トレードにおけるリスクの話

リスクとは

トレードにおけるリスクとは

トレードに携わっていると、必ず耳にするのが

「リスク」

という言葉です。

トレーダーはリスクをとる必要がある、とか
リスクの高さを考えてトレードすべき、とか

まぁ、色んなところでリスクという言葉が用いられているわけです。

ただ、当たり前の様に使われているこの「リスク」ですが、結構多くの人が勘違いしてるんじゃないかと。

確かに、「リスク=危険」というのは間違っちゃいないんですが、トレードでは基本的にそういった意味では用いないんですよ。

トレードにおける「リスク」とは、「不確実性」のことです。つまり、確実ではない度合いのことです。

例えば、一般的な「リスク=危険」という意味合いで言えば、

「ビルの2階から飛び降りるより、20階から飛び降りた方がリスクが高い」

ということになります。

しかし、「リスク=不確実性」の意味で用いた場合、

ビルの2階から飛び降りた時、上手く飛び降りられたらケガ1つないかもしれないが、打ち所が悪ければ死んでしまうかもしれません。ねん挫で済むかもしれませんし、どの程度の骨折になるか、何とも言えません。実際どうなるかは分からないですよね。

でも、ビルの20階から飛び降りたら、ほぼ確実に死にます。

つまりビルの2階から飛び降りる方が、20階から飛び降りるよりも、不確実性が高いということになりますから、

トレードにおけるリスク(不確実性)という観点で捉えるならば、

「ビルの2階から飛び降りるのはリスクが高いが、20階から飛び降りるのはリスクが低い」

ということになります。ちょっとややこしいですかね。

しかし、こういったことを理解していくと、

「トレーダーは、リスクをとらなければいけない」

という言葉の意味が、危険なところに飛び込む勇気が必要だという意味ではないということが、ハッキリと分かると思います。

地面に落ちているお金を拾うリスク

では、今度は落ちているお金をいかに安全に拾うかという例えで考えてみましょうか。

「足元に1万円が落ちている」

この場合、リスクは低い(ほぼ確実に拾える)と言えます。そして、それは実行可能です。

では、

「1億円が地面に落ちているが、今いる場所は地上100メートルの崖の上。地面に降りるには、そこから飛び降りるしかない」

という場合は、どうでしょうか?

この場合も、リスクは低い(ほぼ確実に拾えない)と言えます。

しかし、同じ低リスクでも先の「足元に1万円が落ちている」場合とは逆に、実行不可能です。落ちているのが1円であろうが100億円であろうが、金額にかかわらず実行不可能な場面なわけです。

まぁ、言ってしまえば、リスクの低い状況というのは、何も考えずとも、実行可能か不可能かが自ずと決まっているという状況なんですね。

じゃあ、今度は

「地面に100万円がおちている。今いる場所は地上3メートルにある部屋。地面に降りるには窓から降りるしかない」

であったら、どうでしょうか?

不確実性の高い局面、つまりリスクの高い局面です。安全に飛び降りて拾うこともできるかもしれませんし、ケガをするかもしれません。下手をすれば死んでしまうかも。

で、つまりこういった局面をとりに行くのが、トレーダーです。

「トレーダーはリスクをとりに行く」

というのは、このことなんですね。まぁ、僕なりの解釈なんですが。

このリスク(不確実性)の中で、いかに自分はその地面に落ちている100万円を拾うことができるか?

それを考え、工夫し、練習し、技術を獲得して実行することが、トレードの本質と言えるかもしれません。

  • そのリスクが自分にとって高過ぎるのであれば、手を出してはいけない。
  • そのリスクが自分にとって許容できる範囲であれば、ではいかにそのリスクの中で立ち振る舞うのか?

それを考え、実行していくのがトレーダーであると言えます。

実際のトレードをリスクの観点から考えてみよう

でもまぁ、言葉だけだと何となく分かった気になりますが、実際のチャートに向き合ったら、全然そのリスクとはリンク出来てないということも、あるかなぁ・・・と。

なので、ちょっと実際のチャートを、「リスク」という観点から見ていくことにしましょうか。

以下は、前回の記事で使ったポンド円15分足チャートです。

現在は赤丸のところ。ここで、買うのか、売るのか、見送るのかをリスクという観点から、考えます。

では、まず・・・

価格は、高値低値を切り上げています。つまり、上昇トレンドですね。

しかし、絶対に上昇トレンドがこのまま継続するとは限りません。買った途端に上昇トレンドが終了するかもしれませんし、急降下に見舞われるかもしれません。

逆に、急上昇を続けるかもしれません。

要するに、未来は不確実なのです。この不確実の未来において、僕らはそのリスク(不確実性)をどの様にしてとっていくのか?

上昇トレンド中というのは、価格が下落していく可能性よりも上昇していく可能性の方が高い局面です。

そして、ダウ理論上、トレンドはトレンドが完全に否定されるまでトレンドは継続すると仮定するのが、トレードのセオリーです。

つまり、この方針を採る場面をリスクの観点から見ると、

リスク(不確実性)の中、トレンド継続中という上昇する確率の高い(優位性の高い)状況なので、買い方針の方が売り方針よりもリスクが低いと判断できます。

逆に言えば、上昇トレンド中の売り方針は買い方針に比べて高リスクということになります。

そして、未来は不確実性に溢れていますが、確率の高い方に賭けていくのが僕らトレーダーです。

なので、(今この瞬間、買うべきかは別にして)原則ここでは買い方針をとることになります。

さて、買い方針は決まりました。次に、じゃあこの時点で買うべきかどうか?という判断をリスクの面から考えます。

次の画像を見てみましょうか。

上昇トレンド継続の条件は、直近低値を下回らないことです。ここに買い方針の根拠の境目があるわけです。

直近低値のラインを境目にして、当初のリスクの意味が変わります。

このラインを割り込まない限りは価格が下がろうとも、

  • 価格が上昇を続けるリスクは小(不確実性は小さい)
  • 価格が上昇を続けないリスクは大(不確実性は大きい)

ですが、このラインを割り込んだとたんに上昇トレンドの継続は否定されるので、

  • 価格が上昇を続けるリスクは大(不確実性が高まる)
  • 価格が上昇を続けられないリスクは小(不確実性が小さくなる)

とリスクの意味合いが逆転し、とったリスクの根拠も失われます

ですから、直近低値のラインを割り込んだことが確実になった時点でポジションは解消、つまり損切りしてトレードを終わらせることになります。

ということで、直近低値ラインを越えたところが、STOPの位置(損切りする位置)であると決まりました。

次に、「じゃあ、今の現在値で買うか見送るのか?」という判断をどうするかです。

もう1度、上図を見てみましょう。

現在値から直近低値までの範囲は、上昇トレンドが継続するにしても、価格が下落する可能性のある範囲です。

つまり、ここにリスク(不確実性)があります。価格が一時的に下がるかもしれないというリスクです。

僕らトレーダーは、このリスクをとっていく必要があるわけですが、

リスクに対して具体的にどのように対処していくのか?

というのは、トレーダーそれぞれになります。大きく分けると、

  1. リスクを受け入れて、このままエントリーする
  2. リスクが高いので、リスクを分散させる方法でエントリーする
  3. リスクは高過ぎるとして見送り、次のタイミングを待つ

という具合になるでしょうか。

1の様にエントリーするのは、たいした押し目も付けずにこのままバイ~ンと伸びてしまう可能性を逃したくない場合です。

ただしこの場合、上図に示した下落リスクの範囲を全て受け入れる必要があります。

STOPまでの位置からは距離が離れています。なので、損切りになった場合の損失は大きいですし、結果として価格が上昇するにしても、含み損の金額の大きさと含み損を抱える期間に耐える必要があります。

なので、それを全て受け入れる覚悟でエントリーする必要があります。

その覚悟もなく、少し下がった辺りで怖くなって直ぐ損切りをしてしまえば、

「損切った途端に反転上昇して、思惑通りの方向に行ってしまったー!!」

という初心者にありがちな嘆きをいつまでも続けることになります。

リスクをとりに行くから、トレードは成立するんです。リスクをとれないのであれば、トレードはしないことが、肝心です。

では、2の場合。

これは、前回の「建玉操作としてのナンピンについて」でお話した様に、分割エントリーするといった具合に、建玉操作をすることで、リスクに対応します。

チャンスを出来るだけ逃さず、そのくせ損失も出来るだけ抑えたいという、憎らしい方法が、建玉操作になります。

ただし、これは予め状況を想定して行う計画的な方法ですから、ある程度トレードに習熟していないと、むしろ損失を莫大にしてしまいかねません。

何もかも良いとこ取りという、虫のいい話は転がってはいないということですね。

では、3の場合。

今この時点からエントリーしても値を下げるリスクは大き過ぎると判断するのであれば、「見送る」という判断も大切です。

ただし、このまま押し目も付けずにバイ~ンと伸びてしまった場合は、諦めるしかありません。そのリスクは受け入れる必要があります。

では、見送ってからどうしましょうか?

次のトレードチャンスのタイミングを待ちます。

今のリスクの大きさが受け入れられないのであれば、もう少しリスクの低い局面が来るのを待ってトレードしようということになります。

で、その際に用いるトリガー(エントリーのタイミングを計る方法)は、やっぱりトレーダーそれぞれなんですね。

一旦押して、その後上昇の気配を見せるタイミングを

  • プライスアクションで判断したり
  • インジケーターで判断したり
  • ラインを引いて判断したり

と人それぞれです。インジケーターだって、どのインジを使うか、どのパラメーターを使うかも人それぞれです。

どれが良い、どれが正しいとかの前に、自分が上手く扱え有効だとしている方法でタイミングをとるのが最良の方法でしょう。

具体的に例を挙げてみます。

例えば・・・そうですねぇ、移動平均線で判断するとしましょうか。パラメーターは20期間でいきますか。

すると、こんな感じになります。

トリガーを引くタイミングは、価格が20SMAに支えられて跳ね返されたところ、または一旦下抜けた後に再度上抜けたタイミングにしましょうかね。

そうすると、こんな感じなります。

本格的に上昇を始めるまでに訪れるエントリーのタイミングは、上図の緑色の丸の部分で、計4回あります。

AとBではタイミングが合わなかったみたいですが、CとDでは成功してます。

まぁ、どんな時も必ず効くインジってありませんから、それはそれでリスクです。どんなテクニカルを用いようとも、常にリスクと隣り合わせです。

なので、こういった状況でも対応できる様にしておくのが、トレーダーです。

例えば、先の様に分割で建玉を行なうとかね。Aで1/3、Bで1/3、Cで1/3とか。ついでにDで玉増ししちゃうとか。

例えば、他のインジケーター使ってフィルターかけちゃうとか。下はMACDを使った例です。

上図を見れば分かる通り、この場合のMACDは上手く機能していて、20SMAのダマシ回避に役立ってますねぇ。

ラインや値動きを主軸にして、移動平均線を併用している人であれば、

先ほどのAの20SMAで反発したところですが、目先目安になりそうなラインを上抜けてないので見送ります。

次に、Bで20SMAを上抜けた場面ですが、調整波が高値低値を切り下げている最中なので、ちょっと手を出しづらいなぁ・・・ということで見送り。

信ぴょう性があるかどうかは別として、ちょっとチャネルラインが引けそうなので、念のために引いておきます。

で、結果としては上図の様な感じ。

先ほどの20SMAだけの時と若干タイミングが異なりますが、Bの高値を抜いたCでエントリー。見送ったとしても、念のために引いたチャネル上限ラインと20SMAにサポートされて反発したDでエントリー。

もっと攻めたトレードするならば、引いたチャネルが効いているとして、Bで反転下落した後にチャネル下限ラインを反発したところでエントリー。

こんな感じですかね。

他にもやり方は色々ありますよね。保守的にもっと期間長めの移動平均線にするとか、移動平均線の数を増やしてみるとかね。

自分に合った、自分が得意とするインジケーターを組み合わせて判断したりとか。

まぁ、何度か言ってますが、セットアップが完了しているならトリガーはそれほど目くじら立てる必要はありません。

自分がとれるリスクの許容範囲、自分の性格やトレードスタイルなどに合わせ、自分が得意とする方法、自分が最もしっくりするやり方を、自分で見つけることが大切です。

 

・・・とまぁ、今回はリスクに焦点を当てて、実際のトレードを解説してみました。

リスクに焦点を当てて考えてみると、建玉操作にしろ、エントリーのタイミングを計るトリガーにしろ、結局は

「リスクに対してどの様に対処するか?」

ということに対する具体的な対処方法であったことが分かったと思います。

焦点をどこに当てるかで、トレードの考え方が変わって見えますが、結局のところ、実際にやってることはたいして変わらないですね。

ということで、今回はこの辺で。

それじゃあ、また。