インバウンド効果に沸く日本に待ち受ける残酷な未来について

Xでは既にお伝えしていますがが、今回はいつもとは趣向を変えて、テクニカルではなくファンダメンタルズ寄りのお話でもしてみようかな、とか思ってます。

一応アンケートもXでとってみましたが、結果として「たまにはそういう話もあり」って人が、61.5%でしたしね。

で、今回のお話ですが、ファンダと言っても経済指標の読み方みたいな話ではなく、経済の動向についてのお話です。

でもまぁ、短期的なトレード、しかもテクニカル・トレーダーにとっては、あまり興味のないお話かもしれませんね。どちらかと言えば、長期的な投資をする人向けのお話かもしれません。

しかし、僕らは現実の経済社会の中で暮らしています。テクニカル派からすれば直接トレードには必要ないと感じたとしても、そんな僕らの日々の暮らしには直結したお話なんですね。

長期的視野に立ったトレードや投資をしたい人だけでなく、自分たちの生活の方向性を考える上でも、「一考」として読んでもらえたらな、と思います。

で、今回のテーマは、

「インバウンドに沸く日本の未来って、実は結構悲惨になるかもね」

ってお話です。

それでは、始まり始まり~!

観光立国ニッポン

ご存じの通り今、世界は空前の日本観光ブームです。実際に日本旅行に行った人達による口コミやSNS等によるネット効果が、それをさらに加速させています。

もちろん、観光立国を目指す日本にとっては、それは願ってもない現状です。

2003年に日本は、観光業を国の重要な経済基盤の1つとして位置づけました。それによるインバウンド消費、つまり観光客が日本にお金を落としていくことによる経済効果を期待した経済政策が、観光立国化なんですね。

相対的に製造業の世界的地位が落ち、IT産業ではIT先進国からは後れを取っている日本の現状を考えれば、重要な日本の資源である観光業の発展を更に推し進めようとするのは、政策としては妥当な判断です。

で、それは功を奏し、インバウンド消費は多大な経済効果を日本にもたらしているというのは、日々のニュースで知るところです。

日本政府は更なる観光客増加を目指しており、2030年には観光客数6000万人、消費額を15兆円にすることを目標にしています。これが達成された場合、2023年から比較すると旅行者数は約2.4倍、消費額は約2.8倍の増加になります。

凄いですねぇ。日本の未来は、きっと明るいことでしょう。

 

しかし、現実の世界はそんなに甘くはありません。

 

「甘くはない」というのは、その目標を達成するのは難しい、という意味ではありません。

その目標に近づけば近づくほど、日本の未来は暗雲立ち込めてくるということを意味しています。

ちょっと、それについてお話していきましょう。

世界的観光地の現実

ホームレス

ちょっと質問します。

「アメリカで、最もホームレスの多い州はどこでしょうか?」

ぱっと思い浮かぶのは、ニューヨークとかカルフォルニアとかですかね。都会で経済格差もあり薬物も蔓延してそうですからね。

でも、それらよりも群を抜いてホームレスの多い州があります。

それは、ハワイです。そう、あの観光地として有名なハワイは、アメリカで最もホームレスの多い州なんですよ。

ちょっと意外ですよね。観光で沸くハワイは、観光客だけでなく現地の人たちにとっても楽園の地の様に思えますから。

しかし、なぜハワイはホームレスを最も多く抱える州となってしまったのでしょうか?

もちろん、理由はいくつかあって、温暖な地であるためホームレスであっても路上生活がしやすいという点も、その1つです。

しかし、最も危惧すべき理由は、観光地であるが故に生じる地価高騰と経済格差の問題にあります。

地価高騰

観光地は地価が高騰する、ってのは何となくイメージできますよね。人気のある土地は需要が増えますが、供給となるその土地には限りがあります。地価が上がっていくのは、当然の理屈です。

しかも、そこそこの値段で高止まりするわけでもありません。

なぜなら、富裕層がその土地を買うからです。別荘として土地を買い、観光ビジネス目的で土地が買われます。

お金のある人たちが、需要のある土地を金に糸目をつけずに土地を買うわけですから、地価は高騰を続けるわけです。

地価が高騰すれば、もちろんその地に住んでいる人たちの住宅コストも上昇します。

持ち家を買おうとしても、一般人には手に届かない額となります。賃貸を望んでも賃料はどんどんと上昇し、自分の収入から毎月の家賃を払う余裕はなくなっていきます。

そうやって、昔からその地に住んでいた住民達は、住む場所を失っていくんですね。見知らぬ土地へと移住するか、ホームレスの道を選ぶ羽目になっていくわけです。

自分の生まれ育った土地、自分のルーツのある土地に、地元住民は住めなくなり、その土地に縁もゆかりもない人たちばかりが、その土地の所有者となっていく・・・

それが、観光地という名の楽園に待ち受けている悲劇なんです。

経済格差

そういえば、大谷翔平選手は以前、ハワイに豪華な別荘を買いましたよね。(もう手放したっぽいですけど)

でも、大谷選手の生活基盤となる土地はハワイではありません。アメリカ本土にあって、ハワイの別荘は、休暇を楽しむための一時的な居住地でしかないわけです。

つまり、大谷選手はハワイに恒常的に生活費としてのお金を落としていくわけではありません。ハワイにとって大谷選手は一時的にお金を落としていくだけの存在でしかないんですよ。

もちろん、そんな存在は大谷選手だけではありません。生活基盤のない土地所有者ばかりがその土地の住民となり、一時的にしかその地域の経済活動に貢献しないわけです。彼らが貢献するのは、土地の高騰化ばかりになります。

地域住民に対する経済効果というのは、メリットよりもデメリットが多くなるわけです。

しかも、観光地の地域住民にとっての主体となる職業というのは、当然のごとくホテルや旅館、飲食店などの観光客を対象としたサービス業です。

そう、地元住民の多くは、相対的に見ると低賃金労働者という位置づけになるんですよ。

ですから、富裕層によって押し上げられた高い住宅コストを払い続ける余裕は、地域住民にはなくなっていきます。

そしてその様な社会構造は、他の産業で暮らす現地住民たちの生活まで圧迫し始めます。だって、工場や土木関連で働く人達だって、住宅コストの上昇に耐えられなくなってしまうわけですからね。

いえ、上がるのは住宅コストだけではありません。地価上昇に伴って、その他の物価も上昇します。生活コスト全体が上昇を続けるんですよ。

観光地とは経済格差を助長する構造

ここまでのお話をまとめましょうか。

ずっと昔の社会において、観光業とはその土地を潤す産業の1つでした。

しかし、世界のグローバル化が進むと同時に富の偏在化が進んでしまうと、以前のセオリーは通用しなくなってしまいます。観光地においては、以下の様な状況を生み出し、また促進する構造を持つ様になります。

  • その土地に縁もゆかりもない人達が、その土地の所有者となるケースが増える
  • しかし、彼らはその地域の住宅コスト押し上げることには貢献するが、その地域の経済活動の活性化にはたいした貢献はしない
  • 昔からそこで暮らす地域住民の就業先は、低賃金労働が主体となる
  • 地域住民は、住宅コスト高騰とそれに伴う物価上昇による生活コスト上昇に耐えられなくなり、自分の生まれ育った土地に住み続けることが難しくなり、その土地を去るかホームレスとなる傾向が高まる

要するに、グローバル化と富の偏在化が顕著になった現代の資本主義経済において、観光地というのは、昔からそこにいた住民たちは暮らすことが難しくなり、その土地を去るか、貧困層としてその土地に残るかという選択肢が大きく圧し掛かる結果を生むんですよ。

そして、観光地は縁もゆかりもない外部の富裕層たちの所有物と化してしまうんです。

これが今の観光地が生み出す社会構造なんです。

そこから抜け出すためには

観光産業がその地域において一定以上の地位を占めてしまった場合、これまでにお話した様な結果を生み出してしまいます。

では、そこから抜け出すためには、どの様な政策が必要なのでしょうか?

最もありきたりな理想論を言えば、地元住民達による観光業以外での産業を活性化させることになります。

が、観光業が基幹産業となる地域というのは、それ以外の産業を活性化させる術が難しいというのが現実です。

観光地の経済は、観光によって潤わさなくちゃいけなくなるんです。

観光産業によってもたらされた経済格差を埋めるためには、観光業をより盛んにしていかなければいけないという自己矛盾を突き付けられているんですよ。

ということで、ハワイの経済活性化において最も現実的で重要なのは、主要産業である観光をより発展させることになります。主要産業を今以上に発展させることで、

  • 賃金上昇が可能となり、昔から住む地域住民も潤うことができる様になる
  • 税収が上がり、地域住民に対する支援が充実する

というわけですね。

もちろん、ハワイ州もこの現実に対処すべく、様々な政策を模索しています。観光客に対する宿泊税を増税したり、クルーズ船に対する課税も新たに始まる様ですね。

さらに富裕層に対する増税も検討されているようですが、やはりこちらはなかなか話が進まないみたいです。

なので、コロナ過で大打撃を受けた観光業をいち早く元に戻し、更に以前以上に発展させる必要が出てきているわけです。

しかし現実は・・・

ということで現在のハワイは、観光産業の活性化に努めているわけですが、実際のところ上手く入っていません。

もちろん、コロナ過から比べれば観光客数は増加していますよ。

でも、コロナ以前の2019年の観光客数は1,038万人でしたが、2023年の観光客数は950万人、2024年もそれと同程度。2025年に関しては、月データからの予測でもやはりコロナ以前には戻らない可能性が高いのが現状です。

なぜか?

なぜ、ハワイの観光業発展が上手くいかないのでしょうか?

その大きな原因は、日本にあります。

そう、観光大国「日本」の躍進が、ハワイの観光客増加を阻んでるんですよ。

ビジネスというのは、競争原理で動いています。そして観光業というのは、国際競争なんです。

しかも、ハワイの観光客のお得意様は、日本人でした。しかし、可処分所得が減り続ける、つまり貧困化が進んでいる日本では海外旅行という需要は減り続けています。海外への渡航費用に余裕のある人でも、海外の物価上昇からそれを躊躇う人は増えています。

なので、ハワイ観光のお得意様である日本人の旅行客は、減少しているわけです。2023年の観光客数は2019年比で50%減というデータもあるくらいの減りようです。

以上のことから、ハワイにとって今の日本の現状というのは、二重苦を生み出す原因でもあるわけです。

そして、ハワイが抱える今の現実は、将来の日本の現実でもあるかもしれません。だって、観光業は国際競争なんだもん。

日本が抱える問題

ここまでお話して、ピンときた方も多いと思います。

そう、これらの危機はもう現実に日本でも始まっています。最近になって、ようやくニュースでも取り沙汰され始めました。

観光地では土地が高騰化し、昔からそこにいる住民は土地を手放さざるを得ない状況になりつつあります。ニセコや白馬村では現実にそれが起こっているのは、ニュースでもご存じでしょう。

これ、賃貸や土地の購入費の高騰化だけじゃないんですよ。日本には相続税というものがありますから、高騰化した土地の相続税を一般市民は払えなくなってしまってるんです。なので、相続した土地を手放して、相続税に充てるしか方法はありません。そして、その土地を買うのは外国資本や富裕層の人たちとなります。

もちろん、この現象は地方の観光地だけではありません。東京も海外の富裕層や資本に高値で買われまくってますよね。昭和バブルの頃ですらそこまでなかった億ションは、今じゃ都内では当たり前田の前田敦子状態になっています。

また、民泊目的で集合住宅が買われ、今までいた住民たちはいきなり爆上げされた家賃を突き付けられたり、嫌がらせを受けたりして、部屋を追い出されることがそこら中で起きていますよね。

日本の一般市民は、日本の土地に住めない、もしくは住みづらい状況になっているわけです。

また、可能性として経営合理性を進めていくならば、外国観光客主体の観光地であれば、もはや日本語しか喋れない日本人の労働者は必要なくなりつつあります。外国資本のホテルや飲食店であれば、英語や中国語を母国語もしくは通用語とする外国人を雇えばOKでしょう。

この様に見ていくと、日本において日本人が住めないし働く場所もないという環境が、いたるところで生まれつつあることが分かると思います。

しかし、「サービス」という分野において世界一と言われる日本において、経営合理化を優先して日本人のノウハウと労働力を排除した場合、その高度なサービスを維持できるのでしょうか?

難しいですよねぇ。サービス低下が観光業において全体化すれば、観光地としての日本の魅力は半減します。

であれば、いつか観光産業として日本の国際的競争力は落ち込んでいくでしょう。

観光立国として成功することで、日本はハワイの様にその地域に根差した人たちの貧困化を助長します。そして、観光立国として国際競争力を失うことで、やはり日本は現在のハワイの様な状況に追い込まれていくくとになります。

ハワイは将来の日本の写し鏡・・・明日は我が身かもしれませんね。

投資家として、トレーダーとして日本の経済を見つめる

さて、このブログは普段トレードのテクニカルについてお話していますが、今回は趣向を変えたお話をしてみました。

僕らはトレーダーです。そしてその中には投資家の方もいるでしょう。

仮に投資家ではなく投機家であったとしても、各国の経済動向を把握するのは大切なことです。

もちろんそれは、短期トレーダーであったとしても、です。

当然のこととして、ポジションの保有期間が短ければ短いほど、ファンダを理解する必要性は薄れていきます。スキャルピングであればファンダの必要性は皆無でしょう。

しかし、例えばデイトレーダーであっても、1日に何度か売買を繰り返したりしますし、仮に1日1回だとしても、トレードは毎日、もしくはそれに近い頻度で継続的に行われるものです。

であれば、デイトレーダーであったとしても、結局は長期間トレードを繰り返し続けるわけですから、ある程度中長期的な政治経済の動向は把握しておいた方が、トレードというのはやりやすくなるはずです。

また、将来的に専業トレーダーを目指す場合でも、今はその時期ではないし、今後の動向次第では専業トレーダーという選択肢は見送った方が良いということも、分かってくるかもしれません。

自分にとって都合の良い世界、自分がそう思いたい世界が、僕らの本当の未来の姿ではないんですよ。

だからこそ僕らトレーダーや投資家は、そんな自己都合な想いや理念からは、ある意味軽薄なくらいに遠ざかった存在でい続ける必要があります。

仮に自分が一生懸命分析した結果、買いポジションを持ったとしましょう。ところが、価格はポジションとは反対に下落し出したとします。

その際、勝てないトレーダーというのは、

  • 自分が選択した根拠が「正しい」と思わせてくれる情報ばかりを集めて安心しようとする
  • 自分の選択が「間違い」と思わす様な情報は軽視するか無視する

というのが常です。いわゆる「エコチェンバー」ってやつです。

そして、その結果として

「自分は間違っていない。市場の方が間違っている」
「証券業者や何か大きな力を持つ連中が、自分のポジションを見ていて、自分が買えば価格を下げ、自分が売れば価格を上げる様に捜査している」

とか思っちゃうんですよね。

そして、そうやって損失を膨らまし続け、自滅していきます。

 

マジ、ウケるわ。

щ( ̄∀ ̄)ш ヶヶヶ

 

とは言っても、これ、僕の実体験でもあるんですけどね。

 

むしろ、こっちの方がマジ、ウケるわ。

щ( ̄∀ ̄)ш ヶヶヶ

 

テクニカルであっても、ファンダメンタルズであっても、分析をすることは大切です。そして、自分のポジションに自信を持つことも大切です。

しかし、それが己の主義主張になってはいけません。

主義主張になってしまえば、現実には目を背け、必ずポジショントークを繰り返します。そして、命の次に大切なお金を失っていくんですよ。

自分がとったポジションに対しても、間違っているのであれば、軽薄なくらいに切って捨てる。

そんな心構えが必要です。