多通貨ペア監視のノウハウ(1)相関性の把握編

お久しぶりです。前回の記事から6ヶ月が経ちました。相変わらずの不定期ぶりですねぇ。

で、今回は前回の続き・・・と言いたいところですが、続編用に用意していた画像たちがPCの故障と共にどこかに行ってしまったため、モチベーションがダダ下がりに。

ということで、今回はXでアンケートした結果を受けて、

「各通貨の相関関係と複数通貨ペアの監視の仕方」

というテーマで、お話しようかと思います。

複数の通貨ペアを取引する人はもちろん、1つの通貨ペアしか取引しないぜって方にも参考になるお話かと思います。

それじゃあ、始まり始まり~!

なぜ、複数の通貨ペアを監視した方が良いのか?

トレードにおけるメリット

複数の通貨ペアを監視することで、トレーダーは大きなメリットを受けることができます。そのメリットは大きく分けて、

  • 市場の動向を把握することができる
  • トレード・チャンスが増える

の2つになります。

市場の動向を把握するというのは、今市場では何が(どの通貨が)テーマとなって売買が行われているのかを知るということです。

「市場は今ドルがテーマになってて、NY市場開始とともに市場はドル売り主導の展開となっている。なので、ドル売りで攻めよう」

ってな感じで、市場の動向を把握することができる様になるんですね。

また、複数の通貨ペアを監視することで、今最も自分にとって取引しやすい局面にある通貨ペアを選択することができる様になります。

1つの通貨ペアしか取引しない場合、トレードチャンスがなかなかやってこないことが多かったりして、結果的に割と強引なトレードをして負けを重ねたりする人っていませんか?いますよね?

でも、監視する通貨ペアがある程度あれば、その中から自分が最も得意とする局面を選んでトレードすることが可能になりますから、単にトレードできる回数が増えるだけでなく、勝率の高くなる取引を選択することができるわけです。

トレーダーにとっては、良いことばっかりです。

ただ、多通貨ペアをそのために監視するといっても、きちんとしたノウハウは必要です。

ということで、これから解説に入っていきましょう。

市場の動向を知るために

通貨の相関関係

市場の動向を把握するのにまず大切なことは、

「通貨の相関関係を知る」

ということになります。

じゃあ、通貨の相関関係って何?って話になりますが、その中で最も主軸となるのが、「各通貨の強弱の関係」です。「ドルが強い」とか「円が弱い」とかってヤツですね。

例えば「ドルが最も強い」というのは、市場ではドルが最も買われているということになりますし、「ユーロが最も弱い」というのであれば、市場ではユールが最も売られているということになります。

で、これを知ることで、売買の方針が立てやすくなります。

例えば、今現在ドル買い傾向が強いのであれば、それに沿ってドル買い方針にすることが可能になります。さらに「市場ではドルが一番強く、円が一番弱い」のであれば、ユーロ/ドルやオジー/ドルを選択せずに、ドル/円を取引銘柄にしてドルを買って円を売った方が上手くいく可能性は格段に上がりますよね。

この様に、通貨の強弱を把握することは、取引の方針を立てる上で重要な役割を担います。

通貨強弱チャートやグラフについて

さて、通貨強弱というと、それを表すチャートやグラフがあったりします。で、それらを用いて市場を把握しようとする人も、結構多いのではないでしょうか。

しかし、実際にそれが実践トレードで役に立つのかどうかは疑問・・・というより、その利用価値を実践レベルにまでもっていくのは、結構大変なんですね。

例えば、通貨強弱チャートで割と知られているのが、OANDAのサイトに掲載されている通貨強弱チャートです。8通貨の強弱関係をチャートで表してくれます。

えっとこの上のスクショ、実は数年前のものです。今はだいぶ改善されていているため、あえて「一般的な強弱チャートって、多くの場合こんな感じ」という意味合いで出してみました。

これを見ると分かる通り、正直見づらいです。多くの線がゴチャゴチャと入り組んでいて、どの通貨が一番強くて、その次はどれかとか、分かりづらいんですよ。今、円はどの程度の強さでどんな傾向なんだろ?って直ぐには順を追っていかない限り分かりづらいですよね。

ただ、今のOANDAさんの強弱チャートは随分と改善されています。下図がそれです。

現時点で最も強い順に各国の国旗が並ぶ仕様になっているので見やすいですし、その国旗マークにポイントするとその通貨の推移だけが見れる仕様になっていますし、例えば「ドルと円だけ」とか「ユーロとドルだけ」みたいに、自分が見たい通貨だけを指定して見ることも出来るんですね。

なので、あえて強弱チャートを使うなら、OANDAさんの通貨強弱チャートは、結構お勧めです。

ただしかし、それでも実践で用いるには、まだまだ障壁画あります。

OANDAさんに限った話でなく、多くの強弱チャートの場合、どの様なロジックでそれが成立してるのか分からないんですよ。どういった要素を使って、どの様な計算を用いて強弱を表しているのか?がさっぱり分からない。

なので、それぞれの強弱チャートを見比べても、推移の仕方が違いますし、場合によっては強弱のランクも違ってきます。

また、見たい期間も分からないことが多い。例えば、ここ1ヶ月をトータルに考えて強弱を検討したくても、今見てるチャートがそれを表してくれるのかも謎ですし、今ここ数分の強弱だけを知りたくても分からなかったりします。(分かる仕様のチャートもあります)

おまけにロジックが分からないので、「今、ドルが圧倒的に強い」と分かっても、それが今後も続くのかどうかは分かりません。ドルを買った瞬間が実はピークを迎えていて、そこからドルは下がり続けるかもしれませんよね。

つまり、強弱チャートを見て方針を立てたところで、ロジックが分からなければそれは単なる過去の推移データでしかなく、これからの方向性は全く想定がつかないんですね。

もちろん、それらの壁を乗り越えて、実際のトレードに有益に扱えるようになる可能性はあります。

が、その道のりは遠いはず。だったら、通常のチャートを把握できるように四苦八苦してた方が、もっともっと有益なんじゃないですかね?

ということで、僕は個人的にあまり通貨強弱チャートを用いるのはお勧めしません。

もし、それらを用いるのであれば、そのロジックが分かるものを使ってください。仮に知らないものを活用するのであれば、それは「あくまで今時点までの状況を表しているだけ。今ここから先のことは分からない」という意味合いで見る様にしてください。

通貨相関関係をチャートから読み解く

さて、ここからは通常の通貨ペアのチャートを用いることによって、通貨の相関関係を読み解くやり方をお話していくことにしましょう。

まずは基本をおさえよう

外為市場において、取引量が大きい通貨とえいば

  • ドル
  • ユーロ

の3つで、これを世界三大通貨と呼びます。

で、通貨の相関性を把握する際には、この世界三大通貨の相関性を見ることが基本になります。

やり方としては、まずこの3つの通貨で構成される通貨ペア

  • ユーロ/ドル
  • ドル/円
  • ユーロ/円

のチャートを表示し、これらを比較することになります。

下の図は、これら3通貨ペアを同時に表示した15分足チャートです。水色で囲った時間が東京市場の時間、オレンジ色が欧州時間、紫色が欧米時間です。

これを見ると、欧州時間から米国時間が始まった当初までは

  • ユーロ/ドルは下降(ユーロが売られ、ドルが買われている)
  • ユーロ/円も下降(ユーロが売られ、円が買われている)
  • ドル/円は上昇(ドルが買われ、円が売られている)

ということになります。

つまり、この3者の関係を見ると、欧州時間帯では、

  • ドルはいずれも買われている
  • ユーロはいずれも売られている
  • 円は売られたり買われたり(ユーロに対しては買われ、ドルに対しては売られる)

となりますから、この時の相場としては

  • ドル買いがテーマ(目的・主導)
  • ユーロ売りがテーマ(目的・主導)
  • 円は、ただドルを買う目的のために円を売っただけであり、ユーロを売る目的のために円を買っただけ

ということが考えられますね。つまり、ドル買いユーロ売りが、この時の欧州市場での動意(意志・思惑)であると推測できるわけです。

であれば、基本的にこの欧州時間の通貨選択としては、ドル買いとユーロ売りに動意・目的があるため、この2つの組み合わせである「ユーロドル」をショートでトレードするのが、最も合理的な判断になります。

円そのものは、ドル買いしたい人、ユーロ売りしたい人のそれぞれの都合によって、売られたり買われたりしているに過ぎないわけですから。

ところが、米国時間に入る直ぐに、相場の動向が変わってきているのが分かると思います。

  • ユーロ/ドルは上昇を始める(ユーロが買われ、ドルが売られる)
  • ユーロ/円は上昇を始める(ユーロが買われ、円が売られる)
  • ドル/円は方向性をなくす(ドルと円は売り買いが交錯する)

ですよね。ということは、これらの3通貨は米国時間には、

  • ユーロはいずれも買われている
  • ドルも円もユーロに対しては売られている
  • ドル/円では売られたり買われたり

ということですから、

  • ユーロ買いがテーマ(目的・主導)
  • ドルと円はユーロを買うために売られているだけ
  • だからドル/円は方向性がなく売られたり買われたり

ということになりますね。

つまり、欧州時間では「ドル買い・ユーロ売り」がテーマだったのが、米国時間に入ると「ユーロの買戻し」のみがテーマになり、そのためにドルや円が売られているだけということが分かると思います。

この場合の取引方針は、ユーロ絡みの通貨ペアでユーロを買うことになるわけで、じゃあどの通貨ペアにするかは、各通貨ペアをテクニカルで判断し、最も自分が取引しやすいと思える通貨ペアを取引することになります。

とまぁ、以上が相関性を見る際の考え方の基本となります。理解できたでしょうか?

この相関関係の把握の仕方、時間をかけずにものの数秒で把握できるようになるには、頭の中で理解しただけじゃ難しいです。毎度毎度、この3つの通貨を見比べることで、身に着けなくちゃいけません。

ただ、慣れるまでの間は、以下のような表を全てのパターン作っておいて、手元に置きながら見比べて判断するのも有効な手段です。

(全てのパターンを図にしてアップしようと最初は思ったんですが、それだとその図を写すだけで済み、丸っきり脳みそに汗をかかずに済ませがちです。なので、あえて1パターンしか表にしてません。少なくとも一度は自分の頭を悩ませながら考えてください。そうじゃないと、成長はしないですよ)

ただ、パッと見で直ぐに把握できるようになるまでに、それほど時間はかかりません。比較的容易な道のりなので、積極的に取り組んでみてください。

三大通貨以外の通貨の相関性は?

さて、世界三大通貨であるドルとユーロと円の相関性を見る方法は分かったと思います。

では、この世界三大通貨以外の通貨との相関性を把握する場合は、どうしたら良いでしょうか?

まぁ、原理は同じです。

先ほどの三大通貨の時と同じ様に、比べたい通貨を3つ指定し、それらを先ほどと同じようにして比べて見れば良いだけです。

例えば、「私は、ドルと円とポンドを取引する」という人であれば、比較する通貨ペアは、

  • ドル/円
  • ポンド/円
  • ポンド/ドル

の3つになりますよね。この3つを先ほどと同じ要領で見ればよいわけです。簡単ですね。

ただ、この3通貨に加え、もっと正確に相関性を把握しようとすると、結局は取引量が世界2番目のユーロとの相関性が気になり出したりします。

そう考えてしまうと、取引するしないにかかわらず、実質的に監視する通貨はドルとユーロとポンドと円の4種類になってしまいますよね。しかしそうなると、比較する通貨ペアは、

  1. ユーロ/ドル
  2. ユーロ/円
  3. ユーロ/ポンド
  4. ドル/円
  5. ポンド/ドル

と5つになり、見る通貨が1つ増えただけで、見なければいけない通貨ペアチャートは2つ増えることになるわけです。

では、比較する通貨をさらに1つ加えて5つにした場合は、どうなるでしょう?先ほどの4通貨に豪ドルを加えると、比較する通貨ペアは、

  1. ユーロ/ドル
  2. ユーロ/円
  3. ユーロ/ポンド
  4. ドル/円
  5. ポンド/ドル
  6. ユーロ/豪ドル
  7. 豪ドル/ドル
  8. 豪ドル/円

となり、比較する通貨ペアはいきなり8つに膨らみます。

監視する通貨を1つ増やすごとに、実際に監視する通貨ペアはそれ以上に増えていくことになるんですよ。

世界主要通貨と呼ばれる通貨は7つです。さらに、最近はこれにNZ(ニュージーランド)ドルを加えて相関性を把握したがる傾向がありますから(理由は後述)、これらの通貨ペアを全て観察しようとすると、全部で28通貨ペア・・・

その通貨ペアの数は膨大に膨らんでいき、情報過多となり処理が難しくなっていきます。

いや、情報処理という観点以前に、リソースの問題が出てきます。数十個もチャートを並べらべても問題のないPC環境を持ってる人って、どれくらいいるんでしょう?ほぼいないですよね。

仮に並べられる環境を用意したとしても、そのおびただしい数のチャートを見比べて、それぞれの相関性を正しく判断するのに、一体どれくらいの時間を費やすんでしょう?極めて実践的ではないのは、言わずもがなでしょう。

まぁ、その手間を省くためにもあって「通貨強弱チャート」があるんですが、これも先ほどお話した通り、実際には実践に応用するのは難しいんですよねぇ・・・

では、どうするべきか?

最適化を実現するために

気にし過ぎは禁物

まず最初に言っておきたいことがあります。

それは、「通貨の相関性を気にし過ぎてはいけない」ということです。

人の性(さが)というのは恐ろしいもので、人は不安を解消するために、無限に情報を収集しようとします。

で、通貨の相関関係もその1つなんですね。

相関性を気にしだすと、人というのは、市場の動向を余すことなく正確に把握したくなるんですよ。そして、そのために観察する通貨ペアをあれもこれもと増やしたくります。重箱の隅をつつくかの様に、細かいことが気になり出すんですね。

しかし、それは有益性を求めている様に見えて、実は不安の裏返しにすぎません。単に、不安を解消したいだけのことなんですよ。

端的に言いましょうか。

トレードで勝つために、各通貨間の相関性を知る必要なんて、実はないんですよ。

ないんです。

ではなぜ相関性を知った方が良いかと言えば、それは知らないよりも知っている方に「メリット」があるからです。

つまり、勝つために手助けとなる要因ではあっても、勝つための必須条件ではないんです。

なのに、不安を解消したいがために、通貨の相関性を知るために処理しきれない膨大な情報量を手にしようとする・・・

それって、

バカなの?
ねぇ、ほんとバカなの?

って言われても仕方がない行為なんですよ。

目的が別な何かとすり替わってる。勝利の道とは逆方向に進んでいるだけなんです。

勝つために必要な部分だけを残し、あとは削り取るのか?それとも、不安を解消する目的のために必要以上の情報を取り込み続けようとしているのか?

まずは、自分自身にそれを問いかける必要があります。

トレード・チャンスも同じこと

この記事の冒頭で、複数の通貨ペアを監視することで、トレード・チャンスも増えるということにも軽く触れました。

このことも単純に捉えれば、監視する通貨ペアが増えれば触れるほど、トレードチャンスも増えると考えてしまいがちです。

でも、現実はどうでしょう?

監視する通貨ペアが増えれば増えるほど、その情報量は多くなり処理が煩雑になります。判断に時間がかかるばかりでなく、正しく判断できるかも疑問です。

なので、この「チャンス」ということ自体も、人を欲望の渦に引き込んでしまう要因があるんですよ。

「チャンスを逃したら、勿体ない!」

その欲深さが、実は本当のチャンスからアナタ自身を遠ざけてしまうんです。トレードで勝てない人にとってのチャンスとは、そのほとんどがピンチなんですよ。

本当のチャンスを掴み取りたいのであれば、それはやはり自分にとって適切な情報量に収めることに注力してください。適切な情報量が、素早く正しい判断を生み出すんです。

正しい知識を武器にしよう

多通貨ペアの相関性を把握することでトレードにメリットをもたらしたいのであれば、自分にとって適切な情報量に絞り込む必要があります。

同様に、多通貨ペアを監視することでトレードチャンスを掴み取りたいのであれば、自分にとって適切な情報量に絞り込む必要があります。

つまり、情報量を最適化するためには、現実的に自分が処理できる範囲内の数の通貨ペアに抑える必要があるんです。自分のトレードにとって必要な通貨と必要ではない通貨を正しく取捨選択できなくちゃいけないんですね。

しかし、そのためには、通貨に対する正しい知識がバックボーンとして必要になります。また、その知識を正しく実践に用いるためのノウハウを身に着ける必要があります。

ということで、ここからはそれらについて詳しくお話を進めていくことにしましょう。

と言いたいところですが、やっぱりそれは長くなりそうなので、今日はここまで。次回に繰り越しということにしますね。

この記事をアップする前に、既に次回の記事は書き進めているので、

「やっぱ、次の記事は違う内容にしよっと」

ってことにはならないと思いますので、ご安心を。

それじゃあ、また。

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