デイトレーダーのための日足分析(4):日足内部構造編

(以下は、2018年10月8日付けに書いたものを大幅に加筆編集したものです)

さて、今まで3回に渡って、「デイトレーダーのための日足分析」をお話してきました。5日単純移動平均線たった1本を用いた日足分析法です。

  1. 気づき編
  2. 実践編
  3. 理解編

さて、第4回目の今回が完結編となります。デイトレーダーのための日足分析をさらにデイトレーダー向けに実用性をアップデートさせた方法をお話していきます。

日足の内部構造を分析しよう

5日間移動平均線の弱点

5日間移動平均線を用いた日足分析のやり方は、シンプルかつ強力な判断方法ですが、やはり裁量に基づくものなので、練習を繰り返して感覚を掴む必要は、少なかれあります。

ただ、練習を繰り返したとしても、移動平均線の特徴として若干扱いづらい部分もあるんですよねぇ。

移動平均線の先っぽは、当日の値動きにあわせて、多かれ少なかれリアルタイムに動きます。特に5日の様に短い期間をとった移動平均線の傾きは、当日の値動きに合わせて割と大きく変化するんですね。

となると、実際のトレードにおいて判断が定まらない場面もチラホラ出てきます。

例を挙げましょう。下のチャートは、ある日のポンド円の日足がはじまった辺りのものです。

緩やかな上昇トレンドを描いてますね。この日の移動平均線は傾きは緩やかですがやや上向き。現在の価格と移動平均線の乖離の度合いも微妙なところ。判断しづらいかなぁーって感じです。

じゃあ、しばらく様子を見てると、こんな感じになります。

先ほどのチャートと比べると、移動平均線の傾きが上方向へとハッキリしてきてますね。直近の上値も越えてきてるし、「あー、やっぱ今日は上だったかぁ!」なんて思う人もいたかもしれません。

でも、その数時間後を見ると・・・

移動平均線と現在値の乖離は小さくなり、移動平均線の傾きはほぼ平行になってますねぇ。

要するに、同日の日足を覗いてみても、その覗いた時間ごとに、判断が異なってしまいがちになるんですね。

う~ん、これは困った。

おまけにデイトレーダーの場合、日足をチェックするのは毎日の日課としても、ずっと日足を監視し続けることにあまり意味はありませんからね。ロウソク足1本の形の変化を1日かけて見るだけですから、やっても実用的かどうかは疑問が残るところです。

じゃあ、どうしたら良い?デイトレーダーとして有用な5日移動平均線を利用しつつ、より実用的な活用方法って何かないわけ?

「あるよ。」

ということで、もう少し話を進めていきましょう。

日足の内部構造を見よう

繰り返しお話している通り、デイトレーダーは日足チャートのトレンドに乗ってトレードするのではなく、日中に起こるトレンドに乗ってトレードします。

しかし、1日の値動きは、日足チャートだとロウソク足たった1本です。

なので、日中に起こる値動きの流れを知るには、この日足1本の中身をもう少し細かく見ていきたいところです。その日その日がどんな値動きで構成されながら日々を繰り返しているか?を知ることが、とっても重要じゃないかと。

ということで、時間軸を1つ下げて、4時間足を見てみましょう。

4時間足は、1日の値動きの流れを、6分割して僕らに提示してくれます。日足自体の流れを踏襲しつつ、日足の構成要素が確認するのに最も便利なのは、4時間足なんですね。

ちょっと、チャートを見てみましょうか。

上の図はドル円の日足チャートですが、赤く囲った部分が4時間足チャートでは6倍にズームアップされて表示されます。下の図がその4時間足チャートです。

日足だと、その日の高値安値がどの時間帯で付けたのが分からないですが、4時間足チャートにすると、それが分かります。4時間足チャートは、日足チャートの流れを押さえつつ、その内部状況を端的に示してくれるんですね。

日足分析の内部構造をあぶり出すには、4時間足が最適と考えられます。

日足分析を4時間足に適用させよう

では、この4時間足に、今まで僕らが学んできた日足の5日間移動平均線も適用させちゃいましょう。

ただ、ここで注意点。

4時間足で5日移動平均線を表示させる場合、4時間は1日の6分の1だから「5日 × 6 = 30」で、4時間足には30期間移動平均線を適用させましょう、みたいな計算してるチャート解説ブログなんかを見かけますが、それは大きな間違いです。

単純移動平均線は、とった期間のそれぞれの終値の平均値を出してるわけですから、5日間の終値だけを足して5で割ってる5SMAが描く線と、4時間ごとの終値30回分を足して30で割ってる4時間足の30SMAが描く線とでは、結構な隔たりが出てくるんですよ。

ほら、見てみ。(波の動きが比較しやすい様にロウソク足の表示本数を変えてます)

移動平均線と価格との関係性が、「似てる程度」でしかなく、実際にトレードするにおいては、少し無理があるのが分かると思います。

なので、日足チャートにおける5SMAと似た様な動きを4時間足で表示する単純移動平均線を探すことになります。

ありますかね?

「あるよ。」

答えから先に言っちゃいますが、日足5SMAと似た様な動きを示すのは4時間足20SMAです。もちろん、こればっかりは人それぞれの感覚によるところも大きくなりますので、20期間前後を各自の好みで当てていっても構いません。では、比べてみましょう。

あぁ、なんか凄く似てる。

いや、実はこれ、細かい部分を色々と検証していくと、4時間足で20SMAを活用した方が「より見えてくる」場面が多くなるんですね。具体例は、そろそろ面倒臭くなってきたので端折りますが。

で、この「20MA」という文字を見て、ハッ!とした方も多いんじゃないでしょうか。

そう、20期間移動平均線といえば、インジケーターを用いたテクニカルでは、王道中の王道。

デイトレーダーが日足分析をより発展させた形で4時間足を用いる場合、この20期間移動平均線を使わない手はありません。

4時間足分析をさらに発展させてみよう

さて、5日間移動平均線を用いた日足分析を、デイトレード向けに4時間足にまで落とし込んでみました。

こうすることで、日中につけた高値安値の時間帯を把握しやすくなりました。デイトレーダーにとっては、日中に起こる上下動の流れのタイミングを把握できるようになったと思います。

4時間足チャートを用いた分析の要領は、日足チャートの時と全く同じです。5SMAの代わりに20SMAを代用していますので、その移動平均線の傾きとロウソク足の位置関係で日中に起こるトレンドの方向性を探っていけば良いわけです。

  • 例えば、20SMAが上向きでロウソク足はその直ぐ真上にあるから、そろそろ買いで入るタイミングかな?とか。
  • 例えば、20SMAは上向きだけどロウソク足がかなり20SMAと乖離してきているから、そろそろ下げ始めるかな?とか。

要領は、日足分析の時と一緒ですね。やっていくと、むしろ日足チャートでやっていた時よりも、タイミング等を掴みやすいと思います。

出来れば、その乖離の度合いを具体的に掴めたりすれば、もっとトレードしやすくなるんですけどねぇ・・・

ん?

20MA?乖離の度合い?あれ?なんか、どこかで聞いたような言葉・・・

20期間移動平均線を用いて、しかもそれとの乖離状況、つまり値動きの範囲を示してくれるテクニカルって・・・

ボリンジャーバンド!!

なんか、凄くないですか?面白くないですか?何かが何かと繋がってきた様な気がしてきませんか?

ということで、4時間足にボリンジャーバンドを表示させてみます。

ボリンジャーバンド使いの人なら、グッと分かりやすくなったと思います。


このブログをご覧の方は、既にボリンジャーについて詳しいかと。先日解説したばっかりですからね。読んでない方は、ボリンジャーバンドについて知っている知らないにかかわらず、一読をお勧めします。


というか、今まで単にボリンジャーバンド使ってただけだった時よりも、日足分析5SMAを踏まえてからの4時間足ボリンジャーバンドの方が、もっと上手く分析できるんじゃないかと。

それではちょっと、具体的に見ていきましょう。例えば、先の日足チャートの次の日の始まりは、以下の様になります。

ダウだのレジサポだのその他テクニカル的な考察は一旦横に置いといて、この日1日が一体どのような動きをするのかということを5SMAだけで判断するとなると、

  • 5SAMはやや上向き
  • しかし、数日間の流れでの5SMAは小さな波を打ちながらの横ばい
  • 5SMAと価格はやや離れ気味
ということで、「この日は陰線で終わるか、そうでなくとも、一時的にはガッツリと下落する場面がありそうだな」という判断になるかと思います。ただ、どのタイミングで下落するかとなると、全く分かりません。最初からショートで攻めるにはちょっと落ち着かない感じです。

ということで、4時間足ボリンジャーバンドのチャートを覗いてみます。

もう、ぱっと見でレンジ。バンド幅はスクイーズしてない状態から+2σにタッチしている状態です。とてもじゃないですが、ロングで攻める気にはなれません。朝からショートで攻めて見たくなる場面ですね。

ということで、この後、どんな風にチャートは動いたでしょうか?ちなみに上のチャートは、昨日の朝方のチャートで、下がその結果となる、今日の朝のチャートになります。

ああ、やっぱ朝からガラってますね。ショートで攻めて正解だったみたいです。横ばいになってるボリンジャーバンドの-2σ付近まで到達してます。

こうしてみていくと、攻めるべき点が結構見えてくると思います。例えば、

  • トレンドが出ている時は、日足5SMAの代用である20SMA(ボリンジャーのミドルバンドのことね)付近まで来たらトレンド方向に攻める
  • ボリンジャーバンドが横を向いている時は、±2σまで到達もしくはその付近で長ヒゲが出たら逆張りで攻める

といった教科書通りのやり方をルールにしてみると、ぱっと見だけで、

ほら、こんなに明確にエントリーポイントが見えてくるわけです。このタイミングが来るのを「待つ」ことが、とっても大切なんですね。

他にも、5日間移動平均線の応用パターンとして、この4時間足ボリンジャーを活用すると、色んなエントリーポイントが見えてくると思います。皆さんも、色々と試しながらトレーニングしてみてください。

テクニカルの根底にある思想を読み解く

とまぁ、こんな感じでちょっと実践的なチャート解説をしてみました。デイトレーダー向けに「日足分析」を「4時間足分析」にまで落とし込んでみたわけです。

が、

ここで注意してもらいたいことがあります。まぁ、言わなくとも気が付いている人はいると思いますが、敢えて言葉を添えさせてください。

結果だけで言えば僕はここで、単にありきたりなボリンジャーバンドの解説をしただけの話です。極めて教科書的なお話。

ただ、僕はここの解説に至るまでに、5日移動平均線によるチャート分析方法から徐々にその理屈を展開させていきました。そして、これらを読みながら練習を繰り返してきた人たちからすれば、ここにきてようやく腑に落ちたんじゃないでしょうか?

特に、僕が先日解説したボリンジャーバンドをご覧になった方は、さらに腑に落ちたんじゃないでしょうか?

全てが繋がってきている・・・。と、そんな感じで。

表面上の「そんなの知ってる」ではなくて、本当の意味で理解できたという「腑に落ちた」です。

テクニカルの根底にある思想や仕組みを噛みしめながら、トレーニングを積み、さらに突き進んでいくことで、ようやく腑に落ちるわけです。

そして腑に落ちることで、ようやく使えるテクニカルにたどり着くんですよ。しかもそれは、他にはない秘密のトレード手法とかではなく、

極めて当たり前なことを当たり前にこなせるようになる

ということでしかありません。これを読んだトレーダーの方々の中で、1人でも多くの人がこの真実にたどり着いてくれることを願ってやみません。

それでは、また。


以前のブログでは、「NR7」を用いるやり方も紹介していましたが、今回は省きました。これは当時のブログ記事でも書いていますが、「日足分析」としては非常に扱いづらいことが多いからです。

ただ、「補足編」としてこのNR7を以前とは少し違った形で紹介することは考えています。

また、ボリンジャーバンドのみを使って実際のトレードを検証してみたいと思っています。

まぁ、時間が出来たらの話ですが。


デイトレーダーのための日足分析(3):理解編

(以下は、2018年2月12日付けの記事を新たに編集し直したものです)

前回の「デイトレーダーのための日足分析(2):実践編」では、5日移動平均線たった1本で日足分析を行なうやり方をお話をしました。

でも、短期移動平均線たった1本じゃあ、たいしたこと分からないんじゃ?

とお思いの方も多いことでしょう。「分析」というと何やら面倒くさいことを色々とやるイメージもありますからね。

しかし、この短期移動平均線1本における分析は、強力かつ有効な方法です。そして、そこにはとても深い意味があるんですね。恐らくほとんどの人が見落としたまま、ふらっと通り過ぎてしまう様な、素朴でありながらも大切な何かが。

で、今日はそんな何かをお話ししようかと。この意味を理解することで、移動平均線に対する見方が大きく変わる人も多いんじゃないかと。

移動平均線1本に込められた思想

デイトレードと終値の関係

さて、その移動平均線ですが、良く説明される言い方は、「その期間に買った人の平均値が表される」というものです。確かにその通りなんですが、ちょっとそれだけだと正確じゃないというか、気づきません。

正確に言えば、移動平均線とは「ある期間の終値の平均値を結んだ線」です。日足チャートの5日間単純移動平均線とは、「5日間の終値の平均値を結んだ線」ということです。

えっと、気が付きました?気づきやすい様に、「終値」の文字を太字にしてみましたが、それでも気が付かない?じゃあ、ちょっと説明します。

デイトレードとは、何も個人トレーダーのみが行うトレード方法ではなく、多くの金融機関やらなんやらの組織でも普通に行われている業務の1形態であって、その占める割合はかなりのものになるそうです。

で、そんなデイトレードは周知の通り、持ったポジションはその日の内に解消します。持ち越しはゼロです。

仮にその日に売買を行ったのがデイトレーダーしかいなければ、彼らがどんなに買おうが売ろうが、どんなに勝とうが負けようが、その日に持ったポジションはその日に解消されるわけですから、

その日の価格の変動は最終的に差し引きゼロになる

わけですよね。つまり、デイトレーダーによる取引は、日足チャートにおいてはトレンドを全く形成しないわけなんです。

では、誰が日足チャートにおいて、トレンドに寄与するのか?

それは、売り買いしたポジションを次の日以降まで持ち越す人達、つまりスイングトレーダーやポジショントレーダー、長期トレーダー、長期保有の外貨預金者、そして売りっぱなし買いっぱなしとなる実需筋です。彼らが、日足レベル以上のトレンドを生み出すわけです。

彼らが買う日が続けばトレンドは上昇、売る日が続けばトレンドは下降するわけです。

つまり、1日の終値の推移だけを見れば、デイトレによる投機的な動きは抹消され、翌日にポジションを持ち越すトレーダーやら実需筋の動向だけが浮き彫りになるわけです。

トレードにおける力関係

矢口新さんのTPA理論を知っている方なら直ぐに分かると思いますが、

トレードにおける力関係は、よりポジションを長く持つ方が強い

わけなんですね。

例えば、僕がデイトレーダーで貴方が長期トレーダーだとしましょう。僕が100万円で売った商品を貴方が買ったとします。しかし、僕はデイトレーダーなので、その売った商品を必ずその日のうちに買い戻さなくちゃいけないんです。

でも、貴方は買ったその商品は1か月後、半年後も持っていて良いんです。そんな立場の貴方から僕がその日のうちに買い戻すためには、貴方の言い値で買い取るしかありません。損失を覚悟でね。

この例からも分かる様に、保有期間が長ければ長いほど、力関係は強くなるんですよ。実需筋を相手にしてしまったら、なお事態は悪化します。だって、実需筋は、売った商品は売りっぱなしなので、買い戻す必要がない。つまり、実需筋が最強で、その後にポジション保有期間の長さの順に力関係が続いていきます。

トレーダーというものは、より長期に保有する人たちの顔色を伺いながらトレードしなくちゃいけないんですよ。

つまり、デイトレーダーは翌日以降までポジションを持ち越す人たちの動向に沿ってポジションを持たないといけないわけです。

複雑さの中に求めるべきは単純さ

じゃあ、そんな僕たちデイトレーダーが、より長期のポジションを持ち続ける人たちの動向を探るには?

その日1日限りの投機的な動きが排除された「1日の終値」の推移を的確に表してるツールが必要です。

では、そんな1日の終値の推移を的確に表してくれるテクニカルとは?

「ロウソク足」

別に終値だけを結ぶラインチャートもありますが、その日の値動きの始終高安という事実を完全に表すロウソク足は、終値を元に奥深い分析が可能となります。

極論すれば、ロウソク足だけで良いのかもしれません。しかし、酒田五法やプライスアクションといった単純でありながら奥深いロウソク足。他にもっと分かりやすく、かといって的確に動向を教えてくれるテクニカルはないものでしょうか?

そう、そこで登場するのが、

「移動平均線」

なんです。デイトレによる投機的な値動きが解消された、つまり日付を越えてポジションを持ち越す人たちの動向を表す1日の終値の推移と傾向を最も単純かつ的確に示してくれるのが「移動平均線」です。

ロウソク足と移動平均線。そのたった2つを見比べて分析することで、その日は上に行く方が有利なのか下に行く方が有利なのかが、判断しやすくなるわけなんですね。

事実は複雑さの中に隠されていますが、それを露呈させていくのは単純さなんです。

でも、長期保有者であればあるほど強いのであれば、その移動平均線も短期ではなく長期で見た方が良いのでは?という考えが、ふと浮かんできたりする人もいるのでは?

そこで話は、前々回の記事の内容に戻ります。

もちろん、大きな流れにあがらうことはできません。しかし、僕らはデイトレーダーです。価格は大きく上下しながらトレンドを形成していくわけですが、デイトレーダーはそんな中のたった1日(ロウソク日足にしたらたった1本)の中に形成されるトレンドに乗るだけです。

なので、長期的動向を探る必要などなく、長期保有者たちの直近の動向を探れば良いわけです。

どんなに日足チャートが上昇トレンドを描いていようが、数日前に買ったトレーダー、1週間前に買ったトレーダー、1か月前に買ったトレーダー、数か月前に買ったトレーダー、1年以上前に買ったトレーダー達が、ここ数日売りに出していれば、その日の終値は前日の終値よりも下がっているわけで、日足は陰線を描きます。

移動平均線も、その数日間という直近の動向を探ることで、長期保有者による売り傾向が一時的であれ出ているならば、ロウソク足は短期移動平均線の下に位置しますし、短期移動平均線は下に向くわけです。

そして、僕らデイトレーダーは、そんな長期保有者のここ最近の売買傾向に合わせて、その日の売り買いを決定するわけです。

ロウソク足とたった1本の短期移動平均線。

これを分析することの大切な意味を、分かっていただけたでしょうか?短期的な動向を探るには、この2つのツールが最も単純で最も強力となるわけです。

しかし、やはり技術

さて、日足分析における短期移動平均線たった1本に込められた思想、理解してもらえたかと思います。

ただし、僕らはその思想、考え方を知って終わりというわけにはいきません。僕らはトレーダーとして、その思想を体現できなければいけなんですから。

知ってるだけじゃ、何もできません。使いこなせてなんぼの世界なんです、僕らが足を踏み入れている相場の世界というのは。

ですから、そのたった1本の短期移動平均線とロウソク足の関係性を上手く捉え、実際のトレードに活用できる様に、繰り返し繰り返し練習しなくちゃいけません。

トレードは知識ではなく、技術なんです。

このブログで僕は、何度も何度も、それについてお話しているはずです。

まずは、「僕がお話したこの5日間移動平均線のお話を鵜呑みにしちゃいけない」ということ、そこから始めます。

僕がお話したことが、本当に有用なのかを過去チャートとにらめっこしながら検証してください。

移動平均線が上向きでロウソク足がその上に位置して始まる場合は、陽線で終わる確率が本当に高いのか?そうであっても、ロウソク足と移動平均線が乖離している場合は、少なくとも一時的には移動平均線に近づこうとすることが本当に多いのか?

そうやって検証していくと、おぼろげにも見えてくるものがあるかと思います。

そうなったら、しめたものです。次は、

「移動平均線の傾きがどの程度以上であれば、陽線ができやすいのだろうか?」
「どの程度の乖離があると、移動平均線に近づこうとするのだろうか?」

こういった疑問がわいてくると思います。そうしたら、1つ1つ、過去チャートと向き合いながら、自分なりにその感覚を掴んでいく作業を重ねてください。

決して遠い道程ではないですよ。だって、至ってシンプルな分析方法なんですから。年末年始のお休みを利用して練習すれば、来年からのトレードに弾みをつけることが出来るかもしれません。

これをご覧になった皆さんが、少しでもトレードに有用な日足分析として活用できることを楽しみに待っています。頑張ってください。

さて、この「デイトレーダーのための日足分析」ですが、次回で完結となります。

次回は、この日足チャートを使った日足分析を、デイトレード向けにさらに発展させていきます。日足の内部構造に踏み込んでいくことで、さらに実用性が増していきますので、お楽しみに。それじゃあ、また。

次回→デイトレーダーのための日足分析(4):日足内部構造編

デイトレーダーのための日足分析(2):実践編

(以下は、2018年2月9日付けの記事に加筆編集を加えたものです)

さて、前回のお話から、デイトレーダーにとっての日足分析は、日足チャートがトレンドを形成しているかどうかよりも、その日が陽線で終わるのか陰線で終わるのかが大切だということが分かってもらえたと思います。

ま、もう少し正確に言うと、陽線や陰線で「終わる」のではなく、一時的にでも陽線や陰線を示すかどうか?が大切です。つまり、

ってな感じで、日足一本の中では、陽線なら日中に上昇トレンドが、陰線なら日中に下降トレンドが発生するわけですが、陽線で終わったとしても、

ってな日足であれば、日中では矢印が示す通り、上昇トレンドがありつつも下降トレンドも発生していて両方のトレンドを獲れるわけで、仮にその日が売り方針で売りのみを狙っていても十分に獲れることになります。

つまり、デイトレーダーにおける日足分析とは、日足チャートにおいてトレンドが発生しているかどうかよりも、その日の日中にどちらのトレンドが発生しやすいか?が重要になるわけです。

「じゃあ、どんな感じで日足チャートを分析すれば良いの?」

ってことですが、今回はその説明をしようかと。

まぁ、色んなパターンにわけて説明するのも大変なんで、端的にひっくるめて

  • 日中上昇トレンドが一時的にでも発生する日足=日足陽線
  • 日中下降トレンドが一時的にでも発生する日足=日足陰線

として、以下に説明します。

デイトレーダーのための簡単な日足分析方法とその考え方

もちろん、日足分析をするにあたって、どこにレジサポがあるかとか、波形にどのくらい勢いがあるかとか、ロウソク足はどんな状況を示しているんだとか、そんな分析は必要です。

が、いちいちそれを説明すると膨大な量になってしまいます。なので、ほぼ1つに絞ってお話します。凄く単純でしかも効果的な日足分析のやり方とその考え方です。ただし、大切なのは「やり方」よりも「考え方」の方です。しっかりと目を凝らして行間まで読み取る様にしてください。

さて、そんなデイトレーダーのための日足分析ですが、その方法は至って単純です。ロウソク足をチャートに表示した後は、たった1本の短期移動平均線を使うだけです。

5日単純移動平均線(5SMA)たった1本です。

では、以下にその扱い方について説明していきましょう。まずは、そのチャートね。

そう、たったこれだけです。

移動平均線は、ご存知の通り過去のN期間の終値の平均値を結んでいた線です。N期間の終値が上がり続けていれば移動平均線は右肩上がりに描かれ、終値が下がり続けていれば移動平均線は右肩下がりに描かれます。そしてN期間の終値がまちまちでたいして上下してなければ移動平均線はほぼ水平に描かれるわけです。

で、日足分析をするにあたっては、この移動平均線の性質を利用します。

ただし、長い期間の移動平均線を用いてトレンド判定する必要はありません。今日1日が陽線なのか陰線なのかを考えるだけですから。

なので、過去1週間程度(5~8日)の短期間の傾向を探ることとします。それによって、その日1日が陽線が発生しやすい状況なのか陰線が発生しやすい状況なのかを判断するわけです。

使う期間(パラメーター)は、5日間がお勧めです。5営業日はちょうど1週間だということと、扱いやすさがその理由です。

ただし、パラメーターは5日が絶対というわけではなく、6~8日ほどでもOK。扱う通貨ペアや商品の値癖やトレーダー個人の感覚の違いもありますから、各自でやりやすい期間を選んでもらえれば良いかと。

で、この5SMAを使って日足分析すると、

  • 5SMAが上を向いているときにその日の始値が5SMAより上に位置していたら、陽線が出る確率が高い
  • 5SMAが下を向いているときにその日の始値が5SMAより下に位置していたら、陰線が出る確率が高い

ということが、分かるんですね。おまけに、この程度の短期間の移動平均線は、ロウソク足の値動きに沿う形で描かれるので、

  • 上記2つの条件であっても、5SMAとその日の始値が乖離している場合、少なくとも一旦は5SMAに近づこうとする(例えば、5SMAが上を向き始値もその線の上にあっても、一旦は陰線を形成する)確率が高い

という傾向がハッキリします。

もちろん、移動平均線の期間を5日ではなく8日に広げると、平均線と価格は乖離しやすくなるため、価格が移動平均線に近づこうとする確率は低くなるわけです。期間を短くすれば、ちょっとした乖離でも近づこうとしやすくなりますので、押しや戻りの想定がしやすくなるんです。

逆に移動平均線の期間を5日より短くすると、線がロウソク足と重なりやすくなったり、線の傾斜が小さくなって、判断が難しくなります。

そういった意味で、5SMAが扱いやすいというわけです。

でね、こういったことを書く(言う)と、

「そんなの知ってる」

っていう人がいるんですね、勝てないくせに。

もちろん、特別珍しい知識をご披露しているわけではありません。というか移動平均線を扱う上での基本的知識です。

でも、「知っている」といって、実際のトレードでそれを「意識できている」「使いこなせている」人って、それほど多くはいないわけで。

「知ってる」と「使いこなしている」とでは、天と地の差ほどあるんですよ。

トレードで勝てない人は、何かと稀有な情報・希少な情報を求めがちで、聖杯探しに走りがちです。

でも、実際のトレードで勝ち続けるためには、当たり前のことを当たり前の様にできることが大切なわけです。スポーツだってなんだってそうでしょ?基本が大切で、基本が出来てない人は伸びないし、何か隠された秘密の技を使って勝利を手にしているわけではありません。

「基本的なことを、きちんと実戦で使いこなせるようにしましょう。」

と言っているんです。

ということで、この5SMAと価格の性質を利用すると、以下のトレードルール(トレードの方針)が成立します

  • 5SMAが上を向いている時、その日の始値が5SMAの上にある場合、その日のトレードは買い方針のみ
  • 5SMAが下を向いている時、その日の始値が5SMAの下にある場合、その日のトレードは売り方針のみ
  • 5SMAが上(下)を向いていて、その日の始値が5SMAの上(下)にある場合でも、始値と5SMAが乖離していた場合、少なくとも一旦は価格が5SMAに近づこうとする確率が高くなるので、押し(戻り)を待ってから買い(売り)方針。日中足の分析に自信があるなら売り買い両方とれる方針で。
  • 5SMAの傾斜が乏しいなど、判断が難しい場合は、トレードはしない。ただし日中足分析等に自信があるなら、様子見。

このルールを日足分析の主柱の1つとして適用することで、今まで勝てなかった人は、かなりの勝率が上がるんじゃないかと。

ちなみに僕は、このブログを書きながら、トレードをしてたんですが、実際この日足分析通りの状況となってます。下のユーロドル日足チャートは上記の画像と同じもの。

一番最新の日足は、今現在の足なのでまだ確定してませんが、前日の大陰線から今日の始値は5SMAから乖離気味で始まってます。なので、

「5SMAは下向きで始値も下に位置しているから、基本売り方針」
「でも、始値と5SMAは結構乖離しているから、一旦大きく戻す場面がありそう」
ということは、素直に売りでガンガン攻めるんじゃなくて、戻りを待っての売り方針」
「戻し始める場面に出くわせたら、深追いせずに買いでも攻める。ただし原則は売り方針」

と考えられるわけで、以下の様なシナリオを立てることができます。

  1. 早い時間から5SMAに近づこうとするパターン
  2. 早い時間から下落した場合、途中で5SMAに近づこうとして、大きな戻しが入るパターン
  3. じわじわと戻すならその日は陽線で終わる可能性あるが、そもそも下落傾向が強いので、強め早めに戻すようなら、再度下落が始まる

で、日中ずっとチャートに張り付いているなら、日中足にてトレンド継続や反転を確認しながら売り買いをするわけです。

さて、ここで実例として、僕の今日(時間的には既に昨日)の獲れたてのトレード内容をご紹介。

今日の僕は突然お休みになったので、日中は買い物に行って本屋をぶらついてカフェに行って本を読みながらのんびりして帰宅。帰宅したらブログ書いて、夕飯食べて、録画しておいたドラマを見て・・・の1日で、夜遅くなるまで、あんまりチャートは見てないわけで。ということで、今日の僕のトレードは、夜にパソコンの前に座ってこのブログ記事を書きながらの、ながらトレードでした。

これ、今日のユーロドルの5分足チャートです。チャートを見始めたのは、赤い枠の丸で囲った辺り。この日の値動きは、僕が外出している間に下落して、家に戻ったあたりでレンジ。夕飯食べたりドラマ観てる辺りで、一旦下落した後に急上昇で戻しているわけで。

「一旦下落しても、日足5SMAから乖離するので一旦大きめに戻す。そして、早い時間に戻しが終わった(ニューヨーク時間始まって間もない時間帯)ので、これからは下落してもおかしくない」

とシナリオ通りの展開ですんで、もちろん戻り高値を売り方針。チャート見てると、日中につけた高値付近まで戻した後に反転してきたので、ここをショート。上図の緑色の矢印がトレードした場面で、このブログを書きながら43.7pipsの利確、という感じでした。

もちろん、常にシナリオ通りにはいきませんが、5SMAを使った日足分析によるルールに従ってシナリオ作りをすることで、トレードの判断は容易になるわけですし、その成功確率も高まるわけです。

どうです?単純でしょ?

相場は単純でも簡単でもありませんが、正しい方法でシンプルに考えシンプルに判断することで、グッと上手くいくようになります。

しかし・・・

「なぜ、5日間移動平均線だけで、その日の傾向が分かるのか?」

という疑問がわいてきませんか?日足分析を行うにしては、あまりにシンプル過ぎていて、何だか狐につままれた気分です。

ということで、次回は5SMAだけでその日の傾向を知ることが出来る理由について、もっと深く突っ込んで説明しようかと。

5日間移動平均線の中にある思想

これについて、より理解を深めることで、実際のトレードに活かせる様にしていきましょう。

それじゃあ、また。

次回→デイトレーダーのための日足分析(3):理解編