多通貨ペア監視のノウハウ(3)ドルと円の動向を把握する

さて、「多通貨ペア監視のノウハウ」シリーズの第3話目です。

前回、前々回は基礎的な知識のお話をしてました。まぁ教科書的なお話ばかりで退屈だった人もいるのかもしれません。

が、基礎固めは実践を始める上で非常に大切です。1話目、2話目を読んでないという方は、必ず目を通してからこの記事をご覧くださいね。

さて、ここからは一気に実践編に入っていきます。教科書的な内容から離れ、実践に結び付きやすい話に進んでいきますよ。

それじゃあ、始まり始まり~!

多通貨ペア監視チャートの表示方法

ここで解説するのは、実際の僕がやっているものそのままというよりも、初心者でも把握しやすいようにちょっとアレンジして、お話していこうと思います。

8通貨ペアまで絞り込む

前回のお話では、監視する通貨ペアは

  • メジャー7通貨のみで構成する
  • ドルス・トレートとクロス円のみで構成する

というものでした。全部で11通貨ペアです。

で、ここからさらに通貨ペアを絞り込むわけですが・・・

結論から言うと、「加ドル」と「スイス・フラン」の2通貨を外しました。そうなると以下の様な7つの通貨ペアになります。

  • ドル/円
  • ユーロ/ドル
  • ユーロ/円
  • ポンド/ドル
  • ポンド/円
  • ドル/豪ドル
  • 豪ドル/円

で、実際にこれらを組みチャートにして表示すると、以下の様になります。

見ての通り1つ空きスペースがあります。通貨ペアが7つだと奇数なので収まりが悪いですよね。

で、この空きスペースの部分に、実際の僕は「XAU/USD」(ゴールド/ドル)のチャートを貼ってあります。

しかし、ゴールドは通貨ではありませんし、他の通貨ペアとの相関性はちょっと勝手が違うので、これから多通貨ペア監視の方法を学ぼうとする人からすると、ゴールドのチャートを張っておく意味はありません。

なので、敢えて空きスペースにしておいたわけです。

この空きスペース、このブログで学習中する場合は、後ほど説明する別のチャートを表示してください。

で、学習を終え他通貨ペア監視に慣れてきたら、この空きスペースには各自で有効活用できそうなチャートを用意してください。先ほど省いた加ドルかスイス・フランを表示するのも良いですね。その場合は、通貨ペアは取引量の観点から、「ドル/加ドル」「ドル/スイス・フラン」のどちらかを表示することをお勧めします。

また、更に慣れてきたら、この空きスペースに株価指数(日経平均やS&P500)などを表示して、外為市場以外の金融市場との相関性を見ていくのも得策ですよ。

これがBOZ流!4つのジャンルの通貨の動きを見よう

外為市場では、主に4つのジャンルに分かれて通貨が動く傾向にあります。その4種類とは何かというと、

  • 基軸通貨(ドル)
  • 欧州通貨(ユーロとポンド)
  • 安全通貨(円とスイス・フラン)
  • 資源国通貨(豪ドルと加ドル)

になります。この4つのジャンルの通貨は、国際政治経済、そして国際金融の影響を受けて、ジャンルごとにまとまった動きをする傾向があるんですよ。

で、多通貨ペアを監視するというのは、大雑把に言えば、この4種類の通貨の流れを見るために行う様なものです。

前回、これらについては触れていますが、教科書的な説明ではなく、もう少し現実味のある説明を加えて、具体的に見ていきましょう。

基軸通貨である米ドルの動きを見る

米ドルは外為市場における基軸通貨であると同時に、国際政治経済における最重要国であるアメリカの通貨です。

そのため、市場のテーマは「ドル」となることが圧倒的に多いです。そしてこの「ドル」が「売りなのか?」「買いなのか?」を基にして他の通貨が動くことが、やっぱり多いんですよ。

なので、ドル単体の動きを見ることは必須です。

欧州勢の通貨を見る

ユーロは世界第2位の取引量を誇る通貨ですし、ポンドは世界第4位です。また、ポンドを自国通貨とする英国は、押しも押されぬ金融大国なのはご存じでしょう。為替に英国勢が及ぼす影響力は非常に大きいわけです。

で、EUと英国は地政学上繋がりが大きいため、同じヨーロッパ勢の通貨として同じ様に動くことが非常に多いです。ユーロが買われるならポンドも買われ、ポンドが売られるならユーロも売られる、といった具合ですね。

ユーロとポンドが合わさった取引量は相当なものになるわけですから、この動きも把握しておくことは、非常に大切です。

ただし、ユーロとポンドは別々の通貨ですから、全く同じに動くわけではありませんからね。個別の材料によっては、相反する動きになることだってあるわけです。その辺りのことは、勘違いしないようにしてください。

安全通貨を見る

市場がリスク・オフに傾くと、投資先・登記先は安全通貨へと流れます。そのため、安全通貨が市場におけるテーマになることは、非常に多いです。ドルやユーロを売って円を買うというお金の流れを、皆さんもニュースで聞いたことがあると思います。

円もスイス・フランも安全通貨であるため、そういった動意で動く場合は、似た様な動きをすることが多くなります。なので、「今は市場がリスク・オフだ」と流れを判断するには、この2通貨を監視しておくことが有効な手段になります。

とまぁ、以上は割とありきたりな解説です。

しかし、現実の外為事情は、ちょっと違います。実際の円とスイス・フランはというと、言われているほど同一性のある動きをすることは、多くありません。

日本とスイスでは地政学的にも離れていますし、国際社会において取り巻く環境は、日本とスイスではかなり違っています。

さらに両国の通貨は、安全通貨としての位置づけにおいて、近年では薄らいでいる様に感じます。

日本は依然と比べ、世界政治経済における立ち位置は相対的に低くなっており、またフランスもフランス・ショックの経験もあってか、「安全通貨」としての認識は薄らいでいるのではないでしょうか?

もちろん、リスク・オフとして円とスイス・フランが同時に買われたりすることは、確かにありますが、その機会はそんなに多くない、というのが僕の印象です。

実際のスイス・フランの値動きはというと、地政学上ヨーロッパに位置しているため、全体的にはむしろ欧州勢通貨に近い動きをすることの方が多いです。

なので、ここでは一応「安全通貨」というジャンル分けしましたが、「実質的にその相関性の高い場面は低い」と認識しておいてください。

では、外為市場ではどちらの国の通貨がテーマになって動きやすいのでしょうか?

それはご想像の通り、円になります。

円は、世界三大通貨という主要通貨の1つであると同時に、相対的地位は落ちたとはいえ、やはり未だに世界経済にも影響を及ぼす経済規模の国の通貨になるわけだからです。

なので、実際の為替相場は「ドル」「欧州通貨」「円」という3つの通貨がテーマとなって動くことが、大半です。

このシリーズの最初の方で、「世界三大通貨の相関性を見るのが基本」と言った通り、ドルとユーロと円の3つの流れを把握することは、外為市場の動向を把握するうえで非常に大切なんですね。

便宜上「安全通貨」としてジャンル分けしましたが、実質的に外為市場の流れを見るには、

  • ドル
  • 欧州勢通貨
  • 資源国通貨

として見ることの方が、実践的です。

以上のことを踏まえると、通貨ペアを絞り込む際に、スイス・フランを外すという選択になったのは、頷けると思います。

ただ、多通貨ペア監視の意味や考え方、そして扱い方をものにしてきたら、この組チャートの1つの空きスペースに「米ドル/スイス・フラン」のチャートを貼っておくことは、一考に値します。

値動きは、比較的ユーロやポンドに似ているとはいえ、はやり永世中立国であるが故の独自な値動きはありますからね。他の通貨ペアとは違うタイミングでトレードチャンスが訪れることも少なくありません。

資源国通貨を見る

金融市場における資源国の代表と言えば、オーストラリアとカナダ、それに次いでニュージーランドでしたね。

で、これら資源国の通貨は、「資源」を材料としたニュースや状況によって、同様に動くことが多々あります。

そのため、「資源国通貨」を1つのジャンルの流れとして見ておく視点は必要です。

ただし、地政学上の理由から、オーストラリアは中国の影響を受けやすく、カナダはアメリカの影響を受けやい環境にあるということは、覚えておきましょう。

とはいえ、円とスイス・フランほど相関性は弱くありません。「資源国通貨」というジャンルで捉えらるレベルでの相関性は、強く確保されています。

では、なぜ資源国通貨として豪ドルを残し、加ドルを外したのか?

理由は、単純です。

  • スプレッドが、国内FX業者において加ドルよりも豪ドルの方がかなり小さい(海外業者ではあまり差がないことが多い)
  • オーストラリアの方が地理的に馴染みが深く、必然的にトレード回数も豪ドルの方が多くなりがち(個人差あるかな?)

ということです。

なお、先ほどの空きスペースに加ドルを加えることも一考に値します。スイス・フランにするか加ドルにするか、各自頭を悩ませながら採用してください。

通貨ペアの並べ方

では、実際にこれらの通貨を用いて、4つのジャンルを見る効率的な表示の仕方のお話に入っていくわけですが・・・

まずはもう1度、選択した通貨ペアの組チャートを確認しておきましょう。先ほどの空きスペースには、ドル/スイス・フランのチャートを貼ってみました。

で、通貨ペアの並ぶ順番は、必ずこの通りにしてください。並び方を変えると、後ほど解説する組チャートの見方が複雑になってしまいますので。

チャートの設定について

では、チャートの見方を解説する前に、まずはチャートの設定を軽くお話します。

ここで用いるテクニカルは、以下の3つだけです。

  • ロウソク足
  • ライン
  • 移動平均線

ただ、ラインに関してですが、実際にラインを引くことはほぼありません。水平線を引けるポイントが分かり、またチャート・パターンを見つけることができればOKです。

また、僕が挙げているチャート画像には、RSIが表示されていますが、実際に使うことはないので、これから始める人は表示する必要もありません。

なので、多通貨ペア監視用のチャートで表示するのは、実質的にはロウソク足と移動平均線1本だけです。

移動平均線に関しては、「日足5SMA分析」を用います。(知らない人は、このブログの解説記事を読んでおいてください)

ということで、チャートにおけるテクニカルの設定は、

  • 日足に5SMAを表示
  • 4時間足に20SMAを表示
  • 1時間足に75SMAを表示

ということになります。至ってシンプルですね。

ただし、チャートの操作や視認性を向上させるインジケーターは、あった方が便利です。なので、多通貨監視チャートにおいては、MT4を使用することをお勧めします。

で、僕がここで使用している利便性向上用のインジを、3つ紹介しますね。

1つ目は、チャート全ての時間軸を1発で同時に変更できるインジです。僕は「all_charts_change」というものを利用させてもらってます。

このインジは、表示されている全てのチャートの「時間足」「通貨ペア」「ロウソク足の大きさ」を一発で同時に変更できるものです。

僕はこのインジを一番左上のチャートだけに入れておき、そのチャートの時間足を変更するだけで、他の通貨ペアのチャートも同時に同じ時間足に変更できるようにしています。(ロウソク足の大きさも同様に設定しています)

多通貨ペアを監視する際には、各通貨ペア個別に時間軸を切り替えることはありません。同じ時間軸の通貨ペアを同時に比較することが、監視の際の基本になりますから、一発で複数のチャートの時間軸を切り替えられるインジは、必須です。

2つ目のインジは、3大市場(東京・ロンドン・ニューヨーク)の時間帯や1日ごとの時間帯を色分けや四角で囲むなどで可視化してくれるインジです。僕は、これまでも何度か紹介している「SessionsEX」というインジを利用させてもらっています。

この「SessionsEX」は、ボタン1つでマーケットプロファイルや3大市場の時間帯を色分けしてくれるインジケータです。

マーケットプロファイルを表示させると、こんな感じになります。

マーケットプロファイル自体はここで使わないんですが、これを表示する際に1日分だったり1週間分だったりの期間を四角で囲ってくれるので、僕は重宝しています。

また、ボタン1つで3大市場の時間帯を色分けしてくれるのも、嬉しい機能です。

市場のテーマ、そして大きな価格動向は、一定期間で切り替わります。「ここ1週間」って時もありますし、「1日」だったり「各市場」で切り替わったりします。短ければ各市場で2回方向性が変わります。

そういった意味で、

「この動きは、ロンドン時間から続いてる?それとも東京時間から?」
「この横ばいの動きはどのくらいの期間続いてる?」

などと思った時に、このインジは非常に便利です。

で、3つ目のインジなんですが・・・

一番左上にある「ドル/スイス・フラン」のチャートが、ちょっと他とは違ってることに気が付きましたか?

これは、「ドル/スイス・フラン」のチャートを上下反転表示して「スイス・フラン/ドル」にして表示してくれるインジです。上図では、黒白のロウソク足が元の「ドル/スイス・フラン」で、赤と青のロウソク足のものが上下反転表示させた「スイス・フラン/ドル」です。

ここで使っているインジは国内FX業者のFXTFさんが独自で提供している「FXTF Overlay Chart」というものです。

このインジを使うことで、相関関係を学ぶ初学者の人は理解の手助けになります。やってみると分かりますが、最初のうちは相関関係を見比べると頭がこんがらがります。なので、今回の解説のために導入してみました。

慣れたら必要のないインジでもありますから、相関性の見方に自信がついたら、外してもらって構いません。僕自身も実際の監視には使用していませんしね。

ということで、チャートのセッティングは以上です。今回僕が紹介したインジではなくとも、同じような機能を持つインジは探せば沢山出てきます。お好みのものを使用してください。

相関性の見方、再確認

次に進む前に、ちょっとここで復習しましょう。相関性の見方の再確認です。

というのも、前々回での相関性の見方の解説は、ちょっとザックリ過ぎたかもしれないと思ったので。

同じドル・ストレートのチャートを見るにしても、

  • ドル/円の様に「ドル/〇〇」として頭にドルがついているのか
  • ユーロ/ドルやポンド/ドルの様に「〇〇/ドル」として後ろにドルが付いているのか

によって、チャートの上がり下がりの見方が全く逆になります。

  • 「ドル/〇〇」と頭にドルがついている通貨ペアでは、ドルが買われるとチャートでは価格が上昇し、ドルが売られるとチャートでは価格が下降する
  • 「〇〇/ドル」と後ろにドルがついている通貨ペアでは、ドルが買われるとチャートでは価格が下降し、ドルが売られるとチャートでは価格が上昇する

このこと、頭では分かっている人の方が多いとは思いますが、実際に相関を把握しようとチャート同士を見比べていると、頭がゴチャゴチャになりがちです。なので、再確認しておこうかと。

ではちょっと、2023年夏ごろのチャートを複数使って、相関性を見てみましょうか。別に分析するわけじゃなく、見方や傾向を知ってもらうためなので、ザックリでOKです。

まずは、ユーロ/ドルの4時間足から。

7月半ば辺りから、下降トレンドが続いています。これは、ドルに対してユーロが売られていることを表しています。逆の言い方をすれば、ユーロに対してドルが買われていることになります。

じゃあ、次はポンド/ドルの4時間足です。

同様に7月半ば辺りから、下降トレンドが続いています。これは、ドルに対してポンドが売られていることを表しています。先ほどと同様に逆の言い方をすれば、ポンドに対してドルが買われていることを表しています。

次は豪ドル/ドルの4時間足です。

やっぱり7月半ば辺りから、下降トレンドが続いています。これは、ドルに対して豪ドルが売られていることであり、つまり豪ドルに対してドルが買われていることを表しています。

じゃあ、次にドル/円の4時間足。

先の3つの通貨ペアは、「〇〇/USD」ですが、こちらドル/円の通貨ペアは「USD/〇〇」となっていて、見方が逆となります。

7月半ば辺りから、上昇トレンドが続いているということは、円に対してドルが買われていることであり、逆に言えばドルに対して円が売られているということを表しています。

次にドル/スイスフランの4時間足。こちらも「USD/〇〇」なので先のドル円と見方は一緒で・・・

7月半ば辺りから、上昇賞トレンドが続いており、スイス・フランに対してドルが買われていることを表しており、逆に言えばドルに対してスイス・フランが売られているということを表しています。

さて、米ドルとメジャー通貨とのペア5種類を見てみました。

いずれのケースも7月半ば辺りからドルが買われ続けているのが分かると思います。

要するにこれは、「世界金融の流れとして、外為市場では7月半ば辺りから米ドルが買われ続けている傾向にある」ということなんですね。

このことを別の言い方で言うと、「7月半ば辺りからずっと外為市場のテーマはドルであり、ドル買いが市場全体の動意である」ということになります。

であれば、中期的というかここ数か月のスパンで見ると、ドル買い方針を基調とした取引の方が、やりやすいということになるわけです。(もちろん、トレードする時間軸によって判断は変わりますよ。くれぐれも文脈を捉え間違わないように)

とまぁ、こんな風に、複数の通貨ペアを観察することで、今の外為市場の傾向が分かるわけです。

上記では4時間足を見比べてみましたが、もっと時間軸を下げることで、ここ数週間の傾向や、ここ数日の傾向、またここ数時間の傾向なんかが分かるわけです。

もっと言ってしまえば、「今この瞬間、市場ではドルが一斉に買われている」ということ自体も分かるんですよ。

この様に、複数の通貨ペアを観察することで、今現在の外為市場の流れを把握することが可能になっていきます。

ドルと円を軸にして、その動向を把握しよう

さて、ここからは実際にセッティングしたチャートを使って、どの様に多通貨ペアを監視していくのか、その見方を解説していくことにします。

チャートの配列を確認する

で、ここでふと思ったんですが、先ほどは空きスーペースを「ドル/スイス・フラン」のチャートにしていましたが、ちょっと変更します。

初心者向けに分かりやすいように、この空きスペースには、「ドル/円」のチャートを上下反転表示させた「円/ドル」のチャートを表示しておくことにしますね。すると、以下の図の様になります。

※ FXTFの「FXTF Overlay Chart」を用いて反転表示させる場合、反転表示させる前と後のロウソク足が同時に表示されます。見づらくなるので、元のロウソク足は「ライン表示」に変更し、チャートの「プロパティ」にて「ラインチャート」の色を「None」(非表示)にすることで、元のロウソク足は表示されなくなります。

で、気付いている方は多いと思いますが、実はこの組チャート、上の段の横一列は全てドル・ストレート」で構成されています。ドルを軸にしてみるチャート群なんですね。

それに対して下の段は横一列全てクロス円です。正確に言えばドル円はドル・ストレートですが、要するにこの下段横一列は、円を軸にしてみるチャート群になります。

つまり、上段横一列で、およそのドルの流れを把握し、下段横一列で円の流れを把握しようというのが、この配列の狙いです。

では、今度は縦の列ごとに注目して、チャートの配列を確認してみましょう。

左から順に追っていくと、

  • 左から1番目の縦列は、円
  • 左から2番目の列は、ユーロ
  • 左から3番目の列は、ポンド
  • 一番右側の列は、豪ドル

ということになります。

つまり、横軸でドルと円の動向を観察し、縦軸でそれぞれユーロ、ポンド、豪ドルの動向を見るわけなんですね。

それでは次に、横軸を用いてドルや円の動向を探る解説していきましょう。

ドルの動向を見よう

ではまず、上の段のドル・ストレートから見ていきましょう。上の段ではドルの動向を見るんでしたね。混乱しない様に下の段は隠しました。左から、円・ユーロ・ポンド・オージーの順に並んでいます。

何となくというか、大まかな感じでは、どの通貨ペアも似た様な動きをしている様に見えませんかね?もちろん、大まかで言うとですが。

なんで似た感じになるかというと、ドルの動向の影響を同時に受けているからです。

で、チャートを見るとどの通貨ペアも、最初のうちは下降していますが、ある地点に来ると下落を止め、方向性に変化が訪れているのが分かりますか?

ちょっと、チャートにその様子を書き込んでみました。それが下の図です。

緑色の丸で囲った点が、そのターニングポイントですが、これは全て同じ日に起こっています(正確に言うと円/ドルだけが1営業日だけ早く安値を付けてます)が、それまでの間は、どの通貨ペアも下げ基調(青色の線)ですよね。

しかもこの下げ基調の期間の長さは、やはりどの通貨ペアも同じです。下落基調が始まった日から下落が終わる日まで同じなんです。

つまり、この下げ基調の期間は、どの通貨ペアに対しても、「ドル買い」が一斉に行われていたことを意味します。この期間の市場のテーマは「ドル」しかもその動意は「ドル買い」だったわけです。

同様に、緑丸のターニングポイントを迎えると次は、どの通貨ペアも同じ期間だけ上げ基調に変わっている(最初の赤い直線)のが分かると思います。

つまり、ターニングポイントを同じくして、今度の市場の動向は「ドル買い」から一気に「ドル売り」に変化し、市場では一斉に同じ期間だけドル売りが続いていたということが分かるわけです。

ただ、この期間を過ぎると、各通貨ペアは違った動きを始めます。

これは、市場のテーマが「ドル」から、「別の何か」に変化したということです。

この「別の何か」は、下の段を見なければ実際のところは分かりません。

(通貨の相関関係の基本を思い出してください。相関関係を把握するためには、3種類の通貨を対比する必要がありました。対ドルのチャートだけでは相関関係は完全には分かりません。)

で、その後はしばらく、ドルストレート群の通貨ペアは個別の動きをしていますが・・・

再度、一斉に上昇を始めます(右側の赤色の直線)。ここでまた市場のテーマが「ドル売り」になっているのが分かると思います。

この様に、市場のテーマが「ドル売り」となっている期間は、どの通貨ペアであろうが「ドル売り」で攻めた方が勝ちやすいのは自明の理です。だって、市場の流れそのものに付いていくわけですからね。

円の動向を見よう

とまぁ、そんな感じで上段のドルの流れをざっと見たら、次に下段において円の流れを見ていくことにしましょう。すると、こんな感じになります。

ドル・ストレートが最安値を付けてターニングポイントとなった時と同じ日に、クロス円の方でも同じ緑色の丸を付けてみました。

すると面白いことに、先ほどのドル・ストレート群とは様子が違うのが分かると思います。

ドル/円は、ドル・ストレート群がターニング・ポイントとなった地点が最高値となって(同じくターニング・ポイントとなって)それ以降下落を始めています。

しかし、他のクロス円の通貨ペア4つは、その緑色の丸が付いた地点では、まるでターニングポイントにはなっていないんですよ。高値をつけるどころか、むしろ直近低値をつけていたりします。

ここまでの過程、もう少し細かく見ていきましょうか。

クロス円軸における緑色の丸の地点に至るまでの過程(ドル円チャートで赤い直線を記した期間)において、

  • ドル/円は、ほぼ一方的に円が売られ(上昇)続けている
  • ユーロ/円は、最初の頃は円を売り(上昇)続けていたが、途中からは円を買ったり売ったりが交錯しつつも、やや下げ基調(円買い傾向)
  • ポンド/円は、最初の頃は円を売り(上昇)続けていたが、途中からは激しく円を買ったり売ったりが交錯し、結果的には大きく下げる(強い円買い傾向)
  • 豪ドル/円は、最初の頃は円を売り(上昇)で始まったが長くは続かず、円を買ったり売ったりが交錯しつつも、やや上げ基調(円売り傾向)

つまり、この時期の相場は、「ドル買い」に関しては市場全体の一致した動向でしたが、

  • 「円売りドル買い」一択という市場全体の流れ(つまり、全てのクロス円において円を売り、そのお金でドルを買う)は、前半のみ
  • 後半は「円売りドル買い」の動意は薄くなり、円は対する各通貨との個別の関係性で売買される様になる

ということになります。このことを各通貨ペア別で改めて説明すると、この期間は

  • ドル/円においては、一貫して円売りドル買いが続いている
  • ユーロ/円においては、前半は円を売ってユーロを買い(買い戻したユーロでドルを買う)が、後半に入るとユーロと円を売ったり買ったりが交互になり、最終的にはやや円買いが優勢
  • ポンド/円においては、前半は円を売ってポンドを買い(買い戻したポンドでドルを買う)が、後半に入るとポンドと円を売ったり買ったりが交互になり、最終的には大きく円買いを続ける
  • 豪ドル/円においては、前半は円を売って豪ドルを買い(買い戻した豪ドルでドルを買う)が、後半に入ると豪ドルと円の売り買いが細かく交差し出すが、最終的にはやや円売りが優勢

ということになります。

理解できましたか?それとも、頭がゴチャゴチャして訳分からなくなってしまいましたか?

こういったことは、やっぱり慣れが必要です。慣れれば慣れるほど、詳細を判断していくことが可能になるんですが・・・

やっぱ、難しいですかね?

まぁ、人には得手不得手ってものがありますから、こういった感じの判断には混乱してしまう人も多いと思います。

でも、安心してください。もっとシンプルに考えれば良いんです。

ドルと円だけを軸に把握するだけでも武器になる

細かく相関関係を見ることが難しい・・・

まぁ、最初の頃は誰でもそうです。

ただ、何度も言ってますが、複雑なことを複雑に考えたところで息苦しいだけです。複雑なモノゴトは、シンプルに考えシンプルに行動することが大切です。

そう、それがBOZ流!

まず大切なのは、ドルの動向と円の動向だけを把握することなんですよ。他の通貨の動向は把握できなくてもOKです。

だってね、通貨ペアを選択する際に基準にしたのは、「ドル・ストレート」と「クロス円」のみなんですよ。ドルか円が絡んだ通貨ペアしか取引しないわけで。

だから、まず最初の段階として、ドルと円の動向さえわかれば、他の通貨との相関性が分からなくたって、それは僕らにとって大きな武器になるんです。

もう1度、先ほどのチャートを見ておきましょうか。

横の列だけ見れば、4つの通貨ペアが一斉に同じ方向に動いている時期で、その時の市場のテーマを知ることは、簡単に出来るわけです。

上段の横一列は、ドルを軸として見る。そして、一斉に上に動いていればその時期は「ドル売り」がテーマ。一斉に下落しているならばその時期は「ドル買い」がテーマ。

見てすぐにわかりますよね。

だったら、横軸の一列が一斉に上を向いているのであれば、迷わずドル・ストレートの通貨ペアのどれかを「ドル売り」すれば良いだけじゃないですか。一斉に下を向いているのであれば、迷わずドル・ストレートの通貨ペアのどれかを「ドル買い」すれば良いだけじゃないですか。

それが市場の摂理です。簡単ですよね。

そして、下段の横一列は、円を軸に見るんでしたね。

下段横一列にある4つの通貨ペアが一斉に上昇している時期は「円売り」がテーマ、一斉に下降している時期は「円買い」がテーマということです。

これも、見ればすぐに分かる代物です。

だったら、クロス円の横軸が一斉に上を向いているのであれば、クロス円の通貨ペアのどれかを迷わず「円売り」すれば良いだけじゃないですか。一斉に下を向いているのであれば、クロス円の通貨ペアのどれかを迷わず「円買い」すれば良いだけじゃないですか。

それが市場の摂理ですよね。簡単ですよね。

これ、大切なポイントなんで、繰り返し言いますね。

「ドル」がテーマの時に、市場の動意が「売り」であるのであれば、トレードの方針は「ドル売り」です。

「円」がテーマの時に、市場の動意が「買い」であるならば、トレードの方針は「円買い」です。

この様に、難しく考えなくとも、横軸をシンプルに見ていけば、少なくともドルと円がテーマとなっている時期は把握できますよね。

そして僕らは、ドルか円が絡んだ通貨ペアしか取引はしない。

だったら、極端な話、ドルと円の動向さえ掴めれば良いわけです。これだけで、僕らにとっては大きな武器になるんです。

単純に「ドル」がテーマで動意が「売り」の時は、ドル・ストレートの通貨ペアの中から、自分が最もドル売りを仕掛けやすい通貨ペアを選んで、トレードすれば良いだけです。

同様に「円」がテーマで動意が「売り」の時は、クロス円の通貨ペアの中から、自分が最も円売りを仕掛けやすい通貨ペアを選んで、トレードすれば良いだけです。

もう、当たり前すぎて当たり前だの前田敦子です。

では、ついでにもう1つ。

ドル軸が一斉に下を向いて(市場はドル買い)いて、円軸が一斉に上を向いて(市場は円売り)いるのが、同時に起こっている時期なら、どの通貨ペアを取引すれば良いですか?

簡単ですね。

市場は、ドル買い円売り一色なので、トレードする通貨ペアは「ドル/円」で、ポジションはロングです。

全ての通貨ペアが円を売られ(例えばユーロ/円なら円を売ってユーロを買い)、買い戻したそのお金(ユーロ)でドルを買うという行為が、全ての通貨ペアで行われるわけです。

最も取引に信ぴょう性があるのは、「ドル買い円売り」がそのまま直で行われる「ドル/円」です。それ以外他にありますか?取引量も集まりやすく、ボラティリティだって上がるわけですから、ドル円のロングが最もやりやすい。

簡単ですよね。

難しい相場を、難しく考える必要はありません。シンプルに捉えてシンプルに考え行動することが大切です。

で、そのために、多通貨ペア監視の組チャートを、この選択でこの配列でしておくわけです。横一列の目線だけで、今のテーマがドルにあるのか円にあるのかを、熟達せずとも直ぐに分かるようにしたのが、この組チャートです。

そう、これがBOZ流!

( ̄∇+ ̄)vキラーン

だたし、ここから先に進もうとする人にとっては、やっぱりドルと円だけじゃなく、その他の通貨との相関性も把握したいところですよね。細かい相関関係を把握できるようになったら、もっと緻密な戦略等を立てられますからね。

ということで、次に縦軸を見るお話に入っていきましょう。

と思ったら、やっぱり長くなり過ぎましたね。

この記事書き出した時は、この回で完結するかなと思ってたんですが、予定の半分も進みませんでした。

ということで、次回は組チャートの縦軸を交えて見る解説に入っていきます。

それじゃあ、また。

多通貨ペア監視のノウハウ(2)通貨の基礎知識編

さて、今回は「多通貨ペア監視のノウハウ(1)」の続編です。

前回は、多通貨ペアを監視するメリットと通貨の相関性の基本的な見方を説明しました。

ただ、相関性の把握やトレード・チャンスを求めだしたところで、キリがないということもお話しました。

なので、自分にとって適切な情報量、つまり適切な通貨ペアの数に絞っていくところから始める必要がるんでしたね。

ということで今回は、適切な通貨ペアの数に取捨選択できるようになるために、通貨に対する基礎知識のお話に入っていきます。

それじゃあ、始まり始まり~!

通貨ペア選択以前の基礎知識

では、通貨に関する基礎知識をお話をしていこうかと思います。

まぁ、FXの入門書なんかに書いてあるレベルの基礎知識ですから、知ってる人も多いと思いますが、

「そんなの知ってる~」

とか言って通り過ぎようとするのは、勝てない人あるあるです。

そんな状況から抜け出す意味でも、知っていようがいまいが、基礎固めのつもりで読んでいきましょう。

主要通貨を知ろう

世界各国、多種多様な通貨が存在していますが、FXで実際にトレードできる通貨はある程度限られています。

その中でも、実際に外為市場で取引が活発に行われている、つまり取引量の多い通貨というのは、それほど多くはありません。

BIS(国際決済銀行)による外為市場における2022年度の取引量ランキングは、

  1. 米ドル(6,641)
  2. ユーロ(2,293)
  3. 円(1,253)
  4. ポンド(969)
  5. オンショア人民元(526)
  6. 豪ドル(479)
  7. 加ドル(466)
  8. スイス・フラン(390)

(括弧内は取引量で単位は10億ドル)

となっています。

この中で特に取引の多い米ドル・ユーロ・円の3つを、「三大通貨」と呼びます。市場においてこの三大通貨が絡む取引は、全体の6割とも7割とも言われています(データの扱いによって違う)。つまり、そのほとんどが三大通貨で占められてるわけですね。

ただし、市場における取引高の割合は、

  • ドルが44.2%
  • ユーロが15.3%
  • 円が8.3%

です。ドルが市場全体の半分近くを占めて圧倒的であるのに対し、世界3位の円は10%にも満たないわけです。4位がポンドで6.4%で、それ以下は4%にも届かないのが現実です。

三大通貨とは言え、その格差は大きいことを覚えておいてください。

で、上記8通貨のうちオンショア人民元を除いた7通貨を「メジャー通貨」と呼ぶのが一般的です。オンショア人民元は現在取引量が多いですが、2019年度の調べではスイス・フランよりも少なく、また中国人民元が自由市場での取引という観点からは特殊なため、除外されています。

また、外為市場で取引可能であっても、このメジャー通貨以外の通貨(例えば香港ドル・シンガポールドル・トルコリラなど)は、マイナー通貨と呼ばれます。メジャー通貨ですら取引量5位以下は4%に満たないわけですから、マイナー通貨は外為市場の大海原の中では、ほんのわずかな流通量であることを、頭の中に入れておいてください。

主要通貨ペアを知ろう

では、主要となる取引量の多い通貨ペアはどれなのでしょう?

2022年度の取引量のランキングはBIS(国際決済銀行)によると、

  1. EUR/USD(ユーロ・米ドル)
  2. USD/JPY(ドル・円)
  3. GBP/USD(ポンド・米ドル)
  4. USD/CNY(米ドル・オンショア人民元)
  5. USD/CAD(米ドル・加ドル)
  6. AUD/USD(豪ドル・米ドル)
  7. USD/CHF(米ドル・スイスフラン)

となります。

見ての通り、基軸通貨であり圧倒的な取引量を誇る米ドルとメジャー通貨の組み合わせが、取引量の多い通貨ペアですね。中でも、上位3位の合計取引量は、市場全体の半分近くを占めています。

ただし、ここで「あれ?」と思った方も多いと思います。

ランキング1位は、世界1位と2位の取引量を持つユーロ/ドル。ランキング2位は取引量世界1位と3位の取引量を持つドル/円ですが、ランキング3位は、世界2位と3位の取引量を持つユーロ/円ではなく、ポンド/ドルなんですよ。

その理由は簡単です。先ほどお話した通り、為替市場におけるドルの影響力は圧倒的だということです。なので、ドルが絡まない通貨ペアの取引量は、例えそれが取引量世界2位と3位の通貨ペアとはいえ及ばないということです。

そのため、取引高世界1位のドルと4位のポンドが繰り上がり通貨ペアでは3位となり、以下の通貨ペア順位もそれに準じる結果となっています。

このことは、通貨ペアを選択するうえで重要なポイントとなりますから、忘れずに覚えておいてください。

で、上記7つの通貨ペアからUSD/CNYを除いた6通貨ペアが、外為市場で取引量の多い通貨ペアだということを覚えておいてください。

ドルストレートとクロス通貨

で、そんな米国の通貨であるドルは、世界の基軸通貨となっていて、基本的に世界の貿易は、ドルを介して取引が行われてます。

どういう事かというと・・・

米国に対して日本や英国やらの世界各国が貿易を行う場合、取引する通貨は、米ドルと自国通貨(米国と日本なら、ドルと円)となるのは、当然なんで分かりますよね。

しかし、日本と英国が貿易する場合は、円とポンドを直接取引するわけではなく、仕組みとしては、円を一旦ドルに換えて、そのドルとポンドで取引をするんですね。

ドル以外の通貨同士では、直接取引できないんですよ。直接取引できるのは、ドルを相手にした時だけです。

なので、ユーロ/ドルやらドル円など、対ドルの通貨ペアは直接互いの通貨のやり取りが可能なので、「ドルストレート」と呼ばれます。

そして、ドルが絡まない通貨ペア(ポンド/円やユーロ/ポンドなど)は一旦ドルを挟んで取引するため、「クロス通貨」と呼ばれます。

対円の通貨ペア(ユーロ円や豪ドル円など)のことは、「クロス円」と呼ばれます。

この言葉、FX関連の話の中では常にサラッと使われますので、知らない人は覚えておいてください。

リスク・オンとリスク・オフ

金融ニュースなどで度々目にする言葉に、「リスク・オン」と「リスク・オフ」というのがあります。

リスク・オンとは、景気の見通しが明るい時に、投資家・投機家が高いリスクをとりに行く状態のことです。要するに、景気が良いからリスクの高い金融商品に手を出していくことを意味します。

それに対しリスク・オフとは、景気の見通しが悪いため、投資家・投機家がリスクの低い金融商品に手を出していくことを意味します。リスクの高い株式・原油を売って、リスクの低い債券や金を買ったりするんですね。

リスク・オフの際に通貨の場合は、リスクの高い新興国の通貨を売ってリスクの低い先進国の通貨を買います。

で、その中でもリスクが低いと考えられている通貨を「安全通貨」と呼び、その代表格が円とスイス・フランになります。

一昔前は「有事のドル買い」と言ってドルは安全通貨の代表でもあったわけですが、今ではその面影はかなり薄くなっています。近年では、有事の際は円が買われることが多くなってきました。

しかし、そんな円もここ数年、その経済における相対的地位の低下化から、安全通貨としての側面はやや薄れつつある様に感じます。(個人的な感想です)

資源国通貨

G7の様な経済主要国の主要な貿易産業は、工業製品やITサービスになりますが、それとは違って石油や鉄鉱石や石炭などの資源を主力の輸出産業とする国の通貨を「資源国通貨」と呼びます。

資源といえば石油、石油といえばアラブ諸国を思い浮かべる人も多いと思いますが、石油取引は一般的にドル建てで行われます。

そのため、外為市場における資源国通貨と言えば、主要なのはオーストラリアの豪ドルやカナダの加ドルになります。

ただし、カナダは地政学上、アメリカの隣にあることもあり、豪ドルに比べて加ドルは資源国通貨としての特徴は薄くなり、ややアメリカ寄りの値動きになりやすい特徴があります。(ただし、旬な話題としては、アメリカはカナダに関税をかける云々の話題になっていますから、値動き的にはまた違った変化が生じやすい環境にあります)

なお、ここ最近では資源通貨国として取引量は決して多くはありませんが、オーストラリアと同様に資源国であり、地理的にも近いニュージーランドをメジャー通貨7か国にプラスして、通貨の相関関係を捉えようとする傾向がある様に思います。(これも個人的見解に過ぎませんが)

各通貨の特徴

それでは、以上の開設を踏まえたうえで、代表的な通貨の特徴をサラッとお話していこうと思います。

米ドル

既にお話した通り、外為市場の中でも米ドルは圧倒的な取引量を誇る基軸通貨ですから、値動きは安定的です。(この場合の安定的とは、値動きが緩やかという意味ではなく、価格が飛んだりノイズが生じにくいという意味です)

さらには、政治経済における超大国であるアメリカのニュースは、他の諸外国に比べ収集しやすい環境にあります。

そのため、最も取引しやすい通貨であると言えます。

ユーロ

外為市場で2番目に取引量の多い通貨のため、ドル以外の他通貨と比べると安定的な値動きとは言えるでしょう。

しかし、ユーロはEU各国の共通通貨のため、「欧州」という括りだけではなく、EU内の1国の特別なニュースに反応する可能性も高くなります。例えば、フランスやオランダなどのEUの大半の国の経済状況が好調でも、ドイツ1国の経済状況が悪化することで、EUそのものの値動きは影響を受けます。

その様に、ファンダメンタルズ的な判断は、単独な通貨に比べると単純ではないとは言えるでしょう。

しかし、テクニカルで判断する場合は、世界第2位の取引量であるユーロが、取引しやすい通貨の1つであることは間違いありません。

ポンド

金融大国の英国の通貨であるポンドは、投機性が高くなりやすい特徴から、ボラティリティ(値動きの幅)の高い通貨の代表格です。そのため、トレーダーにとって人気の高い通貨であることは間違いありません。

EUとは地理的・経済的にも結びつきが強いため、ユーロが売られればポンドも売られるなど、ユーロと似た様な傾向を示すことが多いです。

豪ドル

既に解説した通り、主な経済主要国が工業・IT産業中心であるのと違って、オーストラリアの主な輸出産業は鉄鉱石や石炭などの鉱物資源です。

そのため、豪ドルは資源国通貨と呼ばれ、経済主要国(米国・EU・英国・日本)とは違った値動きを形成します。

また、オーストラリアは米国やEUとは地理的にも遠く中国の影響も受けやすいため、加ドルに比べると豪ドルは独自の値動きを形成しやすい通貨です。

地理的に近く同様に資源国であるニュージーランドの通貨は、豪ドルと似た様な値動きになりやすい傾向にあります。

スイスフラン

スイスは地理的にはEUに近いですが、永世中立国ということで、政治的結びつきがEUや米国などの経済主要国とは全く違う立ち位置にいます。

そのため、値動きもそれらの国とは違った様相を呈します。

中立国であるがゆえに、スイスフランは安全通貨としての側面があり、アメリカの政情不安等から米ドルを手放す傾向にある際、逆にスイスフランが買われるケースも多々あります。

日本の通貨である円は、世界3位の取引量であり、また投機的な取引よりも輸出入における実需の割合が高いため、その値動きは安定的です。

また円は安全通貨としての側面が強く、相場がリスク・オフに傾くと、円が買われやすい傾向になります。

ただ、ここ数年の印象でいえば、日本経済の相対的な低下のせいもあってか、以前のような安全通貨の一面は薄れてきている様に思えます。

日本のトレーダーからすると、日本の通貨である円の情報は手に入れやすい環境にあり、また他の通貨資産を円換算する必要もなく資金管理が比較的楽なため、人気の通貨です。

通貨ペア選択のためのポイント

通貨における基礎知識を、ここまで解説してきました。

ここからは通貨ペアを適切に選択するために、押さえておきたいポイントをお話します。

取引量とボラティリティ

ボラティリティとは、ご存じの通り価格変動の大きさのことです。ボラが大きいというのは値動きの幅が大きいということで、逆にボラが小さいというのは価格変動幅が小さいということです。

で、トレードというのは、売買差益を狙って行なう行為ですから、ボラティリティが大きければ大きいほど、取引通貨としての魅力が増します。スプレッドや手数料のことを考えたら、尚更のことです。

ただし、このボラティリティに関して言うと、実は大きく2つに分けて考えていく必要があります。それは、

  • 取引量を伴うボラの大きさ
  • 取引量が少ないが故のボラの大きさ

です。

取引が活発になり取引量が多くなると、ボラは大きくなります。

ご存じの通り、東京時間よりもロンドン市場の取引が大きくなりますから、ボラは大きくなりますし、ロンドン市場とニューヨーク市場が重なる時間はさらにボラが拡大します。

またトレンドが発生している場合はもちろんボラは大きくなりますが、これも発生してる方向に対して取引が活発になっているわけですから、取引量を伴ってボラが拡大しているということになります。

ですから、取引量が増大するとボラが拡大するというのは正しい判断です。

しかし、逆に取引量が少ない場合でもボラが拡大したりするんですよ。

取引量が少ないということは、市場で売買する参加者も資金量も少ないということです。

であれば、ちょっと多めの買いが入った途端に大きく価格は上に上がり、ちょっと多めに売りが入った途端に価格は大きく下がるわけですね。

これは単に注文枚数が少ない、つまり市場が閑散としているために、値が飛んでしまいやすいということです。値が飛んでしまっているため、見た目にはボラが大きくなるわけです。

であれば、上に大きく値が伸びた様に見えても、それは買い手が閑散としていたのが理由であって、値動きの方向性が固まって上に上昇したわけではないかもしれません。そうであれば、上の方でちょっと大きめの売りが入った途端に今度は逆に大きく下に値が落ちたりもするんですね。

つまり、取引量の伴わないボラの大きさというのは、方向性が当てにならないんです。ノイズが多くなりがちで、信ぴょう性に乏しいということになります。

以上のことから、取引量が活発だからボラティリティが大きくなる場合と、取引量が少ないからボラティリティが大きくなる場合の2パターンがあることを、覚えておいてください。

取引量とトレードの関係

さて、ここまで取引量に着目してお話してきましたが、何が言いたいかというと・・・

取引量が多い通貨ペアをトレードするというのは、リスクを抑えるということに繋がるということです。

取引量の少ない通貨ペアは、注文量も乏しいため、大きく動くという特徴がありますが、先ほどお話した通り、それは単に値が飛んでるだけってことが結構多いわけです。上に行ったと思っても直ぐ下に大きくぶれる可能性も大きいわけで。

要するに、取引量の少ない通貨ペアをトレードするというのは、売買の方向性に対する信ぴょう性が薄いというリスクを孕んでいるということです。

また、注文数が少ないため、取引が成立しないことが出てきます。つまり、買いたい時に買えず、売りたい時に売れないことが出てきやすいんですね。

ファンダメンタルズ的に大きな異変があった場合は、なおさらです。自分のポジションと反対に動いた場合は、ストップ注文が約定できずに、取り返しのつかない損失を被る可能性があるんですね。

わずか数十分で歴史的暴落となったスイスフラン・ショック(2015年)は記憶に新しいと思います。安全通貨と呼ばれ、取引量も世界第7位のスイスフランですら、非常時にはそうなってしまうんですよ。

マイナー通貨と呼ばれる通貨は、そういった危険性を常に孕んでいると言えます。

しかし、取引量が多い通貨ペアというのは、注文がそこら中に散らばっているため、価格推移が比較的安定する傾向にあります。

要は、ノイズが少ないってことです。一時的な目先の値動きに振り回されることが少なくなるため、取引量が少ない通貨よりも多い通貨の方が、取引しやすい傾向にあります。

まぁ、あくまで比較の問題なので、取引量が多いからノイズがないってわけじゃありませんけどね。

以上のことから、リスクを承知でマイナー過ぎる通貨を選択したいなら、それはそれで止めませんが、余計なリスクを抱えたくないのであれば、出来るだけメジャーな通貨同士のペアで取引することをお勧めします。

スプレッドについて

トレード・スタイルによるシビアな差

スプレッドとは、ご存じの通り買値と売値の差額のことで、トレーダーからすると実質な手数料の様なものになっています。

なので、トレード回数が多くなればなるほど、トレードのトータル収支に大きく影響を与えますから、トレード・スタイルによってその重要度は大きく変わります。

例えばスイング・トレードの場合なら、1ヶ月にトレードする回数は少ないですし、1回のトレードの損益幅は大きいですから、スプレッドそのものがトータル収支に占める割合は少ないですよね。

しかし、デイトレの場合になると、月のトレード回数はもっと増えますし、トレード1回の損益幅はスイングに比べ小さくなりますから、スプレッドの占める割合は大きくなっていきます。スキャルピングであれば、それはもうかなりの負担になってしまいあす。

ちょっと単純化して比較してみましょうか。スプレッド1pipsの通貨ペアをトレードしたとしましょうか。これをトレード回数で比較すると、

  • 月に3回しかトレードしかしない(スイング)なら、スプレッドとして差し引かれる損失は、月間3pips
  • 月に20回トレードする(デイトレ)なら、スプレッドとして差し引かれる損失は、月間20pips
  • 月に200回トレードする(スキャルピング)なら、スプレッドとして差し引かれる損失は、月間200pips

1回のトレードでの利益幅が小さくなるトレード・スタイルになるほど、ロット数は増える傾向にありますから、単純にスイングがロット1、デイトレがロット2、スキャルピングがロット3として考えると、

  • スイングは、月間3pips×ロット1=3pips
  • デイトレは、月間20pips×ロット2=60pips
  • スキャルピングは、月間200pips×ロット3=600pips

改めて考えると、結構な差ですよね。取引回数が増えれば増えるほど、また取引額が増えれば増えるほど、スプレッドとしてトレーダーが被る損失(「損失」と言い切った方が理解しやすい)は、倍々ゲームで増えていくわけです。

このこと、実はFXを始める最初のうちは、結構気にするんですよ。スレッドのできるだけ小さなFX業者を探したりなんかしてね。

ところが、トレードを重ねるうちに、なぜか気にしなくなってしまうんですよ。負けが続くと、そういった感覚がマヒしちゃうのかな?

ま、以上のことから、取引回数が少なく、また1度のトレードにおける金額が極端に大きくなければ、それほどスプレッドは気にしなくても良いですが、取引回数が多いトレードスタイルの人は、スプレッドに対してシビアに構える必要があります。

通貨による違い

通貨によってスプレッド幅には違いがあるのは、ご存じだと思います。

原則、メジャー通貨はスプレッドが狭く、マイナー通貨はスプレッドが広くなる傾向がありますが、この説明だとちょっと正確性に欠く感じかな。

もう少し正確性をもって分かりやすく説明すると、

  • 取引量が圧倒的に多いドル・ストレートは、スプレッドが狭くなる傾向
  • 取引量がそれに次ぐユーロや円もスプレッドが狭くなる傾向
  • 国内業者のFX口座であれば、クロス円のスプレッドはより狭くなる傾向

になります。

そのため、スプレッドの観点でいえば、ドル・ストレートかクロス円を選択することが有利なトレードになります。

ちなみに、国内業者と海外業者との比較では、

  • 国内業者では、最もスプレッドが狭いのがドル円、次いでユーロドル。クロス円の方がスプレッドが狭い傾向にある
  • 海外業者では、最もスプレッドが狭いのがユーロドル、次いでドル円。ドル・ストレートの方がスプレッドが狭い傾向にある

といった感じになるでしょうか。

スワップポイントについて

これもまぁ、ご存じの方ばかりだとは思いますが、スワップポイントとは簡単に言ってしまうと、その通貨を買った時につく金利の様なものです。

原則的にマイナー通貨の方がスワップポイントが高く、メジャー通貨の方が低い傾向にありますが、一概には言えません。同じメジャー通貨、同じマイナー通貨でもポイントには差があります。

これは、各国の金利政策によって違いがあるためで、基本的に通貨金利の高い国の通貨のスワップはポイントが高くなりますし、金利の低い国の通貨はポイントが低くなります。

また、これは実際にトレードした際にうっかりし忘れやすいことなんですが、スワップポイントは買った場合にはプラスで付きますが、売った場合はポイントが引かれます。

なので、スワップで差益を考える場合は、必ず「スワップポイントが高い通貨を買い、スワップポイントが低い通貨を売る」という組み合わせの通貨ペアを選択する必要があります。

ただ、スワップポイントというのは、1日ごとに加算されますので、日計り(その日に買ってその日のうちに決済する)の場合、スワップポイントはつきません。

なので、デイトレやスキャルでは全く気にする必要がありません。スワップポイントを気にするのは、ポジションを次の日以降まで持ち越すトレーダーのみです。

とはいえ、スワップポイントは、取引額や狙う差益から比べるとそれほど大きくはありません。スイング・トレードをする際に、スワップを気にしすぎると、むしろチャンスを逃すこともありますから、気にかけ過ぎは禁物かもしれません。

ちなみにですが、スワップポイントそのものを狙う投資スタイルはあります。長期積み立てによって金利で利益をもらう発想と同じなんですが、これには注意が必要です。

スワップ目当てで長期保有してても、為替差損(つまり価格が買値よりも下がっていく)が膨らんでしまえば、結果として大きな損失を被ることになるというリスクがあるからです。

今から20年ほど前、この投資方法で世界を席巻した日本の主婦達が沢山いて、「ミセス・ワタナベ」と呼ばれるほど海外でも知られる存在でしたが、リーマン・ショックと共に彼女たちは財産を失いました。

なので、正直この投資スタイルはお勧めしません。もしやるのであれば、レバレッジをかけない「外貨預金」のスタイルの方が現実的です。為替差損のリスクは消えませんが、レバレッジをかけていない分、損失はまだ限定的です。

またミセス・ワタナベがやっていた様なスワップ・ポイント目当ての投資スタイルは、多大なレバレッジをかけることでスワップ収益を大きくし、その収益だけで日々の生活を潤そうとするものです。つまり、長期投資なのに長期的な視野に立っていないわけで。

しかし、外貨預金のスタイルは、考え方としては長期積立預金に近く、「将来的に資産が数パーセント増えたら良いな」という趣旨のものです。

だからと言って、個人的にお勧めするわけではありませんが、ちょっとスワップの話が出たんで、比較対象として採り上げてみました。

なお、このブログは取引差益を狙う「トレード」の話が主旨なので、スワップ・ポイント狙いについては、ほぼ重要視していませんので、あしからず。

総括

さて、通貨選択の基本的なポイントについて、いくつかお話しました。

ここまでお話したことを、簡単にまとめると、

  • 取引量の多い通貨・通貨ペアを選択することで値動きや売買の不安定さというリスクを回避することができる
  • ボラティリティの高い通貨ペアを選択することは大切だが、取引量の伴わないボラティリティはリスクが大きい
  • スプレッドは取引回数や取引額が多くなればなるほど比重が大きくなり、気にする必要が出てくる
  • スプレッドを考慮するなら、ドルストレートかクロス円が有利
  • スワップ・ポイントは、日計りなら気にする必要はなく、スイングでも損益に対する比重が少ないのであれば、あまり気にしない方が良い

ということになります。

で、これらを考慮するならば、通貨選択の基準はもうハッキリしてますね。

  • 選択する通貨は、取引量・ボラティリティ・リスクを考慮すると、メジャー通貨のみ
  • 選択する通貨ペアは、スプレッドの負担を考慮すると、ドル・ストレートとクロス円に絞る

ということです。

通貨ペア選択する際には、ドル・ストレートやクロス円であり、そしてドルや円に対する通貨は、全てメジャー通貨で構成するべきなんですよ。

いくらドルや円の取引量が大きいからと言って、売買先がマイナー通貨であれば、取引量は必然的に少なくなりますから、その分リスクも背負いやすくなるわけです。

さて、この選択によって監視する通貨ペアは、21種類から11種類へと、一気に減らすことができました。

しかし、それでも・・・

監視する通貨ペアは、一気に半分になりました。

が、実際はその数でも、ちょっと微妙です。

11通貨ペアをチャートを並べてみるとこんな感じになります。

パッと見で「ムリ!」って思う人もいるでしょし、「大丈夫だろ」って思う人もいるかもしれない、微妙なラインです。

でも、実際やってみれば分かると思いますが、

「どの通貨ペアがどの場所にあって、どれとどれを見比べたら相関関係が分かって・・・」

ってな感じで、11個もチャートが並んでいると、結構ゴチャゴチャしちゃいます。

しかもそんなゴチャゴチャした情報を、時間をかけずに正確に把握し判断するってなると、実はこの数だってかなり大変なんですよ。

この数の監視を使いこなせる様になる時間と労力があるんであれば、個別の通貨ペアの分析力アップのための検証と練習に費やした方が、現実的じゃないですかね?

そう、努力の方向性は間違っちゃダメなんですよ。

僕は年齢と共にミスが増えるようになったため、次第に監視する通貨ペアの数は減らしてきました。今の僕の監視通貨ペアは、8種類です。

で、相関性の見極めとトレードする通貨ペア選択をする上では、この8つの通貨ペアという数が適切なのかな、と個人的には思ってます。

なので、これから多通貨ペア監視に取り組もうという人は、8つの通貨ペアで監視することから始めた方が良いと思います。

さて、基本的な知識の方は、この辺まで分かってもらえたらOKかと思います。ここから先は、実践に結び付けるための応用編をお話していこうと思います。

が、案の定お話が長くなってしまいましたので、次回に持ち越しです。

次回からは、

  • 監視通貨ペアを8つに絞ること
  • 僕が実際にやっている多通貨監視の実践的なやり方の解説
  • 実際にトレードするための通貨ペアの選択手順

をお話していこうと思います。

ある意味、今までは基本的な話ばかりで退屈だったかもしれませんが、次回からは一気に実践的な方法論に入っていきますので、お楽しみに。

それじゃあ、また。

多通貨ペア監視のノウハウ(1)相関性の把握編

お久しぶりです。前回の記事から6ヶ月が経ちました。相変わらずの不定期ぶりですねぇ。

で、今回は前回の続き・・・と言いたいところですが、続編用に用意していた画像たちがPCの故障と共にどこかに行ってしまったため、モチベーションがダダ下がりに。

ということで、今回はXでアンケートした結果を受けて、

「各通貨の相関関係と複数通貨ペアの監視の仕方」

というテーマで、お話しようかと思います。

複数の通貨ペアを取引する人はもちろん、1つの通貨ペアしか取引しないぜって方にも参考になるお話かと思います。

それじゃあ、始まり始まり~!

なぜ、複数の通貨ペアを監視した方が良いのか?

トレードにおけるメリット

複数の通貨ペアを監視することで、トレーダーは大きなメリットを受けることができます。そのメリットは大きく分けて、

  • 市場の動向を把握することができる
  • トレード・チャンスが増える

の2つになります。

市場の動向を把握するというのは、今市場では何が(どの通貨が)テーマとなって売買が行われているのかを知るということです。

「市場は今ドルがテーマになってて、NY市場開始とともに市場はドル売り主導の展開となっている。なので、ドル売りで攻めよう」

ってな感じで、市場の動向を把握することができる様になるんですね。

また、複数の通貨ペアを監視することで、今最も自分にとって取引しやすい局面にある通貨ペアを選択することができる様になります。

1つの通貨ペアしか取引しない場合、トレードチャンスがなかなかやってこないことが多かったりして、結果的に割と強引なトレードをして負けを重ねたりする人っていませんか?いますよね?

でも、監視する通貨ペアがある程度あれば、その中から自分が最も得意とする局面を選んでトレードすることが可能になりますから、単にトレードできる回数が増えるだけでなく、勝率の高くなる取引を選択することができるわけです。

トレーダーにとっては、良いことばっかりです。

ただ、多通貨ペアをそのために監視するといっても、きちんとしたノウハウは必要です。

ということで、これから解説に入っていきましょう。

市場の動向を知るために

通貨の相関関係

市場の動向を把握するのにまず大切なことは、

「通貨の相関関係を知る」

ということになります。

じゃあ、通貨の相関関係って何?って話になりますが、その中で最も主軸となるのが、「各通貨の強弱の関係」です。「ドルが強い」とか「円が弱い」とかってヤツですね。

例えば「ドルが最も強い」というのは、市場ではドルが最も買われているということになりますし、「ユーロが最も弱い」というのであれば、市場ではユールが最も売られているということになります。

で、これを知ることで、売買の方針が立てやすくなります。

例えば、今現在ドル買い傾向が強いのであれば、それに沿ってドル買い方針にすることが可能になります。さらに「市場ではドルが一番強く、円が一番弱い」のであれば、ユーロ/ドルやオジー/ドルを選択せずに、ドル/円を取引銘柄にしてドルを買って円を売った方が上手くいく可能性は格段に上がりますよね。

この様に、通貨の強弱を把握することは、取引の方針を立てる上で重要な役割を担います。

通貨強弱チャートやグラフについて

さて、通貨強弱というと、それを表すチャートやグラフがあったりします。で、それらを用いて市場を把握しようとする人も、結構多いのではないでしょうか。

しかし、実際にそれが実践トレードで役に立つのかどうかは疑問・・・というより、その利用価値を実践レベルにまでもっていくのは、結構大変なんですね。

例えば、通貨強弱チャートで割と知られているのが、OANDAのサイトに掲載されている通貨強弱チャートです。8通貨の強弱関係をチャートで表してくれます。

えっとこの上のスクショ、実は数年前のものです。今はだいぶ改善されていているため、あえて「一般的な強弱チャートって、多くの場合こんな感じ」という意味合いで出してみました。

これを見ると分かる通り、正直見づらいです。多くの線がゴチャゴチャと入り組んでいて、どの通貨が一番強くて、その次はどれかとか、分かりづらいんですよ。今、円はどの程度の強さでどんな傾向なんだろ?って直ぐには順を追っていかない限り分かりづらいですよね。

ただ、今のOANDAさんの強弱チャートは随分と改善されています。下図がそれです。

現時点で最も強い順に各国の国旗が並ぶ仕様になっているので見やすいですし、その国旗マークにポイントするとその通貨の推移だけが見れる仕様になっていますし、例えば「ドルと円だけ」とか「ユーロとドルだけ」みたいに、自分が見たい通貨だけを指定して見ることも出来るんですね。

なので、あえて強弱チャートを使うなら、OANDAさんの通貨強弱チャートは、結構お勧めです。

ただしかし、それでも実践で用いるには、まだまだ障壁画あります。

OANDAさんに限った話でなく、多くの強弱チャートの場合、どの様なロジックでそれが成立してるのか分からないんですよ。どういった要素を使って、どの様な計算を用いて強弱を表しているのか?がさっぱり分からない。

なので、それぞれの強弱チャートを見比べても、推移の仕方が違いますし、場合によっては強弱のランクも違ってきます。

また、見たい期間も分からないことが多い。例えば、ここ1ヶ月をトータルに考えて強弱を検討したくても、今見てるチャートがそれを表してくれるのかも謎ですし、今ここ数分の強弱だけを知りたくても分からなかったりします。(分かる仕様のチャートもあります)

おまけにロジックが分からないので、「今、ドルが圧倒的に強い」と分かっても、それが今後も続くのかどうかは分かりません。ドルを買った瞬間が実はピークを迎えていて、そこからドルは下がり続けるかもしれませんよね。

つまり、強弱チャートを見て方針を立てたところで、ロジックが分からなければそれは単なる過去の推移データでしかなく、これからの方向性は全く想定がつかないんですね。

もちろん、それらの壁を乗り越えて、実際のトレードに有益に扱えるようになる可能性はあります。

が、その道のりは遠いはず。だったら、通常のチャートを把握できるように四苦八苦してた方が、もっともっと有益なんじゃないですかね?

ということで、僕は個人的にあまり通貨強弱チャートを用いるのはお勧めしません。

もし、それらを用いるのであれば、そのロジックが分かるものを使ってください。仮に知らないものを活用するのであれば、それは「あくまで今時点までの状況を表しているだけ。今ここから先のことは分からない」という意味合いで見る様にしてください。

通貨相関関係をチャートから読み解く

さて、ここからは通常の通貨ペアのチャートを用いることによって、通貨の相関関係を読み解くやり方をお話していくことにしましょう。

まずは基本をおさえよう

外為市場において、取引量が大きい通貨とえいば

  • ドル
  • ユーロ

の3つで、これを世界三大通貨と呼びます。

で、通貨の相関性を把握する際には、この世界三大通貨の相関性を見ることが基本になります。

やり方としては、まずこの3つの通貨で構成される通貨ペア

  • ユーロ/ドル
  • ドル/円
  • ユーロ/円

のチャートを表示し、これらを比較することになります。

下の図は、これら3通貨ペアを同時に表示した15分足チャートです。水色で囲った時間が東京市場の時間、オレンジ色が欧州時間、紫色が欧米時間です。

これを見ると、欧州時間から米国時間が始まった当初までは

  • ユーロ/ドルは下降(ユーロが売られ、ドルが買われている)
  • ユーロ/円も下降(ユーロが売られ、円が買われている)
  • ドル/円は上昇(ドルが買われ、円が売られている)

ということになります。

つまり、この3者の関係を見ると、欧州時間帯では、

  • ドルはいずれも買われている
  • ユーロはいずれも売られている
  • 円は売られたり買われたり(ユーロに対しては買われ、ドルに対しては売られる)

となりますから、この時の相場としては

  • ドル買いがテーマ(目的・主導)
  • ユーロ売りがテーマ(目的・主導)
  • 円は、ただドルを買う目的のために円を売っただけであり、ユーロを売る目的のために円を買っただけ

ということが考えられますね。つまり、ドル買いユーロ売りが、この時の欧州市場での動意(意志・思惑)であると推測できるわけです。

であれば、基本的にこの欧州時間の通貨選択としては、ドル買いとユーロ売りに動意・目的があるため、この2つの組み合わせである「ユーロドル」をショートでトレードするのが、最も合理的な判断になります。

円そのものは、ドル買いしたい人、ユーロ売りしたい人のそれぞれの都合によって、売られたり買われたりしているに過ぎないわけですから。

ところが、米国時間に入る直ぐに、相場の動向が変わってきているのが分かると思います。

  • ユーロ/ドルは上昇を始める(ユーロが買われ、ドルが売られる)
  • ユーロ/円は上昇を始める(ユーロが買われ、円が売られる)
  • ドル/円は方向性をなくす(ドルと円は売り買いが交錯する)

ですよね。ということは、これらの3通貨は米国時間には、

  • ユーロはいずれも買われている
  • ドルも円もユーロに対しては売られている
  • ドル/円では売られたり買われたり

ということですから、

  • ユーロ買いがテーマ(目的・主導)
  • ドルと円はユーロを買うために売られているだけ
  • だからドル/円は方向性がなく売られたり買われたり

ということになりますね。

つまり、欧州時間では「ドル買い・ユーロ売り」がテーマだったのが、米国時間に入ると「ユーロの買戻し」のみがテーマになり、そのためにドルや円が売られているだけということが分かると思います。

この場合の取引方針は、ユーロ絡みの通貨ペアでユーロを買うことになるわけで、じゃあどの通貨ペアにするかは、各通貨ペアをテクニカルで判断し、最も自分が取引しやすいと思える通貨ペアを取引することになります。

とまぁ、以上が相関性を見る際の考え方の基本となります。理解できたでしょうか?

この相関関係の把握の仕方、時間をかけずにものの数秒で把握できるようになるには、頭の中で理解しただけじゃ難しいです。毎度毎度、この3つの通貨を見比べることで、身に着けなくちゃいけません。

ただ、慣れるまでの間は、以下のような表を全てのパターン作っておいて、手元に置きながら見比べて判断するのも有効な手段です。

(全てのパターンを図にしてアップしようと最初は思ったんですが、それだとその図を写すだけで済み、丸っきり脳みそに汗をかかずに済ませがちです。なので、あえて1パターンしか表にしてません。少なくとも一度は自分の頭を悩ませながら考えてください。そうじゃないと、成長はしないですよ)

ただ、パッと見で直ぐに把握できるようになるまでに、それほど時間はかかりません。比較的容易な道のりなので、積極的に取り組んでみてください。

三大通貨以外の通貨の相関性は?

さて、世界三大通貨であるドルとユーロと円の相関性を見る方法は分かったと思います。

では、この世界三大通貨以外の通貨との相関性を把握する場合は、どうしたら良いでしょうか?

まぁ、原理は同じです。

先ほどの三大通貨の時と同じ様に、比べたい通貨を3つ指定し、それらを先ほどと同じようにして比べて見れば良いだけです。

例えば、「私は、ドルと円とポンドを取引する」という人であれば、比較する通貨ペアは、

  • ドル/円
  • ポンド/円
  • ポンド/ドル

の3つになりますよね。この3つを先ほどと同じ要領で見ればよいわけです。簡単ですね。

ただ、この3通貨に加え、もっと正確に相関性を把握しようとすると、結局は取引量が世界2番目のユーロとの相関性が気になり出したりします。

そう考えてしまうと、取引するしないにかかわらず、実質的に監視する通貨はドルとユーロとポンドと円の4種類になってしまいますよね。しかしそうなると、比較する通貨ペアは、

  1. ユーロ/ドル
  2. ユーロ/円
  3. ユーロ/ポンド
  4. ドル/円
  5. ポンド/ドル

と5つになり、見る通貨が1つ増えただけで、見なければいけない通貨ペアチャートは2つ増えることになるわけです。

では、比較する通貨をさらに1つ加えて5つにした場合は、どうなるでしょう?先ほどの4通貨に豪ドルを加えると、比較する通貨ペアは、

  1. ユーロ/ドル
  2. ユーロ/円
  3. ユーロ/ポンド
  4. ドル/円
  5. ポンド/ドル
  6. ユーロ/豪ドル
  7. 豪ドル/ドル
  8. 豪ドル/円

となり、比較する通貨ペアはいきなり8つに膨らみます。

監視する通貨を1つ増やすごとに、実際に監視する通貨ペアはそれ以上に増えていくことになるんですよ。

世界主要通貨と呼ばれる通貨は7つです。さらに、最近はこれにNZ(ニュージーランド)ドルを加えて相関性を把握したがる傾向がありますから(理由は後述)、これらの通貨ペアを全て観察しようとすると、全部で28通貨ペア・・・

その通貨ペアの数は膨大に膨らんでいき、情報過多となり処理が難しくなっていきます。

いや、情報処理という観点以前に、リソースの問題が出てきます。数十個もチャートを並べらべても問題のないPC環境を持ってる人って、どれくらいいるんでしょう?ほぼいないですよね。

仮に並べられる環境を用意したとしても、そのおびただしい数のチャートを見比べて、それぞれの相関性を正しく判断するのに、一体どれくらいの時間を費やすんでしょう?極めて実践的ではないのは、言わずもがなでしょう。

まぁ、その手間を省くためにもあって「通貨強弱チャート」があるんですが、これも先ほどお話した通り、実際には実践に応用するのは難しいんですよねぇ・・・

では、どうするべきか?

最適化を実現するために

気にし過ぎは禁物

まず最初に言っておきたいことがあります。

それは、「通貨の相関性を気にし過ぎてはいけない」ということです。

人の性(さが)というのは恐ろしいもので、人は不安を解消するために、無限に情報を収集しようとします。

で、通貨の相関関係もその1つなんですね。

相関性を気にしだすと、人というのは、市場の動向を余すことなく正確に把握したくなるんですよ。そして、そのために観察する通貨ペアをあれもこれもと増やしたくります。重箱の隅をつつくかの様に、細かいことが気になり出すんですね。

しかし、それは有益性を求めている様に見えて、実は不安の裏返しにすぎません。単に、不安を解消したいだけのことなんですよ。

端的に言いましょうか。

トレードで勝つために、各通貨間の相関性を知る必要なんて、実はないんですよ。

ないんです。

ではなぜ相関性を知った方が良いかと言えば、それは知らないよりも知っている方に「メリット」があるからです。

つまり、勝つために手助けとなる要因ではあっても、勝つための必須条件ではないんです。

なのに、不安を解消したいがために、通貨の相関性を知るために処理しきれない膨大な情報量を手にしようとする・・・

それって、

バカなの?
ねぇ、ほんとバカなの?

って言われても仕方がない行為なんですよ。

目的が別な何かとすり替わってる。勝利の道とは逆方向に進んでいるだけなんです。

勝つために必要な部分だけを残し、あとは削り取るのか?それとも、不安を解消する目的のために必要以上の情報を取り込み続けようとしているのか?

まずは、自分自身にそれを問いかける必要があります。

トレード・チャンスも同じこと

この記事の冒頭で、複数の通貨ペアを監視することで、トレード・チャンスも増えるということにも軽く触れました。

このことも単純に捉えれば、監視する通貨ペアが増えれば触れるほど、トレードチャンスも増えると考えてしまいがちです。

でも、現実はどうでしょう?

監視する通貨ペアが増えれば増えるほど、その情報量は多くなり処理が煩雑になります。判断に時間がかかるばかりでなく、正しく判断できるかも疑問です。

なので、この「チャンス」ということ自体も、人を欲望の渦に引き込んでしまう要因があるんですよ。

「チャンスを逃したら、勿体ない!」

その欲深さが、実は本当のチャンスからアナタ自身を遠ざけてしまうんです。トレードで勝てない人にとってのチャンスとは、そのほとんどがピンチなんですよ。

本当のチャンスを掴み取りたいのであれば、それはやはり自分にとって適切な情報量に収めることに注力してください。適切な情報量が、素早く正しい判断を生み出すんです。

正しい知識を武器にしよう

多通貨ペアの相関性を把握することでトレードにメリットをもたらしたいのであれば、自分にとって適切な情報量に絞り込む必要があります。

同様に、多通貨ペアを監視することでトレードチャンスを掴み取りたいのであれば、自分にとって適切な情報量に絞り込む必要があります。

つまり、情報量を最適化するためには、現実的に自分が処理できる範囲内の数の通貨ペアに抑える必要があるんです。自分のトレードにとって必要な通貨と必要ではない通貨を正しく取捨選択できなくちゃいけないんですね。

しかし、そのためには、通貨に対する正しい知識がバックボーンとして必要になります。また、その知識を正しく実践に用いるためのノウハウを身に着ける必要があります。

ということで、ここからはそれらについて詳しくお話を進めていくことにしましょう。

と言いたいところですが、やっぱりそれは長くなりそうなので、今日はここまで。次回に繰り越しということにしますね。

この記事をアップする前に、既に次回の記事は書き進めているので、

「やっぱ、次の記事は違う内容にしよっと」

ってことにはならないと思いますので、ご安心を。

それじゃあ、また。