に入っていきたいと思います。

・・・と言いたいところなんですが、ここまでの解説でもう疲れてしまいました。長過ぎですね。なので、ピンク色の周期の解説は省略します。

市場のテーマとその動意の把握の仕方、きちんと理解できるようになっていたら、僕の方からこれ以上解説しなくとも、十分把握できると思います。

なので、このピンク色の周期にある市場のテーマと動意の変化に関しては、各自が宿題として自分で自分自身に解説してみてください。

良く分からない、頭がこんがらがってしまうって人は、何度も繰り返しこのシリーズの最初から読み返し、理解していく必要があります。頑張ってください。

さて、チャート解説が長くなってしましましたので、ここでもう一度、多通貨ペア監視の見方をまとめておこうと思います。

これがBOZ流!多通貨ペア監視のまとめ

外為市場の潮流

僕ら個人トレーダーは、トレードをする際に1つの通貨ペアのチャートを見て、「売りなのか?買いなのか?」を個別に判断しがちです。つか、ほとんどの皆はそうやってるだろ。

しかし、現実の外為市場の潮流というのは、そういった各通貨ペア間の事情以前に、市場全体の「テーマ」によって、お金は動いています。

市場には、テーマとなる通貨が、常に存在するわけではありません。

しかし、テーマとなる通貨は、外為市場において度々浮上してきます。

アナタが必死になってテクニカルを駆使し、「ユーロ/ドルでは、ここからがショート(ドル買いユーロ売り)」と判断したところで、「ドル売り」が市場の動意なのであれば、ユーロ/ドルのチャートは上昇をし続けます。そして、その他のドル・ストレートも上昇を続けます。

アナタが必死になってテクニカルを駆使し、「ユーロ/ドルは、ここから爆上げ」と判断したところで、市場のテーマが「円」にしかなければ、ユーロ/ドルのチャートは方向性を欠いたままの状態が続きます。

アナタがどんなに1本の木の枝の隅々までこと細かく観察しようとも、外為市場は森そのものを見ているんですよ。森全体が北風で南方向になびいているのに、アナタが見ている木だけが北に向かって枝葉が傾くなんて、あり得ないんです。

テーマを知り、動意を探る

BOZ流における多通貨ペア監視の組チャートから読み取らなければいけないのは、それぞれのややこしい通貨同士の相関関係ではなく、

  • 今、外為市場においてテーマとなる通貨はあるのか?
  • 今、市場には動意があるのか?

ただその2点を知ることです。

トレードの実践において、知っていれば良いのは、ただそれだけです。

そのため、BOZ流の多通貨ペアの監視用組チャートというのは、市場のテーマと動意を、パッと見で判断できるように配置しているわけです。

まずは横軸だけを見る。そして、

  • 上段のドル軸において、その時、全てのチャートで価格が上昇していれば、「ドル売り」が市場の動意。全てのチャートで価格が下落していれば、「ドル買い」が市場の動意。
  • 下段の円軸において、その時、全てのチャートで価格が上昇していれば、「円売り」が市場の動意。全てのチャートで価格が下落していれば、「円買い」が市場の動意。

となるわけです。

そして、ドルと円のどちらか一方でも市場のテーマになっていないのであれば、次に縦軸に注目します。

横軸のドルも円、両方もしくは1つだけでも市場のテーマにない場合、

  • ユーロの縦軸チャートにおいて、2つとも価格が上昇していれば、「ユーロ買い」が市場の動意。2つも価格が下落していれば、「ユーロ売り」が市場の動意
  • ポンドの縦軸チャートにおいて、2つとも価格が上昇していれば、「ポンド買い」が市場の動意。2つも価格が下落していれば、「ポンド売り」が市場の動意
  • ユーロとポンドのチャートにおいて、4つとも価格が上昇していれば、「欧州勢通貨買い」が市場の動意。4つとも価格が下落していれば、「欧州勢通貨売り」が市場の動意
  • 豪ドルの縦軸チャートにおいて、2つとも価格が上昇していれば、「豪ドル(資源国通貨)買い」が市場の動意。2つとも価格が下落していれば、「豪ドル(資源国通貨)売り」が市場の動意

これだけを見れば良いんです。

言葉にして羅列すると長くなりますが、上述の作業は実際やってみると、とっても簡素です。

だって、同じ通貨が揃って同じ方向に動いているものを見つければ良いだけですから。それが、その時の市場の動意なんです。

通貨強弱の順位に意味はない

このシリーズの最初の回で、「通貨強弱チャート」のお話をしました。

で、ここまで読めば何となく分かってきたとは思いますが、通貨強弱のランキングには、実践レベルで言えば、まるっきり意味はありません。

理屈で言えばね、通貨強弱でランキングをつけ、最も強い通貨と最も弱い通貨のペアを選択し、最も通貨を買って最も弱い通貨を売れば良いだけです。間違っちゃいない。

でも、最強と最弱の通貨ペアを選択できたら、それだけでトレードで勝てるんでしょうか?

そんなことは、ない。

最強と最弱の組み合わせであっても、結局はアナタがトレードできると判断する局面が来なければ、意味はありません。

例えば、通貨強弱ランキングを見て、最強と最弱を選んでトレードをしても、アナタがトレードした瞬間、その強弱関係がピークを迎えたとしたら?

最強はどんどんと力を弱め、最弱は逆にどんどんと力を強めていくわけですから・・・

そう、アナタはエントリー直後に、アナタのポジションとは反対方向に価格は動き出します。

典型的な、負けパターンじゃん!

だから、ランキングによってトレードする組み合わせを選ぶなんて、実践的じゃないんですよ。

ひょっとしたら、最強通貨と2番目に強い通貨が今、アナタが最も得意とする局面にあって勝ちやすい通貨ペアなのかもしれません。

強弱のランキングは、実践レベルから言えば大した意味はありません。

テーマと動意を知ったら、どの様に通貨ペアを選択するか?

しかし、BOZ流の通貨ペア選択基準は、以下の通りです。

  1. まず、その時の市場のテーマとなっている通貨とその動意(方向性)を見つける
  2. テーマとなっている通貨があるのであれば、その通貨を含む通貨ペアをトレードの候補とする
  3. テーマがあるか微妙な場合でも、動意のある通貨であれば、その通貨ペアをトレードの候補とする
  4. それら候補の中から、市場の動意に沿ってトレードするならば、自分にとってどれが一番トレードしやすいかを見比べる
  5. 最もトレードしやすいと判断した通貨ペアを分析(環境認識から現状認識)し、トレードする

この手順になります。

例えば、多通貨ペア監視の組チャートから、市場のテーマが「ドル」であり、その動意が「売り」だと分かったのであれば、ドル・ストレートの通貨ペアを取引候補に挙げます。

そして、その候補の中から、自分が最もトレードしやすい、仕掛けやすいと思われるチャートを選び、選んだチャートを個別に分析(環境認識から現状認識)すれば良いんです。

で、その選んだ通貨ペアがトレード可能と判断したら、その通貨ペアだけを監視し、トリガーを引くタイミングを待ちます。

第一候補を個別分析したけど、トレードが難しそうと判断したら、2番目に仕掛けやすそうな候補を次に個別分析していき、トレードが可能か判断します。

第二候補のトレードがダメなら、次は3番目に仕掛けやすそうな候補を・・・を繰り返します。

この作業によって、実際にトレードする通貨ペアを決めていくんですね。

もちろん、この作業でトレード可能な通貨ペアがないと分かれば、トレードすること自体を諦めます。チャンスは次回に繰り越しです。

とまぁ以上が、BOZ流!多通貨ペア監視の作業手順となります。

この一連の流れ、頭に叩き込んで、自分で自在に判断できるまで知識を技術にまで落とし込んでくださいね。

さて、今回のお話はここまでにしておきます。

次回は、ここまでお話したことを、実例を用いて解説していこうと思います。どの様に多通貨ペアを監視して、どの様な手順を経て、取引する通貨ペアを選択していくか、そしてそれを実際のトレードにまでどう落とし込んでいくのかを、理解してもらえたらなと思います。お楽しみに。

それじゃあ、また。

多通貨ペア監視のノウハウ(3)ドルと円の動向を把握する

さて、「多通貨ペア監視のノウハウ」シリーズの第3話目です。

前回、前々回は基礎的な知識のお話をしてました。まぁ教科書的なお話ばかりで退屈だった人もいるのかもしれません。

が、基礎固めは実践を始める上で非常に大切です。1話目、2話目を読んでないという方は、必ず目を通してからこの記事をご覧くださいね。

さて、ここからは一気に実践編に入っていきます。教科書的な内容から離れ、実践に結び付きやすい話に進んでいきますよ。

それじゃあ、始まり始まり~!

多通貨ペア監視チャートの表示方法

ここで解説するのは、実際の僕がやっているものそのままというよりも、初心者でも把握しやすいようにちょっとアレンジして、お話していこうと思います。

8通貨ペアまで絞り込む

前回のお話では、監視する通貨ペアは

  • メジャー7通貨のみで構成する
  • ドルス・トレートとクロス円のみで構成する

というものでした。全部で11通貨ペアです。

で、ここからさらに通貨ペアを絞り込むわけですが・・・

結論から言うと、「加ドル」と「スイス・フラン」の2通貨を外しました。そうなると以下の様な7つの通貨ペアになります。

  • ドル/円
  • ユーロ/ドル
  • ユーロ/円
  • ポンド/ドル
  • ポンド/円
  • ドル/豪ドル
  • 豪ドル/円

で、実際にこれらを組みチャートにして表示すると、以下の様になります。

見ての通り1つ空きスペースがあります。通貨ペアが7つだと奇数なので収まりが悪いですよね。

で、この空きスペースの部分に、実際の僕は「XAU/USD」(ゴールド/ドル)のチャートを貼ってあります。

しかし、ゴールドは通貨ではありませんし、他の通貨ペアとの相関性はちょっと勝手が違うので、これから多通貨ペア監視の方法を学ぼうとする人からすると、ゴールドのチャートを張っておく意味はありません。

なので、敢えて空きスペースにしておいたわけです。

この空きスペース、このブログで学習中する場合は、後ほど説明する別のチャートを表示してください。

で、学習を終え他通貨ペア監視に慣れてきたら、この空きスペースには各自で有効活用できそうなチャートを用意してください。先ほど省いた加ドルかスイス・フランを表示するのも良いですね。その場合は、通貨ペアは取引量の観点から、「ドル/加ドル」「ドル/スイス・フラン」のどちらかを表示することをお勧めします。

また、更に慣れてきたら、この空きスペースに株価指数(日経平均やS&P500)などを表示して、外為市場以外の金融市場との相関性を見ていくのも得策ですよ。

これがBOZ流!4つのジャンルの通貨の動きを見よう

外為市場では、主に4つのジャンルに分かれて通貨が動く傾向にあります。その4種類とは何かというと、

  • 基軸通貨(ドル)
  • 欧州通貨(ユーロとポンド)
  • 安全通貨(円とスイス・フラン)
  • 資源国通貨(豪ドルと加ドル)

になります。この4つのジャンルの通貨は、国際政治経済、そして国際金融の影響を受けて、ジャンルごとにまとまった動きをする傾向があるんですよ。

で、多通貨ペアを監視するというのは、大雑把に言えば、この4種類の通貨の流れを見るために行う様なものです。

前回、これらについては触れていますが、教科書的な説明ではなく、もう少し現実味のある説明を加えて、具体的に見ていきましょう。

基軸通貨である米ドルの動きを見る

米ドルは外為市場における基軸通貨であると同時に、国際政治経済における最重要国であるアメリカの通貨です。

そのため、市場のテーマは「ドル」となることが圧倒的に多いです。そしてこの「ドル」が「売りなのか?」「買いなのか?」を基にして他の通貨が動くことが、やっぱり多いんですよ。

なので、ドル単体の動きを見ることは必須です。

欧州勢の通貨を見る

ユーロは世界第2位の取引量を誇る通貨ですし、ポンドは世界第4位です。また、ポンドを自国通貨とする英国は、押しも押されぬ金融大国なのはご存じでしょう。為替に英国勢が及ぼす影響力は非常に大きいわけです。

で、EUと英国は地政学上繋がりが大きいため、同じヨーロッパ勢の通貨として同じ様に動くことが非常に多いです。ユーロが買われるならポンドも買われ、ポンドが売られるならユーロも売られる、といった具合ですね。

ユーロとポンドが合わさった取引量は相当なものになるわけですから、この動きも把握しておくことは、非常に大切です。

ただし、ユーロとポンドは別々の通貨ですから、全く同じに動くわけではありませんからね。個別の材料によっては、相反する動きになることだってあるわけです。その辺りのことは、勘違いしないようにしてください。

安全通貨を見る

市場がリスク・オフに傾くと、投資先・登記先は安全通貨へと流れます。そのため、安全通貨が市場におけるテーマになることは、非常に多いです。ドルやユーロを売って円を買うというお金の流れを、皆さんもニュースで聞いたことがあると思います。

円もスイス・フランも安全通貨であるため、そういった動意で動く場合は、似た様な動きをすることが多くなります。なので、「今は市場がリスク・オフだ」と流れを判断するには、この2通貨を監視しておくことが有効な手段になります。

とまぁ、以上は割とありきたりな解説です。

しかし、現実の外為事情は、ちょっと違います。実際の円とスイス・フランはというと、言われているほど同一性のある動きをすることは、多くありません。

日本とスイスでは地政学的にも離れていますし、国際社会において取り巻く環境は、日本とスイスではかなり違っています。

さらに両国の通貨は、安全通貨としての位置づけにおいて、近年では薄らいでいる様に感じます。

日本は依然と比べ、世界政治経済における立ち位置は相対的に低くなっており、またフランスもフランス・ショックの経験もあってか、「安全通貨」としての認識は薄らいでいるのではないでしょうか?

もちろん、リスク・オフとして円とスイス・フランが同時に買われたりすることは、確かにありますが、その機会はそんなに多くない、というのが僕の印象です。

実際のスイス・フランの値動きはというと、地政学上ヨーロッパに位置しているため、全体的にはむしろ欧州勢通貨に近い動きをすることの方が多いです。

なので、ここでは一応「安全通貨」というジャンル分けしましたが、「実質的にその相関性の高い場面は低い」と認識しておいてください。

では、外為市場ではどちらの国の通貨がテーマになって動きやすいのでしょうか?

それはご想像の通り、円になります。

円は、世界三大通貨という主要通貨の1つであると同時に、相対的地位は落ちたとはいえ、やはり未だに世界経済にも影響を及ぼす経済規模の国の通貨になるわけだからです。

なので、実際の為替相場は「ドル」「欧州通貨」「円」という3つの通貨がテーマとなって動くことが、大半です。

このシリーズの最初の方で、「世界三大通貨の相関性を見るのが基本」と言った通り、ドルとユーロと円の3つの流れを把握することは、外為市場の動向を把握するうえで非常に大切なんですね。

便宜上「安全通貨」としてジャンル分けしましたが、実質的に外為市場の流れを見るには、

  • ドル
  • 欧州勢通貨
  • 資源国通貨

として見ることの方が、実践的です。

以上のことを踏まえると、通貨ペアを絞り込む際に、スイス・フランを外すという選択になったのは、頷けると思います。

ただ、多通貨ペア監視の意味や考え方、そして扱い方をものにしてきたら、この組チャートの1つの空きスペースに「米ドル/スイス・フラン」のチャートを貼っておくことは、一考に値します。

値動きは、比較的ユーロやポンドに似ているとはいえ、はやり永世中立国であるが故の独自な値動きはありますからね。他の通貨ペアとは違うタイミングでトレードチャンスが訪れることも少なくありません。

資源国通貨を見る

金融市場における資源国の代表と言えば、オーストラリアとカナダ、それに次いでニュージーランドでしたね。

で、これら資源国の通貨は、「資源」を材料としたニュースや状況によって、同様に動くことが多々あります。

そのため、「資源国通貨」を1つのジャンルの流れとして見ておく視点は必要です。

ただし、地政学上の理由から、オーストラリアは中国の影響を受けやすく、カナダはアメリカの影響を受けやい環境にあるということは、覚えておきましょう。

とはいえ、円とスイス・フランほど相関性は弱くありません。「資源国通貨」というジャンルで捉えらるレベルでの相関性は、強く確保されています。

では、なぜ資源国通貨として豪ドルを残し、加ドルを外したのか?

理由は、単純です。

  • スプレッドが、国内FX業者において加ドルよりも豪ドルの方がかなり小さい(海外業者ではあまり差がないことが多い)
  • オーストラリアの方が地理的に馴染みが深く、必然的にトレード回数も豪ドルの方が多くなりがち(個人差あるかな?)

ということです。

なお、先ほどの空きスペースに加ドルを加えることも一考に値します。スイス・フランにするか加ドルにするか、各自頭を悩ませながら採用してください。

通貨ペアの並べ方

では、実際にこれらの通貨を用いて、4つのジャンルを見る効率的な表示の仕方のお話に入っていくわけですが・・・

まずはもう1度、選択した通貨ペアの組チャートを確認しておきましょう。先ほどの空きスペースには、ドル/スイス・フランのチャートを貼ってみました。

で、通貨ペアの並ぶ順番は、必ずこの通りにしてください。並び方を変えると、後ほど解説する組チャートの見方が複雑になってしまいますので。

チャートの設定について

では、チャートの見方を解説する前に、まずはチャートの設定を軽くお話します。

ここで用いるテクニカルは、以下の3つだけです。

  • ロウソク足
  • ライン
  • 移動平均線

ただ、ラインに関してですが、実際にラインを引くことはほぼありません。水平線を引けるポイントが分かり、またチャート・パターンを見つけることができればOKです。

また、僕が挙げているチャート画像には、RSIが表示されていますが、実際に使うことはないので、これから始める人は表示する必要もありません。

なので、多通貨ペア監視用のチャートで表示するのは、実質的にはロウソク足と移動平均線1本だけです。

移動平均線に関しては、「日足5SMA分析」を用います。(知らない人は、このブログの解説記事を読んでおいてください)

ということで、チャートにおけるテクニカルの設定は、

  • 日足に5SMAを表示
  • 4時間足に20SMAを表示
  • 1時間足に75SMAを表示

ということになります。至ってシンプルですね。

ただし、チャートの操作や視認性を向上させるインジケーターは、あった方が便利です。なので、多通貨監視チャートにおいては、MT4を使用することをお勧めします。

で、僕がここで使用している利便性向上用のインジを、3つ紹介しますね。

1つ目は、チャート全ての時間軸を1発で同時に変更できるインジです。僕は「all_charts_change」というものを利用させてもらってます。

このインジは、表示されている全てのチャートの「時間足」「通貨ペア」「ロウソク足の大きさ」を一発で同時に変更できるものです。

僕はこのインジを一番左上のチャートだけに入れておき、そのチャートの時間足を変更するだけで、他の通貨ペアのチャートも同時に同じ時間足に変更できるようにしています。(ロウソク足の大きさも同様に設定しています)

多通貨ペアを監視する際には、各通貨ペア個別に時間軸を切り替えることはありません。同じ時間軸の通貨ペアを同時に比較することが、監視の際の基本になりますから、一発で複数のチャートの時間軸を切り替えられるインジは、必須です。

2つ目のインジは、3大市場(東京・ロンドン・ニューヨーク)の時間帯や1日ごとの時間帯を色分けや四角で囲むなどで可視化してくれるインジです。僕は、これまでも何度か紹介している「SessionsEX」というインジを利用させてもらっています。

この「SessionsEX」は、ボタン1つでマーケットプロファイルや3大市場の時間帯を色分けしてくれるインジケータです。

マーケットプロファイルを表示させると、こんな感じになります。

マーケットプロファイル自体はここで使わないんですが、これを表示する際に1日分だったり1週間分だったりの期間を四角で囲ってくれるので、僕は重宝しています。

また、ボタン1つで3大市場の時間帯を色分けしてくれるのも、嬉しい機能です。

市場のテーマ、そして大きな価格動向は、一定期間で切り替わります。「ここ1週間」って時もありますし、「1日」だったり「各市場」で切り替わったりします。短ければ各市場で2回方向性が変わります。

そういった意味で、

「この動きは、ロンドン時間から続いてる?それとも東京時間から?」
「この横ばいの動きはどのくらいの期間続いてる?」

などと思った時に、このインジは非常に便利です。

で、3つ目のインジなんですが・・・

一番左上にある「ドル/スイス・フラン」のチャートが、ちょっと他とは違ってることに気が付きましたか?

これは、「ドル/スイス・フラン」のチャートを上下反転表示して「スイス・フラン/ドル」にして表示してくれるインジです。上図では、黒白のロウソク足が元の「ドル/スイス・フラン」で、赤と青のロウソク足のものが上下反転表示させた「スイス・フラン/ドル」です。

ここで使っているインジは国内FX業者のFXTFさんが独自で提供している「FXTF Overlay Chart」というものです。

このインジを使うことで、相関関係を学ぶ初学者の人は理解の手助けになります。やってみると分かりますが、最初のうちは相関関係を見比べると頭がこんがらがります。なので、今回の解説のために導入してみました。

慣れたら必要のないインジでもありますから、相関性の見方に自信がついたら、外してもらって構いません。僕自身も実際の監視には使用していませんしね。

ということで、チャートのセッティングは以上です。今回僕が紹介したインジではなくとも、同じような機能を持つインジは探せば沢山出てきます。お好みのものを使用してください。

相関性の見方、再確認

次に進む前に、ちょっとここで復習しましょう。相関性の見方の再確認です。

というのも、前々回での相関性の見方の解説は、ちょっとザックリ過ぎたかもしれないと思ったので。

同じドル・ストレートのチャートを見るにしても、

  • ドル/円の様に「ドル/〇〇」として頭にドルがついているのか
  • ユーロ/ドルやポンド/ドルの様に「〇〇/ドル」として後ろにドルが付いているのか

によって、チャートの上がり下がりの見方が全く逆になります。

  • 「ドル/〇〇」と頭にドルがついている通貨ペアでは、ドルが買われるとチャートでは価格が上昇し、ドルが売られるとチャートでは価格が下降する
  • 「〇〇/ドル」と後ろにドルがついている通貨ペアでは、ドルが買われるとチャートでは価格が下降し、ドルが売られるとチャートでは価格が上昇する

このこと、頭では分かっている人の方が多いとは思いますが、実際に相関を把握しようとチャート同士を見比べていると、頭がゴチャゴチャになりがちです。なので、再確認しておこうかと。

ではちょっと、2023年夏ごろのチャートを複数使って、相関性を見てみましょうか。別に分析するわけじゃなく、見方や傾向を知ってもらうためなので、ザックリでOKです。

まずは、ユーロ/ドルの4時間足から。

7月半ば辺りから、下降トレンドが続いています。これは、ドルに対してユーロが売られていることを表しています。逆の言い方をすれば、ユーロに対してドルが買われていることになります。

じゃあ、次はポンド/ドルの4時間足です。

同様に7月半ば辺りから、下降トレンドが続いています。これは、ドルに対してポンドが売られていることを表しています。先ほどと同様に逆の言い方をすれば、ポンドに対してドルが買われていることを表しています。

次は豪ドル/ドルの4時間足です。

やっぱり7月半ば辺りから、下降トレンドが続いています。これは、ドルに対して豪ドルが売られていることであり、つまり豪ドルに対してドルが買われていることを表しています。

じゃあ、次にドル/円の4時間足。

先の3つの通貨ペアは、「〇〇/USD」ですが、こちらドル/円の通貨ペアは「USD/〇〇」となっていて、見方が逆となります。

7月半ば辺りから、上昇トレンドが続いているということは、円に対してドルが買われていることであり、逆に言えばドルに対して円が売られているということを表しています。

次にドル/スイスフランの4時間足。こちらも「USD/〇〇」なので先のドル円と見方は一緒で・・・

7月半ば辺りから、上昇賞トレンドが続いており、スイス・フランに対してドルが買われていることを表しており、逆に言えばドルに対してスイス・フランが売られているということを表しています。

さて、米ドルとメジャー通貨とのペア5種類を見てみました。

いずれのケースも7月半ば辺りからドルが買われ続けているのが分かると思います。

要するにこれは、「世界金融の流れとして、外為市場では7月半ば辺りから米ドルが買われ続けている傾向にある」ということなんですね。

このことを別の言い方で言うと、「7月半ば辺りからずっと外為市場のテーマはドルであり、ドル買いが市場全体の動意である」ということになります。

であれば、中期的というかここ数か月のスパンで見ると、ドル買い方針を基調とした取引の方が、やりやすいということになるわけです。(もちろん、トレードする時間軸によって判断は変わりますよ。くれぐれも文脈を捉え間違わないように)

とまぁ、こんな風に、複数の通貨ペアを観察することで、今の外為市場の傾向が分かるわけです。

上記では4時間足を見比べてみましたが、もっと時間軸を下げることで、ここ数週間の傾向や、ここ数日の傾向、またここ数時間の傾向なんかが分かるわけです。

もっと言ってしまえば、「今この瞬間、市場ではドルが一斉に買われている」ということ自体も分かるんですよ。

この様に、複数の通貨ペアを観察することで、今現在の外為市場の流れを把握することが可能になっていきます。

ドルと円を軸にして、その動向を把握しよう

さて、ここからは実際にセッティングしたチャートを使って、どの様に多通貨ペアを監視していくのか、その見方を解説していくことにします。

チャートの配列を確認する

で、ここでふと思ったんですが、先ほどは空きスーペースを「ドル/スイス・フラン」のチャートにしていましたが、ちょっと変更します。

初心者向けに分かりやすいように、この空きスペースには、「ドル/円」のチャートを上下反転表示させた「円/ドル」のチャートを表示しておくことにしますね。すると、以下の図の様になります。

※ FXTFの「FXTF Overlay Chart」を用いて反転表示させる場合、反転表示させる前と後のロウソク足が同時に表示されます。見づらくなるので、元のロウソク足は「ライン表示」に変更し、チャートの「プロパティ」にて「ラインチャート」の色を「None」(非表示)にすることで、元のロウソク足は表示されなくなります。

で、気付いている方は多いと思いますが、実はこの組チャート、上の段の横一列は全てドル・ストレート」で構成されています。ドルを軸にしてみるチャート群なんですね。

それに対して下の段は横一列全てクロス円です。正確に言えばドル円はドル・ストレートですが、要するにこの下段横一列は、円を軸にしてみるチャート群になります。

つまり、上段横一列で、およそのドルの流れを把握し、下段横一列で円の流れを把握しようというのが、この配列の狙いです。

では、今度は縦の列ごとに注目して、チャートの配列を確認してみましょう。

左から順に追っていくと、

  • 左から1番目の縦列は、円
  • 左から2番目の列は、ユーロ
  • 左から3番目の列は、ポンド
  • 一番右側の列は、豪ドル

ということになります。

つまり、横軸でドルと円の動向を観察し、縦軸でそれぞれユーロ、ポンド、豪ドルの動向を見るわけなんですね。

それでは次に、横軸を用いてドルや円の動向を探る解説していきましょう。

ドルの動向を見よう

ではまず、上の段のドル・ストレートから見ていきましょう。上の段ではドルの動向を見るんでしたね。混乱しない様に下の段は隠しました。左から、円・ユーロ・ポンド・オージーの順に並んでいます。

何となくというか、大まかな感じでは、どの通貨ペアも似た様な動きをしている様に見えませんかね?もちろん、大まかで言うとですが。

なんで似た感じになるかというと、ドルの動向の影響を同時に受けているからです。

で、チャートを見るとどの通貨ペアも、最初のうちは下降していますが、ある地点に来ると下落を止め、方向性に変化が訪れているのが分かりますか?

ちょっと、チャートにその様子を書き込んでみました。それが下の図です。

緑色の丸で囲った点が、そのターニングポイントですが、これは全て同じ日に起こっています(正確に言うと円/ドルだけが1営業日だけ早く安値を付けてます)が、それまでの間は、どの通貨ペアも下げ基調(青色の線)ですよね。

しかもこの下げ基調の期間の長さは、やはりどの通貨ペアも同じです。下落基調が始まった日から下落が終わる日まで同じなんです。

つまり、この下げ基調の期間は、どの通貨ペアに対しても、「ドル買い」が一斉に行われていたことを意味します。この期間の市場のテーマは「ドル」しかもその動意は「ドル買い」だったわけです。

同様に、緑丸のターニングポイントを迎えると次は、どの通貨ペアも同じ期間だけ上げ基調に変わっている(最初の赤い直線)のが分かると思います。

つまり、ターニングポイントを同じくして、今度の市場の動向は「ドル買い」から一気に「ドル売り」に変化し、市場では一斉に同じ期間だけドル売りが続いていたということが分かるわけです。

ただ、この期間を過ぎると、各通貨ペアは違った動きを始めます。

これは、市場のテーマが「ドル」から、「別の何か」に変化したということです。

この「別の何か」は、下の段を見なければ実際のところは分かりません。

(通貨の相関関係の基本を思い出してください。相関関係を把握するためには、3種類の通貨を対比する必要がありました。対ドルのチャートだけでは相関関係は完全には分かりません。)

で、その後はしばらく、ドルストレート群の通貨ペアは個別の動きをしていますが・・・

再度、一斉に上昇を始めます(右側の赤色の直線)。ここでまた市場のテーマが「ドル売り」になっているのが分かると思います。

この様に、市場のテーマが「ドル売り」となっている期間は、どの通貨ペアであろうが「ドル売り」で攻めた方が勝ちやすいのは自明の理です。だって、市場の流れそのものに付いていくわけですからね。

円の動向を見よう

とまぁ、そんな感じで上段のドルの流れをざっと見たら、次に下段において円の流れを見ていくことにしましょう。すると、こんな感じになります。

ドル・ストレートが最安値を付けてターニングポイントとなった時と同じ日に、クロス円の方でも同じ緑色の丸を付けてみました。

すると面白いことに、先ほどのドル・ストレート群とは様子が違うのが分かると思います。

ドル/円は、ドル・ストレート群がターニング・ポイントとなった地点が最高値となって(同じくターニング・ポイントとなって)それ以降下落を始めています。

しかし、他のクロス円の通貨ペア4つは、その緑色の丸が付いた地点では、まるでターニングポイントにはなっていないんですよ。高値をつけるどころか、むしろ直近低値をつけていたりします。

ここまでの過程、もう少し細かく見ていきましょうか。

クロス円軸における緑色の丸の地点に至るまでの過程(ドル円チャートで赤い直線を記した期間)において、

  • ドル/円は、ほぼ一方的に円が売られ(上昇)続けている
  • ユーロ/円は、最初の頃は円を売り(上昇)続けていたが、途中からは円を買ったり売ったりが交錯しつつも、やや下げ基調(円買い傾向)
  • ポンド/円は、最初の頃は円を売り(上昇)続けていたが、途中からは激しく円を買ったり売ったりが交錯し、結果的には大きく下げる(強い円買い傾向)
  • 豪ドル/円は、最初の頃は円を売り(上昇)で始まったが長くは続かず、円を買ったり売ったりが交錯しつつも、やや上げ基調(円売り傾向)

つまり、この時期の相場は、「ドル買い」に関しては市場全体の一致した動向でしたが、

  • 「円売りドル買い」一択という市場全体の流れ(つまり、全てのクロス円において円を売り、そのお金でドルを買う)は、前半のみ
  • 後半は「円売りドル買い」の動意は薄くなり、円は対する各通貨との個別の関係性で売買される様になる

ということになります。このことを各通貨ペア別で改めて説明すると、この期間は

  • ドル/円においては、一貫して円売りドル買いが続いている
  • ユーロ/円においては、前半は円を売ってユーロを買い(買い戻したユーロでドルを買う)が、後半に入るとユーロと円を売ったり買ったりが交互になり、最終的にはやや円買いが優勢
  • ポンド/円においては、前半は円を売ってポンドを買い(買い戻したポンドでドルを買う)が、後半に入るとポンドと円を売ったり買ったりが交互になり、最終的には大きく円買いを続ける
  • 豪ドル/円においては、前半は円を売って豪ドルを買い(買い戻した豪ドルでドルを買う)が、後半に入ると豪ドルと円の売り買いが細かく交差し出すが、最終的にはやや円売りが優勢

ということになります。

理解できましたか?それとも、頭がゴチャゴチャして訳分からなくなってしまいましたか?

こういったことは、やっぱり慣れが必要です。慣れれば慣れるほど、詳細を判断していくことが可能になるんですが・・・

やっぱ、難しいですかね?

まぁ、人には得手不得手ってものがありますから、こういった感じの判断には混乱してしまう人も多いと思います。

でも、安心してください。もっとシンプルに考えれば良いんです。

ドルと円だけを軸に把握するだけでも武器になる

細かく相関関係を見ることが難しい・・・

まぁ、最初の頃は誰でもそうです。

ただ、何度も言ってますが、複雑なことを複雑に考えたところで息苦しいだけです。複雑なモノゴトは、シンプルに考えシンプルに行動することが大切です。

そう、それがBOZ流!

まず大切なのは、ドルの動向と円の動向だけを把握することなんですよ。他の通貨の動向は把握できなくてもOKです。

だってね、通貨ペアを選択する際に基準にしたのは、「ドル・ストレート」と「クロス円」のみなんですよ。ドルか円が絡んだ通貨ペアしか取引しないわけで。

だから、まず最初の段階として、ドルと円の動向さえわかれば、他の通貨との相関性が分からなくたって、それは僕らにとって大きな武器になるんです。

もう1度、先ほどのチャートを見ておきましょうか。

横の列だけ見れば、4つの通貨ペアが一斉に同じ方向に動いている時期で、その時の市場のテーマを知ることは、簡単に出来るわけです。

上段の横一列は、ドルを軸として見る。そして、一斉に上に動いていればその時期は「ドル売り」がテーマ。一斉に下落しているならばその時期は「ドル買い」がテーマ。

見てすぐにわかりますよね。

だったら、横軸の一列が一斉に上を向いているのであれば、迷わずドル・ストレートの通貨ペアのどれかを「ドル売り」すれば良いだけじゃないですか。一斉に下を向いているのであれば、迷わずドル・ストレートの通貨ペアのどれかを「ドル買い」すれば良いだけじゃないですか。

それが市場の摂理です。簡単ですよね。

そして、下段の横一列は、円を軸に見るんでしたね。

下段横一列にある4つの通貨ペアが一斉に上昇している時期は「円売り」がテーマ、一斉に下降している時期は「円買い」がテーマということです。

これも、見ればすぐに分かる代物です。

だったら、クロス円の横軸が一斉に上を向いているのであれば、クロス円の通貨ペアのどれかを迷わず「円売り」すれば良いだけじゃないですか。一斉に下を向いているのであれば、クロス円の通貨ペアのどれかを迷わず「円買い」すれば良いだけじゃないですか。

それが市場の摂理ですよね。簡単ですよね。

これ、大切なポイントなんで、繰り返し言いますね。

「ドル」がテーマの時に、市場の動意が「売り」であるのであれば、トレードの方針は「ドル売り」です。

「円」がテーマの時に、市場の動意が「買い」であるならば、トレードの方針は「円買い」です。

この様に、難しく考えなくとも、横軸をシンプルに見ていけば、少なくともドルと円がテーマとなっている時期は把握できますよね。

そして僕らは、ドルか円が絡んだ通貨ペアしか取引はしない。

だったら、極端な話、ドルと円の動向さえ掴めれば良いわけです。これだけで、僕らにとっては大きな武器になるんです。

単純に「ドル」がテーマで動意が「売り」の時は、ドル・ストレートの通貨ペアの中から、自分が最もドル売りを仕掛けやすい通貨ペアを選んで、トレードすれば良いだけです。

同様に「円」がテーマで動意が「売り」の時は、クロス円の通貨ペアの中から、自分が最も円売りを仕掛けやすい通貨ペアを選んで、トレードすれば良いだけです。

もう、当たり前すぎて当たり前だの前田敦子です。

では、ついでにもう1つ。

ドル軸が一斉に下を向いて(市場はドル買い)いて、円軸が一斉に上を向いて(市場は円売り)いるのが、同時に起こっている時期なら、どの通貨ペアを取引すれば良いですか?

簡単ですね。

市場は、ドル買い円売り一色なので、トレードする通貨ペアは「ドル/円」で、ポジションはロングです。

全ての通貨ペアが円を売られ(例えばユーロ/円なら円を売ってユーロを買い)、買い戻したそのお金(ユーロ)でドルを買うという行為が、全ての通貨ペアで行われるわけです。

最も取引に信ぴょう性があるのは、「ドル買い円売り」がそのまま直で行われる「ドル/円」です。それ以外他にありますか?取引量も集まりやすく、ボラティリティだって上がるわけですから、ドル円のロングが最もやりやすい。

簡単ですよね。

難しい相場を、難しく考える必要はありません。シンプルに捉えてシンプルに考え行動することが大切です。

で、そのために、多通貨ペア監視の組チャートを、この選択でこの配列でしておくわけです。横一列の目線だけで、今のテーマがドルにあるのか円にあるのかを、熟達せずとも直ぐに分かるようにしたのが、この組チャートです。

そう、これがBOZ流!

( ̄∇+ ̄)vキラーン

だたし、ここから先に進もうとする人にとっては、やっぱりドルと円だけじゃなく、その他の通貨との相関性も把握したいところですよね。細かい相関関係を把握できるようになったら、もっと緻密な戦略等を立てられますからね。

ということで、次に縦軸を見るお話に入っていきましょう。

と思ったら、やっぱり長くなり過ぎましたね。

この記事書き出した時は、この回で完結するかなと思ってたんですが、予定の半分も進みませんでした。

ということで、次回は組チャートの縦軸を交えて見る解説に入っていきます。

それじゃあ、また。

多通貨ペア監視のノウハウ(2)通貨の基礎知識編

さて、今回は「多通貨ペア監視のノウハウ(1)」の続編です。

前回は、多通貨ペアを監視するメリットと通貨の相関性の基本的な見方を説明しました。

ただ、相関性の把握やトレード・チャンスを求めだしたところで、キリがないということもお話しました。

なので、自分にとって適切な情報量、つまり適切な通貨ペアの数に絞っていくところから始める必要がるんでしたね。

ということで今回は、適切な通貨ペアの数に取捨選択できるようになるために、通貨に対する基礎知識のお話に入っていきます。

それじゃあ、始まり始まり~!

通貨ペア選択以前の基礎知識

では、通貨に関する基礎知識をお話をしていこうかと思います。

まぁ、FXの入門書なんかに書いてあるレベルの基礎知識ですから、知ってる人も多いと思いますが、

「そんなの知ってる~」

とか言って通り過ぎようとするのは、勝てない人あるあるです。

そんな状況から抜け出す意味でも、知っていようがいまいが、基礎固めのつもりで読んでいきましょう。

主要通貨を知ろう

世界各国、多種多様な通貨が存在していますが、FXで実際にトレードできる通貨はある程度限られています。

その中でも、実際に外為市場で取引が活発に行われている、つまり取引量の多い通貨というのは、それほど多くはありません。

BIS(国際決済銀行)による外為市場における2022年度の取引量ランキングは、

  1. 米ドル(6,641)
  2. ユーロ(2,293)
  3. 円(1,253)
  4. ポンド(969)
  5. オンショア人民元(526)
  6. 豪ドル(479)
  7. 加ドル(466)
  8. スイス・フラン(390)

(括弧内は取引量で単位は10億ドル)

となっています。

この中で特に取引の多い米ドル・ユーロ・円の3つを、「三大通貨」と呼びます。市場においてこの三大通貨が絡む取引は、全体の6割とも7割とも言われています(データの扱いによって違う)。つまり、そのほとんどが三大通貨で占められてるわけですね。

ただし、市場における取引高の割合は、

  • ドルが44.2%
  • ユーロが15.3%
  • 円が8.3%

です。ドルが市場全体の半分近くを占めて圧倒的であるのに対し、世界3位の円は10%にも満たないわけです。4位がポンドで6.4%で、それ以下は4%にも届かないのが現実です。

三大通貨とは言え、その格差は大きいことを覚えておいてください。

で、上記8通貨のうちオンショア人民元を除いた7通貨を「メジャー通貨」と呼ぶのが一般的です。オンショア人民元は現在取引量が多いですが、2019年度の調べではスイス・フランよりも少なく、また中国人民元が自由市場での取引という観点からは特殊なため、除外されています。

また、外為市場で取引可能であっても、このメジャー通貨以外の通貨(例えば香港ドル・シンガポールドル・トルコリラなど)は、マイナー通貨と呼ばれます。メジャー通貨ですら取引量5位以下は4%に満たないわけですから、マイナー通貨は外為市場の大海原の中では、ほんのわずかな流通量であることを、頭の中に入れておいてください。

主要通貨ペアを知ろう

では、主要となる取引量の多い通貨ペアはどれなのでしょう?

2022年度の取引量のランキングはBIS(国際決済銀行)によると、

  1. EUR/USD(ユーロ・米ドル)
  2. USD/JPY(ドル・円)
  3. GBP/USD(ポンド・米ドル)
  4. USD/CNY(米ドル・オンショア人民元)
  5. USD/CAD(米ドル・加ドル)
  6. AUD/USD(豪ドル・米ドル)
  7. USD/CHF(米ドル・スイスフラン)

となります。

見ての通り、基軸通貨であり圧倒的な取引量を誇る米ドルとメジャー通貨の組み合わせが、取引量の多い通貨ペアですね。中でも、上位3位の合計取引量は、市場全体の半分近くを占めています。

ただし、ここで「あれ?」と思った方も多いと思います。

ランキング1位は、世界1位と2位の取引量を持つユーロ/ドル。ランキング2位は取引量世界1位と3位の取引量を持つドル/円ですが、ランキング3位は、世界2位と3位の取引量を持つユーロ/円ではなく、ポンド/ドルなんですよ。

その理由は簡単です。先ほどお話した通り、為替市場におけるドルの影響力は圧倒的だということです。なので、ドルが絡まない通貨ペアの取引量は、例えそれが取引量世界2位と3位の通貨ペアとはいえ及ばないということです。

そのため、取引高世界1位のドルと4位のポンドが繰り上がり通貨ペアでは3位となり、以下の通貨ペア順位もそれに準じる結果となっています。

このことは、通貨ペアを選択するうえで重要なポイントとなりますから、忘れずに覚えておいてください。

で、上記7つの通貨ペアからUSD/CNYを除いた6通貨ペアが、外為市場で取引量の多い通貨ペアだということを覚えておいてください。

ドルストレートとクロス通貨

で、そんな米国の通貨であるドルは、世界の基軸通貨となっていて、基本的に世界の貿易は、ドルを介して取引が行われてます。

どういう事かというと・・・

米国に対して日本や英国やらの世界各国が貿易を行う場合、取引する通貨は、米ドルと自国通貨(米国と日本なら、ドルと円)となるのは、当然なんで分かりますよね。

しかし、日本と英国が貿易する場合は、円とポンドを直接取引するわけではなく、仕組みとしては、円を一旦ドルに換えて、そのドルとポンドで取引をするんですね。

ドル以外の通貨同士では、直接取引できないんですよ。直接取引できるのは、ドルを相手にした時だけです。

なので、ユーロ/ドルやらドル円など、対ドルの通貨ペアは直接互いの通貨のやり取りが可能なので、「ドルストレート」と呼ばれます。

そして、ドルが絡まない通貨ペア(ポンド/円やユーロ/ポンドなど)は一旦ドルを挟んで取引するため、「クロス通貨」と呼ばれます。

対円の通貨ペア(ユーロ円や豪ドル円など)のことは、「クロス円」と呼ばれます。

この言葉、FX関連の話の中では常にサラッと使われますので、知らない人は覚えておいてください。

リスク・オンとリスク・オフ

金融ニュースなどで度々目にする言葉に、「リスク・オン」と「リスク・オフ」というのがあります。

リスク・オンとは、景気の見通しが明るい時に、投資家・投機家が高いリスクをとりに行く状態のことです。要するに、景気が良いからリスクの高い金融商品に手を出していくことを意味します。

それに対しリスク・オフとは、景気の見通しが悪いため、投資家・投機家がリスクの低い金融商品に手を出していくことを意味します。リスクの高い株式・原油を売って、リスクの低い債券や金を買ったりするんですね。

リスク・オフの際に通貨の場合は、リスクの高い新興国の通貨を売ってリスクの低い先進国の通貨を買います。

で、その中でもリスクが低いと考えられている通貨を「安全通貨」と呼び、その代表格が円とスイス・フランになります。

一昔前は「有事のドル買い」と言ってドルは安全通貨の代表でもあったわけですが、今ではその面影はかなり薄くなっています。近年では、有事の際は円が買われることが多くなってきました。

しかし、そんな円もここ数年、その経済における相対的地位の低下化から、安全通貨としての側面はやや薄れつつある様に感じます。(個人的な感想です)

資源国通貨

G7の様な経済主要国の主要な貿易産業は、工業製品やITサービスになりますが、それとは違って石油や鉄鉱石や石炭などの資源を主力の輸出産業とする国の通貨を「資源国通貨」と呼びます。

資源といえば石油、石油といえばアラブ諸国を思い浮かべる人も多いと思いますが、石油取引は一般的にドル建てで行われます。

そのため、外為市場における資源国通貨と言えば、主要なのはオーストラリアの豪ドルやカナダの加ドルになります。

ただし、カナダは地政学上、アメリカの隣にあることもあり、豪ドルに比べて加ドルは資源国通貨としての特徴は薄くなり、ややアメリカ寄りの値動きになりやすい特徴があります。(ただし、旬な話題としては、アメリカはカナダに関税をかける云々の話題になっていますから、値動き的にはまた違った変化が生じやすい環境にあります)

なお、ここ最近では資源通貨国として取引量は決して多くはありませんが、オーストラリアと同様に資源国であり、地理的にも近いニュージーランドをメジャー通貨7か国にプラスして、通貨の相関関係を捉えようとする傾向がある様に思います。(これも個人的見解に過ぎませんが)

各通貨の特徴

それでは、以上の開設を踏まえたうえで、代表的な通貨の特徴をサラッとお話していこうと思います。

米ドル

既にお話した通り、外為市場の中でも米ドルは圧倒的な取引量を誇る基軸通貨ですから、値動きは安定的です。(この場合の安定的とは、値動きが緩やかという意味ではなく、価格が飛んだりノイズが生じにくいという意味です)

さらには、政治経済における超大国であるアメリカのニュースは、他の諸外国に比べ収集しやすい環境にあります。

そのため、最も取引しやすい通貨であると言えます。

ユーロ

外為市場で2番目に取引量の多い通貨のため、ドル以外の他通貨と比べると安定的な値動きとは言えるでしょう。

しかし、ユーロはEU各国の共通通貨のため、「欧州」という括りだけではなく、EU内の1国の特別なニュースに反応する可能性も高くなります。例えば、フランスやオランダなどのEUの大半の国の経済状況が好調でも、ドイツ1国の経済状況が悪化することで、EUそのものの値動きは影響を受けます。

その様に、ファンダメンタルズ的な判断は、単独な通貨に比べると単純ではないとは言えるでしょう。

しかし、テクニカルで判断する場合は、世界第2位の取引量であるユーロが、取引しやすい通貨の1つであることは間違いありません。

ポンド

金融大国の英国の通貨であるポンドは、投機性が高くなりやすい特徴から、ボラティリティ(値動きの幅)の高い通貨の代表格です。そのため、トレーダーにとって人気の高い通貨であることは間違いありません。

EUとは地理的・経済的にも結びつきが強いため、ユーロが売られればポンドも売られるなど、ユーロと似た様な傾向を示すことが多いです。

豪ドル

既に解説した通り、主な経済主要国が工業・IT産業中心であるのと違って、オーストラリアの主な輸出産業は鉄鉱石や石炭などの鉱物資源です。

そのため、豪ドルは資源国通貨と呼ばれ、経済主要国(米国・EU・英国・日本)とは違った値動きを形成します。

また、オーストラリアは米国やEUとは地理的にも遠く中国の影響も受けやすいため、加ドルに比べると豪ドルは独自の値動きを形成しやすい通貨です。

地理的に近く同様に資源国であるニュージーランドの通貨は、豪ドルと似た様な値動きになりやすい傾向にあります。

スイスフラン

スイスは地理的にはEUに近いですが、永世中立国ということで、政治的結びつきがEUや米国などの経済主要国とは全く違う立ち位置にいます。

そのため、値動きもそれらの国とは違った様相を呈します。

中立国であるがゆえに、スイスフランは安全通貨としての側面があり、アメリカの政情不安等から米ドルを手放す傾向にある際、逆にスイスフランが買われるケースも多々あります。

日本の通貨である円は、世界3位の取引量であり、また投機的な取引よりも輸出入における実需の割合が高いため、その値動きは安定的です。

また円は安全通貨としての側面が強く、相場がリスク・オフに傾くと、円が買われやすい傾向になります。

ただ、ここ数年の印象でいえば、日本経済の相対的な低下のせいもあってか、以前のような安全通貨の一面は薄れてきている様に思えます。

日本のトレーダーからすると、日本の通貨である円の情報は手に入れやすい環境にあり、また他の通貨資産を円換算する必要もなく資金管理が比較的楽なため、人気の通貨です。

通貨ペア選択のためのポイント

通貨における基礎知識を、ここまで解説してきました。

ここからは通貨ペアを適切に選択するために、押さえておきたいポイントをお話します。

取引量とボラティリティ

ボラティリティとは、ご存じの通り価格変動の大きさのことです。ボラが大きいというのは値動きの幅が大きいということで、逆にボラが小さいというのは価格変動幅が小さいということです。

で、トレードというのは、売買差益を狙って行なう行為ですから、ボラティリティが大きければ大きいほど、取引通貨としての魅力が増します。スプレッドや手数料のことを考えたら、尚更のことです。

ただし、このボラティリティに関して言うと、実は大きく2つに分けて考えていく必要があります。それは、

  • 取引量を伴うボラの大きさ
  • 取引量が少ないが故のボラの大きさ

です。

取引が活発になり取引量が多くなると、ボラは大きくなります。

ご存じの通り、東京時間よりもロンドン市場の取引が大きくなりますから、ボラは大きくなりますし、ロンドン市場とニューヨーク市場が重なる時間はさらにボラが拡大します。

またトレンドが発生している場合はもちろんボラは大きくなりますが、これも発生してる方向に対して取引が活発になっているわけですから、取引量を伴ってボラが拡大しているということになります。

ですから、取引量が増大するとボラが拡大するというのは正しい判断です。

しかし、逆に取引量が少ない場合でもボラが拡大したりするんですよ。

取引量が少ないということは、市場で売買する参加者も資金量も少ないということです。

であれば、ちょっと多めの買いが入った途端に大きく価格は上に上がり、ちょっと多めに売りが入った途端に価格は大きく下がるわけですね。

これは単に注文枚数が少ない、つまり市場が閑散としているために、値が飛んでしまいやすいということです。値が飛んでしまっているため、見た目にはボラが大きくなるわけです。

であれば、上に大きく値が伸びた様に見えても、それは買い手が閑散としていたのが理由であって、値動きの方向性が固まって上に上昇したわけではないかもしれません。そうであれば、上の方でちょっと大きめの売りが入った途端に今度は逆に大きく下に値が落ちたりもするんですね。

つまり、取引量の伴わないボラの大きさというのは、方向性が当てにならないんです。ノイズが多くなりがちで、信ぴょう性に乏しいということになります。

以上のことから、取引量が活発だからボラティリティが大きくなる場合と、取引量が少ないからボラティリティが大きくなる場合の2パターンがあることを、覚えておいてください。

取引量とトレードの関係

さて、ここまで取引量に着目してお話してきましたが、何が言いたいかというと・・・

取引量が多い通貨ペアをトレードするというのは、リスクを抑えるということに繋がるということです。

取引量の少ない通貨ペアは、注文量も乏しいため、大きく動くという特徴がありますが、先ほどお話した通り、それは単に値が飛んでるだけってことが結構多いわけです。上に行ったと思っても直ぐ下に大きくぶれる可能性も大きいわけで。

要するに、取引量の少ない通貨ペアをトレードするというのは、売買の方向性に対する信ぴょう性が薄いというリスクを孕んでいるということです。

また、注文数が少ないため、取引が成立しないことが出てきます。つまり、買いたい時に買えず、売りたい時に売れないことが出てきやすいんですね。

ファンダメンタルズ的に大きな異変があった場合は、なおさらです。自分のポジションと反対に動いた場合は、ストップ注文が約定できずに、取り返しのつかない損失を被る可能性があるんですね。

わずか数十分で歴史的暴落となったスイスフラン・ショック(2015年)は記憶に新しいと思います。安全通貨と呼ばれ、取引量も世界第7位のスイスフランですら、非常時にはそうなってしまうんですよ。

マイナー通貨と呼ばれる通貨は、そういった危険性を常に孕んでいると言えます。

しかし、取引量が多い通貨ペアというのは、注文がそこら中に散らばっているため、価格推移が比較的安定する傾向にあります。

要は、ノイズが少ないってことです。一時的な目先の値動きに振り回されることが少なくなるため、取引量が少ない通貨よりも多い通貨の方が、取引しやすい傾向にあります。

まぁ、あくまで比較の問題なので、取引量が多いからノイズがないってわけじゃありませんけどね。

以上のことから、リスクを承知でマイナー過ぎる通貨を選択したいなら、それはそれで止めませんが、余計なリスクを抱えたくないのであれば、出来るだけメジャーな通貨同士のペアで取引することをお勧めします。

スプレッドについて

トレード・スタイルによるシビアな差

スプレッドとは、ご存じの通り買値と売値の差額のことで、トレーダーからすると実質な手数料の様なものになっています。

なので、トレード回数が多くなればなるほど、トレードのトータル収支に大きく影響を与えますから、トレード・スタイルによってその重要度は大きく変わります。

例えばスイング・トレードの場合なら、1ヶ月にトレードする回数は少ないですし、1回のトレードの損益幅は大きいですから、スプレッドそのものがトータル収支に占める割合は少ないですよね。

しかし、デイトレの場合になると、月のトレード回数はもっと増えますし、トレード1回の損益幅はスイングに比べ小さくなりますから、スプレッドの占める割合は大きくなっていきます。スキャルピングであれば、それはもうかなりの負担になってしまいあす。

ちょっと単純化して比較してみましょうか。スプレッド1pipsの通貨ペアをトレードしたとしましょうか。これをトレード回数で比較すると、

  • 月に3回しかトレードしかしない(スイング)なら、スプレッドとして差し引かれる損失は、月間3pips
  • 月に20回トレードする(デイトレ)なら、スプレッドとして差し引かれる損失は、月間20pips
  • 月に200回トレードする(スキャルピング)なら、スプレッドとして差し引かれる損失は、月間200pips

1回のトレードでの利益幅が小さくなるトレード・スタイルになるほど、ロット数は増える傾向にありますから、単純にスイングがロット1、デイトレがロット2、スキャルピングがロット3として考えると、

  • スイングは、月間3pips×ロット1=3pips
  • デイトレは、月間20pips×ロット2=60pips
  • スキャルピングは、月間200pips×ロット3=600pips

改めて考えると、結構な差ですよね。取引回数が増えれば増えるほど、また取引額が増えれば増えるほど、スプレッドとしてトレーダーが被る損失(「損失」と言い切った方が理解しやすい)は、倍々ゲームで増えていくわけです。

このこと、実はFXを始める最初のうちは、結構気にするんですよ。スレッドのできるだけ小さなFX業者を探したりなんかしてね。

ところが、トレードを重ねるうちに、なぜか気にしなくなってしまうんですよ。負けが続くと、そういった感覚がマヒしちゃうのかな?

ま、以上のことから、取引回数が少なく、また1度のトレードにおける金額が極端に大きくなければ、それほどスプレッドは気にしなくても良いですが、取引回数が多いトレードスタイルの人は、スプレッドに対してシビアに構える必要があります。

通貨による違い

通貨によってスプレッド幅には違いがあるのは、ご存じだと思います。

原則、メジャー通貨はスプレッドが狭く、マイナー通貨はスプレッドが広くなる傾向がありますが、この説明だとちょっと正確性に欠く感じかな。

もう少し正確性をもって分かりやすく説明すると、

  • 取引量が圧倒的に多いドル・ストレートは、スプレッドが狭くなる傾向
  • 取引量がそれに次ぐユーロや円もスプレッドが狭くなる傾向
  • 国内業者のFX口座であれば、クロス円のスプレッドはより狭くなる傾向

になります。

そのため、スプレッドの観点でいえば、ドル・ストレートかクロス円を選択することが有利なトレードになります。

ちなみに、国内業者と海外業者との比較では、

  • 国内業者では、最もスプレッドが狭いのがドル円、次いでユーロドル。クロス円の方がスプレッドが狭い傾向にある
  • 海外業者では、最もスプレッドが狭いのがユーロドル、次いでドル円。ドル・ストレートの方がスプレッドが狭い傾向にある

といった感じになるでしょうか。

スワップポイントについて

これもまぁ、ご存じの方ばかりだとは思いますが、スワップポイントとは簡単に言ってしまうと、その通貨を買った時につく金利の様なものです。

原則的にマイナー通貨の方がスワップポイントが高く、メジャー通貨の方が低い傾向にありますが、一概には言えません。同じメジャー通貨、同じマイナー通貨でもポイントには差があります。

これは、各国の金利政策によって違いがあるためで、基本的に通貨金利の高い国の通貨のスワップはポイントが高くなりますし、金利の低い国の通貨はポイントが低くなります。

また、これは実際にトレードした際にうっかりし忘れやすいことなんですが、スワップポイントは買った場合にはプラスで付きますが、売った場合はポイントが引かれます。

なので、スワップで差益を考える場合は、必ず「スワップポイントが高い通貨を買い、スワップポイントが低い通貨を売る」という組み合わせの通貨ペアを選択する必要があります。

ただ、スワップポイントというのは、1日ごとに加算されますので、日計り(その日に買ってその日のうちに決済する)の場合、スワップポイントはつきません。

なので、デイトレやスキャルでは全く気にする必要がありません。スワップポイントを気にするのは、ポジションを次の日以降まで持ち越すトレーダーのみです。

とはいえ、スワップポイントは、取引額や狙う差益から比べるとそれほど大きくはありません。スイング・トレードをする際に、スワップを気にしすぎると、むしろチャンスを逃すこともありますから、気にかけ過ぎは禁物かもしれません。

ちなみにですが、スワップポイントそのものを狙う投資スタイルはあります。長期積み立てによって金利で利益をもらう発想と同じなんですが、これには注意が必要です。

スワップ目当てで長期保有してても、為替差損(つまり価格が買値よりも下がっていく)が膨らんでしまえば、結果として大きな損失を被ることになるというリスクがあるからです。

今から20年ほど前、この投資方法で世界を席巻した日本の主婦達が沢山いて、「ミセス・ワタナベ」と呼ばれるほど海外でも知られる存在でしたが、リーマン・ショックと共に彼女たちは財産を失いました。

なので、正直この投資スタイルはお勧めしません。もしやるのであれば、レバレッジをかけない「外貨預金」のスタイルの方が現実的です。為替差損のリスクは消えませんが、レバレッジをかけていない分、損失はまだ限定的です。

またミセス・ワタナベがやっていた様なスワップ・ポイント目当ての投資スタイルは、多大なレバレッジをかけることでスワップ収益を大きくし、その収益だけで日々の生活を潤そうとするものです。つまり、長期投資なのに長期的な視野に立っていないわけで。

しかし、外貨預金のスタイルは、考え方としては長期積立預金に近く、「将来的に資産が数パーセント増えたら良いな」という趣旨のものです。

だからと言って、個人的にお勧めするわけではありませんが、ちょっとスワップの話が出たんで、比較対象として採り上げてみました。

なお、このブログは取引差益を狙う「トレード」の話が主旨なので、スワップ・ポイント狙いについては、ほぼ重要視していませんので、あしからず。

総括

さて、通貨選択の基本的なポイントについて、いくつかお話しました。

ここまでお話したことを、簡単にまとめると、

  • 取引量の多い通貨・通貨ペアを選択することで値動きや売買の不安定さというリスクを回避することができる
  • ボラティリティの高い通貨ペアを選択することは大切だが、取引量の伴わないボラティリティはリスクが大きい
  • スプレッドは取引回数や取引額が多くなればなるほど比重が大きくなり、気にする必要が出てくる
  • スプレッドを考慮するなら、ドルストレートかクロス円が有利
  • スワップ・ポイントは、日計りなら気にする必要はなく、スイングでも損益に対する比重が少ないのであれば、あまり気にしない方が良い

ということになります。

で、これらを考慮するならば、通貨選択の基準はもうハッキリしてますね。

  • 選択する通貨は、取引量・ボラティリティ・リスクを考慮すると、メジャー通貨のみ
  • 選択する通貨ペアは、スプレッドの負担を考慮すると、ドル・ストレートとクロス円に絞る

ということです。

通貨ペア選択する際には、ドル・ストレートやクロス円であり、そしてドルや円に対する通貨は、全てメジャー通貨で構成するべきなんですよ。

いくらドルや円の取引量が大きいからと言って、売買先がマイナー通貨であれば、取引量は必然的に少なくなりますから、その分リスクも背負いやすくなるわけです。

さて、この選択によって監視する通貨ペアは、21種類から11種類へと、一気に減らすことができました。

しかし、それでも・・・

監視する通貨ペアは、一気に半分になりました。

が、実際はその数でも、ちょっと微妙です。

11通貨ペアをチャートを並べてみるとこんな感じになります。

パッと見で「ムリ!」って思う人もいるでしょし、「大丈夫だろ」って思う人もいるかもしれない、微妙なラインです。

でも、実際やってみれば分かると思いますが、

「どの通貨ペアがどの場所にあって、どれとどれを見比べたら相関関係が分かって・・・」

ってな感じで、11個もチャートが並んでいると、結構ゴチャゴチャしちゃいます。

しかもそんなゴチャゴチャした情報を、時間をかけずに正確に把握し判断するってなると、実はこの数だってかなり大変なんですよ。

この数の監視を使いこなせる様になる時間と労力があるんであれば、個別の通貨ペアの分析力アップのための検証と練習に費やした方が、現実的じゃないですかね?

そう、努力の方向性は間違っちゃダメなんですよ。

僕は年齢と共にミスが増えるようになったため、次第に監視する通貨ペアの数は減らしてきました。今の僕の監視通貨ペアは、8種類です。

で、相関性の見極めとトレードする通貨ペア選択をする上では、この8つの通貨ペアという数が適切なのかな、と個人的には思ってます。

なので、これから多通貨ペア監視に取り組もうという人は、8つの通貨ペアで監視することから始めた方が良いと思います。

さて、基本的な知識の方は、この辺まで分かってもらえたらOKかと思います。ここから先は、実践に結び付けるための応用編をお話していこうと思います。

が、案の定お話が長くなってしまいましたので、次回に持ち越しです。

次回からは、

  • 監視通貨ペアを8つに絞ること
  • 僕が実際にやっている多通貨監視の実践的なやり方の解説
  • 実際にトレードするための通貨ペアの選択手順

をお話していこうと思います。

ある意味、今までは基本的な話ばかりで退屈だったかもしれませんが、次回からは一気に実践的な方法論に入っていきますので、お楽しみに。

それじゃあ、また。