さて前回は、ゴチャゴチャとなったチャートから抜け出す最初の視点をお話しました。
で、今回は実際に素のロウソク足チャートから、きちんとした視点を持ちながら、テクニカルを加えていくというチャートの設計の仕方、いわば「チャート・デザイン」を具体的な例を使いながらお話していこうかな、と。
まずはガイドラインを設定しよう
ガイドラインとは
ガイドラインというのは、トレードを行なううえでの「指針」のことです。つまり、
何を軸にしてトレードをするのか?
もっと言えば、
何を軸にして、相場状況を判断して方針を決めるのか?
ということです。
ただ、これでもちょっと抽象的過ぎると思う人もいるんじゃないのかなぁ?
なので、改めて具体的に説明しますが、
相場には4つの大きな局面があります。それは、
- 上昇トレンド
- 下降トレンド
- レンジ
- 分からない
ということですね。
で、今の相場は、この4つの局面のうち、どの局面にあるのか?
を把握することが、トレードの判断において、最も大切であり、最初にやるべきことになります。
(これ、何度かこのブログでお話してます。知らない人は「相場の局面を考えてみる」をご覧ください)
で、この4つの局面が分れば、自ずと自分がとるべきトレードの方針が
- 順張りで売買
- 逆張りで売買(レンジ内取引)
- ブレイク・アウト狙い
- トレードしない
のどれに当たるのか?が分かるわけですよ。
つまり、基本的な方針がこの状況把握だけで決まるわけです。
で、こんな話をすると
「そんなの、当たり前~。知ってるし」
という人がいるんですよね。
勝てないくせに。
勝てない人というのは、お勉強してそういったことは知っていても、実際のトレードでは活用できてません。
状況把握をしても、それとは全く関係ないところで売買をしたり、酷けりゃ知ってるだけで把握もせずにトレードします。
まぁ、言い聞かせていても、出来ないことって多々ありますからねぇ。
なので、この4つの局面を把握し、意識して実行できる様にするために、まずはガイドラインを設定します。
ガイドラインを設定しよう
ガイドラインって、別の言い方をするなら、イラストを描く時なんかのデッサンやスケッチみたいな感じでしょうかね。
対象物の骨子を浮き彫りにするイメージです。
じゃあ、チャートの局面を浮き彫りにするために、具体的には何を用いれば良いのでしょうか?
まぁ、何でも良いですよ。
先の4大局面を把握できるものであれば、何でも良いです。
例えば例を挙げると
- ダウ理論
- ライン
- 移動平均線
が最も一般的でしょうか?
「じゃあ、その中ならどれを使うのが一番良いの?」
という他人本位な声も聞こえてきそうですが、これに関してはどれが良いという答えはありません。
どんなツールが優秀なのか?
に興味が行きがちですが、何を持たせたところでしょせんはその人の腕次第です。習熟度によって、同じ道具を使っても結果が違うのは、スポーツにしろ工芸にしろ、どの世界だって当然のことです。
例えば、こんな素のチャートがあります。ユーロドルの1時間足です。
この相場状況を把握するために、ダウ理論を用いるとしても、以下の様に判断が分かれる部分はどうしても出てきます。
人によって高値安値をどう結ぶかは違います。主義主張によっても、習熟度によっても違います。
もちろん、既に出来上がったチャートでは天底を見つけてトレンドの端から端までを示すことは出来ますが、
価格の推移を形成途中では、今この状況を常に誰もが同じように説明できるとは限らないんです。
仮にラインを用いて、状況を判断しようと思っても、
一見スッキリしているようですが、これも主義主張や習熟度によって引き方は人それぞれですし、トレンドの転換点やレンジに移行するタイミングも、その判断は人によって変わってきます。
また、上図は後付けで引いたラインです。
価格推移が形成途中で、リアルタイムでトレンドラインを引こうとすると(流儀によって違いはあるでしょうが例えば)、
こんな感じで、価格が推移するごとに、常に引き直しをする羽目になり、リアルタイムでトレードしようとすると、
「一体、どこでトレードすれば良いんだ!?」
なんて現実にも直面したりします。
移動平均線だって同じですよ。
上記は40SMAで、この相場の価格推移を比較的上手く捉えてはいますが、これで何もかも分かるわけじゃありません。
基本的に移動平均線はトレンド系インジケーターですから、トレンドを把握するには向いていますが、
じゃあ、レンジはどこから始まって、どこで終わり?
ということは、やはり人それぞれになってしまいます。
また、上手く相場の流れを説明してくれそうな期間を探せば探すほど、人は深みにハマっていきます。
上手く押しや戻し、転換点を捉えるパラーメーターを求める旅がはじまり、突き進めて行けば結局のところ
こんな感じで、無数のMAを表示する羽目になってしまいます。
しかし、これじゃあ下手な鉄砲数打ちゃ当たる作戦にしかならず、本来のガイドラインの役目、つまり4大局面を炙り出す目的からは、徐々に離れていくんですよ。
ただし、GMMAというインジがあります。これは上図の様に数多くの移動平均線を張り巡らすことで、相場を判断しようとするものです。
上記の説明でいけば、このGMMAの考え方は否定されるように感じますが、これはむしろ逆で、チャート・デザインを仕上げた結果、人によってはGMMAの様な形態になったりします。
この辺のことは、後ほどお話することになると思います。
結局のところ、どのツールを使うかは、その人次第ですし、テクニカルに優劣があるというよりも、その人の習熟度によって優劣が生まれるわけです。
ですから、多くは望まない。
まずは1つ。
たった1つのテクニカルを徹底的に突き詰めて、実際のトレードで扱えるようにする必要があるんです。
で、どれを選択し、どれを磨き上げるかは、その人次第です。問題意識を持ってどれだけ取り組むかにかかってるわけですよ。
そうやって、まずは自分のトレードの軸となるものを1つ用意することが大切です。
で、これがアナタがトレードする上でのガイドライン(指針)となっていくわけです。
もちろん、ガイドラインは複数あった方が、トレードの根拠が増えます。
なので、1つ自信のあるガイドラインが出来たら、その後で別のガイドラインを加えていく。そんな感じで、取り組んでいったら良いと思います。
時間のガイドラインを設定しよう
分かっている様で、実際にはなかなか実行できないのが、ガイドラインですが、ここでもう1つ気を付けなくちゃいけないことがあります。それが
時間のガイドライン
です。
この時間のガイドラインには大きく分けて2つのガイドラインが必要です。
- ポジション保有時間
- メインとなるチャート時間軸
これ、軽く見てる人も結構多い様なのですが、実際はトレードの骨格をなす大切な部分なので、予めガイドラインを設定しておく必要があります。
ポジション保有時間のガイドライン
これは、自分がどれだけの期間ポジションを保有するトレードスタイルをとるかによります。
大まかに分かりやすく言えば、
- スキャルピング
- デイトレード
- スイングトレード
- ポジショントレード
のどのスタイルでトレードしようかということです。
ただ、同じスタイルであっても、その内訳はさらに分かれます。
例えば、デイトレードと一口に言っても内容は様々で、一日の最大値幅を目標に獲りに行くことを目的としている人もいれば、エントリーしてからエグジットまでの保有時間が平均2時間程度の人もいます。もっと短い人もいますよねぇ。
スキャルピングであっても、数秒で決済を繰り返す人もいれば、30分程度は平気で保有している人だっています。
単純にスキャだとかデイだとかで分けられない部分があり、その保有時間は、各自のライフスタイルや性格等で分かれることになります。
なので、予めこの保有時間を設定しておきます。
これによって、次に説明する基準となるチャートの時間軸が決まってきますから。
もちろん、伸ばせるときは伸ばすスタイルの人もいますから、その内容は厳密ではなくてOKですよ。「時間」そのものではなく、例えば「波」などを基準にして取引する人もいますからね。
ただし、結果が出ない時の最大保有時間は決めておくべきかもしれません。
含み損を抱えてしまっていた場合、STOPに届かなくとも、タイムリミットでポジションを解消するという考え方は大切です。
また、エントリーした後に建値付近でしばらくウロウロしてしまったり、含み益が出た後に同じく方向感をなくしてウロウロしてしまい、判断に困るケースもあると思います。
こういった場合も、タイムリミットで決済するということも、実は大切なんですね。
いつまでも塩漬けにしたままにするより、早々と切ってしまい、その資金を次のトレードに回すことは、有益な考え方です。
また、人によってはスキャもやるしデイもやる、スイングだってやるという人もいます。
それ自体は全く問題ないんですが、どれがスキャでどれがデイなのかを曖昧にしていると、ドツボに嵌ります。
このトレードはスキャで、こっちのトレードはデイ。
といった具合に、ポジション保有時間を明確にしてトレードする必要があります。
ポジション保有時間は、自分のスケジュール管理だと思って、予め設定しておくことが大切です。
チャート時間軸のガイドライン
ポジション保有時間のガイドラインが決まったら、次に自分がトレードする際にメインとするチャート時間軸を設定します。
同じデイトレードでも、ポジションの保有時間だったり、トレードの主旨によって、メインとなる時間軸が変わってきますからね。
上級者であれば、自分がどの時間軸で何をやっているかを把握してトレードできますが、
初心者の場合は、メイン時間軸のガイドラインを設定していないと、単に軸がブレまくりのトレードを繰り返す原因になります。
1時間足では売りたい場面だけど、4時間足では売ってはダメだったり、15分足ではむしろ買えとサインが出ていたり・・・
各時間軸で整合性を見てトレードするのが良いのですが、初心者のうちは混乱しか生まれません。
その都度、違う時間軸でトレードするというのは、様々な思案を巡らせてやった結果の様に思えて、実はポジりたい気持ちを満たすための行為だったりするんですよ。
ですから、まずは自分のトレードの時間軸をハッキリとガイドラインとして設定することが、ブレないトレードをするための第1歩になります。
ガイドラインを具体化しよう
移動平均線を用いた例
それでは、実際にガイドラインを設定してチャートを構築(デザイン)していく例をお話していこうと思います。
で、今回ガイドラインに利用するのは移動平均線。しかも、用いるのは日足5SMAの考え方です。
(日足分析5SMAについて分からない人は、「デイトレーダーのために日足分析」シリーズをご覧ください)
では、やっていきましょう。
まず、時間軸チャートですが、これはデイトレーダーとして最も多いであろう1時間足をメインとして用いることにします。
含み益が上手く伸びなかった場合の最大ポジション保有時間は5時間としましょうか。もちろん、順調に伸びているのであれば、そのまま保有時間は延長します。
で、トレードのガイドラインとなるツールは、日足5SMAです。
この日足5SMA、1時間足での近似値は75SMAでした。
ということで、実際にチャートにこのガイドラインを用いてみると
こんな感じになりますね。
これがチャートデザインにおける骨子の部分、デッサンに当たります。
「え?たったこれだけ?」
はい、これだけです。
さっきも言いましたが、1本のMAから何をどれだけつかみ取るかというのは、個人の習熟によります。
分からないからといって、闇雲にMAの本数を増やすのは、ガイドラインの意味を失います。
で、ガイドラインの基本ベースは
- 75SMAが上を向いていて、価格が75SMAの上にある場合は、「上昇トレンド」と判断して買い方針
- 75SMAが下を向いていて、価格が75SMAの下にある場合は、「下降トレンド」と判断して売り方針
- 75SMAが横を向いた場合は、「レンジ」もしくは「分からない」と判断する
- 75SMAに傾斜はあっても、価格がそれを跨いでしまった場合は、「レンジ」もしくは「分からない」と判断する
となりますよね。(より具体的な内容は、日足5SMA分析シリーズをご覧ください)
このガイドラインを軸にして、トレードを行なうことになります。
ガイドラインをより具体化しよう
冒頭でお話した様に、ガイドラインとは指針であり骨子です。絵で例えるならばデッサンやスケッチの様なものです。
ですから、ガイドラインをあまりに細かく規定してしまっては、ガイドラインとしての意味を失ってしまいます。
しかし、あまりに曖昧な部分が多過ぎては、逆にトレードの指針としては乏しくなってしまいます。
例えば、先ほどのガイドラインで
「75SMAに傾斜はあっても、価格がそれを跨いでしまった場合は、レンジもしくは分からないと判断する」
といった部分があります。
しかし、例えば下降する75SMAを価格が上抜いたとしても、もう一度75SMAの下に戻ってしまうケースがあります。実際のチャートで確認すると、いくつかのパターンが存在することが分かると思います。
こういったケースは、各自で検証をして、「この場合はこうするが、あの場合はああする」といたガイドラインを設定してください。
でもまぁ、今回は75SMAを例に出して解説してますから、とりあえずガイドラインの設定の仕方の例も挙げておきますね。
まず、上図の赤い丸1ですが、これは75SMAを一旦越えるも直ぐに戻ってしまっているパターンです。
この場合は、75SMAの角度も保持されたままで直ぐに75SMAの下に押し戻されていますから、「75SMAを越えきれなかった」と判断してOKな場面です。
75SMAの下に直ぐに押し戻された後は、
「75SMAが下を向いていて、価格が75SMAの下にある場合は、「下降トレンド」と判断して売り方針」
というガイドラインを適用して大丈夫ということですね。
次に赤丸2ですが、これは75SMAを5本のロウソク足が越えている形跡がありますよね。
この場合、越えた足のほとんどは終値ベースで75SMAの下に押し戻されていますし、終値ベースで75SMAの上に位置していても、高値は更新できていないわけです。
もう見た目から、75SMAを越えようとして実際はその真上でくすぶっている感を醸し出してますよね。
こういったケースも、やはり「75SMAを越えきれなかった」と判断して良い場面ですから、
「75SMAが下を向いていて、価格が75SMAの下にある場合は、「下降トレンド」と判断して売り方針」
というガイドラインを適用してOKにします。
ところが、赤丸3を見てください。
3の場合は、2とは違ってシッカリと価格は75SMAを上抜けていますし、1と違って75SMAを上抜いた後は少なくともロウソク足2本分以上の時間はそこに滞在し、直ぐには下に引き戻されていません。
こういった場合、再度価格が75SMAを下抜け、更に75SMAは傾斜を保ったままだとしても、
「う~ん・・・これ、分からなくなったな」
と判断します。
つまり、少なくとも下降トレンドは一旦終了し、その後の展開は規則性のあるレンジに突入するのか、下降トレンドを再開するのか、上昇トレンドが始まるのか、
「分からない局面」
になったと判断し、トレードは控える場面です。その後の展開が分かる様になるまでは、待たなくちゃいけない場面ですね。
同様に赤丸4の場面も、「分からない」という場面になると思います。
とまぁ、以上の様にガイドラインを具体化していく例を挙げてみました。
これ、あくまで例なので、本当に上に挙げた例が正しいのかどうかは、各自が検証してみて下さい。わざと僕、嘘ついてるかもしれませんよ。
( ̄ー ̄)ニヤリ
ガイドライン作成の注意点
以上、お話してお分かりだと思いますが、ガイドラインの曖昧な部分は、検証等によって各自の習熟度が上がるたびに、より具体化していくことが可能です。
ただし、先ほども言いましたが、今やっている作業は、あくまで「ガイドライン」です。
つまり、ガイドラインは骨子となる4大局面を浮き彫りにするためのデッサンであって、それ以外の細かい部分を表現するためのモノではありません。
そして、ガイドラインをより具体化していくという作業は、4大局面の移り変わる部分を曖昧にせずに、出来るだけキッチリと区分けできるようにする作業のことです。
もっと言えば、
局面の移り変わる部分の曖昧な部分が「分からない」という局面で、その「分からない」という部分を出来るだけ明確にする作業になります。
多くの負ける原因って、
- 分からない局面を
- 分からないくせに
- 何とか分かろうとして色々インジを引っ張り出して
- 分析した気分になって時間をかけ
- 結局分かっていないのにもかかわらず
- 分かった気になってトレードを繰り返す
ということばかりなんですよ。
分からない局面を色んなテクニカルを用いて分かろうとするのは、実際にトレードする際にやることではないんですよ。
そういったことは、「検証の場」でやってください。
当たり前じゃないですか。
4回転を飛ぶ技術のないフィギュアスケートの選手が、いきなり試合で4回転を飛ぼうとしますか?
しないですよね。4回転にチャレンジするのは、まずは練習と検証の場のはずです。
で、その技術が使える様になってから、初めて本番でチャレンジするわけです。
この世間では極めて当たり前の事実を、自分のトレードでも適用させる。それが、チャート・デザインの骨子となるガイドラインの具体化なんですね。
さて、今回はここまで。
次回は、作成したガイドラインにそって、ディテール(細かい部分)を表現していく作業に移るとします。
それじゃあ、また。