チャート・デザインのすすめ(3)

さて、前回の予告からすれば、今回は設定したガイドラインに沿って、ディテールを作成してく解説をする予定でした。

が、ちょっとその前に・・・

ガイドラインにそって、実際に相場を見ていく例を挙げておいた方が良いかなぁ、と。

細部に移る前に、骨子の部分をきちんと把握できるようにしておかないとね。

ということで、始まり始まり~!

ガイドラインを用いてみよう

前回に使ったユーロドルの1時間足に日足5SMAをガイドラインに用いたチャート図が、これでした。

とりあえず、これを使ってチャートの左側から少しずつガイドラインを適用させながら判断していこうと思います。

左側の方までチャートを隠しながら説明しますね。

ここ、前回説明しましたが、価格は2度ほど下降する75SMAの上抜けを試みますが、抜けきれずに失敗した場面です。

下降トレンドと判断し、売り方針という場面ですね。

もちろん、この段階で飛び乗るのではなく、75SMAに向かって価格が一旦上昇してから再び反転下落をするタイミング、つまり戻り売りのタイミングを待つ場面です。

で、この戻り売りの方針は、価格が下降する75SMAを明確に上抜けるまで続きます。

この方針で戻り売りを狙った場合、上図赤丸で記した辺りで4回ほどのエントリーポイントがあったことになります。


もう少し細かく見れば他にも数箇所の戻り売りのタイミングがありますし、より小さい時間軸でタイミングを狙うと、もっとエントリーポイントは探せるはずです。

が、ここはチャートデザインのお話なので、この1時間足のみで考えることにします


で、実際にこの戻り売りのポイントをどう捉えるのか?

というのを見つけようとテクニカルを適用していくのが、この後に解説することになる「ディテール」の作成ということになります。

なので、今はガイドラインの解説なので、その辺は飛ばしていきます。

今の段階では、ガイドラインに従って上図赤丸の様な戻り売りのポイントを売る「方針」を立てる局面であると分かってもらえれば、OKです。

さて、続けましょう。

この赤丸の部分も、前回お話しました。75SMAを価格が上抜けた後、しばらく(2~3時間)はその上に滞在します。

ですから、この時点で「下降トレンドではなくなった可能性大」ということで、

「分からない局面に突入した」

と判断します。ここからは、何らかのガイドラインが適用されるまでは「分からない」としてトレードはしてはいけない局面ということになります。

ちなみに、移動平均線だけでなく、ダウ理論や値動きなどもガイドラインに用いていたとしたら・・・

まず、低値Aから低値Bの切下げた値幅に注目して下さい。それまでは大きく低値を切り下げ続けてきましたが、Bの時点では低値の切下げ幅が極端に小さくなっています。

75SMAのガイドラインに従って下降トレンドは進行中と判断は続けますが、この時点で

「あれ?下降する力が弱まってきてるかな?」

と、一応は警戒心を持ってチャートを眺めることになります。

そして次の低値C。この時点で、低値はBからCへと切り上がりました。

ということで、ダウ理論もガイドラインに用いているのであれば、Cの時点で「下降トレンドは少なくとも一旦終了」という判断になります。

75SMAだけをガイドラインに用いるよりも、「分からない」「手を出してはいけない」と判断するタイミングが早くなるわけですね。

そしてその後、75SMAを上抜け。しかし、赤い丸の部分は直近高値と同値で止められたため、やはり「分からない」局面であるとハッキリします。

まぁ、この様にガイドラインに用いるテクニカルは複数の方がより的確に4大局面を判別することが可能になります。

が、前回もお話した通り、慣れないうちはまず1つのテクニカルに集中して習熟度を上げる努力をした方が良いです。

話がそれました。続けましょう。

上図赤い丸のポイントを見てください。75SMAが上を向き出し、価格が75SMAの上で反転上昇を始めました。

この時点で、「分からない」という局面は終了し、

「上昇トレンドが発生したと判断し、押し目買い方針」

というガイドラインが適用されることになります。この赤丸のポイント以降は、75SMAが上を向きつつ価格が75SMAより上にある限り、この押し目買いの方針は続きます。

ちなみにですが、これもダウ理論を用いていれば、もっと早く局面の切り替わりを判断できています。

上図青丸を見れば分かる通り、高値も低値も75SMAが反転上昇始める前に既に切り上がっていますので、より早く上昇トレンド発生を感知できたことになりますね。

次に、上図赤丸Eを見てください。価格は75SMAを下抜けたまま滞在しています。75SMAはまだ上を向いたままですが、この時点で上昇トレンドが継続するかは「分からない」ことになりました。

ということで、ここで買い方針は終了。「分からない」局面に突入したので、Eのポイントからはトレードはしない方針に切り替わります。

DからEまでの上昇トレンド中には、大まかに5か所の押し目買いポイントがあったのが分かると思います。

なお、ダウ理論では、まだ直近低値FはEの時点では切り下げていませんので、まだ上昇トレンドは終わっていないことになります。

続いて、上図赤丸のポイント。ここはちょっと面白い場面です。

まだ慣れていない人は、75SMAは横を向いたままなので、ここはまだ「分からない」と判断します。

その後、価格の下落が続き、75SMAが下を向き出せば、その段階で初めて「下降トレンド開始。売り方針」と判断することになります。

欲を出して早めに仕掛けてしまうと、ガイドラインの意味をなさなくなりますので、初心者は注意しなくちゃいけない場面です。

しかし、この場面は慣れた人だと、ちょっと違ってきます。この赤丸の時点で

「75SMAに頭を抑えられて抜けそうもないかな。この揉み合いを下抜けたら75SMAは下を向き出すことになるので、下抜けたと同時に売り方針に転換しよう」

という判断を下す人も出てくると思います。この辺が、経験値・習熟度によるところなんですよねぇ。

ただし、初心者は絶対にこういった判断は止めてください。経験と腕による判断ではなく、欲望に左右された判断になりますから。

前回も言いましたよね。検証と練習によってガイドラインは具体性を加えていきますが、初心者が技術もないのにいきなりトレードで新たなガイドラインを加えるのは間違いだと。

欲望にまみれただけの醜い姿でしかないんですよ。

こういった早合点を繰り返すのは、むしろトレードの上達から遠ざかってしまいますので、注意してください。

さて、初歩向けのガイドラインに従うとすると、大体赤丸Gの辺りで75SMAは下向き出しますから、この辺りにきてようやく

「下降トレンド開始。戻り売り方針」

という判断になります。この方針は、75SMAを価格が上抜くまで続きます。

で、Hのポイントで、価格は75SMAを上抜いたまま滞在します。なので、ここからは

「分からない局面。トレードはしない方針」

ということになるわけですね。

・・・とまぁ、実際にガイドラインを適用しながら相場を見ていきました。

みなさん、この例をもとに、相場状況の4大局面を判断して売買方針を立てる検証と練習を繰り返してみて下さい。

この感覚が身に付けば、後はエントリーポイントを探るディテールを作っていけば良いだけです。

ただ、ここから新たに解説に入っていくのはちょっと長すぎるので、今回はこの辺でお開きとします。

次回こそは、チャート・デザインにおけるディテールの作業についてお話しますね。

それじゃあ、また。

チャート・デザインのすすめ(2)

さて前回は、ゴチャゴチャとなったチャートから抜け出す最初の視点をお話しました。

で、今回は実際に素のロウソク足チャートから、きちんとした視点を持ちながら、テクニカルを加えていくというチャートの設計の仕方、いわば「チャート・デザイン」を具体的な例を使いながらお話していこうかな、と。

まずはガイドラインを設定しよう

ガイドラインとは

ガイドラインというのは、トレードを行なううえでの「指針」のことです。つまり、

何を軸にしてトレードをするのか?

もっと言えば、

何を軸にして、相場状況を判断して方針を決めるのか?

ということです。

ただ、これでもちょっと抽象的過ぎると思う人もいるんじゃないのかなぁ?

なので、改めて具体的に説明しますが、

相場には4つの大きな局面があります。それは、

  • 上昇トレンド
  • 下降トレンド
  • レンジ
  • 分からない

ということですね。

で、今の相場は、この4つの局面のうち、どの局面にあるのか?

を把握することが、トレードの判断において、最も大切であり、最初にやるべきことになります。

(これ、何度かこのブログでお話してます。知らない人は「相場の局面を考えてみる」をご覧ください)

で、この4つの局面が分れば、自ずと自分がとるべきトレードの方針が

  • 順張りで売買
  • 逆張りで売買(レンジ内取引)
  • ブレイク・アウト狙い
  • トレードしない

のどれに当たるのか?が分かるわけですよ。

つまり、基本的な方針がこの状況把握だけで決まるわけです。

で、こんな話をすると

「そんなの、当たり前~。知ってるし」

という人がいるんですよね。

 

勝てないくせに。

 

勝てない人というのは、お勉強してそういったことは知っていても、実際のトレードでは活用できてません。

状況把握をしても、それとは全く関係ないところで売買をしたり、酷けりゃ知ってるだけで把握もせずにトレードします。

まぁ、言い聞かせていても、出来ないことって多々ありますからねぇ。

なので、この4つの局面を把握し、意識して実行できる様にするために、まずはガイドラインを設定します。

ガイドラインを設定しよう

ガイドラインって、別の言い方をするなら、イラストを描く時なんかのデッサンやスケッチみたいな感じでしょうかね。

対象物の骨子を浮き彫りにするイメージです。

じゃあ、チャートの局面を浮き彫りにするために、具体的には何を用いれば良いのでしょうか?

まぁ、何でも良いですよ。

先の4大局面を把握できるものであれば、何でも良いです。

例えば例を挙げると

  • ダウ理論
  • ライン
  • 移動平均線

が最も一般的でしょうか?

「じゃあ、その中ならどれを使うのが一番良いの?」

という他人本位な声も聞こえてきそうですが、これに関してはどれが良いという答えはありません。

どんなツールが優秀なのか?

に興味が行きがちですが、何を持たせたところでしょせんはその人の腕次第です。習熟度によって、同じ道具を使っても結果が違うのは、スポーツにしろ工芸にしろ、どの世界だって当然のことです。

例えば、こんな素のチャートがあります。ユーロドルの1時間足です。

この相場状況を把握するために、ダウ理論を用いるとしても、以下の様に判断が分かれる部分はどうしても出てきます。

人によって高値安値をどう結ぶかは違います。主義主張によっても、習熟度によっても違います。

もちろん、既に出来上がったチャートでは天底を見つけてトレンドの端から端までを示すことは出来ますが、

価格の推移を形成途中では、今この状況を常に誰もが同じように説明できるとは限らないんです。

仮にラインを用いて、状況を判断しようと思っても、

一見スッキリしているようですが、これも主義主張や習熟度によって引き方は人それぞれですし、トレンドの転換点やレンジに移行するタイミングも、その判断は人によって変わってきます。

また、上図は後付けで引いたラインです。

価格推移が形成途中で、リアルタイムでトレンドラインを引こうとすると(流儀によって違いはあるでしょうが例えば)、

こんな感じで、価格が推移するごとに、常に引き直しをする羽目になり、リアルタイムでトレードしようとすると、

「一体、どこでトレードすれば良いんだ!?」

なんて現実にも直面したりします。

移動平均線だって同じですよ。

上記は40SMAで、この相場の価格推移を比較的上手く捉えてはいますが、これで何もかも分かるわけじゃありません。

基本的に移動平均線はトレンド系インジケーターですから、トレンドを把握するには向いていますが、

じゃあ、レンジはどこから始まって、どこで終わり?

ということは、やはり人それぞれになってしまいます。

また、上手く相場の流れを説明してくれそうな期間を探せば探すほど、人は深みにハマっていきます。

上手く押しや戻し、転換点を捉えるパラーメーターを求める旅がはじまり、突き進めて行けば結局のところ

こんな感じで、無数のMAを表示する羽目になってしまいます。

しかし、これじゃあ下手な鉄砲数打ちゃ当たる作戦にしかならず、本来のガイドラインの役目、つまり4大局面を炙り出す目的からは、徐々に離れていくんですよ。


ただし、GMMAというインジがあります。これは上図の様に数多くの移動平均線を張り巡らすことで、相場を判断しようとするものです。

上記の説明でいけば、このGMMAの考え方は否定されるように感じますが、これはむしろ逆で、チャート・デザインを仕上げた結果、人によってはGMMAの様な形態になったりします。

この辺のことは、後ほどお話することになると思います。


 

結局のところ、どのツールを使うかは、その人次第ですし、テクニカルに優劣があるというよりも、その人の習熟度によって優劣が生まれるわけです。

ですから、多くは望まない。

まずは1つ。

たった1つのテクニカルを徹底的に突き詰めて、実際のトレードで扱えるようにする必要があるんです。

で、どれを選択し、どれを磨き上げるかは、その人次第です。問題意識を持ってどれだけ取り組むかにかかってるわけですよ。

そうやって、まずは自分のトレードの軸となるものを1つ用意することが大切です。

で、これがアナタがトレードする上でのガイドライン(指針)となっていくわけです。

もちろん、ガイドラインは複数あった方が、トレードの根拠が増えます。

なので、1つ自信のあるガイドラインが出来たら、その後で別のガイドラインを加えていく。そんな感じで、取り組んでいったら良いと思います。

時間のガイドラインを設定しよう

分かっている様で、実際にはなかなか実行できないのが、ガイドラインですが、ここでもう1つ気を付けなくちゃいけないことがあります。それが

時間のガイドライン

です。

この時間のガイドラインには大きく分けて2つのガイドラインが必要です。

  • ポジション保有時間
  • メインとなるチャート時間軸

これ、軽く見てる人も結構多い様なのですが、実際はトレードの骨格をなす大切な部分なので、予めガイドラインを設定しておく必要があります。

ポジション保有時間のガイドライン

これは、自分がどれだけの期間ポジションを保有するトレードスタイルをとるかによります。

大まかに分かりやすく言えば、

  • スキャルピング
  • デイトレード
  • スイングトレード
  • ポジショントレード

のどのスタイルでトレードしようかということです。

ただ、同じスタイルであっても、その内訳はさらに分かれます。

例えば、デイトレードと一口に言っても内容は様々で、一日の最大値幅を目標に獲りに行くことを目的としている人もいれば、エントリーしてからエグジットまでの保有時間が平均2時間程度の人もいます。もっと短い人もいますよねぇ。

スキャルピングであっても、数秒で決済を繰り返す人もいれば、30分程度は平気で保有している人だっています。

単純にスキャだとかデイだとかで分けられない部分があり、その保有時間は、各自のライフスタイルや性格等で分かれることになります。

なので、予めこの保有時間を設定しておきます。

これによって、次に説明する基準となるチャートの時間軸が決まってきますから。

もちろん、伸ばせるときは伸ばすスタイルの人もいますから、その内容は厳密ではなくてOKですよ。「時間」そのものではなく、例えば「波」などを基準にして取引する人もいますからね。

ただし、結果が出ない時の最大保有時間は決めておくべきかもしれません。

含み損を抱えてしまっていた場合、STOPに届かなくとも、タイムリミットでポジションを解消するという考え方は大切です。

また、エントリーした後に建値付近でしばらくウロウロしてしまったり、含み益が出た後に同じく方向感をなくしてウロウロしてしまい、判断に困るケースもあると思います。

こういった場合も、タイムリミットで決済するということも、実は大切なんですね。

いつまでも塩漬けにしたままにするより、早々と切ってしまい、その資金を次のトレードに回すことは、有益な考え方です。

また、人によってはスキャもやるしデイもやる、スイングだってやるという人もいます。

それ自体は全く問題ないんですが、どれがスキャでどれがデイなのかを曖昧にしていると、ドツボに嵌ります。

このトレードはスキャで、こっちのトレードはデイ。

といった具合に、ポジション保有時間を明確にしてトレードする必要があります。

ポジション保有時間は、自分のスケジュール管理だと思って、予め設定しておくことが大切です。

チャート時間軸のガイドライン

ポジション保有時間のガイドラインが決まったら、次に自分がトレードする際にメインとするチャート時間軸を設定します。

同じデイトレードでも、ポジションの保有時間だったり、トレードの主旨によって、メインとなる時間軸が変わってきますからね。

上級者であれば、自分がどの時間軸で何をやっているかを把握してトレードできますが、

初心者の場合は、メイン時間軸のガイドラインを設定していないと、単に軸がブレまくりのトレードを繰り返す原因になります。

1時間足では売りたい場面だけど、4時間足では売ってはダメだったり、15分足ではむしろ買えとサインが出ていたり・・・

各時間軸で整合性を見てトレードするのが良いのですが、初心者のうちは混乱しか生まれません。

その都度、違う時間軸でトレードするというのは、様々な思案を巡らせてやった結果の様に思えて、実はポジりたい気持ちを満たすための行為だったりするんですよ。

ですから、まずは自分のトレードの時間軸をハッキリとガイドラインとして設定することが、ブレないトレードをするための第1歩になります。

ガイドラインを具体化しよう

移動平均線を用いた例

それでは、実際にガイドラインを設定してチャートを構築(デザイン)していく例をお話していこうと思います。

で、今回ガイドラインに利用するのは移動平均線。しかも、用いるのは日足5SMAの考え方です。

(日足分析5SMAについて分からない人は、「デイトレーダーのために日足分析」シリーズをご覧ください)

では、やっていきましょう。

まず、時間軸チャートですが、これはデイトレーダーとして最も多いであろう1時間足をメインとして用いることにします。

含み益が上手く伸びなかった場合の最大ポジション保有時間は5時間としましょうか。もちろん、順調に伸びているのであれば、そのまま保有時間は延長します。

で、トレードのガイドラインとなるツールは、日足5SMAです。

この日足5SMA、1時間足での近似値は75SMAでした。

ということで、実際にチャートにこのガイドラインを用いてみると

こんな感じになりますね。

これがチャートデザインにおける骨子の部分、デッサンに当たります。

「え?たったこれだけ?」

はい、これだけです。

さっきも言いましたが、1本のMAから何をどれだけつかみ取るかというのは、個人の習熟によります。

分からないからといって、闇雲にMAの本数を増やすのは、ガイドラインの意味を失います。

で、ガイドラインの基本ベースは

  • 75SMAが上を向いていて、価格が75SMAの上にある場合は、「上昇トレンド」と判断して買い方針
  • 75SMAが下を向いていて、価格が75SMAの下にある場合は、「下降トレンド」と判断して売り方針
  • 75SMAが横を向いた場合は、「レンジ」もしくは「分からない」と判断する
  • 75SMAに傾斜はあっても、価格がそれを跨いでしまった場合は、「レンジ」もしくは「分からない」と判断する

となりますよね。(より具体的な内容は、日足5SMA分析シリーズをご覧ください)

このガイドラインを軸にして、トレードを行なうことになります。

ガイドラインをより具体化しよう

冒頭でお話した様に、ガイドラインとは指針であり骨子です。絵で例えるならばデッサンやスケッチの様なものです。

ですから、ガイドラインをあまりに細かく規定してしまっては、ガイドラインとしての意味を失ってしまいます。

しかし、あまりに曖昧な部分が多過ぎては、逆にトレードの指針としては乏しくなってしまいます。

例えば、先ほどのガイドラインで

「75SMAに傾斜はあっても、価格がそれを跨いでしまった場合は、レンジもしくは分からないと判断する」

といった部分があります。

しかし、例えば下降する75SMAを価格が上抜いたとしても、もう一度75SMAの下に戻ってしまうケースがあります。実際のチャートで確認すると、いくつかのパターンが存在することが分かると思います。

こういったケースは、各自で検証をして、「この場合はこうするが、あの場合はああする」といたガイドラインを設定してください。

でもまぁ、今回は75SMAを例に出して解説してますから、とりあえずガイドラインの設定の仕方の例も挙げておきますね。

まず、上図の赤い丸1ですが、これは75SMAを一旦越えるも直ぐに戻ってしまっているパターンです。

この場合は、75SMAの角度も保持されたままで直ぐに75SMAの下に押し戻されていますから、「75SMAを越えきれなかった」と判断してOKな場面です。

75SMAの下に直ぐに押し戻された後は、

「75SMAが下を向いていて、価格が75SMAの下にある場合は、「下降トレンド」と判断して売り方針」

というガイドラインを適用して大丈夫ということですね。

次に赤丸2ですが、これは75SMAを5本のロウソク足が越えている形跡がありますよね。

この場合、越えた足のほとんどは終値ベースで75SMAの下に押し戻されていますし、終値ベースで75SMAの上に位置していても、高値は更新できていないわけです。

もう見た目から、75SMAを越えようとして実際はその真上でくすぶっている感を醸し出してますよね。

こういったケースも、やはり「75SMAを越えきれなかった」と判断して良い場面ですから、

「75SMAが下を向いていて、価格が75SMAの下にある場合は、「下降トレンド」と判断して売り方針」

というガイドラインを適用してOKにします。

ところが、赤丸3を見てください。

3の場合は、2とは違ってシッカリと価格は75SMAを上抜けていますし、1と違って75SMAを上抜いた後は少なくともロウソク足2本分以上の時間はそこに滞在し、直ぐには下に引き戻されていません。

こういった場合、再度価格が75SMAを下抜け、更に75SMAは傾斜を保ったままだとしても、

「う~ん・・・これ、分からなくなったな」

と判断します。

つまり、少なくとも下降トレンドは一旦終了し、その後の展開は規則性のあるレンジに突入するのか、下降トレンドを再開するのか、上昇トレンドが始まるのか、

「分からない局面」

になったと判断し、トレードは控える場面です。その後の展開が分かる様になるまでは、待たなくちゃいけない場面ですね。

同様に赤丸4の場面も、「分からない」という場面になると思います。

とまぁ、以上の様にガイドラインを具体化していく例を挙げてみました。

これ、あくまで例なので、本当に上に挙げた例が正しいのかどうかは、各自が検証してみて下さい。わざと僕、嘘ついてるかもしれませんよ。

( ̄ー ̄)ニヤリ

ガイドライン作成の注意点

以上、お話してお分かりだと思いますが、ガイドラインの曖昧な部分は、検証等によって各自の習熟度が上がるたびに、より具体化していくことが可能です。

ただし、先ほども言いましたが、今やっている作業は、あくまで「ガイドライン」です。

つまり、ガイドラインは骨子となる4大局面を浮き彫りにするためのデッサンであって、それ以外の細かい部分を表現するためのモノではありません

そして、ガイドラインをより具体化していくという作業は、4大局面の移り変わる部分を曖昧にせずに、出来るだけキッチリと区分けできるようにする作業のことです。

もっと言えば、

局面の移り変わる部分の曖昧な部分が「分からない」という局面で、その「分からない」という部分を出来るだけ明確にする作業になります。

多くの負ける原因って、

  • 分からない局面を
  • 分からないくせに
  • 何とか分かろうとして色々インジを引っ張り出して
  • 分析した気分になって時間をかけ
  • 結局分かっていないのにもかかわらず
  • 分かった気になってトレードを繰り返す

ということばかりなんですよ。

分からない局面を色んなテクニカルを用いて分かろうとするのは、実際にトレードする際にやることではないんですよ。

そういったことは、「検証の場」でやってください。

当たり前じゃないですか。

4回転を飛ぶ技術のないフィギュアスケートの選手が、いきなり試合で4回転を飛ぼうとしますか?

しないですよね。4回転にチャレンジするのは、まずは練習と検証の場のはずです。

で、その技術が使える様になってから、初めて本番でチャレンジするわけです。

この世間では極めて当たり前の事実を、自分のトレードでも適用させる。それが、チャート・デザインの骨子となるガイドラインの具体化なんですね。

さて、今回はここまで。

次回は、作成したガイドラインにそって、ディテール(細かい部分)を表現していく作業に移るとします。

それじゃあ、また。

チャート・デザインのすすめ(1)

拝啓、汚部屋の中から

チグハグな部屋の中で

どんなテクニカルを使ってトレードするか、そしてそのテクニカルの種類や数は、人それぞれです。

チャートに何種類ものインジを張り巡らす人もいれば、ローソク足だけの素のチャートだけでトレードする人もいます。

もちろん、トレードに正解はありませんから、各自がやりたいようにやれば、それはそれで良いんだと思います。

ただ、何でもかんでもテクニカルを用いれば良いというわけではありません。各自が各自の課題や目的を持って、必要なテクニカル、使いこなせるテクニカルを用いてトレードに臨むことが大切です。

が、

実際のところ、それが自分にとって本当に必要なのかも気づかない状態で、テクニカルを表示してる人って、結構多いんじゃないでしょうか?

「このテクニカルが効きそうだ」
「あの手法はこのテクニカルを使ってる」

という感じで、インジケーターを表示している人って、多いと思うんですよね。

それって部屋のインテリアに例えてみると、カタログを広げて、

「これが欲しいし、あれも欲しい」

というのと変わらないんじゃないかと。

でも、そんな感じでバラバラに個別判断したインテリアを揃えても、部屋の中はチグハグになるだけです。

狭い和室に北欧調の家具を置いて、壁にはバスキアの絵。部屋中にバラの花を無数に飾って、畳の上に正座をしながらエスプレッソと芋ようかん。

何がしたいのか分からないどころか、全く落ち着きません。

でも、そんなトレードしてる人って、結構多いんじゃないかなぁ?

先日もTwitterで、トレンド系のインジをいくつか張り巡らしておいて、結局は上昇トレンド中に逆張りで売りをかましている人を見ました。

お茶っ葉と急須を用意して、オレンジジュースを作ろうとしたところで、出来るはずがないんですけどねぇ。

トレードの場合は、なぜかそんな人ばっかりになってしまいます。

しかし、どんなに頑張ってインジを重ね合わせてみたところで、本来の目的や必要性からズレたところやっていたら、結局はチグハグなトレードしか出来ないんですよ。

張り巡らしたインジのシグナルたちばかりに目を囚われ、実はチャートそのものは見ていないし、見ても最新のロウソク足の目先の動きばっかり。

で、そんな目先のロウソク足がバイ~ンって大きく動くと、欲望のまま飛び乗ってしまったり逆張りを狙ってみるわけですよ。

でもそれって、

結局インジも必要ねーじゃんw

という、ツッコミどころ満載のネタでしかないわけで。

だから、気づかなくちゃいけない。

本当に大切なのは、

自分はチャートから何を見ようとしているのか?
自分はチャートから何を知ろうとしているのか?

という視点です。この根本的な問いかけが、多くのトレーダーには必要なんだと思うんですよねぇ。

昔の汚部屋にお邪魔します

ここからは、ちょっと僕の昔のお話を織り交ぜながらお話しようと思います。

今の僕からは考えられないことですが、実は負けてばかりの当時の僕のチャートって、こんな感じでした。

いやぁ・・・下手するともう少しインジ多かったかも。

しかし、自分のこととはいえ、改めて当時を振り返っててみると、一体チャートから何を見ようとしていたのか、全く分からない状態です。

きっとこの頃って、

「このポイントでエントリーすれば良いんじゃね?」

って教えてくれるシグナル、つまりトリガーを自動的に教えてくれる便利な道具がないかばかりを探してたんですよ。

そして、自分自身にとって本当は何が大切なのかも分からないまま、何となく良さげなものを見つけては、あれもこれもと情報を足していくわけです。

言ってしまえば、闇雲に欲しいだけのモノを買い揃え、何が必要かもわからなぬまま、捨てられないモノばかりに囲まれて暮らしている汚部屋状態。

で、検証した気になっただけで、「これは効かない、あれも効かない」とインジを外しては、また違うインジを足していくわけで。

この頃の僕は、チャートにいくつインジを表示したところで、実はチャートなんて何も見ていなかったんですよね。

汚部屋から抜け出そう

まずは素のチャートを見つめてみる

そんな時代の僕ですから、当然のことながら、

何をやっても勝てない。
買えば下がるし、売れば上がる。
損切りして入り直せば往復ビンタ。
損切りしなければ含み損は膨れるばかり。

ゴチャゴチャになったチャートを前にしながら、ゴチャゴチャになった頭を抱える日々を続けてたんですが・・・

ある日、ふと

「自分は一体、何を見ようとしているんだろう?実は何も見ちゃいないんじゃないか?本当に大切なものって何だろう?」

って思ったんですね。

ひょっとしたら僕は、その時の自分自身にもう、ウンザリしたんだと思います。そして、

汚部屋から抜け出すために、ゴミかゴミじゃないかも分からないけど、とにかく捨てられる物は捨て、まずは生活するために必要最低限の物だけを残そう。

そんなつもりで、チャートからインジを外していきました。

そうすると、やっぱりこんな感じにあるわけで。

ロウソク足だけの素のチャートです。

で、まずはここから

一体何が分かるんだろう?
何が見えてくるんだろう?
自分は何を知りたいんだろう?

という視点で、ずっとチャートを眺め続けてみたんです。

すると、どうでしょう。まるで暗闇から一筋の光が見えるかの様に・・・

 

いや、なんも分かんねぇ!

ノ( ̄0 ̄;)\オー!!ノー!!!!

 

そう都合良くはいかないんですね。どっからどう見ても、何も分からないわけで。

ということで、ここで僕は初めて

問題意識

を自分で持つことになるんです。

問題意識を持ってインジを見直す

いざ素のロウソク足チャートを目の前にしても、一体何のどこをどう見てどう判断してよいか分からないわけです。

「ここはどこ?私は誰?」

という状態になってしまいました。

そこで、改めて僕自身が

「一体僕がこのチャートから知りたいのは何?」

という、根本的な問題意識を持って己とチャートを見つめ直すわけです。そして、

このチャートから相場の状況を理解するためには、一体何が必要なんだろう?

という疑問を解決するために、「知っていると思っているだけ」だったテクニカルの教科書を、もう1度開いて見ることにしたんです。

で、そこで何を選択するのかは、人それぞれになると思います。

ただ、当時の僕の場合は、それが「ライン」でした。

見えないものを見るために

なぜラインを選んだのかは、今となってはハッキリと思い出せないんですが・・・

そう言えば、当時の僕は、それまでほとんどラインを引いてみたことがなかったんですよ。

僕がトレードを始めた当初というのは、テクニカルに対する情報はあまりなかったんですね。そのせいか、計算式によって表示されるインジケーターは高度に見えて魅力的だったんですが、単にチャートに線を引くというのは極めて原始的でレベルが低い様に思い込んでたんです。

しかし、この素のチャートを理解するために、まずは初歩の初歩から入ってみよう、という思いもあって、ラインを引いて見ることにしたんだと思います。

まずは、トレンドライン。

でも、いざ引いて見ると、教科書が言ってる様には上手く引けないわけで。色んな風にトレンドラインは引けるし、どのラインが正しいのかも分からない。

じゃあ、水平線は?

見よう見まねに引いて見ても、教科書の様にピッタリと引ける線が引けません。

また、値動きを上手く捉えようとすればするほど、ラインが無数に増えていって、チャートが線で真っ黒になっていくわけで・・・

ここで僕は、初めて「現実」に直面するわけです。

教科書に載っているのは、「お手本」。そしてそれは良くできた「例題」でしかないんです。

そのお手本と例題をもとにして、僕は今目の前にある「問題」を解いてかなくちゃいけないわけで。

スポーツは、基本を教わったら、それをもとに実際にそれが使える様に、問題意識を持ちながら何度も何度も繰り返し、それが出来る様に練習を繰り返します。

そしてそれは、トレードも同じ。

習ったらすぐに自由自在に使えるモノゴトなど、この世に一つも存在していない、という、極めて当たり前の事実に気づいたんですよ。

ということで、僕はチャートに線を引いて引いて引きまくり、それがどう機能するのか、どう判断したら良いのかを考えまくります。

そう、練習と検証です。

そんな感じで、僕は自分なりにラインの扱い方が分かってくるようになりました。

しかし、だからと言って、ライン1つで相場が全て分かるわけではなかったんですねぇ。

実際に練習と検証、そしてトレードを繰り返していくと、今の自分に見えないものが1つずつ、具体的に分かってきます。

そして、その「見えないもの」を見える様にするために、

「ロウソク足の見方が足りないんじゃないか?」

と言って、改めてロウソク足を学び直し、

「そもそも、僕には高値と低値を見る感覚が定かじゃないんじゃないのか?」

ということで、ダウ理論を学び直し、

「この疑問を解決するために、移動平均線を用いてみてはどうだろう?」

と考えて、移動平均線を学び直すわけです。

そう、自分が見たいものを明確にするために、テクニカルを1つずつ加えていくんですよ。

決して、自分に利益をもたらしてくれる魔法のシグナルを鳴らすために、テクニカル(インジケーター)を表示するわけじゃないんです。

で、それに気づくと、学び方が変わります。

「知ってるつもり」だった自分の愚かさと、テクニカルの奥深さに気づかされますから、心のどこかが謙虚になります。

謙虚になれば、使い込んだ1つのテクニカルでも、まだまだ探求する気持ちは続きます。

僕だって、未だにラインを引いて検証を重ねてますし、その他のテクニカルも日々研究中です。

また、1つのテクニカルで見える範囲が多くなれば、補うために用いていた別のテクニカルは必要なくなっていきます。

磨けば磨くほど、大切なものだけ残し、必要なくなったものは省いていくことが出来るようになるんですね。

汚部屋から抜け出すためのまとめ

ちょっと僕の昔話を交えての話なので、情緒的なところもありますから、ポイントをまとめてみると

  • インジを単に「シグナルを鳴らしてくれる道具」として見ない
  • 問題意識を持ってチャートを見るために、一旦全てのインジを外す
  • まずは素のロウソク足チャートから、自分は本当の意味で何が知りたいのか?何が分からないのか?を自覚する
  • 自分にとって必要なこと、何が見たいのかが分ったら、改めてその視点でテクニカルと向き合う

ということになりますかね。

まぁ、実際にやって見ても答えは簡単には出ないですよ。

「ここはどこ?私は誰?」

な状態がしばらく続くことになると思います。

しかし、そこから芽生える問題意識がないと、恐らくこれからどんなテクニカルに出会っても、優秀なトレーダーに何を教わってみても、結果として何一つ得るものはないと思うんですよね。

まぁ、進む過程は人それぞれなので、上記の様な過程を踏まえなくとも、きちんとたどり着ける人はいるでしょう。

しかし、そうでなく同じ場所をいつまでもグルグルと回り続けているのであれば、上記の様な過程を辿ってみるのは、1つの手かもしれません。

さて、今回は以上です。

次回は、実際に素のロウソク足チャートから、問題意識を持ちながら1つずつテクニカルを加えていく作業を解説します。

その例として、僕がお話している「日足5SMA分析」を利用しようかと思っていますので、これを勉強している人もそうでない人も、お楽しみに!

それじゃあ、また。