200SMAの使い方(その2)

前回は、200SMA(200期間移動平均線)について、僕なりの考え方を説明しました。

で、今回は200SMAを利用したトレードの具体例をご紹介する予定でしたが、その記事を書いている途中で、まだ200SMAについて解説していないことが多々あることに気が付くことに・・・

ということで、今回は予定を変更。

荒ぶる値動きを生み出す200SMAですが、それについてもう少し突っ込んだお話をしていこうと思います。

荒ぶる値動きの特徴

200SMA付近で価格は揉み合う傾向が高く、多くの場合、その値動きは激しいということを、前回お話しました。

では、その荒ぶる値動きの特徴をもう少し具体的にお話していきましょう。

高値低値が不規則

下の図はポンド円1時間足に200SMAを引いたものですが・・・

ご覧の通り、200SMA付近で価格は上下に激しく波打っており、その波の高値(山)と低値(谷)は不規則です。いわゆる乱高下。

規則性を見出せなくもないんですが、オーバーシュートが多発するため、買っても売っても損切りを喰らいやすく、実際はトレードしづらいんじゃないかと。

レンジを形成するといっても、高値低値を上手く捉えて売買するのが難しい値動きが、200SMA付近では起こりやすくなります。

状況にもよりますが、200SMA付近では乱高下の可能性を警戒する必要があります。

値動きが加速する

もう一度、先ほどのチャート図を見てください。

価格が200SMAに向かっていく時、まるで急加速したかの様に、一気に200SMAに近づくことが多いです。

同様に、価格が200SMAから離れる時も、急加速して一気に大きく動き出すことが非常に多いです。

見ての通り、価格はほぼ垂直に急上昇・急落下しています。

まるで200SMAという名前のトランポリンを価格が上下に跳ねまわっているかの様に見えてきますよね。

これも200SMA付近で起こる値動きの特徴です。

スピードの速い展開は、振り回されやすくなりがちです。下がったと思ってエントリーしたら下値をつかまされたり、急反転を喰らって損切りになったりとかね。

やはり、200SMA付近での値動きには警戒することが大切です。

値動きが荒ぶらない場合

200SMAで値動きが荒ぶる傾向がある。それは分かりました。

でも、200SMAを値動きが迎えても、荒ぶらずに一定の方向に動き続ける場合も、たまにあります。

こういった場合は、市場参加者の総意が値動きの方向にあると考えます。

つまり、しっかりとしたトレンドを形成すると。

「しっかりとした」というのは、調整波ではなく、主要なトレンドという意味で、比較長い期間トレンドを形成するということになります。順張りで利益をあげやすい局面と言えますあね。

移動平均線としての200SMA

荒ぶる価格の波を生み出す200SMAであっても、移動平均線には変わりありません。移動平均線の性質そのものは持っています。

ただ、移動平均線の性質は持ちつつ、他の期間との立ち位置が少し違っています。それについて、ちょっと解説します。

グランビルの法則について

価格と移動平均線は、近づけば離れ、離れれば近づいていきます。これ、グランビルの法則ですね。

で、そもそもグランビルの法則で引き合いに出されている移動平均線は、200SMAです。

そういった意味合いでも、200SMAは他の期間の移動平均線とは立ち位置が少し違うのかもしれません。グランビルの法則を意識している人は、200SMAを見ている可能性が高いことが推測されます。

トレンドを表現する移動平均線として

他の期間の移動平均線と同様に、200SMAも価格が上昇している時は上に傾き、下降している時は下に傾きます。

ただ、200期間というのは基本的に移動平均線の中ではかなり長い期間です。

短期移動平均線は10とか20辺りの期間がメジャーで、中期では50辺り。100を越えると長期と呼ばれることが多いので、やっぱり200という期間は、移動平均線の中では長い方。

というより、メジャーな考え方で言えば、200という期間は、最も長い期間と言えます。

ですので、価格に対する傾きの反応は、他の移動平均線に比べ、最も遅いわけで。

上のチャート図では、複数の移動平均線を表示しています。

  • 黒い線 = 20SMA
  • 青い線 = 50SMA
  • 緑の線 = 100SMA
  • 赤い線 = 200SMA

としてみました。

で、四角で囲った部分を見てもらうと分かる通り(つか見なくても分かると思いますが)、

価格が反転した際には、期間の短い移動平均線から順にその傾きも反転していきます。

しかし、200SMAはその反応があまりにも遅く、なかなかその向きを反転させません。

こういった特徴から、200SMAの傾きは、トレンドが強くてもその期間が短い場合は相関性は低いと言え、

むしろ、トレンドは緩やかでもその期間が長い場合、価格は200SMAに沿う傾向があります。以下の図はその例です。

こういった傾向を踏まえると、

200SMAが傾斜しながら価格に沿って動いている場合は、そのトレンドは主流となる波で、長く続く可能性が高いので、ガンガン順張りを仕掛けられる局面

との状況判断が出来るかと思います。

200SMAは状況判断(環境認識的な)に使えるテクニカルと言えるかもしれません。

200SMAは最後の砦

価格と200SMAが沿う様にして移動している場合は、トレンドが長く続く可能性が高いとお話しましたが、その場合、

トレンドが継続している途中に、価格が200SMAとタッチすることはほとんどありません。

下図は先ほど同様、違う期間の移動平均線を複数引いたものですが、

見ての通り、移動平均線の期間が短いほど、価格にタッチする機会が多くなります。

なので、エントリーのタイミングを計る際には、移動平均線の期間が短い方がそのチャンスは多くなります。

しかし、200SMAは価格にタッチすることがほとんどないため、トレンドフォローに対してエントリーのタイミングを計るのには、あまり役には立ちません。上図でもトレンド中にタッチして反転したのは1回だけです。

ということは、トレンド中に最も深い押しや戻しを付ける場合は、200SMAからの反転と考えることも出来ます。

つまり、200SMAはトレンド継続の最後の砦

というわけです。

しかし、200SMAがトレンド最後の砦だということが事実であれば、むしろ逆に

200SMAに価格が到達した場合は、トレンドが終了する可能性が高い

とも言えます。

上図の様に、一旦200SMAに価格がタッチしても、勢いよく反転し、再び価格と200SMAが寄り添って移動するなら良いのですが・・・

ほら、200SMAの付近で価格は荒ぶる可能性が高いんでしたよね。

つまり、価格が200SMAに達した後に素直にトレンドに回帰することはそれほど多くなく、むしろ荒ぶる傾向が高いわけですから、トレンドが終了する可能性が高くなるんですよ。

そう、200SMA付近での売買が激化するというのは、

200SMAがトレンド最後の砦であるがゆえに、トレンド継続を維持しようとする一派と、トレンド終了を慮(おもんばか)る一派とのし烈な争いの舞台となっているわけです。

そりゃぁ、荒ぶるわけだ。

例を挙げていきましょうか。まずは、先ほどのチャート図の続きから。

2回目のタッチでは揉み合いになってますね。単純にトレンド継続と判断するのは注意した方が良いことが分かると思います。

では、その続きはどうでしょう?

はい、見ての通り、荒ぶってます。

で、このケースのその後をお話すると、結果的には下降トレンドは継続します。

ただ、素直な下降トレンドではなく、調整局面となり下降チャネルを形成します。

俯瞰して見てみましょうか。

結果的には下降しているんですが、単純に下降トレンドのつもりで順張りしたり、トレンド終了と判断して逆張りしたりする際に中途半端に入ると、

切られる

そんな場面です。

しかも、このパターンはまだ良いケースです。だって、下降トレンド中の下降チャネルですから。結果的には下降しているので、売ってから逆行されても「運頼み、お祈りトレード」して損切りしなくても助かるパターンです。

しかし、こういったケースはそうそうありません。中途半端に入ったトレーダーには手痛いお仕置きが待ち構えていることがほとんどです。

売り手と買い手の攻防が激化する局面が、200SMAであることは上図でも容易に分かります。

「200SMAでは価格が荒ぶる」

それは200SMAがトレンド継続最後の砦だということにも起因します。

200SMAは交差点

既にお話した通り、最長期間レベルである200SMAは、他の移動平均線と比べると、価格の流れに対する傾きの反応は最も遅くなります。

例えば、下降トレンドが始まると、短い期間の移動平均線から順次下を向き始め、最後に200SMAが下を向き出します。

そして、トレンドが継続している最中は、期間の短い方から順序良く移動平均線は並んでいます。これ、基本ですよね。

ただ、上図で見て分かる通り、200SMAにタッチする辺りでは、移動平均線が一時的に交錯しています。

また、タッチした後にやや波動が弱まってきている様で、200SMA近くで価格の波が推移し始めると、順序良く並んでいた移動平均線たちの列はやや乱れ気味になってきている様です。

そしてトレンドの雲行きが怪しくなると・・・

移動平均線たちは、もうグチャグチャ。

上を向いているMAがあると思えば、下や横を向いているMAもあったりと、並び順もバラバラで、糸が絡まるかの様に各MAが交差します。

ということは、

例えば、20SMAを根拠に売る人がいると思ったら、50MAを根拠に買う人もいて、100MAを見ている人の中には価格との乖離を見て買う人もいれば、200SMAを死守しようと売る人もいたり・・・

もちろん、MAを見ていなくても、MAは価格の流れを抽象化したものなので、各MAと同じ方向に似たタイミングでトレードする人も増えていきます。

また、各MAが絡み合っている状態では、値動きが盛んに上下しますから、MAに関係なく、その他のテクニカルを根拠に売り買いする人も交差します。

要するに、

200SMA付近に価格が到達すると、それ以外の期間の移動平均線は乱雑に交差するため、売買は交錯し、価格が荒ぶる

ということになるわけです。

で、移動平均線の基本として、「各MAがゴチャゴチャしている時はレンジ」というのは皆さん、既にお分かりだと思います。

であれば、

200SMAと価格の出会いは、トレンドフォロー戦略からレンジ戦略への転換点

と考えることもできます。

こう考えると、やはり200SMAはトレード戦略を立てる上で必要な状況判断ツールとして、非常に役に立つことが分かると思います。

値動きの乱雑さを知ろう

前回お話した様に、仮にトレンドが継続しているにしても価格は荒ぶりますから、レンジ戦略の観点で十分上下に引き付けたうえでトレードすることで、値動きに振り回されることが少なくなるかと。

で、トレンド系のインジケーターと共にオシレーターを表示してトレードしている人も多いと思います。

なので、ちょっと先のチャート図に、オシレーターを表示させてみましょうか。

まずは、MACD。

ぱっと見は、上手く機能してそうなんですが、実際にやってみると意外に値幅が獲れません。

これ、高値や低値から勢いよく値を戻すので、MACDがシグナルとクロスしたのを確認してトレードしても、値が進んだ後のことが多くなるからです。

200SMAからのレンジは先ほど説明した通り、穏やかなレンジと違って値動きが素早く乱高下ですから、綺麗に獲るのは工夫が必要になるわけです。

もう1つ、ストキャスティクスでもやってみましょう。

ストキャスティクスを2つ表示しています。

上のストキャスティクスのパラメーターはMT4のデフォルトである「5-3-3」。値動きに対する反応は速いのですが、乱雑な値動きには振り回される可能性が。

下のストキャスティクスは「20-3-3」にして、動きを滑らかにしてみましたが、反応はやや遅れ気味になります。

ということで、下のストキャスティクスで高値圏に入ったら、上のストキャスティクスのクロスでトレードするという感じで試してみました。

しかし、MACDの時と同様に値幅を上手く獲れないことが多いです。もう少し工夫する必要があるかなぁ・・・という印象。

以上のことから、価格が200SMAに近づくことによってレンジの転換点とはなるのですが、その値動きは激しいため、レンジ戦略をとる場合は、翻弄されない様に注意と工夫が必要だということが分かると思います。

やはり200SMAと価格の出会いは、波乱万丈、一筋縄ではいかない荒ぶるドラマが待ち構えている様です。

 


 

さて、前回から2回に渡って、200SMAについて解説してみました。

これまで解説から、

200SMAはその性質や立ち位置から、手法に用いるというよりも、環境認識など状況判断に用いることに適したツールである

ということも理解してもらえたかな、と。

ということで、次回は今度こそ、この200SMAを状況判断ツールとして利用したトレードの具体例をご紹介します。

お楽しみに!

それじゃあ、また。

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