チャート・デザインの実際(1)

検証すればつまづく

僕は常日頃、

「練習と検証をしましょう」

と言ってますが、どんなに言ってもやらない人はいるんですね。

答えを自分で探さずに、他人から運んできてもらおうとする人です。

いや、自分では探しているつもりなんですよ。本やネットの記事なんかで「探す」という行為はしてますから。

でも、それって根本的に間違ってます。

繰り返し言いますが、本やネットで情報を知っただけで、スポーツが上手くなる人はいませんし、工芸品を上手く作ることが出来るようになる人もいません。

当たり前のことです。

自分で練習や検証、そして実践を積み重ねることでしか、上手くはならないんですよ。

どんなに一生懸命になって本やネットで情報を探ろうとも、そこには手引きやガイド、お手本しか書いてありません。

これ、先の「チャート・デザイン」シリーズで幾度となく使った画像です。覚えてますよね。

で、僕の解説を読んで納得して、上図を見て「なるほど」と思ったとしても、それは単に「知っただけ」でしかありません。

僕の記事を読んで、本当に検証と練習を繰り返した人なら、きっとこう思うはずですよ。

「BOZのブログに書いてあること、色々やってみたけど、思ってた以上に上手くいかない」

ってね。

そして、それが正解です。

分かりやすい相場

解説書に書いてあることは、基本的にお手本の様な局面ばかりですし、それは僕のブログの記事も例外ではありません。

説明しやすい様に、理解してもらいやすい様に、「分かりやすい」局面を用いて、解説しています。

しかし、実際の相場が作り出す値動きは、千差万別な顔つきをしています。基本を知っていたところで、それだけで対応できるとは限りません。

ちょっと見てみましょうか。以下は、以前Twitterに僕が載せた画像に一部手を加えたものです。

Aのポイントは、「チャート・デザインのすすめ」シリーズの第5話までの内容を、きちんと使えるレベルで自分のモノにしていたら、比較的

「分かりやすい相場」

だったはずです。

ガイドラインは、シンプルに下降トレンドを示していますから、素直に戻り売りを狙う局面ですよね。

では、「チャート・デザイン」シリーズで用いたディテールを表示して、このAの局面をアップしてみると

到達ポイントを探るテクニカルだけでエントリーするなら、上図青丸のaかbでエントリーですよね。

保守的にトレードしたとしても、赤丸cもしくはdのポイントでエントリーです。

つか、覚えてますか?

この局面って、実はシリーズ第5話でお話した僕のトレード例とほぼ同じです。この時もやはり僕は、5分足を見ながらaのポイントでエントリーしてます。

で、この様に解説通りの典型的な局面というのは、検証と練習をある程度重ねてしまえば、難易度はそれほど高い場面ではないはずです。

いわゆる「分かりやすい」局面ですから。

この様な分かりやすい局面を「難しい・・・」と思ってしまう人は、単純に検証と練習を積み重ねることで得た経験値が、乏しいだけなんじゃないですかね。

頭で完全に理解してから、検証や練習に臨もうとしているとか。

でも、その姿勢ってどうなんでしょうかね?

例えば、バスケットボール部に入部した人が、練習に参加もせず、まずは教科書を机の上で読み続け、ルールや基本的動作、またその他のテクニックを頭で完全に理解し、その数か月後に初めてボールを触る・・・

とかってしますか?

しませんよね?つか、それって異常です。

スポーツにしろ趣味にしろ仕事にしろ、普通は実際にやりながら覚えるものですから。

だから必要なのは、

考えてから走るんじゃなくて、走りながら考える

ってことなんですよ。

で、走りながら考えた結果、比較的直ぐに自分のモノにできる局面が

「分かりやすい相場」

と言えるのかもしれません。

難しい相場

じゃあ、今度は下図のBを見てください。

ここはガイドラインで考えると

「分からなくなってきたなぁ・・・」

という場面ですよね。

75SMAは下を向いていますが、価格はその上に乗っかってきています。しかし、完全に上抜けたわけでもないし・・・

いくらレジサポの直下で頭を抑えられている感を醸し出しているとはいえ、ガイドラインからは外れています。

ということで、一旦セットアップは解除、その後の振る舞いを待ってから判断しなくちゃいけない局面です。

ただ、その後の展開を待っていても、一体どの段階で「分かる局面」になったのか、「分からない局面」になったかを判断するのは、実際には、僕がブログで解説していた範囲だけでは、難しいんですよ。

教科書などでは、一律に説明しきれない箇所です。

つまり、こういった局面は、「分かりづらい相場」ということです。

で、分かりづらい局面というのは、どうしても自分で検証を繰り返して、より具体的なガイドラインを自分自身で設定しないと、トレードは困難になります。

ちょっと見づらいと思うので、アップして見てもらいたいんですが、

この図の時点ではロウソク足は75SMAの上で終わっていますから、この段階ではまだ

「分からない」

と判断するしかありません。

では、次の展開を見てみましょう。

ロウソク足は陰線となり、75SMAの下で終わっています。しかも、この陰線はここ数時間の中では最も大きく強いものすし、75SMAも下をシッカリと向いたままです。

じゃあ、これはガイドラインとして「下降トレンド」と判断する場面なんでしょうか?

その答えは、アナタしか知りません。

検証した結果、アナタが「下降トレンドと判断してOK」とガイドラインで設定しているのであれば、それが正しい判断ですし、

検証した結果、アナタが設定したガイドラインには及ばないため、「まだ下降トレンド再開とは判断してはダメ」と判断するなら、それはそれで正しいんですよ。

で、結果だけ先に見せてしまえば、

レジサポを上抜けて上昇してしまってますから、「下降トレンドが再開した」と判断してはダメな局面だったことが分かります。

 

しかし、本当にそうでしょうか?

 

結果だけを何となく見てれば、そんな風に判断してしまいがちです。

でも僕は、先ほどの

この陰線で75SMAを下回った時点で「下降トレンド再開」と判断してもOKとするガイドラインもアリだと思うんですよね。

例えば、この時点で「下降トレンド再開」と判断したら、その時の方針は

「戻り売り」

でしたよね。

しかし、このBで陰線を付けた時点で即エントリーするというディテールではなく、この時点から「戻り売り」を狙うと決めていたら、どうです?

直ぐにはエントリーせずに、もちろんこの後に「戻る」場面を狙い待ちするわけです。

じゃあ、次の展開を見てみましょうか。

戻り売りの局面を狙っていたら、結果として再び価格は75SMAの上に戻ってしまうわけで、戻り売りをする前に

「また、分からない場面に突入しちゃった」

ってなるわけですよ。

ですから、このガイドラインを適用しても、実際は売らずに済むんですね。つまり、この様に間違ってはいなかったってこと。

で、その後の展開も

再び陰線が75SMAを下抜きますが、戻り売りの場面を狙っていても、結局は75SMAの上に価格が戻ってしまうので、売ってしまうという失敗は起こらないわけですよね。

で、僕は今、この局面だけを採り上げて解説してますが、通常、千差万別の顔を持つ相場の全ての局面を、誰かが1つ1つ説明してくれるなんて、あり得ないですよね。

こういった部分は、各自が検証して、自分なりのガイドラインを具体的に作らなくちゃいけないんですよ。

そうでなければ、僕らは様々な局面において実質的な対応は出来ないんです。

「知ってるだけじゃ、出来ない」

と僕はこのブログで何度も言ってますが、こういった分かりづらい局面は、まさにその典型例なんです。

もちろん、検証の結果、自分のロジックが完成していれば、ここで売る人もいるかもしれませんよ。

例えば、環境認識として上図をガイドラインにして「売り局面」と判断した場合、スキャルピングとして5分足で戻り売りを狙うのであれば・・・

上図5分足の赤い矢印が、1時間足で陰線をつけて75SMAを下抜けた波動です。

これを見て、青い矢印の波を獲りに行くのは、その人のスキルによっては可能な局面です。

いずれにせよ、自分が検証して確率的に作り上げたロジックであり、練習によってそれが実行可能なスキルとして持ち合わせているのであれば、

誰がどう言おうが、それは各自の自由ですし、それが正しいトレードなんです。

 

自由にやったら良いさ

 

僕が常にそういうのは、そういった意味も大きいからなんですよ。

検証した結果、そこに優位性があると判断したロジックをアナタが確立しているのであれば、仮にその局面で負けたからといっても、それは「正しい負け方」ということになります。

正しい負け方

ここでちょっと、僕が先週、損切りした時のお話をします。

これ、ポンド円の1時間足です。

赤い四角の部分で、この時の僕は何度か買いを仕掛けました。見ての通り、上昇する75SMAから反発している局面ですね。

(実際のこの時の僕は、違うロジックでトレードしていたので、このMAは表示していませんでした。しかし、結果としてチャート・デザインシリーズで紹介したガイドライン通りの展開になっていましたので紹介しています)

この局面、もう少し見やすくなるように、15分足に切り替えてみます。

上図の緑色MAは1時間足75SMAの近似値ですが、MAで何度となく跳ね返されているのが分かると思います。

で、この局面で僕は、上図水平線を抜けて上昇すると踏んで、買ったんですね。

しかし、見ての通り、何度も上値を試しますが、水平線に阻まれて上昇ききれませんでした。

なので僕は、下で買っては上がりきれないと逃げるを繰り返すトレードをしていたんですね。

で、最後はもう寝る時間だったので、そのまま放置。起きたら損切りになっていた、という展開です。

で、結果として最後のトレードは負けで終わったわけです。

しかし、この損切りした場面って、残念がって後悔する場面でしょうか?

「あー、早めにエグジットしておけば良かった」とか
「エントリーしなきゃよかった!」とか

そんな風に嘆く場面だったのでしょうか?

ここで多くの人が結構勘違いします。

トレードとは、確率のもとで行われます。だから、勝率7割であっても、トータルで3割は必ず負けるんですよ。

逆に言えば、その3割の負けを許容することで、トータルで勝とうとするのがトレードです。

ですから、正しくトレードして、それで負けるのは、むしろそれは正しい負け方となります。

逆に、ロジックに反してトレードをして負けた場合、それは明らかに間違った負け方ですし、仮にそれで勝ったとしても、それは間違った勝ち方であり、過ちでしかありません。

そういった観点で言えば、正しく負けた場合は、それを悔やむ必要も嘆く必要もないわけです。

じゃあ、先のトレードで損切りしてしまった場面。これは、正しい負け方だったのでしょうか?

さて、恒例のシンキング・タイ~ム!!

 

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

考えました?

では、正解の発表です!

その答えは!

 

そんなん、知らねーよ。
人それぞれだろ。

 

が、正解です!

これ、冗談でも何でもありません。

というか、僕が常日頃、「検証しろ」と言っている意味が、ここにもあるんですよ。

僕が「チャート・デザイン」シリーズで例に出したガイドライン「1時間足75SMA」で言えば、

MAが上昇していて価格がその上に位置している場合は、買い方針

ですから、買い判断は正しいことになります。

75SMAからの反発からの買いをディテールとして組み込んでいれば、それもまた買い判断は正しいことになります。

ですから、僕が前回までに例で挙げた範囲内での判断であれば、この局面での買いは正しい判断となり、

正しい負け方

ということになるわけです。

しかし、同じこの局面でも、きちんと各自が検証していたら、必ずしも皆が買い判断になるわけではありません。

もう一度、チャート図を見てみましょうか。

赤い四角で囲った直前に、青丸の部分で、上昇する75SMAを一旦下抜けるも願い叶わず直ぐに反転上昇してしまっています。

この様に、一旦75SMAを試した後に直ぐにまた75SMAを試す場合を検証した人いますか?

このケースを検証して、この場合は「上昇に失敗することが多い」と判断していて、買い方針のガイドラインから外していたならば、

「ここで買ったのは間違いであり、反省しなければいけない負け方」

ということになります。

また、この青丸のポイントでの下値の試し方によっても、判断が変わっていたかもしれませんよね。

「上図の様にMA付近で小競り合いがあるならば、次は危ない。でも、小競り合いなく反転上昇していたなら、次にMAを試した時も買い方針は有効」

とかね。

他にも、色々考えられますよね。

例えば、上図では75SMAの直ぐ上にレジサポがあります。こういった場合はスルーすると検証して決めることもできます。

で、エントリーしてはいけないとしていたのに、トレードしてしまえば、それは間違ったトレードです。勝っても負けてもそれは「ダメな勝ち方」「ダメな負け方」です。

しかし、「エントリーしてもOK。しかしレジサポで様子を見てエグジットを決める」としている人であれば、ここでのエントリーは正しいエントリーになります。

で、その結果負けた場合は、

「レジサポでの振る舞いを見てエグジット出来る実力が自分にはなかった。実力がつくまで、このケースは買わないことにしよう」

とか

「レジサポ付近で上手く立ち回れる様に練習しなくちゃ!」

など、次に自分が採るべき手段を、色々と前向きに検討出来ることになるわけです。

しかし、検証もせずに、記事の内容だけで納得して分かった気になり、先の局面で買って失敗した人は、この1回の負けで全てを判断しようとしてしまいます。

胸を張って負けても良い場面であっても、何が問題だったかも振り返らずに、ただクヨクヨして悔やんだりします。

それどころか

「この手法は間違ってる。信用できない」

ってなったりして、再び打ち出の小槌的な手法探しの旅に出ます。

まさに、負けるべくして負ける思考回路と行動性なんですよ。

 

さて、ここまでお話してきた様に、

相場には「分かりやすい相場」と「分かりづらい相場」があります。

で、「分かりやすい相場」とは、頭で比較的理解しやすい内容で、検証と練習することで、直ぐに身に着けることができる局面のことです。

しかし、多くの場合は「分かりやすい相場」ではなく、「分かりづらい相場」に直面します。

そして、そんな「分かりづらい相場」とは、ある程度検証を重ねないと、実践で用いることが難しい場面です。

また、きちんと検証して自信を持ってトレードできなければ、正しく負けても悔やんでしまい、むしろ今後正しくトレードすることを妨げてしまう局面です。

この点を踏まえながら、検証と練習に励んでもらえたらなぁ、と思いながら、今回はここまで。

それじゃあ、また。

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