さて、「多通貨ペア監視のノウハウ」シリーズの第3話目です。
前回、前々回は基礎的な知識のお話をしてました。まぁ教科書的なお話ばかりで退屈だった人もいるのかもしれません。
が、基礎固めは実践を始める上で非常に大切です。1話目、2話目を読んでないという方は、必ず目を通してからこの記事をご覧くださいね。
さて、ここからは一気に実践編に入っていきます。教科書的な内容から離れ、実践に結び付きやすい話に進んでいきますよ。
それじゃあ、始まり始まり~!
多通貨ペア監視チャートの表示方法
ここで解説するのは、実際の僕がやっているものそのままというよりも、初心者でも把握しやすいようにちょっとアレンジして、お話していこうと思います。
8通貨ペアまで絞り込む
前回のお話では、監視する通貨ペアは
- メジャー7通貨のみで構成する
- ドルス・トレートとクロス円のみで構成する
というものでした。全部で11通貨ペアです。
で、ここからさらに通貨ペアを絞り込むわけですが・・・
結論から言うと、「加ドル」と「スイス・フラン」の2通貨を外しました。そうなると以下の様な7つの通貨ペアになります。
- ドル/円
- ユーロ/ドル
- ユーロ/円
- ポンド/ドル
- ポンド/円
- ドル/豪ドル
- 豪ドル/円
で、実際にこれらを組みチャートにして表示すると、以下の様になります。
見ての通り1つ空きスペースがあります。通貨ペアが7つだと奇数なので収まりが悪いですよね。
で、この空きスペースの部分に、実際の僕は「XAU/USD」(ゴールド/ドル)のチャートを貼ってあります。
しかし、ゴールドは通貨ではありませんし、他の通貨ペアとの相関性はちょっと勝手が違うので、これから多通貨ペア監視の方法を学ぼうとする人からすると、ゴールドのチャートを張っておく意味はありません。
なので、敢えて空きスペースにしておいたわけです。
この空きスペース、このブログで学習中する場合は、後ほど説明する別のチャートを表示してください。
で、学習を終え他通貨ペア監視に慣れてきたら、この空きスペースには各自で有効活用できそうなチャートを用意してください。先ほど省いた加ドルかスイス・フランを表示するのも良いですね。その場合は、通貨ペアは取引量の観点から、「ドル/加ドル」「ドル/スイス・フラン」のどちらかを表示することをお勧めします。
また、更に慣れてきたら、この空きスペースに株価指数(日経平均やS&P500)などを表示して、外為市場以外の金融市場との相関性を見ていくのも得策ですよ。
これがBOZ流!4つのジャンルの通貨の動きを見よう
外為市場では、主に4つのジャンルに分かれて通貨が動く傾向にあります。その4種類とは何かというと、
- 基軸通貨(ドル)
- 欧州通貨(ユーロとポンド)
- 安全通貨(円とスイス・フラン)
- 資源国通貨(豪ドルと加ドル)
になります。この4つのジャンルの通貨は、国際政治経済、そして国際金融の影響を受けて、ジャンルごとにまとまった動きをする傾向があるんですよ。
で、多通貨ペアを監視するというのは、大雑把に言えば、この4種類の通貨の流れを見るために行う様なものです。
前回、これらについては触れていますが、教科書的な説明ではなく、もう少し現実味のある説明を加えて、具体的に見ていきましょう。
基軸通貨である米ドルの動きを見る
米ドルは外為市場における基軸通貨であると同時に、国際政治経済における最重要国であるアメリカの通貨です。
そのため、市場のテーマは「ドル」となることが圧倒的に多いです。そしてこの「ドル」が「売りなのか?」「買いなのか?」を基にして他の通貨が動くことが、やっぱり多いんですよ。
なので、ドル単体の動きを見ることは必須です。
欧州勢の通貨を見る
ユーロは世界第2位の取引量を誇る通貨ですし、ポンドは世界第4位です。また、ポンドを自国通貨とする英国は、押しも押されぬ金融大国なのはご存じでしょう。為替に英国勢が及ぼす影響力は非常に大きいわけです。
で、EUと英国は地政学上繋がりが大きいため、同じヨーロッパ勢の通貨として同じ様に動くことが非常に多いです。ユーロが買われるならポンドも買われ、ポンドが売られるならユーロも売られる、といった具合ですね。
ユーロとポンドが合わさった取引量は相当なものになるわけですから、この動きも把握しておくことは、非常に大切です。
ただし、ユーロとポンドは別々の通貨ですから、全く同じに動くわけではありませんからね。個別の材料によっては、相反する動きになることだってあるわけです。その辺りのことは、勘違いしないようにしてください。
安全通貨を見る
市場がリスク・オフに傾くと、投資先・登記先は安全通貨へと流れます。そのため、安全通貨が市場におけるテーマになることは、非常に多いです。ドルやユーロを売って円を買うというお金の流れを、皆さんもニュースで聞いたことがあると思います。
円もスイス・フランも安全通貨であるため、そういった動意で動く場合は、似た様な動きをすることが多くなります。なので、「今は市場がリスク・オフだ」と流れを判断するには、この2通貨を監視しておくことが有効な手段になります。
とまぁ、以上は割とありきたりな解説です。
しかし、現実の外為事情は、ちょっと違います。実際の円とスイス・フランはというと、言われているほど同一性のある動きをすることは、多くありません。
日本とスイスでは地政学的にも離れていますし、国際社会において取り巻く環境は、日本とスイスではかなり違っています。
さらに両国の通貨は、安全通貨としての位置づけにおいて、近年では薄らいでいる様に感じます。
日本は依然と比べ、世界政治経済における立ち位置は相対的に低くなっており、またフランスもフランス・ショックの経験もあってか、「安全通貨」としての認識は薄らいでいるのではないでしょうか?
もちろん、リスク・オフとして円とスイス・フランが同時に買われたりすることは、確かにありますが、その機会はそんなに多くない、というのが僕の印象です。
実際のスイス・フランの値動きはというと、地政学上ヨーロッパに位置しているため、全体的にはむしろ欧州勢通貨に近い動きをすることの方が多いです。
なので、ここでは一応「安全通貨」というジャンル分けしましたが、「実質的にその相関性の高い場面は低い」と認識しておいてください。
では、外為市場ではどちらの国の通貨がテーマになって動きやすいのでしょうか?
それはご想像の通り、円になります。
円は、世界三大通貨という主要通貨の1つであると同時に、相対的地位は落ちたとはいえ、やはり未だに世界経済にも影響を及ぼす経済規模の国の通貨になるわけだからです。
なので、実際の為替相場は「ドル」「欧州通貨」「円」という3つの通貨がテーマとなって動くことが、大半です。
このシリーズの最初の方で、「世界三大通貨の相関性を見るのが基本」と言った通り、ドルとユーロと円の3つの流れを把握することは、外為市場の動向を把握するうえで非常に大切なんですね。
便宜上「安全通貨」としてジャンル分けしましたが、実質的に外為市場の流れを見るには、
- ドル
- 欧州勢通貨
- 円
- 資源国通貨
として見ることの方が、実践的です。
以上のことを踏まえると、通貨ペアを絞り込む際に、スイス・フランを外すという選択になったのは、頷けると思います。
ただ、多通貨ペア監視の意味や考え方、そして扱い方をものにしてきたら、この組チャートの1つの空きスペースに「米ドル/スイス・フラン」のチャートを貼っておくことは、一考に値します。
値動きは、比較的ユーロやポンドに似ているとはいえ、はやり永世中立国であるが故の独自な値動きはありますからね。他の通貨ペアとは違うタイミングでトレードチャンスが訪れることも少なくありません。
資源国通貨を見る
金融市場における資源国の代表と言えば、オーストラリアとカナダ、それに次いでニュージーランドでしたね。
で、これら資源国の通貨は、「資源」を材料としたニュースや状況によって、同様に動くことが多々あります。
そのため、「資源国通貨」を1つのジャンルの流れとして見ておく視点は必要です。
ただし、地政学上の理由から、オーストラリアは中国の影響を受けやすく、カナダはアメリカの影響を受けやい環境にあるということは、覚えておきましょう。
とはいえ、円とスイス・フランほど相関性は弱くありません。「資源国通貨」というジャンルで捉えらるレベルでの相関性は、強く確保されています。
では、なぜ資源国通貨として豪ドルを残し、加ドルを外したのか?
理由は、単純です。
- スプレッドが、国内FX業者において加ドルよりも豪ドルの方がかなり小さい(海外業者ではあまり差がないことが多い)
- オーストラリアの方が地理的に馴染みが深く、必然的にトレード回数も豪ドルの方が多くなりがち(個人差あるかな?)
ということです。
なお、先ほどの空きスペースに加ドルを加えることも一考に値します。スイス・フランにするか加ドルにするか、各自頭を悩ませながら採用してください。
通貨ペアの並べ方
では、実際にこれらの通貨を用いて、4つのジャンルを見る効率的な表示の仕方のお話に入っていくわけですが・・・
まずはもう1度、選択した通貨ペアの組チャートを確認しておきましょう。先ほどの空きスペースには、ドル/スイス・フランのチャートを貼ってみました。
で、通貨ペアの並ぶ順番は、必ずこの通りにしてください。並び方を変えると、後ほど解説する組チャートの見方が複雑になってしまいますので。
チャートの設定について
では、チャートの見方を解説する前に、まずはチャートの設定を軽くお話します。
ここで用いるテクニカルは、以下の3つだけです。
- ロウソク足
- ライン
- 移動平均線
ただ、ラインに関してですが、実際にラインを引くことはほぼありません。水平線を引けるポイントが分かり、またチャート・パターンを見つけることができればOKです。
また、僕が挙げているチャート画像には、RSIが表示されていますが、実際に使うことはないので、これから始める人は表示する必要もありません。
なので、多通貨ペア監視用のチャートで表示するのは、実質的にはロウソク足と移動平均線1本だけです。
移動平均線に関しては、「日足5SMA分析」を用います。(知らない人は、このブログの解説記事を読んでおいてください)
ということで、チャートにおけるテクニカルの設定は、
- 日足に5SMAを表示
- 4時間足に20SMAを表示
- 1時間足に75SMAを表示
ということになります。至ってシンプルですね。
ただし、チャートの操作や視認性を向上させるインジケーターは、あった方が便利です。なので、多通貨監視チャートにおいては、MT4を使用することをお勧めします。
で、僕がここで使用している利便性向上用のインジを、3つ紹介しますね。
1つ目は、チャート全ての時間軸を1発で同時に変更できるインジです。僕は「all_charts_change」というものを利用させてもらってます。
このインジは、表示されている全てのチャートの「時間足」「通貨ペア」「ロウソク足の大きさ」を一発で同時に変更できるものです。
僕はこのインジを一番左上のチャートだけに入れておき、そのチャートの時間足を変更するだけで、他の通貨ペアのチャートも同時に同じ時間足に変更できるようにしています。(ロウソク足の大きさも同様に設定しています)
多通貨ペアを監視する際には、各通貨ペア個別に時間軸を切り替えることはありません。同じ時間軸の通貨ペアを同時に比較することが、監視の際の基本になりますから、一発で複数のチャートの時間軸を切り替えられるインジは、必須です。
2つ目のインジは、3大市場(東京・ロンドン・ニューヨーク)の時間帯や1日ごとの時間帯を色分けや四角で囲むなどで可視化してくれるインジです。僕は、これまでも何度か紹介している「SessionsEX」というインジを利用させてもらっています。
この「SessionsEX」は、ボタン1つでマーケットプロファイルや3大市場の時間帯を色分けしてくれるインジケータです。
マーケットプロファイルを表示させると、こんな感じになります。
マーケットプロファイル自体はここで使わないんですが、これを表示する際に1日分だったり1週間分だったりの期間を四角で囲ってくれるので、僕は重宝しています。
また、ボタン1つで3大市場の時間帯を色分けしてくれるのも、嬉しい機能です。
市場のテーマ、そして大きな価格動向は、一定期間で切り替わります。「ここ1週間」って時もありますし、「1日」だったり「各市場」で切り替わったりします。短ければ各市場で2回方向性が変わります。
そういった意味で、
「この動きは、ロンドン時間から続いてる?それとも東京時間から?」
「この横ばいの動きはどのくらいの期間続いてる?」
などと思った時に、このインジは非常に便利です。
で、3つ目のインジなんですが・・・
一番左上にある「ドル/スイス・フラン」のチャートが、ちょっと他とは違ってることに気が付きましたか?
これは、「ドル/スイス・フラン」のチャートを上下反転表示して「スイス・フラン/ドル」にして表示してくれるインジです。上図では、黒白のロウソク足が元の「ドル/スイス・フラン」で、赤と青のロウソク足のものが上下反転表示させた「スイス・フラン/ドル」です。
ここで使っているインジは国内FX業者のFXTFさんが独自で提供している「FXTF Overlay Chart」というものです。
このインジを使うことで、相関関係を学ぶ初学者の人は理解の手助けになります。やってみると分かりますが、最初のうちは相関関係を見比べると頭がこんがらがります。なので、今回の解説のために導入してみました。
慣れたら必要のないインジでもありますから、相関性の見方に自信がついたら、外してもらって構いません。僕自身も実際の監視には使用していませんしね。
ということで、チャートのセッティングは以上です。今回僕が紹介したインジではなくとも、同じような機能を持つインジは探せば沢山出てきます。お好みのものを使用してください。
相関性の見方、再確認
次に進む前に、ちょっとここで復習しましょう。相関性の見方の再確認です。
というのも、前々回での相関性の見方の解説は、ちょっとザックリ過ぎたかもしれないと思ったので。
同じドル・ストレートのチャートを見るにしても、
- ドル/円の様に「ドル/〇〇」として頭にドルがついているのか
- ユーロ/ドルやポンド/ドルの様に「〇〇/ドル」として後ろにドルが付いているのか
によって、チャートの上がり下がりの見方が全く逆になります。
- 「ドル/〇〇」と頭にドルがついている通貨ペアでは、ドルが買われるとチャートでは価格が上昇し、ドルが売られるとチャートでは価格が下降する
- 「〇〇/ドル」と後ろにドルがついている通貨ペアでは、ドルが買われるとチャートでは価格が下降し、ドルが売られるとチャートでは価格が上昇する
このこと、頭では分かっている人の方が多いとは思いますが、実際に相関を把握しようとチャート同士を見比べていると、頭がゴチャゴチャになりがちです。なので、再確認しておこうかと。
ではちょっと、2023年夏ごろのチャートを複数使って、相関性を見てみましょうか。別に分析するわけじゃなく、見方や傾向を知ってもらうためなので、ザックリでOKです。
まずは、ユーロ/ドルの4時間足から。
7月半ば辺りから、下降トレンドが続いています。これは、ドルに対してユーロが売られていることを表しています。逆の言い方をすれば、ユーロに対してドルが買われていることになります。
じゃあ、次はポンド/ドルの4時間足です。
同様に7月半ば辺りから、下降トレンドが続いています。これは、ドルに対してポンドが売られていることを表しています。先ほどと同様に逆の言い方をすれば、ポンドに対してドルが買われていることを表しています。
次は豪ドル/ドルの4時間足です。
やっぱり7月半ば辺りから、下降トレンドが続いています。これは、ドルに対して豪ドルが売られていることであり、つまり豪ドルに対してドルが買われていることを表しています。
じゃあ、次にドル/円の4時間足。
先の3つの通貨ペアは、「〇〇/USD」ですが、こちらドル/円の通貨ペアは「USD/〇〇」となっていて、見方が逆となります。
7月半ば辺りから、上昇トレンドが続いているということは、円に対してドルが買われていることであり、逆に言えばドルに対して円が売られているということを表しています。
次にドル/スイスフランの4時間足。こちらも「USD/〇〇」なので先のドル円と見方は一緒で・・・
7月半ば辺りから、上昇賞トレンドが続いており、スイス・フランに対してドルが買われていることを表しており、逆に言えばドルに対してスイス・フランが売られているということを表しています。
さて、米ドルとメジャー通貨とのペア5種類を見てみました。
いずれのケースも7月半ば辺りからドルが買われ続けているのが分かると思います。
要するにこれは、「世界金融の流れとして、外為市場では7月半ば辺りから米ドルが買われ続けている傾向にある」ということなんですね。
このことを別の言い方で言うと、「7月半ば辺りからずっと外為市場のテーマはドルであり、ドル買いが市場全体の動意である」ということになります。
であれば、中期的というかここ数か月のスパンで見ると、ドル買い方針を基調とした取引の方が、やりやすいということになるわけです。(もちろん、トレードする時間軸によって判断は変わりますよ。くれぐれも文脈を捉え間違わないように)
とまぁ、こんな風に、複数の通貨ペアを観察することで、今の外為市場の傾向が分かるわけです。
上記では4時間足を見比べてみましたが、もっと時間軸を下げることで、ここ数週間の傾向や、ここ数日の傾向、またここ数時間の傾向なんかが分かるわけです。
もっと言ってしまえば、「今この瞬間、市場ではドルが一斉に買われている」ということ自体も分かるんですよ。
この様に、複数の通貨ペアを観察することで、今現在の外為市場の流れを把握することが可能になっていきます。
ドルと円を軸にして、その動向を把握しよう
さて、ここからは実際にセッティングしたチャートを使って、どの様に多通貨ペアを監視していくのか、その見方を解説していくことにします。
チャートの配列を確認する
で、ここでふと思ったんですが、先ほどは空きスーペースを「ドル/スイス・フラン」のチャートにしていましたが、ちょっと変更します。
初心者向けに分かりやすいように、この空きスペースには、「ドル/円」のチャートを上下反転表示させた「円/ドル」のチャートを表示しておくことにしますね。すると、以下の図の様になります。
※ FXTFの「FXTF Overlay Chart」を用いて反転表示させる場合、反転表示させる前と後のロウソク足が同時に表示されます。見づらくなるので、元のロウソク足は「ライン表示」に変更し、チャートの「プロパティ」にて「ラインチャート」の色を「None」(非表示)にすることで、元のロウソク足は表示されなくなります。
で、気付いている方は多いと思いますが、実はこの組チャート、上の段の横一列は全てドル・ストレート」で構成されています。ドルを軸にしてみるチャート群なんですね。
それに対して下の段は横一列全てクロス円です。正確に言えばドル円はドル・ストレートですが、要するにこの下段横一列は、円を軸にしてみるチャート群になります。
つまり、上段横一列で、およそのドルの流れを把握し、下段横一列で円の流れを把握しようというのが、この配列の狙いです。
では、今度は縦の列ごとに注目して、チャートの配列を確認してみましょう。
左から順に追っていくと、
- 左から1番目の縦列は、円
- 左から2番目の列は、ユーロ
- 左から3番目の列は、ポンド
- 一番右側の列は、豪ドル
ということになります。
つまり、横軸でドルと円の動向を観察し、縦軸でそれぞれユーロ、ポンド、豪ドルの動向を見るわけなんですね。
それでは次に、横軸を用いてドルや円の動向を探る解説していきましょう。
ドルの動向を見よう
ではまず、上の段のドル・ストレートから見ていきましょう。上の段ではドルの動向を見るんでしたね。混乱しない様に下の段は隠しました。左から、円・ユーロ・ポンド・オージーの順に並んでいます。
何となくというか、大まかな感じでは、どの通貨ペアも似た様な動きをしている様に見えませんかね?もちろん、大まかで言うとですが。
なんで似た感じになるかというと、ドルの動向の影響を同時に受けているからです。
で、チャートを見るとどの通貨ペアも、最初のうちは下降していますが、ある地点に来ると下落を止め、方向性に変化が訪れているのが分かりますか?
ちょっと、チャートにその様子を書き込んでみました。それが下の図です。
緑色の丸で囲った点が、そのターニングポイントですが、これは全て同じ日に起こっています(正確に言うと円/ドルだけが1営業日だけ早く安値を付けてます)が、それまでの間は、どの通貨ペアも下げ基調(青色の線)ですよね。
しかもこの下げ基調の期間の長さは、やはりどの通貨ペアも同じです。下落基調が始まった日から下落が終わる日まで同じなんです。
つまり、この下げ基調の期間は、どの通貨ペアに対しても、「ドル買い」が一斉に行われていたことを意味します。この期間の市場のテーマは「ドル」しかもその動意は「ドル買い」だったわけです。
同様に、緑丸のターニングポイントを迎えると次は、どの通貨ペアも同じ期間だけ上げ基調に変わっている(最初の赤い直線)のが分かると思います。
つまり、ターニングポイントを同じくして、今度の市場の動向は「ドル買い」から一気に「ドル売り」に変化し、市場では一斉に同じ期間だけドル売りが続いていたということが分かるわけです。
ただ、この期間を過ぎると、各通貨ペアは違った動きを始めます。
これは、市場のテーマが「ドル」から、「別の何か」に変化したということです。
この「別の何か」は、下の段を見なければ実際のところは分かりません。
(通貨の相関関係の基本を思い出してください。相関関係を把握するためには、3種類の通貨を対比する必要がありました。対ドルのチャートだけでは相関関係は完全には分かりません。)
で、その後はしばらく、ドルストレート群の通貨ペアは個別の動きをしていますが・・・
再度、一斉に上昇を始めます(右側の赤色の直線)。ここでまた市場のテーマが「ドル売り」になっているのが分かると思います。
この様に、市場のテーマが「ドル売り」となっている期間は、どの通貨ペアであろうが「ドル売り」で攻めた方が勝ちやすいのは自明の理です。だって、市場の流れそのものに付いていくわけですからね。
円の動向を見よう
とまぁ、そんな感じで上段のドルの流れをざっと見たら、次に下段において円の流れを見ていくことにしましょう。すると、こんな感じになります。
ドル・ストレートが最安値を付けてターニングポイントとなった時と同じ日に、クロス円の方でも同じ緑色の丸を付けてみました。
すると面白いことに、先ほどのドル・ストレート群とは様子が違うのが分かると思います。
ドル/円は、ドル・ストレート群がターニング・ポイントとなった地点が最高値となって(同じくターニング・ポイントとなって)それ以降下落を始めています。
しかし、他のクロス円の通貨ペア4つは、その緑色の丸が付いた地点では、まるでターニングポイントにはなっていないんですよ。高値をつけるどころか、むしろ直近低値をつけていたりします。
ここまでの過程、もう少し細かく見ていきましょうか。
クロス円軸における緑色の丸の地点に至るまでの過程(ドル円チャートで赤い直線を記した期間)において、
- ドル/円は、ほぼ一方的に円が売られ(上昇)続けている
- ユーロ/円は、最初の頃は円を売り(上昇)続けていたが、途中からは円を買ったり売ったりが交錯しつつも、やや下げ基調(円買い傾向)
- ポンド/円は、最初の頃は円を売り(上昇)続けていたが、途中からは激しく円を買ったり売ったりが交錯し、結果的には大きく下げる(強い円買い傾向)
- 豪ドル/円は、最初の頃は円を売り(上昇)で始まったが長くは続かず、円を買ったり売ったりが交錯しつつも、やや上げ基調(円売り傾向)
つまり、この時期の相場は、「ドル買い」に関しては市場全体の一致した動向でしたが、
- 「円売りドル買い」一択という市場全体の流れ(つまり、全てのクロス円において円を売り、そのお金でドルを買う)は、前半のみ
- 後半は「円売りドル買い」の動意は薄くなり、円は対する各通貨との個別の関係性で売買される様になる
ということになります。このことを各通貨ペア別で改めて説明すると、この期間は
- ドル/円においては、一貫して円売りドル買いが続いている
- ユーロ/円においては、前半は円を売ってユーロを買い(買い戻したユーロでドルを買う)が、後半に入るとユーロと円を売ったり買ったりが交互になり、最終的にはやや円買いが優勢
- ポンド/円においては、前半は円を売ってポンドを買い(買い戻したポンドでドルを買う)が、後半に入るとポンドと円を売ったり買ったりが交互になり、最終的には大きく円買いを続ける
- 豪ドル/円においては、前半は円を売って豪ドルを買い(買い戻した豪ドルでドルを買う)が、後半に入ると豪ドルと円の売り買いが細かく交差し出すが、最終的にはやや円売りが優勢
ということになります。
理解できましたか?それとも、頭がゴチャゴチャして訳分からなくなってしまいましたか?
こういったことは、やっぱり慣れが必要です。慣れれば慣れるほど、詳細を判断していくことが可能になるんですが・・・
やっぱ、難しいですかね?
まぁ、人には得手不得手ってものがありますから、こういった感じの判断には混乱してしまう人も多いと思います。
でも、安心してください。もっとシンプルに考えれば良いんです。
ドルと円だけを軸に把握するだけでも武器になる
細かく相関関係を見ることが難しい・・・
まぁ、最初の頃は誰でもそうです。
ただ、何度も言ってますが、複雑なことを複雑に考えたところで息苦しいだけです。複雑なモノゴトは、シンプルに考えシンプルに行動することが大切です。
そう、それがBOZ流!
まず大切なのは、ドルの動向と円の動向だけを把握することなんですよ。他の通貨の動向は把握できなくてもOKです。
だってね、通貨ペアを選択する際に基準にしたのは、「ドル・ストレート」と「クロス円」のみなんですよ。ドルか円が絡んだ通貨ペアしか取引しないわけで。
だから、まず最初の段階として、ドルと円の動向さえわかれば、他の通貨との相関性が分からなくたって、それは僕らにとって大きな武器になるんです。
もう1度、先ほどのチャートを見ておきましょうか。
横の列だけ見れば、4つの通貨ペアが一斉に同じ方向に動いている時期で、その時の市場のテーマを知ることは、簡単に出来るわけです。
上段の横一列は、ドルを軸として見る。そして、一斉に上に動いていればその時期は「ドル売り」がテーマ。一斉に下落しているならばその時期は「ドル買い」がテーマ。
見てすぐにわかりますよね。
だったら、横軸の一列が一斉に上を向いているのであれば、迷わずドル・ストレートの通貨ペアのどれかを「ドル売り」すれば良いだけじゃないですか。一斉に下を向いているのであれば、迷わずドル・ストレートの通貨ペアのどれかを「ドル買い」すれば良いだけじゃないですか。
それが市場の摂理です。簡単ですよね。
そして、下段の横一列は、円を軸に見るんでしたね。
下段横一列にある4つの通貨ペアが一斉に上昇している時期は「円売り」がテーマ、一斉に下降している時期は「円買い」がテーマということです。
これも、見ればすぐに分かる代物です。
だったら、クロス円の横軸が一斉に上を向いているのであれば、クロス円の通貨ペアのどれかを迷わず「円売り」すれば良いだけじゃないですか。一斉に下を向いているのであれば、クロス円の通貨ペアのどれかを迷わず「円買い」すれば良いだけじゃないですか。
それが市場の摂理ですよね。簡単ですよね。
これ、大切なポイントなんで、繰り返し言いますね。
「ドル」がテーマの時に、市場の動意が「売り」であるのであれば、トレードの方針は「ドル売り」です。
「円」がテーマの時に、市場の動意が「買い」であるならば、トレードの方針は「円買い」です。
この様に、難しく考えなくとも、横軸をシンプルに見ていけば、少なくともドルと円がテーマとなっている時期は把握できますよね。
そして僕らは、ドルか円が絡んだ通貨ペアしか取引はしない。
だったら、極端な話、ドルと円の動向さえ掴めれば良いわけです。これだけで、僕らにとっては大きな武器になるんです。
単純に「ドル」がテーマで動意が「売り」の時は、ドル・ストレートの通貨ペアの中から、自分が最もドル売りを仕掛けやすい通貨ペアを選んで、トレードすれば良いだけです。
同様に「円」がテーマで動意が「売り」の時は、クロス円の通貨ペアの中から、自分が最も円売りを仕掛けやすい通貨ペアを選んで、トレードすれば良いだけです。
もう、当たり前すぎて当たり前だの前田敦子です。
では、ついでにもう1つ。
ドル軸が一斉に下を向いて(市場はドル買い)いて、円軸が一斉に上を向いて(市場は円売り)いるのが、同時に起こっている時期なら、どの通貨ペアを取引すれば良いですか?
簡単ですね。
市場は、ドル買い円売り一色なので、トレードする通貨ペアは「ドル/円」で、ポジションはロングです。
全ての通貨ペアが円を売られ(例えばユーロ/円なら円を売ってユーロを買い)、買い戻したそのお金(ユーロ)でドルを買うという行為が、全ての通貨ペアで行われるわけです。
最も取引に信ぴょう性があるのは、「ドル買い円売り」がそのまま直で行われる「ドル/円」です。それ以外他にありますか?取引量も集まりやすく、ボラティリティだって上がるわけですから、ドル円のロングが最もやりやすい。
簡単ですよね。
難しい相場を、難しく考える必要はありません。シンプルに捉えてシンプルに考え行動することが大切です。
で、そのために、多通貨ペア監視の組チャートを、この選択でこの配列でしておくわけです。横一列の目線だけで、今のテーマがドルにあるのか円にあるのかを、熟達せずとも直ぐに分かるようにしたのが、この組チャートです。
そう、これがBOZ流!
( ̄∇+ ̄)vキラーン
だたし、ここから先に進もうとする人にとっては、やっぱりドルと円だけじゃなく、その他の通貨との相関性も把握したいところですよね。細かい相関関係を把握できるようになったら、もっと緻密な戦略等を立てられますからね。
ということで、次に縦軸を見るお話に入っていきましょう。
と思ったら、やっぱり長くなり過ぎましたね。
この記事書き出した時は、この回で完結するかなと思ってたんですが、予定の半分も進みませんでした。
ということで、次回は組チャートの縦軸を交えて見る解説に入っていきます。
それじゃあ、また。