僕とインジの奇妙な関係(2)インジ・マニアな僕がインジを避けるその理由

さて、前回は最近弄っていたインジ達の紹介をすることで、インジに対する考え方をお話したわけですが、最終的に僕は、

弄りまくったインジ達を実際のトレードで使うことは滅多にない

ということに言及して、お話が終わりました。

なぜか?

今回は、そんなお話の続きをしていこうと思います。

それでは、始まり始まり~~!!

インジケーターを扱う、ということの本質

僕の黒歴史

このブログの読者さんは既にご存じの通り、相場歴25年以上の僕のその前半はほぼ負け続けの歴史でした。

その当時の僕といったら、沢山のインジをチャート上に張り巡らし、

「このインジのこの設定は効く?効かない?」

みたいな感じで、大した検証もしてないくせに検証した気になりながら、聖杯を探し続ける日々でした。

で、もうトレードで勝つなんて自分にはもう無理なんじゃないかと何度も思いながらも、ある日ふと、

「自分はチャートを見ているようで、実は何も見ていないんじゃないか?」

という疑問が湧いてきたんですね。

で、チャートからインジを外し、ロウソク足だけの素のチャートだけにして、

「そこから何が見えるのか?」

という作業をやり始めたわけです。

その辺りのことは、「チャート・デザインの勧め(1)」に書いてあるんで割愛しますが、そういった作業を繰り返す中で、1つ気が付いたことがあるんですよ。それは、

「僕は、インジケーターを用いることが苦手なんじゃないだろうか?」

ということに。

今ではインジ・マニアな僕が言うのも不自然に思われる方もいるかもしれませんが、事実僕はそう思いましたし、今でもそう思っているんです。

同じインジでも、認知の仕方は人それぞれ

本題に入る前に、ちょっと注釈入れときます。

インジケーターというのは、端的に言ってしまうと

「相場状況を視覚的に理解できるように表現したもの」

のことです。

なので、ロウソク足もラインも、言ってしまえばインジそのものです。

ただ、それを言うとちょっとややこしくなり、この後の文章に常に断りを入れ続けると面倒なので、とりあえずここでは、

「相場で値の付いた数値を使って計算式を用いないものや、お絵かきレベルなもの」

つまりロウソク足とライン以外をインジケーターと限定してお話していきます。

それでは、本題に入っていきましょう。

例えば、こんな素のチャートを見てみましょうか。ポンド円の4時間足です。

このチャートを見て、何をどう解釈するのか?

それを理解するために、インジケーターは存在します。

例えば、最もメジャーな移動平均線だったり、

一目均衡表だったり、

ボリンジャーバンドだったり

もちろん、それ以外にもインジは沢山ありますよね。色んな組み合わせ方もあります。

例えば以前、海外で話題になったシステム「MASTER ENTRY Indicator」だとこんな感じになります。

まぁ、どんなインジを用いようが、どんな組み合わせをしようが、結局のところインジケーターというのは、相場の状況を視覚化することが目的です。

では、どのインジを用いるべきか?

それはこのブログで何度も言ってきている通り、

「裁量トレードにおいて、インジケーターとそのパラメーターは、自分が認識しやすく理解しやすいものを選べば良い」

というのが、僕の見解です。

上の4つのチャートは、それぞれ違うインジをメインチャートに貼っていますし、いずれも相場の状況を視覚的に表現しようとしています。

が、これら4つのチャートは、いずれも見え方が違ってますよね。人によっても、見え方や感じ方は違ってきてると思います。

ゴチャゴチャして見えにくいものがあったり、逆にシンプル過ぎて良く分からなかったり。数種類のインジがあった方が、理解しやす人もいるでしょうし、1つ2つに限定した方が頭が混乱しない人もいると思います。

例えば前回でも少し触れましたが、移動平均線の10SMAと一目均衡表の転換線の大まかな動きは非常によく似ています。

下図では青色の移動平均線が10SMAです。

下図の一目均衡表では、赤い線が転換線です。

見比べてみると、全体的な大まかな流れは、両者非常によく似ているのが分かると思います。

もちろん、この2つをEA化してバックデータを採れば、その成績に違いは出てくるでしょう。

しかし、僕らは機械ではありません。正確無比に指示通りに常に同じイン・アウトを繰り返し続けるわけじゃありません。

裁量トレーダーの場合、インジの線にタッチした瞬間に常にエントリーするとは限りません。仮に線にタッチしたとしても、線の角度やその他の状況を見ながら、エントリーのタイミングをややずらしてみたり、見送ってみたりします。

飛んできたボールの軌道やスピード、回転のかかり方や、相手の位置関係によって、そのボールの打ち返し方を微妙に変えていくのと同じです。

裁量トレードは、スポーツの要領に近いんですね。

であれば、スポーツで使う道具を自分の好みで選択するように、トレードにおいてもその道具(インジ)も自分の好み、つまり自分にとって認識しやすく扱いやすいと思うものを、各自が用いるべきなんです。

で、先の10SMAと転換線。両者は大まかな動きが似通っていても、細かいところでは動きが違ってきています。MAでは価格に近づくように上からせり上がってきている場面でも、転換線は角度が平らになっていたりします。

エントリーする際に、どちらがその判断をしやすいか?というのは、人それぞれの認知の違いになります。10SMAを使った方がやり易い人もいれば、転換線の方が判断しやすいという人もいて当然です。

なので、インジというものは、誰かが使っているからという理由で用いるべきではなく(とっかかりとしてはそれでOKですが)、あくまで自分にあったものを選択していくべきなんです。

どんなインジを使っても、実は簡単

で、ここではもう1つ覚えておいてほしいことがあります。それは、

どんなインジをどう組み合わせて使ったとしても、「トレンドの局面」というのはいずれも理解しやすい

ということなんですよ。

このブログでは、再三言ってきていますが、

「勝てないうちは、まずはトレンドフォローだけをやって、腕が上がったらレンジの検証と練習にチャレンジすべき」

というのは、トレンドがトレードしやす局面であると同時に、多くのインジがトレンド時には機能しやすいという特徴があるからです。

これは、メイン・チャートに表示されるインジというのは、その多くが「トレンド指標」であるためです。

ちょっと、見てみましょうか。

先ほどのポンド円4時間足チャートの場合、ハッキリとトレンドとして認識できるのは、

大体、赤い四角で囲った辺りの局面です。

じゃあ次に、先ほどインジを貼った4つのチャートを、上図の赤で囲った部分に注目して見ていきましょうか。描画はしないので、各自で確認してみてください。

確認しました?で、気が付きましたかね?

トレンドがハッキリと出ている局面は、どんなインジを貼ったチャートであっても、

「分かりやすい局面」

なんですよ。

そう、実はどんなインジを使おうとも、比較的トレードで利益を出しやすい局面なんです。

でも、実際はなぜ難しいのか?

とはいえ、実際のトレードをトータルで勝てる人は、あまりいません。

なぜでしょうか?

答えはそれほど難しくはありません。

赤く囲った部分の様に、ハッキリとトレンドが出ている局面というのは、実際の相場ではあまり多くないからなんです。

実際は、緑色で囲ったような部分、つまりレンジもしくは初心者レベルではトレンドが出てるのか出てないのか判別が難しい局面がほとんどなんですよ。

相場では、この様なレンジの局面が7~8割を占めることになります。市場のほとんどの時間が、レンジで占められてるんです。

しかし、メインチャートに表示されるインジのほとんどは、「トレンド指標」です。

つまり、多くのインジが誰もが扱えるレベルで機能する局面というのは、実際2割から3割程度なんですよ。

それ以外の大半の期間は、機能しづらい時間が続きます。

ちょっと、見てみましょうか。

上図、緑で囲った部分を、次のインジを貼った4つのチャートを使って、見ていってください。

分かりましたかね?

この緑で囲った局面では、いずれのインジも蛇行が始まり、各インジが絡み合ったり重なりあったりして、

「ワケわかんねー!」

状態になってしまうんですね。

だから、結果的にインジは簡単というわけにはいかなくなるわけです。

こういったレンジ、またはトレンドが出ているのかはっきりしない相場付きというのは、既に出来上がったチャートを後付けで見れば「分かった気」になれるんですが、実際に値動きが形成されていく過程では、振り回されやすい局面にあたります。

なので、リアルなトレードではインジを頼りにエントリーやエグジットを繰り返すことで、損失を膨らまし続けることになります。

で、インジに対する不信感が生まれたところでトレンドが発生し、絶好のチャンスを逃します。

しかも、人というのは悲しい性を持ち合わせています。そんなチャンスを逃したトレンド状態を見て、悔しがり、しかし値動きの大きさに不安を抱え、にもかかわらず「爆益」という欲望を膨らませることで、トレンド中の天底狙いの逆張りを繰り返すんですよ。せっかく貼ったインジが示す状況を無視しながら、ね。

で、焼かれ続け資金を減らし続けた後に、トレンドは収束を迎えます。

そうなると値動きは小さくなりますよね。だから、深層心理の部分での不安は消えます。

不安が解消されたことと、トレンドに逆らったトレードで負け続けたことを反省し、そこから始めるトレードは、インジが機能しない部分でのインジ頼りの順張りトレードです。

そうやって、レンジ局面で負け続けると、再びインジに対する信頼は・・・

ってなことを繰り返し続けるんですよ、負け続ける人というのは。

使ってはいけない局面でインジを使い、使うべきわずかな局面でインジを使わない。

これが、人が人であるが故の悲しい現実です。

インジを扱える様になるということ

ここまでの話をまとめると、

メインチャートに表示されるインジというのは、そのほとんどがトレンド指標。だから、トレンド時は比較的トレードが容易。しかし、相場のほとんどはレンジ期間。トレンドが出るのは2~3割程度。

ですから、インジを攻略するって、むしろレンジの方が大変なんです。

だから僕はこのブログで、

「勝てるようになるまではトレンド・フォローだけでトレードするべき。レンジは勝てるようになってからチャレンジ」

と繰り返し言っていますよね。

インジを扱える様になるというのは、トレンド時だけではなく、レンジをどう見極めのか?そして、レンジの際には、どう扱えば良いのか?を知ることなんです。

  • まずは、自分が選択したインジで、トレンド局面とレンジ局面を見極められるようにし、レンジは避けトレンドのみをトレードすると決める
  • 見極め(ガイドライン)が出来たら、トレンド局面でそのインジが扱える様に、検証と練習を繰り返す
  • トレードはトレンド局面でしかやらず、トレンド局面が訪れない期間は、レンジに対する考察を深める
  • 選択したインジでレンジ内取引が出来るのかどうかを検証し、出来るなら扱える様に練習、出来ないのならば逆張り指標のインジを用いてレンジ内取引が出来る様に検証と練習を繰り返す

この様な過程を経て、初めて

「インジが扱える」

ということになるんです。

インジというものが、単にエントリーのタイミングをサインで教えてくれる道具だという認識でいる限り、勝ちトレーダーには一生たどり着けません。

インジ・マニアな僕の場合

実はインジが不得手な僕

では、相場に対する僕の認知の仕方って、どんな感じなんでしょう?

冒頭でお話しましたが、

「僕はインジが得意じゃない」

って自分では思ってるんです。

要するに、チャートにあまりインジを貼ってしまうと、むしろゴチャゴチャとして相場を把握しづらくなるタイプなんです。

例えば先ほどの様に、移動平均線を貼った場合、

一応僕はインジ・マニアなんて、扱えることは扱えるんですが、実はチャートから相場の状況を認識しづらくなってしまいます。

メイン・チャートに曲線などが入り込むと、どうしてもその向こう側が見づらくなってしまうんですよ。インジをメインチャートに貼れば貼るほど、むしろそちらに目が行き過ぎて、相場の理解の仕方が二重三重になって、分かりづらくなってしまうんです。

もちろんそれは、移動平均線に限った話でなく

これらの曲線達がチャートに入ってしまうと、そちらに目を奪われがちになります。

しかし、素のチャートに戻して見ることで、

僕にとっては見えてくるものが、非常に見えやすくなってくるわけで。

言ってしまうと、素のチャートが良いとか悪いとかではなく、僕は僕なりの苦肉の策が、チャートからインジを極力外すということだったんですね。

勝てる様になるきっかけが、全てのインジを外し、素のチャートとにらめっこを続けたところから始まった、というのも実は僕の認知の得手不得手が関係していたのかもしれません。

で、インジを外した素のチャートから見える景色。それを他者にも分かるように可視化したものが、僕にとっての「ライン」になります。

僕の中では「ライン」と言っても、それは価格帯を仕切る1つの目安のことで、実際はそのラインとラインの間の値動きの移動が気になるんですね。

これを、もうちょっと他者にも分かる様に可視化して説明すると、次の様な図になります。

左端から説明していきますが、

紫色での価格帯にあった価格が、その後ブレイクして上昇トレンドを形成するわけですが、これは赤色で囲ったクラスターがエレベーターに乗るかの様に上昇していくようなイメージ。(あくまで視覚的イメージで話しています)

次に緑色で囲ったAのエリアを価格は上下しながら移動していますが、徐々に高値を切り下げていく様を見ながら、

「あぁ、売り圧力が上から徐々にかかってきてるみたい。ってことは、次は下の価格帯に移動していくかな?」

そんな感じで感じで僕はチャートを見ます。

すると、やはり緑枠Aのエリアにあった価格は徐々に下へと落ちていきます。次の下の赤い枠に移動し、次は紫枠のエリアへ・・・って感じで下落していく様に見ているんですね。

底値を付けた後は再び上のエリアに戻り、赤い枠の中を上下します。

で、Bの緑エリアで分かる通り、赤枠を一旦ブレイクして高値を更新した後、赤い枠に一旦戻りますが、下値を切り上げる形で再び赤枠を上にブレイク。上昇トレンドの始まりです。

まぁ、こんな風に僕は価格がそれぞれ上下にエリアを移動するというイメージで相場を把握しようとするので、

こんな風にチャート表示してしまうと、その点が見えなくなってしまうんですよ。

もちろん、メインチャートにインジを貼っても、きちんと見える人もいるんでしょうけど、僕は見えづらい。

それが僕のチャートに対する認知の得手不得手なんです。

また、僕の様に値動きのエリアが上下するという相場の見方をしなくとも、相場状況を把握できる人もいるでしょうから、そんな人にとっては逆に僕の相場の見方は邪魔になってしまうかもしれません。

そんな人は、むしろインジを友好的に活用した方が、成績が良くなるはずです。

まぁ、いずれにせよ、これが僕のチャートの認識の仕方としては、最も腑に落ちるやり方なんです。

ですから僕は、インジが好きでインジを弄りまくるくせに、結局はトレードに滅多には用いないという、不思議なことを繰り返し続ける羽目になっています。

僕なりの工夫

とは言え、僕はやっぱりインジが好きな人です。

インジの良さを知っているつもりですし、素のチャートだけで全てが理解できると思うほどの自信家でもありません。

なので、インジを使う際には、僕のチャートの認知の仕方の基本を邪魔しないように、色々と工夫をしています。

例えば、ボリンジャーバンドなんかは、

こんな風に、描画の色を極力薄くして、チャートを見る際の妨げにならないようにしたりしてます。

また、ボタンやキーをタッチすることで表示のオンオフを切り替えられるインジを使ったりします。

ボリンジャーバンドなら、そういったものがいくつも出ています。僕の場合は「Mi_BollingerBand」というものを使ってます。

移動平均線は、ある方(紹介すると勝手に依頼したりする人が出てくるのを避けるため名前は伏せます)に作ってもらったインジを使っていて、

右上端の小さなボタンで4本の移動平均線を表示したり非表示にしたり出来る様にしています。

アナタにとってのインジのあり方

繰り返し言いますが、同じチャートを見つめていても、人によってその認知の仕方には得手不得手があります。

ですから、自分なりのインジを自分なりの表示の仕方で用いることが、アナタにとっての理想的なインジのあり方なんだと思います。

インジが爆益を生み出すサインを出してくれるものだと思っている限り、決してたどり着くことの出来ない聖杯探しの旅は続きます。というより、迷宮に迷い込んだままでそのトレード人生を終えるでしょう。

しかし、アナタが自分自身にとって最も認識しやすいチャート表示を探す旅に出たとしたならば、その道の先には「利益」という目的地が待っていることでしょう。

ひょっとして僕ら裁量トレーダーにとっての「聖杯」とは、自分なりのチャート表示の最適解を見つけ、その最適解をきちんと扱えるようになるのことなのかもしれませんね。

 

ということで、今回のお話はここまです。

それじゃあ、また。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です