時間軸に関係なく流れの目線を固定しよう

目線はバラバラになりやすい

トレードをする際に注意することの1つに、

「今、自分はどの波、どの流れに注目してトレードしようとしているのだろうか?」

ということを明確にしておくことがあります。

ただ、これって分かっている様で、実はなかなか出来なかったりするんですよねぇ。

相場分析する際に、同じ通貨ペアの違う時間軸を見る人って多いと思いますが、色んな時間軸を見ている間に、本来注目してた流れが曖昧になったりするんですよ。

例えば、下図はドル円の4時間足チャートなんですが、

赤い矢印の様に下に流れていく感じでこの価格の流れを見てたとするじゃないですか。

でも、1時間足を見ると、

ヨコヨコにしか見えなかったりして、「今、平行レンジの下限から反発した辺りかな?」なんて。

で、5分足なんか見ちゃった日には、

もう上昇トレンドにしか見えないわけで。

4時間足で見たら下の流れを目で追い、1時間足で見るとヨコヨコに見え、5分足では上に向かう流れに目が奪われ・・・

冷静に見て「どっちなんだいっ!?」とツッコミを入れられるならまだ良い方で、実際はこんな状況にリアルに直面すると、(欲望からなのか)目先の値動きに意識が向かいやすく、

1時間足平行レンジ下限からの反発!

からの~

5分足では上昇中!

ということで、僕らの目線は上に向かう流れにもう夢中になってしまうわけなんですよ。

ただ、頭の片隅では少しだけ冷静で、

「おいおい、ちょっと待て。ロングするにも慌てるなよ」

と自分に言い聞かせ、

「待て待て。待つのがトレード!」

と待ちに待ち、

この辺りでローング!!

で、その後の様子を見てみると、

思惑通りに上に伸びてますが、ちょっと下げてきてるので不安になったりします。

で、1時間足チャートを再度見直して、

「レンジ上限まで、まだまだある。チキン利食いしたいメンタルに負けるな!」

とか自分に言い聞かせたりするんですよねぇ。

実は、自分のポジションに有利な情報だけを見て安心したいだけなんですけどね。

で、このチャートは最近のものなので既に結果はご存知かと思いますが、値動きが大きいんでロウソク足を縮小して俯瞰して見ると、

見事な高値掴みです。

別に、最初から5分足の上昇波の残りを少しだけ獲りに行くつもりなら構いません。

しかし、ほとんどの場合が、

どの流れのどの波を獲りに行こうとしているのかを、トレードしている本人ですら明確になってない、

というのが本当のところなんじゃないかと。

教科書かなんかを読んだりして頭では分かっているつもりでも、実際のトレードに直面したら、こんなもんです。

分析した気になってるだけで、実は単に目先の思惑だけでトレードしていることに気が付いていないわけで。

偉そうに言ってる僕ですら、たまにやらかしたりしますからねぇ。意識しているつもりで、いつの間にか意識から外れてしまうことって、どうしてもあるんですよ。

だって、人間だもの。

でも、「うっかり」で済ましてはいけないんですよ。大切なお金がかかってるんですから。

だったら、

どの流れを軸に価格の波を見ているのか?

という目線を固定するための方法を、何かしら取り入れておいた方が、安心じゃないかと。

流れの固定について

目線の固定

よくTwitterなんかで、環境認識を終えたトレーダーさんが、

「今日は、上目線」とか
「下目線固定で」とか

そんなことを言ってたりします。

  • 上昇トレンドなら、上目線
  • 下降トレンドなら、下目線

という言い方をし、目線を固定するという場合は、

「上目線と判断したなら、相場は上昇トレンド中であるという見方をブラさずに固定してトレードしましょう」

といった意味合いで使われていることがほとんどだと思うんですよね。(違ってたらゴメンなさい)

でも、僕が使う目線の固定とは、価格の方向性(トレンド)よりももう少し広い範囲で使っていて、

価格が推移する軌道、価格の流れ全体

を含めたものになります。

つまり、

価格のどの流れを軸として固定するのかが重要

ということなんですが、これだけだとちょっと分かりづらいですよね。別に難しい話ではないんですが、前提条件となる言葉や考えを共有していないと、とてつもなくややこしい話に聞こえてきます。

ということで、もう少し僕の使う言葉の定義を明確にしていこうかと。

流れについて

僕がここで使う「流れ」というのは、トレンドが上とか下とか、トレンドレスでレンジだとか、そういった部分的なことではなく、価格が推移する軌道全体のことを示します。

上図は1時間足のチャートですが、ここに価格全体の流れをザックリと青色の線でなぞってみました。

そして、このザックリとした価格の推移を、僕はここで「流れ」として表現しています。

流れを固定する理由

では、なぜこの流れに注目しようとするのか?

それは、今自分がどの流れの中で何に注目し、何をしようとしているのかが、チャート分析していると、見失ってしまいがちになるからです。

人は、目先のことに目を奪われてしまうと、本来の進むべき道から外れてしまいがちになります。まるで、目の前を飛び跳ねるウサギを追いかけていったら森の中を迷ってしまう様な。

例えば、先ほどの1時間足チャート。

この流れの中で、トレードを考えてるとします。

でも、このチャートを5分足で見ると、1時間足で見た流れとは全く別物になりますよねぇ。例えば、上図の赤い矢印の部分を5分足で見ると・・・

これですからねぇ。木を見て森を見ずというか、この5分足チャートからは先の1時間足の流れは全く見えてこないわけで。

「そのために、MTF(マルチ・タイム・フレーム)で複数の時間足チャートを同時に表示するんじゃないの?」

という意見もありそうですが、人の意識とはそう便利には出来ておらず、同時に複数の時間軸チャートを並べてみても、5分足のチャートに意識が集中すれば、他の流れは意識から遠のきやすくなります。

自分の負けトレードを検証していると、

「俺、何でこんなところでこんなエントリーしたんだろ?」

っていうのありませんか?僕は昔、結構ありました。

後から冷静になってみれば、「それ、違うでしょ」ってことでも、トレード直前には気づいてないことって、多いんですよ。

なので、1時間足の流れを見ているつもりになっているのに、気が付けば5分足の流れだけに気を取られてエントリーしてしまう、ってことは十分に気を付けなくちゃいけないわけで。

どこかできちんと軸となる流れを自分の中で固定していかないと、冒頭で見た様な支離滅裂な判断とトレードを繰り返してしまうんです。

ただ、ここで1つ問題が。

「じゃあ、1つの流れを違う時間軸でも固定して見るにはどうしたら良いの?」

という疑問が出てくると思います。

そこで登場するのが、「移動平均線」です。

この便利な道具を使って、軸となる流れを固定していくことにしましょう。

移動平均線で流れを固定する

移動平均線の性質を利用しよう

まぁ、お分かりの人も多いでしょうが、移動平均線は価格の流れを端的に簡略化して、僕らに提示してくれます。

先ほどのドル円1時間足チャートに20期間単純移動平均線(20SMA)を表示すると、

こんな感じで、価格の流れを端的に示してくれます。

期間を短期間にすればするほど、実際の価格の流れに近づいていきますよね。移動平均線を10SMAに変えると、

ご覧の通り、20SMAの時よりも実際の値動きに近い動きになっていきます。

で、この移動平均線の性質を利用して、軸とする流れを全ての時間軸に表示してしまおうとするのが、今回のこの記事の中核になります。

ただ、「普通にいくつかの移動平均線を表示させておけば良いだけじゃん」と勘違いされる人もいそうなので、もうちょっと具体的に突っ込んだお話を続けていこうかと。

目線を日足5SMAに固定する

テクニカルは、各自が自由に好みのものを使えば良いし、パラメーターも自分が良いと思ったものにすれば良い。

と僕は思ってるんですが、ただ自分自身のトレードに関しては、自分なりの拘りは必要です。

そこで登場するのが、以前「デイトレーダーのための日足分析」シリーズでお話した、日足5SMAです。

 


※この日足5SMAに込められた思想を理解してないと、これからの説明は全く意味をなさないので、ご覧になってない方は一読してから、以下をご覧下さい。


 

日足5SMAを用いることで、その日はどんな流れが出現しやすいかを分析し、トレードのシナリオ作りに活かすわけですが、

今回は、この日足5SMAの流れに注目し、ここに目線を固定します。

軸となる流れを5SMAに固定することで、各時間軸における分析方法やら考え方を全て統一してしまうんです。

日足では〇〇を参考にし、
4時間足では△△を参考に、
1時間足では●●を重視して、
15分足では××で分析する・・・・

みたいに、やってること自体をバラバラにするのではなく、

どの時間軸を覗いても、日足5SMAの流れを固定しておいて、固定された目線と技術で相場を見る様にします。

日足5SMA分析の記事を読んで、一生懸命に検証や練習を繰り返した人が、そこで身に着けた体感レベルの技術を、どの時間軸を見ても活用できる様にしていきます。

では、実際に日足5SMAを各時間軸に落とし込んでいきましょう。

日足5SMAを落とし込もう

上記シリーズ内では、実際日足でタイミングをとるのは難しいので、4時間足に落とし込むという話をしました。

日足5SMAの近似値は、4時間足では20SMAでしたね。

で、この考え方を1時間足と15分足にも落とし込んできます。

結論から言うと、日足5SMAの近似値は

  • 1時間足では、75SMA
  • 15分足では、300SMA

となります。日足5SMAと4時間足20SMAは既に見比べてますんで、それ以外をちょっと見比べてみましょうか。(比較しやすい様にそれぞれのロウソク足の表示本数は変えてあります)

まずは、4時間足と1時間足

値動きと移動平均線の関係が、劇的に似てますねぇ。

じゃあ、次は1時間足と15分足。

こっちもやはり、激似です。

この様に、日足だけでなく4時間足、1時間足、15分足にも日足5SMAと同じ機能をする移動平均線を表示させておくことで、

僕らがトレーニングして培った日足5SMA分析の見方を、どの時間軸を見てもブレずに活用することが出来るわけです。

落とし込んだら活用しよう

日足5SMAや4時間足20SMAだけでトレードするよりも、さらに下位足を併用すると、実際のトレードではエントリーやエグジットのタイミングをとりやすくなります。

ちょっと、見てみますか。

まずは、日足5SMAを4時間足20SMAで見てみます。

青丸の部分は、20SMAが横向いてきてるので要注意な局面ですよね。日中足分析などその他の分析に自信があればトレードしても良いですが、日足5SMA分析だけの場合、基本こういった局面は見送るんでしたよね。

赤丸で囲った部分は、20SMAが下を向いたまま接近してますから、一旦抜けたとしても、そこを反転して下降を始めたら、売りエントリーをする場面です。

で、タイミングをとるのに下位足を見ます。

例えば、上図Aのポイントですが、この辺りに来たら15分足を見ます。

この15分足チャートの赤丸部分は、先の4時間足チャートの赤丸Aの部分です。緑丸で分かる通り2度ほど300SMA(日足5SMA)に接近しています。

300SMAの角度はシッカリとしているので、損切りポイントだけきちんと設定できるのであれば、何も考えずに価格が接近してきたところを「オリャ~!」と気合だけでショートしても、何も問題ない場面です。

ちょっと不安なので、もう少し根拠を持ってエントリーしたいなら、ご自分の好きなテクニカルを用いて、反転下落するタイミングを捉えてエントリーして見るのも手です。

プライスアクションだけで判断してもOKですし、例えばラインを引くなら、

斜め線を一旦下抜けするも水平線に阻まれ反発上昇。しかし斜め線に今度は阻まれて戻しきれずに反転下落した青丸を確認してエントリーしても良いし、もう少し保守的にその後に水平線をブレイクした緑丸のポイントでエントリーしても良いわけですし、

他のテクニカルを使いたいなら、例えば1時間足に切り替えて(テクニカルは基本的に大きな足の方が扱いやすいので初心者向き)、

ボリンジャーバンド使いの人なら、スクイーズからのエクスパンションで飛び乗ってみたり、MACD使いなら緑丸の辺りで判断してショートしてみたり。

日足5SMA分析に合わせ、小さな時間軸で反転するタイミングをとるだけです。簡単ですよね。

次に、4時間足チャート赤丸Bのところも説明しますが、これも先ほどとやることは同じです。

上図は1時間足チャートに切り替えたところですが、損切りポイントだけシッカリとしているなら、何も考えずに「アチョ~ッ!」と75SMA(日足5SMA)に接近したらショートしても良いですし、もう少し慎重に、価格が一旦75SMAを上抜けした後に再度下に抜けたのを確認してエントリーしても良いわけです。

さらにもう1つテクニカル的な根拠が欲しいのであれば、75SMAを越えられずに斜め線を割り込んだところで判断してもOKですし、

ボリンジャーバンドのミドルバンドを価格が下抜け、さらにミドルバンドが下を向いたのを確認してショートをかましても良いですし、

MACDならシグナルとMACDがデットクロスしたところやゼロラインを下回ったところでエントリーしても良いわけです。

別にボリンジャーやMACDに限らず、各自が使いこなせるテクニカルなら何を使ってもOKです。

まぁ、いつも言ってることですが、手法やテクニカルなんて自分が扱いなれたものならなんだって良いんですよ。(正確に言えば、「セットアップが完了しているなら、トリガーはなんだって良い」ですね)

角度のシッカリした日足5SMAに接近してきたら、小さな時間軸に移行して反転確認をしてエントリすれば良いだけの話です。

その名もグランビル

僕が書いた日足5SMA分析の記事を読んで一生懸命練習された方の中でも、気づいた人は少ないと思いますが、

あの練習、根本的には何だったと思いますか?

実はあれ、グランビルの法則を体感で身に着けるためのトレーニングの一環だったんですよ。

(グランビルの法則の説明までするのは面倒臭いので、知らない人はネットで検索するなり本を読むなりしてください)

日足5SMAだけだと気づきづらいんですが、もっと小さな時間軸で表示して見れば分かりやすいかもしれません。

  • 赤丸は、下降する移動平均線に接近してから反転下落する場面
  • 青丸は、下降する移動平均円を一旦上抜けるも反転下落する場面
  • 緑丸と黒丸は、移動平均線から乖離したので、移動平均線に近づこうと反転した場面
  • オレンジ丸は、移動平均線に角度がないのでグランビルの法則だけでは判断できない場面
  • ちなみに、黒丸は移動平均線に接近しきれずに再度反転下落したポイント

となるわけです。

まさに日足5SMAを利用して練習していたものは、グランビルの法則を体で覚えるためのものだったんです。

グランビルの法則を説明した教科書は、凄く単純化された値動きで8パターンを紹介しています。しかし、実際の値動きは教科書の図の様に単純な軌道を描くことは滅多にありません。

なので、「知ってても、使えねーじゃん」と言って、敬遠したりする人も多いでしょう。

しかし、実際の複雑な値動きの中で、余計なことは考えず基本通りに日足5SMA分析の練習をしていた人は、実際の値動きに合わせてグランビルの法則を用いる技術を体感で覚えていったはずです。

そして今回は、さらに実践的にこの日足5SMAを各時間軸にまで落とし込んでいったわけです。

何も特別なことではありませんよね。基本のバッティング練習を積み重ねることで、変化自在に飛んでくるボールが打てるようにする行為と全く同じです。

やはり、トレードは技術

至るところで繰り返し言ってますが、

トレードは、技術です。

トレードを上手くなろうとして、本を読んだりネットで調べたりと、知識だけは広げていきますが、

「じゃあ、その学んだ知識、実際に使いこなせてんのかよ?」

と問われてみれば、返す言葉がない人の方が多いんじゃないでしょうか。

これまた繰り返し言いますが、多くの勝てないトレーダーが、基本的な知識を目の当たりにすると、

「そんなの知ってる」

といって、それでお終いです。勝てないくせに。

 

勝てないくせに。

 

勝てないくせに。

 

そう、勝てないくせに、とっても知ったかぶりです。

スポーツにしろ、仕事にしろ、何をやるにせよ、知っているだけでその知っている知識を実際に使いこなせないのであれば、

それは誰が見たって、単に出来ないヤツでしかありません。

ところが、トレードに関しては知ってるだけで随分と偉そうな人ばかりです。

アマゾンの書籍レビューを見ても、

「ネットで検索すれば出てくるレベル」

とか言って、基本的な知識は相手にしていないご様子です。

じゃあ、お前は一体何の知識を求めてるんだい?多くの人が知らない何か特別な知識を求めてるんですか?宝物でも探してるんですか?

そんなもん、他者に求めて探してみたところで、一生勝てる様にはなりません。

勝てる様になる知識は、ネット検索レベルで十分です。

しかし、問題はその先です。

その基本的な知識をいかに自分のトレードに活用できる様にするか?

それが最も大切なことですし、

知識は、基本的な知識を自分で使いこなせるようになることでしか、奥深く掘り下げることは出来ません。どこかの活字を探したところで出てはこないんですよ。

僕は今回も、誰も知らない様な特別な知識をご披露したわけじゃありません。

しかし、その辺にバラバラに散らばっている基本的な知識の破片を拾い集め、それぞれのピースを重ね合わせ、実際に絵になるように知識を統一化することで、

僕らは大切な何かを手に入れようとしています。

聖杯は、どこかの誰かがひっそりと隠し持っているわけではなく、自分の中にしか存在しません。

自分の中に転がっている石ころを磨きあげ、ダイヤモンドに育て上げていくことなら、僕にだってアナタにだって、絶対できるはずだと思うんですよ。

決して驕ることなく、ただ淡々とひたすらにひたすらに・・・ね。

ps.

今回もまた最後に、ちょっと毒舌を吐いてみました。

ただ、バカにしたり嫌味で言っているわけではなく、少しでもこの記事を読んだ人の自分でも気づかない怠慢な心の部分に突き刺さってもらえたらな、という思いからです。

気分を悪くした・・・

それだけで終わらないことを、僕は祈っています。

トレードにおけるリスクの話

リスクとは

トレードにおけるリスクとは

トレードに携わっていると、必ず耳にするのが

「リスク」

という言葉です。

トレーダーはリスクをとる必要がある、とか
リスクの高さを考えてトレードすべき、とか

まぁ、色んなところでリスクという言葉が用いられているわけです。

ただ、当たり前の様に使われているこの「リスク」ですが、結構多くの人が勘違いしてるんじゃないかと。

確かに、「リスク=危険」というのは間違っちゃいないんですが、トレードでは基本的にそういった意味では用いないんですよ。

トレードにおける「リスク」とは、「不確実性」のことです。つまり、確実ではない度合いのことです。

例えば、一般的な「リスク=危険」という意味合いで言えば、

「ビルの2階から飛び降りるより、20階から飛び降りた方がリスクが高い」

ということになります。

しかし、「リスク=不確実性」の意味で用いた場合、

ビルの2階から飛び降りた時、上手く飛び降りられたらケガ1つないかもしれないが、打ち所が悪ければ死んでしまうかもしれません。ねん挫で済むかもしれませんし、どの程度の骨折になるか、何とも言えません。実際どうなるかは分からないですよね。

でも、ビルの20階から飛び降りたら、ほぼ確実に死にます。

つまりビルの2階から飛び降りる方が、20階から飛び降りるよりも、不確実性が高いということになりますから、

トレードにおけるリスク(不確実性)という観点で捉えるならば、

「ビルの2階から飛び降りるのはリスクが高いが、20階から飛び降りるのはリスクが低い」

ということになります。ちょっとややこしいですかね。

しかし、こういったことを理解していくと、

「トレーダーは、リスクをとらなければいけない」

という言葉の意味が、危険なところに飛び込む勇気が必要だという意味ではないということが、ハッキリと分かると思います。

地面に落ちているお金を拾うリスク

では、今度は落ちているお金をいかに安全に拾うかという例えで考えてみましょうか。

「足元に1万円が落ちている」

この場合、リスクは低い(ほぼ確実に拾える)と言えます。そして、それは実行可能です。

では、

「1億円が地面に落ちているが、今いる場所は地上100メートルの崖の上。地面に降りるには、そこから飛び降りるしかない」

という場合は、どうでしょうか?

この場合も、リスクは低い(ほぼ確実に拾えない)と言えます。

しかし、同じ低リスクでも先の「足元に1万円が落ちている」場合とは逆に、実行不可能です。落ちているのが1円であろうが100億円であろうが、金額にかかわらず実行不可能な場面なわけです。

まぁ、言ってしまえば、リスクの低い状況というのは、何も考えずとも、実行可能か不可能かが自ずと決まっているという状況なんですね。

じゃあ、今度は

「地面に100万円がおちている。今いる場所は地上3メートルにある部屋。地面に降りるには窓から降りるしかない」

であったら、どうでしょうか?

不確実性の高い局面、つまりリスクの高い局面です。安全に飛び降りて拾うこともできるかもしれませんし、ケガをするかもしれません。下手をすれば死んでしまうかも。

で、つまりこういった局面をとりに行くのが、トレーダーです。

「トレーダーはリスクをとりに行く」

というのは、このことなんですね。まぁ、僕なりの解釈なんですが。

このリスク(不確実性)の中で、いかに自分はその地面に落ちている100万円を拾うことができるか?

それを考え、工夫し、練習し、技術を獲得して実行することが、トレードの本質と言えるかもしれません。

  • そのリスクが自分にとって高過ぎるのであれば、手を出してはいけない。
  • そのリスクが自分にとって許容できる範囲であれば、ではいかにそのリスクの中で立ち振る舞うのか?

それを考え、実行していくのがトレーダーであると言えます。

実際のトレードをリスクの観点から考えてみよう

でもまぁ、言葉だけだと何となく分かった気になりますが、実際のチャートに向き合ったら、全然そのリスクとはリンク出来てないということも、あるかなぁ・・・と。

なので、ちょっと実際のチャートを、「リスク」という観点から見ていくことにしましょうか。

以下は、前回の記事で使ったポンド円15分足チャートです。

現在は赤丸のところ。ここで、買うのか、売るのか、見送るのかをリスクという観点から、考えます。

では、まず・・・

価格は、高値低値を切り上げています。つまり、上昇トレンドですね。

しかし、絶対に上昇トレンドがこのまま継続するとは限りません。買った途端に上昇トレンドが終了するかもしれませんし、急降下に見舞われるかもしれません。

逆に、急上昇を続けるかもしれません。

要するに、未来は不確実なのです。この不確実の未来において、僕らはそのリスク(不確実性)をどの様にしてとっていくのか?

上昇トレンド中というのは、価格が下落していく可能性よりも上昇していく可能性の方が高い局面です。

そして、ダウ理論上、トレンドはトレンドが完全に否定されるまでトレンドは継続すると仮定するのが、トレードのセオリーです。

つまり、この方針を採る場面をリスクの観点から見ると、

リスク(不確実性)の中、トレンド継続中という上昇する確率の高い(優位性の高い)状況なので、買い方針の方が売り方針よりもリスクが低いと判断できます。

逆に言えば、上昇トレンド中の売り方針は買い方針に比べて高リスクということになります。

そして、未来は不確実性に溢れていますが、確率の高い方に賭けていくのが僕らトレーダーです。

なので、(今この瞬間、買うべきかは別にして)原則ここでは買い方針をとることになります。

さて、買い方針は決まりました。次に、じゃあこの時点で買うべきかどうか?という判断をリスクの面から考えます。

次の画像を見てみましょうか。

上昇トレンド継続の条件は、直近低値を下回らないことです。ここに買い方針の根拠の境目があるわけです。

直近低値のラインを境目にして、当初のリスクの意味が変わります。

このラインを割り込まない限りは価格が下がろうとも、

  • 価格が上昇を続けるリスクは小(不確実性は小さい)
  • 価格が上昇を続けないリスクは大(不確実性は大きい)

ですが、このラインを割り込んだとたんに上昇トレンドの継続は否定されるので、

  • 価格が上昇を続けるリスクは大(不確実性が高まる)
  • 価格が上昇を続けられないリスクは小(不確実性が小さくなる)

とリスクの意味合いが逆転し、とったリスクの根拠も失われます

ですから、直近低値のラインを割り込んだことが確実になった時点でポジションは解消、つまり損切りしてトレードを終わらせることになります。

ということで、直近低値ラインを越えたところが、STOPの位置(損切りする位置)であると決まりました。

次に、「じゃあ、今の現在値で買うか見送るのか?」という判断をどうするかです。

もう1度、上図を見てみましょう。

現在値から直近低値までの範囲は、上昇トレンドが継続するにしても、価格が下落する可能性のある範囲です。

つまり、ここにリスク(不確実性)があります。価格が一時的に下がるかもしれないというリスクです。

僕らトレーダーは、このリスクをとっていく必要があるわけですが、

リスクに対して具体的にどのように対処していくのか?

というのは、トレーダーそれぞれになります。大きく分けると、

  1. リスクを受け入れて、このままエントリーする
  2. リスクが高いので、リスクを分散させる方法でエントリーする
  3. リスクは高過ぎるとして見送り、次のタイミングを待つ

という具合になるでしょうか。

1の様にエントリーするのは、たいした押し目も付けずにこのままバイ~ンと伸びてしまう可能性を逃したくない場合です。

ただしこの場合、上図に示した下落リスクの範囲を全て受け入れる必要があります。

STOPまでの位置からは距離が離れています。なので、損切りになった場合の損失は大きいですし、結果として価格が上昇するにしても、含み損の金額の大きさと含み損を抱える期間に耐える必要があります。

なので、それを全て受け入れる覚悟でエントリーする必要があります。

その覚悟もなく、少し下がった辺りで怖くなって直ぐ損切りをしてしまえば、

「損切った途端に反転上昇して、思惑通りの方向に行ってしまったー!!」

という初心者にありがちな嘆きをいつまでも続けることになります。

リスクをとりに行くから、トレードは成立するんです。リスクをとれないのであれば、トレードはしないことが、肝心です。

では、2の場合。

これは、前回の「建玉操作としてのナンピンについて」でお話した様に、分割エントリーするといった具合に、建玉操作をすることで、リスクに対応します。

チャンスを出来るだけ逃さず、そのくせ損失も出来るだけ抑えたいという、憎らしい方法が、建玉操作になります。

ただし、これは予め状況を想定して行う計画的な方法ですから、ある程度トレードに習熟していないと、むしろ損失を莫大にしてしまいかねません。

何もかも良いとこ取りという、虫のいい話は転がってはいないということですね。

では、3の場合。

今この時点からエントリーしても値を下げるリスクは大き過ぎると判断するのであれば、「見送る」という判断も大切です。

ただし、このまま押し目も付けずにバイ~ンと伸びてしまった場合は、諦めるしかありません。そのリスクは受け入れる必要があります。

では、見送ってからどうしましょうか?

次のトレードチャンスのタイミングを待ちます。

今のリスクの大きさが受け入れられないのであれば、もう少しリスクの低い局面が来るのを待ってトレードしようということになります。

で、その際に用いるトリガー(エントリーのタイミングを計る方法)は、やっぱりトレーダーそれぞれなんですね。

一旦押して、その後上昇の気配を見せるタイミングを

  • プライスアクションで判断したり
  • インジケーターで判断したり
  • ラインを引いて判断したり

と人それぞれです。インジケーターだって、どのインジを使うか、どのパラメーターを使うかも人それぞれです。

どれが良い、どれが正しいとかの前に、自分が上手く扱え有効だとしている方法でタイミングをとるのが最良の方法でしょう。

具体的に例を挙げてみます。

例えば・・・そうですねぇ、移動平均線で判断するとしましょうか。パラメーターは20期間でいきますか。

すると、こんな感じになります。

トリガーを引くタイミングは、価格が20SMAに支えられて跳ね返されたところ、または一旦下抜けた後に再度上抜けたタイミングにしましょうかね。

そうすると、こんな感じなります。

本格的に上昇を始めるまでに訪れるエントリーのタイミングは、上図の緑色の丸の部分で、計4回あります。

AとBではタイミングが合わなかったみたいですが、CとDでは成功してます。

まぁ、どんな時も必ず効くインジってありませんから、それはそれでリスクです。どんなテクニカルを用いようとも、常にリスクと隣り合わせです。

なので、こういった状況でも対応できる様にしておくのが、トレーダーです。

例えば、先の様に分割で建玉を行なうとかね。Aで1/3、Bで1/3、Cで1/3とか。ついでにDで玉増ししちゃうとか。

例えば、他のインジケーター使ってフィルターかけちゃうとか。下はMACDを使った例です。

上図を見れば分かる通り、この場合のMACDは上手く機能していて、20SMAのダマシ回避に役立ってますねぇ。

ラインや値動きを主軸にして、移動平均線を併用している人であれば、

先ほどのAの20SMAで反発したところですが、目先目安になりそうなラインを上抜けてないので見送ります。

次に、Bで20SMAを上抜けた場面ですが、調整波が高値低値を切り下げている最中なので、ちょっと手を出しづらいなぁ・・・ということで見送り。

信ぴょう性があるかどうかは別として、ちょっとチャネルラインが引けそうなので、念のために引いておきます。

で、結果としては上図の様な感じ。

先ほどの20SMAだけの時と若干タイミングが異なりますが、Bの高値を抜いたCでエントリー。見送ったとしても、念のために引いたチャネル上限ラインと20SMAにサポートされて反発したDでエントリー。

もっと攻めたトレードするならば、引いたチャネルが効いているとして、Bで反転下落した後にチャネル下限ラインを反発したところでエントリー。

こんな感じですかね。

他にもやり方は色々ありますよね。保守的にもっと期間長めの移動平均線にするとか、移動平均線の数を増やしてみるとかね。

自分に合った、自分が得意とするインジケーターを組み合わせて判断したりとか。

まぁ、何度か言ってますが、セットアップが完了しているならトリガーはそれほど目くじら立てる必要はありません。

自分がとれるリスクの許容範囲、自分の性格やトレードスタイルなどに合わせ、自分が得意とする方法、自分が最もしっくりするやり方を、自分で見つけることが大切です。

 

・・・とまぁ、今回はリスクに焦点を当てて、実際のトレードを解説してみました。

リスクに焦点を当てて考えてみると、建玉操作にしろ、エントリーのタイミングを計るトリガーにしろ、結局は

「リスクに対してどの様に対処するか?」

ということに対する具体的な対処方法であったことが分かったと思います。

焦点をどこに当てるかで、トレードの考え方が変わって見えますが、結局のところ、実際にやってることはたいして変わらないですね。

ということで、今回はこの辺で。

それじゃあ、また。

 

建玉操作としてのナンピンについて

ナンピンと言えば、「絶対にダメ!」とか「3回までならOK」とか、人によって色々と違ったことを言われてますが、

「本当のところ、一体どうなの!?」

というお話を、今回はしようかと。闇雲にダメとか大丈夫とか言わずに、基本的なところを改めてイチから押さえながら、ナンピンに対する考え方を再構築していこうかと。

ナンピン(難平)とは?

概略

ナンピン(難平)とは、

買ったポジションよりも価格が下がった場合に、さらに当初よりも安い価格で買い増しし、さらに下がればそこでもまた買い増しするという売買方法です。

いわゆる買い下がりのことですね。

図にすると、こんな感じ。

もちろん、その逆もまた然り。売りでエントリーし、さらに価格が上がった場合により高い価格で売る行為も、同様にナンピンです。

で、このナンピンという行為には、利点と欠点があります。次にそれを見ていきましょう。

(※以下、基本的には「買い」によるナンピンで説明します。「売り」の場合も考え方は全く同様ですので、適宜読み替えてください)

ナンピンの利点

ナンピンによって買いエントリーを繰り返した場合、買った価格の平均値は低くなります。

100円で2ロット買ったとすると、1ロット当たりの平均額は、当たり前ですが100円です。

しかし、100円で1ロット買い、98円でもう1ロット買ったならば、1ロット当たりの平均購入額は、100円と98円の平均値である99円になります。

相対的に100円で2ロット購入するよりも安く購入できたことになります。

仮にその後、103円まで上がってそこで利確した場合、前者は差額3円の利益となりますが、ナンピンした後者は4円の利益となります。

また、97円で損切りした場合、前者は3円の損失、後者は2円の損失ですみます。

結果的に安く買った方がお得になるわけで、ナンピンにおける利点はまさに、買った金額の平均値を下げるというところにあります。

が、しかし・・・

ナンピンの欠点

買いポジションの平均価格を下げていくのがナンピンですが、もちろん利点ばかりではありません。致命的な欠点があります。

それは、価格が思惑通りにいかず下がり続けた場合、ポジションの量はどんどんと増えていくため、結果的に損失額が膨大になっていくということです。

確かにナンピンを繰り返せば、買いポジションの平均金額は下がっていくため、下がり続けても損失は軽減されている様な気になります。

しかし、それはあくまで現在価格とポジション平均値での表面的な差でしかありません。

ナンピンを繰り返していけば、ポジションの量はその分だけ増えていくわけですから、トータルの損失額は膨らむ一方です。

100円で1ロット買い、97円で損切りした場合は、

-300pips × 1ロット = -300pips

となり、損失は300pipsでおさまります。

しかし、100円で1ロット買い、上がると思ったのに下がったので99円でさらに1ロット買い増し、さらに98円で1ロット買い増し、結果的に耐えきれなくなって97円で損切りした場合は、

(100 – 97) + (99 – 97) + (98-97) =  3 + 2 + 1 = 6

となり、結果600pipsの損失を被るわけです。

ナンピンを行なうことで買いポジションの平均価格は下がりますが、それはあくまで表面上のこと。買い増せば買い増すほど玉数は増える一方で、表面上で誤魔化されている間に損失のトータル額はどんどんと膨らんでいくわけです。

ナンピンの心理的デメリット

利点と欠点、両方を見てきたわけですが、多くの人はこの時点で直観的に、

「ナンピンは、危険!」

と思ったんじゃないかと思います。

 

はい、正解。

 

ナンピンは、とっても危険な行為です。端的に言ってしまえば、ナンピンは破産に向かってアクセルを踏む行為になりかねないんですよ。

ナンピンの怖さは、その心理的なデメリットから来ます。大きく分けると2つかな。

まず1つめは、先ほども述べた様に、表面上は買いポジションの平均値が下がるため、それに誤魔化されて、どんどんと含み損のトータル額が増えてしまいやすくなるんですね。

こういったことって、日常生活でもよくあるじゃないですか。

100円ショップやセールなんかに行くと、安い安いと買っていって結果的にかなりの量の商品を買ってしまいがちになりますよね。で、レジに行って金額を聞いてから「結構買ってしまった・・・」って気が付いたりとか。

塵も積もれば山となるというのは、誰もが分かっていることですが、現実には表面上の小さな塵や目先の塵に誤魔化されてしまいがちになるのが、人の常ってやつです。

そしてナンピンは、まさしくそれにあたります。気が付いたら、にっちもさっちも行かない状況に追い込まれやすいのが、このナンピンという行為です。

2つ目の心理的デメリットですが、これは自分の誤った判断を認められずに、自分を誤魔化すためにナンピンが利用されやすいということです。

「損切りが出来ない!」

ってのは、トレードでよく聞く話です。身に覚えのある方もいるかもしれません。

上がると踏んで買ってみたものの、思惑とは反対に下落した場合、トレードの基本は「損切り」です。

しかし、含み損は損切りをしない限り、損失が確定しませんから、「損をしたくない!」という心理は、損切りという行為をなかなかさせてくれません。

そして、その心理に拍車をかけるのがナンピンです。

損をしたくないという心理に対して、ポジションの平均価格を下げるというナンピンは、安心材料の1つになります。(実際は、安心材料とは真逆なんですが)

つまり、一時しのぎに使われるわけです。

そして、どこかで踏ん切りをつけない限り、ナンピンは繰り返されます。最後には追証や強制ロスカットなど、自分の意志ではどうにもならないところまで追い込まれるまれることも、珍しくはありません。

ナンピンとは、その損切りできない心理状態にコッソリと入り込んで、さらに心と証拠金を蝕(むしば)んでいく行為だと、肝に銘じましょう。

ナンピンは原則禁止

以上を見ていけばお分かりの通り、ナンピンは原則として禁止です。

なぜなら、トレードとは自分の「損をしたくない」という心理を誤魔化すために売買をするものではないからです。

上がると判断して買ったのに下がったのであれば、それは見込み違いです。損切りする場面なんですよ。

ところが、その見込み違いを認めずにさらに買い増すというのは、理屈に合わないわけですよね。

自分の判断の過ちを認めず、現実に対応しないというのは、トレードの世界においては自殺行為です。

さらに言えば、含み損を抱えたままじっと堪えているだけの資金は、単なる死に金です。

それを「運用」とは呼びません。

早めに損切りをし、動かせるようになった資金で、新たに上がると判断した通貨ペアや株、商品を買うことの方が重要です。

そこで思惑通りに動けば、先の損失分を取り戻すことが出来るどころか、さらに利益を出すことも可能になります。

含み損という死に金を抱えたままの状態というのは、資金運用ならびにトレードの本質と全くかけ離れているんですね。

そういった意味で、ナンピンというのはトレードの基本から全くかけ離れてしまう可能性を大きく持った行為です。

ですから、ナンピンは原則として禁止です。これは、断言しておきましょう。

しかし・・・

ここでナンピンのお話を終わらせるつもりは、更々ありません。今回は、もうちょっとナンピンについて突っ込んだお話をしていくつもりです。

されどナンピン

繰り返し言いますが、ナンピンは原則として禁止です。

そう、原則として。

実はナンピンとは、トレードにおける建玉操作、つまり分割してポジションをとるやり方としては、結構有能な方法なんです。

実は僕も、時にナンピンをします。ただ、上記の様に自分の見込み違いを認めずに当初の考えに固執したナンピンではありません。計画的な建玉操作としてのナンピンを僕は用いたりするんですね。

もちろん先に説明した通り、ナンピンには潜在的にとっても大きな危険性を持っていますから、初心者にはお勧めしません。

ナンピンによる建て玉操作とは、トレードをきちんとした判断でエントリーでき、STOPもきちんと根拠のある位置に置き、そこに来たらきちんと損切り出来る人のみが扱える方法です。

ある程度トレードに習熟してきた場合に用いるやり方として、これからちょっと説明していきましょうかね。

建玉操作としてのナンピン

ご利用は計画的に

建玉操作としてナンピンを用いる場合、それは場当たり的ではなく、計画的に行います。つまり、最初にポジションを持つ前に、既にナンピンを想定してからエントリーを行なうというものです。

分かりづらい?分かりづらいですよねぇ。

では、実際のチャートを見ながら解説しましょうか。下の図は、ポンド円15分足。

上昇トレンド中に低値を付けた後に勢いよく上昇。前回高値を越えたところで買いエントリーしたとします。

ところが・・・

これからグングン上昇すると思ったのに、エントリーした途端に反転下落。先ほどの直近高値も下回ってしまいました。

・・・と、こんな感じなら、この後にナンピンするのは絶対にダメです。

見込み違いだったんだから、それを素直に認めないと。

しかし僕の場合、こういった考え方で買いポジションを持つことはあまりないんですね。

もう一度、先ほどの高値更新で買った場面を振り返ってみましょう。僕なら、こう考えます。

上昇トレンド継続中ということで、まずSTOPの位置が決まっています。

なので、この位置で買うとなるとSTOPまでの距離が結構あるわけで。仮に損切りになった場合は、これだけの値幅分が損失となり、あんまり良い気分はしません。出来れば、もっと安く買いたい。

しかし、だからと言ってエントリーを見送った場合、ここからたいした押し目も付けずに、急上昇を続けられたら、絶対後悔しますよねぇ。

じゃあ、どうしようか?

ということで、上図の緑色の矢印と文字を見てください。

上昇トレンドが継続するとしても、この緑色の矢印の範囲で下落する可能性はあるわけですよね。

もっと言えば、この緑色の矢印の範囲内では買い方針の根拠は継続します。で、買い方針が有効な範囲内であれば、安ければ安いほどお買い得なわけです。

  • ここから急上昇を続ける可能性もあるので、このタイミングを逃したくない
  • でも、下落リスクも大きい
  • しかし、買い根拠が失われないまま、もっと安く買える範囲がある

であれば、この範囲まで下落する可能性があることを予め想定してエントリーしちゃえば良いんじゃないですかね?

下落する可能性とその範囲を予め想定できるのであれば、1度にまとめてポジションを持つのではなく、何回かに分割して、その下落に合わせてポジションを建てるという方針をとるわけです。

僕の場合は、大体2~3分割を目安としています。つまり、ナンピンは3回まで。

理由は簡単。持ってるポジションを複雑にしたくないからです。複雑なことを僕は処理しきれませんし、そもそも面倒臭い。

「モノゴトは複雑にしても良いことない」

というのが僕の自論なので、出来るだけシンプルにしておきます。

で、このケースの場合、具体的に言えば、

  1. このままバイ~ンと急上昇されるのが嫌なので、まずは試し玉として通常1度に持つポジションの1/3を赤い丸の部分でエントリー。
  2. 下落した場合、そこから反転上昇する可能性のある個所で、1/3ずつをエントリー。
  3. 2回目のエントリーが、もっとも安い価格帯であり、尚且つ自信があるのであれば、2/3をエントリー。
  4. いずれのポジションにおいても、STOPの位置は直近低値を下回った箇所1ヶ所。

となります。

じゃあ、チャートの見える範囲をずらして説明していきましょうか。

実際の僕はこの時のトレードしていないので、「僕だったら、この場合・・・」という範囲でしか説明できないんですが、恐らく上図の様に2回目はここでエントリーしたんじゃないかと。

で、次ですが・・・

2回目のエントリーで上昇すると思ったら、ズルズルっと下がっていきました。3回目のエントリーは多分ここ。

(正直なところ、本チャンならもう少し慎重になって、この後に上昇したらエントリーするんでしょうが、そうすると2回目のエントリーよりも高い位置で買うことになるかもしれず、ナンピンの例としては成立しなくなるので、あえてここでエントリーです。ご了承ください。)

で、3回目のエントリーなので、これ以上は建てません。

そして、いずれのエントリーにおいても、STOPは赤いラインで示した位置です。

ということで結果を見てみると・・・

まぁ、これはナンピンによる建玉操作の例なので、結果上昇しようが下落しようがどちらでも良いのですが、

平均エントリー価格は1回目のエントリーでまとめて建てるよりも低く抑えられたので、

利確した場合も、安く買ったのでお得。
損切りした場合も、安く買ったのでお得。

ということになります。

こういった建玉操作は、1度にエントリーするよりも、価格面でもそうですが、むしろ

「下がっても、オッケ~!」(ローラ風)

といった具合に、精神的負担を軽減する方に大きなメリットがある様に感じます。

ただし、くれぐれも言っておきますが、

ナンピンによる建玉操作は、見込み違いを認めないために行うのではなく、あくまで予め想定した範囲で行うべきものである

ということです。別な言い方をするならば、

方針やシナリオは出来ているけど、エントリーポイントが1つに絞りづらい場合に、分散してエントリー。その際、ナンピンすることで、利確・損切り共に自分に有利に持っていくことができ、精神的にも負荷を軽減させることができる。

となりますかね。

でもまぁ何度も言いますが、初心者はやるべきではないでしょうねぇ。くれぐれも、トレードに習熟してからの建玉操作です。

ナンピンによる損切りの例

もちろん、ナンピンによって買いポジションの平均値は下がるわけですから、損切りした場合の損失額を減らすことも可能になります。

このナンピンによる建玉操作は、買い方針が既に決まっている時における分割エントリー方法です。

なので、どこでポジションを建てようが必ずSTOPの位置は一緒なわけです。

ナンピンによる建玉操作とは

  • 損切りする位置が一定のまま、買いポジションの平均値を下げていく建玉操作
  • 単純に買い増すのではなく、基本となるポジションのロットを分割して建てる方法

になるわけですから、利確の時に利幅を上げるだけでなく、損切りの時は損失を下げることができます。

では、実際のチャートで解説していきましょうか。今までは買いで説明していましたが、今回は売りで説明します。

で、説明に用いるのは、実際の僕のミストレードです。内容的にはお恥ずかしいトレードなんですが、そんなミスでも損失幅を少なく抑えられた例なので、ちょっとご紹介しようかと。

以下は、ポンド円15分足チャートです。

帰宅した僕がチャートを開いた時が、ちょうど緑色で囲った部分になります。強めに下落した後、一旦①のラインで跳ね返された辺りです。青色の斜めラインはその時点で引いたものになります。

その直後、次のロウソク足で再度①の水平線を抜けます。

で、この時点で僕はミスを犯します。

実は、注目すべきラインは①よりも②の方で、本来②のラインを抜けたら、その後は下落傾向が強まると判断すべきなんですが・・・

なぜか②ではなく①のラインを基準に見てしまっていました。

しかも、チャートを覗いた早々で慌ててしまったせいか、この①のラインをきちんと抜けきっていないのにも関わらず、売りエントリーしてしまったんですね。それが上図の赤丸の部分。

ただ、勘違いしていたとはいえ、

「チャネルとして引いた下のラインがすぐ傍にあるし、ストップまでは結構遠いよなぁ・・・。今エントリーしても、第1目標値までの値幅とストップまでの値幅は、ほぼ1:1だし、美味しくないんだよなぁ・・・」

という冷静な部分もあるわけで。

しかし、このまま強く下抜ける可能性も捨てきれなかった僕は、通常トレードする際に基本としているロット数の1/3だけを試し玉として入れることにしたんですね。エントリー価格は、146.371です。

では、その後どうなったかというと、

エントリー直後、見ての通り直ぐに反転上昇します。

ただ、この上昇は想定内。「ちっくしょ~!」と思うよりは「しめしめ」とニヤつく場面です。

で、価格はチャネルとは別に引いたもう1つのラインに当たり、チャネル上限のラインを抜けきれずに反転しました。

ここで再度ショート。この場面はチャネル上限ラインをきちんと反転したと判断できるところなので、残りの2/3の玉数を建てました。

エントリー価格は、146.535です。

この時点で、僕の売りポジションは平均で

(146.371 + 146.535 × 2) / 3 = 146.480

となり、最初にまとめて売るよりも10pips以上のお得感丸出しでポジションを持つことに成功しました。

で、見ての通りナンピンした直後に強く下げます。

ただ、先ほどのライン①を境に揉み合います。

本来は、ここで様子を見てポジションを解消するか検討する場面です。反転上昇しても、微益決済か損失0の建値決済で逃げることも可能ですしね。

しかし、僕はこの真っただ中に、仕事疲れもあって寝落ちしてしまいました・・・

ということで、この後の状況を見てみましょう。

ふと目が覚めて、チャートを覗いてみると価格は揉み合いを抜けて反転上昇していました。

「ヤベッ!」

ということで、STOPに届いていませんでしたが、チャネル上限のラインを越えたのを根拠に成行で損切りしました。正確に言えば、青い丸で囲ったロウソク足の次の足がチャネルとは別のもう1つのラインを抜けた瞬間に損切りです。

さて、ここまでの説明でお分かりの通り、最初のエントリーでまとめてポジションをとるよりも、ナンピンすることで僕は10pips以上も損失額を抑えることが出来ました。

この様に、予めエントリーの方針とSTOPの位置が定まっており、きちんと損切りが出来るのであれば、むしろナンピンは損失を小さく抑えるための建玉操作であると言えます。

建玉操作としてのナンピンの方法、理解してもらえたでしょうか?

 

と、ここで終わらせたいのですが・・・

この例として挙げたトレードでの損切り、実は僕はここでも痛恨のミスを犯してしまっています。気が付きましたか?

そもそも、僕はなぜSTOPの位置を予め上図チャートの赤いラインに置いたのでしょうか?

それは、そこを越えるまでは下降トレンドは継続すると踏んでいたからです。

そして、僕のトレードのやり方は、斜めラインよりも水平線を優先するというものです。

なのに、なぜ僕はあそこで損切りしてしまったのでしょうか?

まぁ、トレードは一時の感情に左右されやすいものですから、仕方がないっちゃ仕方がありません。

で、僕はこの誤った損切りを行なった直後に気が付きます。

「ヤバい。判断早すぎたかも・・・」

ということで、損切った後のチャートを見てみましょうか。

損切った直後に15分足レベルだと直近高値を越えますが、これは誤差の範疇。STOPを置く根拠となった高値を抜けることは出来ず、200SMAに頭を押さえられる形で反転下落を始めます。

ただまぁ僕も転んだ後にタダでは起き上がりません。

反転が始まったオレンジ色の丸Aのところで、すかさずショート。奇しくも、ナンピンした時と同じ価格でしたが、ここはかなり確信の持てる位置であり、STOPからも遠くないため、分割せずにエントリー。

さらにBで売り増ししました。もちろん、分割ではなく売り増しです。

で、結果は見ての通り。チャネルとして引いたラインと第1目標がちょうど重なったあたりで、ここを越えそうもなかったので青丸の部分で利確しました。

 

さて、最後は自慢話になっちゃいましたかね?

まぁ、そういうつもりではなく、建玉をどういった時に分割するか売り増しするかの例として参考にしてもらえたらな、と。

ということで、今回はここでお終いです。

くれぐれも、計画に沿ったトレードが出来るようになるまでは、ナンピンは行わない様にしてください。

それでは、また。