さて、エントリーポイントの狙い方の第3弾ですが、今回は押し目や戻しの狙い方について、もう少し実践的なお話に入っていこうと思います。
トレンドにおける押し目買いや戻り売りについて、その基本ロジックは既に「エントリーポイントの狙い方(1)」にてお話していると思います。
で、この基本ロジックだけである程度の押しや戻しは的確に拾うことが出来ると思うんですが・・・
しかし、実際にやってみると、
「上昇トレンド中に、到達確認・反転確認を行ってエントリーしたけど、上がりきらずに下がっちゃった・・・」
なんて具合に、どうしても上手くいかないことが何割かは出てくると思います。
もちろん、全戦全勝なんてうまい話はありませんが、少なくとも勝率は上げたいところですよね。
でも、実際はそんな上手くいかない局面で損切りを繰り返し、今までの上昇トレンドで稼いだ分を吹っ飛ばしてしまう、なんてこともあるかもしれません。
つか、一昔前の僕がまさにそうだったんですけどね。
ノ( ̄0 ̄;)\オー!!ノー!!!!
ということで、今回は基本ロジックだけじゃ上手く押しや戻しを拾っていけないという人に向けて、実際のトレードの場ではどういったことを考慮しながら判断していくべきかという、極めて実践的なお話をしていくつもりです。
それでは、始まり始まり~!
基本ロジックを確認しよう
まずは復習として、基本ロジックを確認しておきましょうか。
ただ、同じことの解説を繰り返してもつまらないので、今回はこれまでの解説では触れていなかったテクニカルの使い方も交えることで、少し目先を変えながら復習してみましょう。
まず、トレンドが既に始まってしまっている最中に、その波に乗るには
- 上昇トレンドなら押し目買い
- 下降トレンドなら戻り売り
が基本でしたね。
そして、押し目や戻りを拾う際に大切な2つの視点が
でした。
上図の様に、既に下降トレンドが始まってるなら、上がる(戻しをつける)のを待ちます。
で、その際に考えるのがまず
「到達ポイントを探る」
ということです。一体どこまで戻しが進むんだろう?ということを、テクニカルを用いて想定をします。
到達ポイントを探るためのテクニカルは
が代表格でした。この中で最優先なものはラインになりますかね。
ということで、まずはレジサポを引いてみましょうか。
戻しの上昇を阻みそうなのが、上図赤い丸で囲ったところです。ここが最初の抵抗帯になりそうなので、その低値にラインを引いておきます。
次に、根拠は複数あった方が良いので、別のテクニカルも加えてみます。これまでの例だとMAを使うことが多かったので、今回はフィボナッチ・リトレースメントを使ってみましょうかね。
下降する一波に引いてみると、先ほどのレジサポの付近が50%戻しとなります。
根拠が2つ重なってますので、この辺りを戻し到達の第一候補として、まずはここに着目しておきましょうか。(本来なら第2候補などをいくつか挙げておくと理想的ですが、今回は面倒なので止めておきます)
では、次の展開を見てみましょう。
見事に止められてますね。念のために斜めラインも引いて見ましたが、ピタで止められてます。
さて、到達確認がとれました。
複数の根拠で止められてますから、攻めたトレードしたいなら、ここでエントリーしてもOKでしょう。
ただ、基本ロジック通りに堅実にトレードするのであれば、次に
「反転するかどうか」
を確認する必要があります。
反転確認に用いるテクニカルの代表格は
でした。
ではオシレーターと移動平均線で反転確認をしてみましょうか。使うMAは、10SMA(灰色)・20SMA(青)・40SMA(赤)・75SMA(緑)です。
オシレーター(ストキャスティクス)を見ると、高値圏でデットクロスしてますから、売りサインが出てますね。
到達して止められている根拠が強いので、この反転確認だけでもエントリーの根拠は十分です。
ただ、MAを見ると・・・
これ、移動平均線の見方は人それぞれなので、各自が検証した結果、有効だと思う見方をすれば良いんですが、僕の見方からすると、
「反転したと判断するのは、ちょっと早いかなぁ」
という感じです。
ちょっと解説しますね。
反転下落する前の上昇局面で、効いている(意識されている)と思われるMAは、40SMA(赤)と75SMA(緑)なんですが、
反転してからは、40SMAだとちょっと行き過ぎ(早過ぎ)て、75SMAだと届かない(遅すぎる)感じですよね。
上昇局面と下降局面では、やや「流れ」が違ってる感じで、この流れを体現するのは、40~75の間位にあるMAになりそうです。
そう考えると、価格は到達ポイントに到達して止められたものの、まだ反転するのは早いのかなぁ?なんて考え方もできるわけです。
試しに40~75の間をとった60SMAを表示してみましょうか。
見ての通り、この時の相場の「流れ」を60SMAが上手く表現してくれています。
となると、今現在でエントリーするのは、少し早い気がしてきませんか?しますよね。
この相場の流れを体現する60SMAでは反転確認どころか到達確認すら出来てないんですから。
もちろん、1つのトレンドの中でもそれぞれの波の緩急は違いますから、MAに到達せずに下落しても変ではありません。
が、あともう少し待てば手が届く感を醸し出してますし、短期線(10SMAと20SMA)を見るとまだ勢い良く上を目指してますから、
MAを主力とするトレーダーなら、もう少し待っても良いかと。
でもまぁ、どっちでも良いですよ。
どのテクニカルをどう選んでどう使おうとも、検証を重ねた結果に作り上げたやり方でトレードしているなら、
最終的には勝つことになってるんで。
( ̄ー ̄)ニヤリ
ということで、結果を見ま~す。
到達確認後にオシレーターで反転確認をとってエントリーしたのが赤丸の部分です。その後はもみ合いに入ってしまい、しばらくは気をもむ展開でしたが、高値は越えずに下にブレイクしていきました。
もし赤丸のポイントに居合わせなかった人は、この後のモミモミの展開を見届けて、レクタングルフォーメーション(平行レンジ)を下抜けた後のロールリバーサルで入っても(青丸)良いですね。
ちなみに、先ほど解説したMAで判断したならば・・・
ドンピシャですね。
60SMAで止められて弾かれてますし、短期線10SMAと20SMAもデットクロスしてるという、理想的な展開です。
とまぁ、基本ロジックを用いて押し戻しを捉えるのは、こんな感じでやるんでした。
しかし、冒頭でもお話した通り、単純にこの基本ロジックだけで判断しても、上手くいかない局面は、割とあるんですよ。
ということで、次からはより実践的な判断が出来るための考え方を解説していきます。
1.最大かつ根本的な原因
押しや戻しを上手く拾えないことが多い人にとって、まず最初にその最大の原因から言及しておきましょうか。
到達確認と反転確認をしたはずなのに上手くいかない、その最も根本的な原因は
到達確認と反転確認が単純に下手クソ
ということなんですよ。
何かが、ちょっとずついい加減なんです。
例えばね、
本来、到達確認において最も大切にしなくちゃいけないレジサポを確認せずに、もしくは確認はしていてもそこに到達するまで待てずに、まだ浅くしか押してないのにフィボの数値だけを頼りにして、到達したと判断し、
何となくロウソク足は20SMAに支えられながら反転した様な雰囲気醸し出してるし、オシレーターもゴールデンクロスし始めたし・・・
なんて具合に判断してエントリーしたりとかするわけで。
でも、レジサポには到達してないし、20SMAに支えられてる様に見えるけど下を向き出した10SMAには頭抑えられてるわけで。
要するに、「このタイミングを逃したら勿体ない!」という感情から、エントリーするための理由探しをしているだけなんですよ。見たい情報だけを利用して、見たくない情報は見ない様にしているだけ。
だから、結果的に下図の様になります。
自己都合で理由付けして買いエントリーしたところが赤い矢印です。見ての通り、買った直後に下がり出します。
そして、買いの根拠としたフィボ数値も下回り20SMAも下回ったので、慌てて損切りしたりします。
が、その下落して止まったポイント(緑の矢印)は、確認しておくべきはずのレジサポで、そこから反転上昇を始めます。
きちんと買い場を探していれば、
- レジサポで到達確認し
- 斜めに引いたパターンラインをブレイクし(反転確認)
- 2本の短期移動平均線も上抜き(反転確認)
- ストキャスは「ガービッジ」という上昇を強く示唆する形を示唆(反転確認)
という、堅実過ぎるくらいの好条件でエントリー出来たはずなんですよ。
この例からも分かる通り、事実に基づいてエントリーするんじゃなくて、己の願望を満たしたいだけの情報でエントリーしているのは、
要するに、下手クソ
そういうことなんです。
頑張ったつもり、勉強したつもり。でも、実際は検証不足、練習不足。自分の手法、自分のロジックは固まってなくて、自己都合の願望トレード。
だから、自分の頭の中ではきちんとやってる気になっているけど、現実は何かがちょっとずついい加減なトレードしかしていないんですよ。
僕はね、
未だに自分自身に言い聞かせていることがあります。
それは、
「トレードのやり方、エントリーの仕方というのは、自分自身の生き方そのもの」
ということです。
欲望や願望に振り回されて、見たくない情報は見ない様にし、自分を満たしてくれるだけの情報を過大評価してエントリーするのは、とどのつまり自分はそういう生き方をしているということ。
そんな生き方していて、恥ずかしくね?
ということを、自分自身に言い聞かせながら、日々トレードに精進しています。
あぁ・・・
やっぱり今日の僕は素晴らしい。
┐(  ̄ー ̄)┌ フッ・・・
さて、自画自賛もこれくらいにしておきましょうか。
とりあえず、押しや戻しを上手く拾えない根本的な理由を、まず最初にお話しました。では、次からは、具体的な注意点や方法論へと進んでいきましょう。
2.トレンドの状況を気にしよう
基本ロジックを踏まえて押し目や戻しを拾おうとしても、上手くいかないという場合、
例えば、下図の様な感じで到達確認・反転確認をして買ったつもりなのに、その直後から下がったりを上がったりを繰り返し、結果ジリ下がりというケースが結構多いと思うんですよね。
後付けで見てしまえば、「そんな局面で買うわけないだろ」って思いがちですが、先の見えない状態では、上図の緑の波からの押し目を拾おうとして、赤い矢印で買っては下がり、次の赤い矢印で買っては下がり・・・って感じでどこで買ってもジリ下がってしまうんですね。
こういったいわゆる「ちゃぶつき」を繰り返してしまうのは、先述した様に一言で言ってしまえば「下手クソ」ということなんですが、それで終わらせてしまったら、元も子もないので、注意点を解説しますね。
まず、最初の注意点は「トレンドの状況を気にする」ということです。
V字回復のイメージに囚われない
押しや戻しって、単純に言ってV字回復のイメージを持ってませんかね?こんな感じで。
教科書的な解説はみんなこんな例ですから、自然とV字回復が刷り込まれちゃってると思います。
また、トレードする本人も、こういったV字回復での押しや戻しの方がストレスもかからないですから、頭の中ではV字回復をイメージしやすいのが現実です。
でも、実際の押しや戻しってV字回復だけじゃなく、いやむしろ、
こんな風に、上がったり下がったりを繰り返して揉み合いながら押し目を形成することも結構多いんですよ。
押した後に揉み合って、更にもう1段下げて、なんてことも珍しくありません。
しかし、それが現実なのに頭の中は「V字回復」のイメージしかないから、例えば上昇トレンドなら、
「下がった」→「少し上げてきた」
の流れで、直ぐにエントリーしちゃうんですよ。
で、値動きに振り回されて、揉み合いの高いところで買って低いところで損切りとかしちゃうんですね。
なので、まずは押しや戻しを狙う際は、揉み合いが起こることや更に1段下がることも想定し、「V字回復」のイメージだけに囚われない様にすることが大切です。
トレンドの強弱を気にしよう
トレンドの勢いは、どのトレンドでも一定ということはなく、トレンドによって様々なのはご存知でしょう。
で、トレンドの強弱によって、1つの傾向が生まれます。それは
- トレンドが強い場合、押し戻しをつけたら直ぐに反転しやすい
- トレンドが弱い場合、押し戻しをつけても直ぐには反転しづらい
ということです。もちろん、絶対ではありませんが。
ちょっと、ケースごとに見ていきましょう。
1.トレンドが弱いと捉えにくい
分かりやすい様に、ちょっと極端なもので比較しますが、同じ上昇トレンドでも、その勢いが強い場合は、
赤い色で示した様に、V字回復が多いですよね。
綺麗にV字を描いてくれる押しや戻しは、単にパターンラインを引いていって、そこをブレイクしたところでエントリーするだけで、比較的に容易に押し目を拾えます。
もちろん、V字ではない押しもありますが、トレンドが強いと綺麗なパターン(上図では、一番右側のトライアングル)を形成しやすいので、これまたパターンラインをブレイクで反転上昇を捉えることが比較的容易になります。
しかし、トレンドが弱い場合は・・・
見ての通り、V字で押し目をつけることはあまりなく、押した後も揉み合いが続いたり、長いレンジが続いたりすることが多くなります。
上図の様に、既に値動きが出来上がった後付けでチャートを見てしまえば、
「そんなところで買うわけは・・・」
なんて思ってしまいやすいんですが、先の値動きの見えないリアルタイムの状態では、深めの押しや長い揉み合いの中で振り回されちゃうんですよ。
なので、トレンドの勢いによって、
- トレンドの勢いが強い状況では攻めのトレード
- トレンドの勢いが弱いならば保守的に慎重にトレードする
という心がけを予め持っておくことが大切になってきます。
2.下降トレンドと上昇トレンドの違い
良く言われるのは
「下降トレンドは上昇トレンドに比べて勢いが強いことが多い」
というものですが、確かにその傾向は強いです。
青で囲った下降トレンドと、赤で囲った上昇トレンドを見比べてみれば、その勢いの違いは一目瞭然です。
下降トレンドはおよそ4日間続いていたんですが、上昇トレンドはその倍の8日をかけて上昇しても、下降トレンドの値幅に届いていません。
で、勢いの強い下降トレンドに、試しにいい加減なパターンラインを引いて見ましたが、適当なラインブレイクで売りエントリーしても、勢いが強いので直近高値には届かずに強く下落していってます。
要は技術がなくとも、下降トレンドは勢いが強いことが多いので、十分獲れる可能性が高いんですよ。
しかし、上昇トレンドの勢いは基本的に弱いため、緑の丸で囲った部分の様に、揉んでみたり、上がったと思ったらもう1段下げてみたりと、V字回復のイメージで取引すると、値動きに振り回されやすい相場つきになっていることが分かると思います。
もちろん、下降トレンドの中にも弱いものはありますし、上昇トレンドでも強い勢いを持った者もあるので、絶対というわけではありませんが、
- 下降トレンド→強いトレンドが多い→戻しを拾いやすい
- 上昇トレンド→弱いトレンドが多い→押し目は揉みやすい
という傾向があることは、頭の片隅に置いておいておくべきです。
3.同じトレンドの中の強弱を見る
また、1つのトレンドの中にも強弱があります。
上昇波の強さは、赤い矢印を見れば分かる通り、A波が最も強く、その次がB波、一番弱いのがC波です。A波とB波とC波の高値の切上げも徐々に狭まってますよね。
で、強い上昇のA波からの押し目は、非常に分かりやすいV字回復です。しかし、上昇力が弱まったB波からの押し目は、もみ合いになってますよね。C波に至ってはその後大きく下落してしまっています。
この例からも分かる様に、1つのトレンドの中にも強弱があり、波が弱くなればなるほど、押し目や戻しを拾う難易度が上がっていきます。
ですから、1つのトレンドの中でもそれぞれの波の強弱を意識して、押しや戻しを狙っていく必要があります。
4.トレンドの状態によって押し戻しの深さを考慮する
押しや戻しの深さを考える場合、フィボナッチ・リトレースメントで言えば、
を基本にして考えます。
これ以上深い場合(例えばフィボ76.4%)だと、そこから反転しても直近高値・低値を抜かない可能性が強くなってくるので、その辺りで入る場合は、それを考慮する必要があります。
また38.2%よりも浅い場合(例えばフィボ23.6%)だと、押し目の場合ならそこからもう一段下げたり(戻しならもう1段上げたり)することが多くなります。
ただし、これもトレンドの状態によるんですね。
極端に強い勢いのトレンドだったり、逆に上下動の少ない緩やかなトレンドの場合は、むしろ23.6%くらいまでしか押さない(戻さない)ことが多くなりますし、
上昇トレンドではなく上昇チャネルの様な場合は、76.4%程度まで押してから上昇を始めたりします。
あくまで、そのトレンドの状態に合わせて、押しや戻しの深さも考慮することが大切です。
推進波3つめ以降は気を付ける
ダウ理論やエリオット波動理論において、トレンド中に起こる推進波(トレンド方向に進む波のこと)の数は「3つ」とされています。
つまり、推進波に4つ目はなく、推進波3波でトレンドは終わる、ということになります。
であれば、推進波3波の後から押し目を狙うことは止めた方が良いわけです。
だだし、これを杓子定規に受け止めるのは、ちょっとお勧めできません。
トレンドの波の1波をどう捉えるかは、人によって違っており、そこが理論上の3波目かは定かではないからです。
僕はエリオット波動については教科書レベルのことしか知らず、実際のトレードで用いているわけではないんですが、
エリオット波動には、波のカウントの仕方に厳格なルールがあるんですが、そんなエリオット使いの人たちでも、
「これは〇〇波だと思うが、次にXXが来ると、△△波の可能性が・・・」
みたいに、その場その場でスパッと判断できる代物ではないんですね。
例えば、このチャート図を見てください。
ここにある上昇トレンドを見て、アナタら一体どんなスウィング・ライン(波の山と谷を結ぶライン)を引いて、この波の数をカウントするでしょうか?
トレンドの起点はどこから?
どのレベルの波の山と谷を用いて1つの波とする?
どのレベルの波の山と谷を無視する?
やってみると、どの様にでも捉えられるんですよ。
もちろん、厳格なルールを持っている人なら、「ここは、こうする」ってすんなり判断できるかもしれません。
ただ、僕も僕なりのスウィング・ラインの引き方があって、比較的時間をかけずにスウィングがどの谷からどの山までなのかを判断できる(と思ってる)んですが・・・
その結果、推進波が必ず3つになるとは限らないんですね。
ですから、知った気になって、上手く使えないものを実践で使おうとするのは、止めた方が良いです。それって勝負の世界では、お門違いの行為ですからね。これは、トレードに限らず、スポーツにしろ趣味にしろ、世の中の理(ことわり)です。
また、一生懸命に時間をかけて分析すると、その判断は固定観念になってしまい、実際のトレードでは臨機応変に振る舞えずに、大火傷をする結果にも繋がります。
使えないのなら、それはテクニカルであっても、テクニカルではなく、単なる思い込みと同じなんですよ。
ですから、こういったスウィングの捉え方は、時間があるなら検証と練習の場で用いるだけにして、実践レベルで使える様になったら、始めて実際のトレードで用いるべきです。
ただし、僕なりの見方でも、推進波は3つで終わるケースは確かに大きいです。
また、ルールがなくとも「何となく」でカウントしても、推進波が3つの様に見えるケースは多々あると思います。
なので、
「大雑把に捉えて、こんな感じじゃね?違うかもしれないけど」
くらいの意識で波を捉え、3つ目の大きな波が来たら、
「この波の終わりが、トレンドの終わりになるかも。ちょっと気をつけながらチャート見よう」
という意識づけをする程度で良いと思います。
分からないところでは、手を出さない。
それが、負けを減らすための鉄則ですから。
3.小さな時間軸で追いかけない
実は、小さな時間軸の方が難しい
これも口酸っぱく言い続けていることです。
トレンドの押しや戻しを上手く捉えるために、チャートポイントに来たら小さな時間軸に切り替えてタイミングを計る
というのは、方法として適切ですが、どうしても細かい値動きが気になって、小さな時間軸のままトレンドを追いかけようとしてしまいがちです。
例えば、下の図はポンド円の5分足チャートですが、
直近高値付近が抵抗域帯となりそうなので、レジサポとして2本の水平線を引いてあります。ゴチャゴチャするので表示してませんが、直前の上昇1波で見ると、2本の水平線のうち上のラインはフィボ50%戻し、下のラインはフィボ61.8%戻しにあたります。
見ての通り、このラインで到達した後は反転上昇をしています。オシレーターは反転上昇を示唆していますし、斜めに引いたパターンラインもブレイクし、短期移動平均線10SMAと20SMAを上抜いたところが、上図赤い丸の部分です。
セオリーでいけば、ここは買いエントリーで正解のはずです。
しかし・・・
見ての通り、買った後は揉み合いが始まり、たいして上昇もせずに徐々に値を切り下げてしまっています。
恐らくリアルタイムでトレードしてたら、引いた抵抗帯の2本のラインを下回った時点で怖くなって損切りし、損切りした後に上昇を始めるパターンだと思います。
なぜ、この様なことになってしまうのか?
それは、小さな時間軸ばかり見てエントリーの判断をしてしまっているからです。
みんな、相場の中を器用に振る舞おうとして小さな時間足ばかり見てしまいますが、実は小さな時間軸でトレードするよりも大きな時間軸でトレードした方が、トレードの難易度はずっと下がるんですよ。
この局面、1時間足で見てみましょうか?
上図の赤い矢印が示したロウソク足を見てください。
ここが、5分足を見て買いエントリーした部分です。1時間足で見たら押し目でも何でもない部分ですよね。
こんなどうでも良い場面(スキャルピングするつもりなら別)を、一生懸命目で追いながら、テクニカルを駆使してエントリーしていたんですよ。
でも、上図1時間足で判断していたなら赤い丸の部分でエントリーです。
環境認識しておけば簡単に引ける水平線まで到達し(表示してませんが、フィボ23.6%とほぼ合致してます)、オシレーターの反転、斜めのパターンラインのブレイク、短期移動平均線2本を上抜き、
という先ほどの5分足のエントリーと全く同じロジックなのに、こちらは理想的な買いエントリーが出来ています。
鼻クソほじくりながらテレビでも見ていたら、数時間後には100pips以上の含み益になっていた場面ですね。
もし仮に5分足に切り替えてタイミングを計るとしたら、この1時間足でのラインブレイクやMA上抜きの直前で良いんですよ。
「リスクを最小限に抑え、値動きの初動を捉え爆益を目指したい」
そんな欲望から器用に振る舞おうと、小さな時間軸ばかりガン見しているのは、実は真逆の行為だということがお判りでしょうか。器用に振る舞いたいなら、むしろ大きな時間軸をガン見するべきです。
環境認識はやっぱり大事
さて、ここまでで何度か使いまわしていたこのチャートの場面ですが、
徐々に上昇力が下がっていって、C波の後は大きく下落してしまっています。
なんでか、分かります?
もちろん、この1時間足チャートだけだと分かりません。日足に切り替えてみましょう。
赤い四角で囲った部分は、小競り合いが起きていてレンジになってるのが分かると思います。
この小競り合いが「抵抗帯」となるわけなんですが、この小競り合いは一定の価格帯の中で起きています。
Aの小競り合いを上にブレイクしたら、今度はAの高値を下にしてBの小競り合いが始まります。
次にBの小競り合いで売り方が勝利したら、今度はAの低値を高値にしてCの小競り合いが始まります。
こういったブレイク、小競り合いの繰り返しがD、Eと続いているわけですが、どれも同じ価格帯で起きていますよね。水色と薄緑色で色分けしたので、一目瞭然だと思います。
つまり、この価格帯では、上に向かえば売り圧力が高まり、下に向かえば買い圧力が高まるというゾーンなんですね。
ただ、時間の経過とともに、Eの辺りまでくると、ややその価格帯の境界線にズレが生じている様です。
この辺りをもう少し詳しく見るために、4時間足に切り替えてみてみましょう。(これが、僕の言うところの「現状認識」です。覚えてますか?)
Eの揉み合いを良く見ると、新たな高値・低値が小競り合いの境界線を見出し、この境界線はその後も機能してますよね。その境界線を点線にしてラインで引いておきました。
で、青い丸で囲った部分が、先ほどまで見ていた1時間足チャートにおける上昇トレンドの局面です。
じゃあ、1時間足に切り替えますね。
上昇する価格が止められるポイントも、押しが止められるポイントも、上手くラインが捉えられています。
で、値動きを見ると・・・
圧力の高まるゾーンに価格が突入すると、やはり徐々に売り圧力が高まっていき、上昇するごとにA波、B波、C波と徐々に上昇の勢いが衰えていくのが分かりますよね。
この相場環境を予め知っていたら、A波の押し目よりもB波の押し目を狙う方が慎重になるでしょうし、C波の後からは、ちょっと押し目を狙う気にもなりませんよね。
むしろ、この次は落ちるのかを見極めて、オレンジ色の丸でラインを下に抜けたところで売りエントリーする方が現実的です。
とまぁ、きちんと環境認識をしておくことで、同じ上昇トレンドでも売り圧力が高まってくる域帯に突入し出したら、押し目を狙うことに慎重になったり諦めたりすることが、可能になるわけです。
こういったことも、やはり小さな時間軸で値動きを追いかけていては気づかない部分ですね。ガン見するなら、大きな時間軸に比重を置きましょう。
4.ビルドアップ
プライスアクションというと、
- ピンバーだとか
- リバーサルローだとか
- インサイドバー(包み足)だとか
1本もしくは複数のロウソク足の形状・組み合わせで相場状況を判断するテクニカルというのが割と一般的ですが、ここでお話するのは、それとはちょっと違う意味でのプライスアクションです。
ボブ・ボルマン著の「5分足スキャルピング」
と言えば、
「あ~、そっちの方ね」
と思う方もいると思いますが、その通りそっちの方の解説です。
この本は、タイトルこそ「スキャルピング」となっていますが、決してスキャルに限った話にならないプライスアクションの解説書です。
で、ボブ・ボルマン流で言うと、プルバック(押しや戻し)の狙い方は、要約すると
- ライン(支持線・抵抗線)
- リトレースメント(40%・50%・60%)
- ビルドアップ
の3点になります。
1のラインはいわゆるレジサポのことです。
2のリトレースメントですが、ボブ・ボルマンは押しや戻しの深さは40%・50%・60%付近で捉えるべきだという主張です。
で、ここまでは僕の言うところの「到達確認」ですね。
リトレースメントに関して言うと、ボブ・ボルマンのいう40%・50%・60%は、これまで僕が解説してきたフィボナッチ・リトレースメントの38.2%・50%・61.8%とほぼ一致しています。
ですから、1と2は到達確認として把握しておいてOKなんですが、
3のビルドアップに関しては、僕のブログの記事全体の中ではチラホラとそれらしき解説は出てきてるんですが、押しや戻しを拾う時の基準として規定化して解説してませんでした。
ということで、ちょっとここでこのボブ・ボルマンの言うビルドアップについて触れておきます。
ビルドアップとは何かというと、端的に言ってしまえば売り方と買い方の小競り合いによって、揉み合いとなる小さな塊(クラスター)が形成される様のことを言います。
これ、先述で出した画像ですが、
緑丸で囲った部分のように、揉み合い・小競り合いが行われることによって、小さなロウソク足が陰線・陽線入り混じりながら、ブドウの房の様なもの(クラスター)が積み上がっていく様を「ビルドアップ」と呼びます。
こういったクラスターは、時間軸に関係なく、積み上がっていくとそこが抵抗帯となります。先ほどの日足チャートで言えば、
Bを除くそれ以外の四角で囲った部分の揉み合いがクラスター(正確に言うとEの中にはクラスターが2つある)ということになりますかね。
で、ボブ・ブルマンはこのビルドアップを非常に重要視しています。
なぜ、このクラスター及びビルドアップが大切かというと、これは売り方と買い方との小競り合いであり、このクラスターが積み上がれば上がるほど、売りと買いのポジションも積み上がっていくわけです。
ということは、このクラスターをブレイクすれば沢山の損切りが誘発され、またこのクラスターブレイクを見て追撃して参入する(フォロースルー)トレーダーも増える(これをボブ・ボルマンは「ダブルの圧力」と呼んでいます)ため、価格が一気に伸びるわけなんですよ。
ですから、ボブ・ボルマンはプルバック(押し・戻し)を捉える際は、このビルドアップを見て勢力が優勢な方(トレンド方向)にブレイクしたら、そこでブレイクした方向にエントリーするということを推奨しています。
逆に言えば、押し戻しでもビルドアップがなされていないものは、保守的なトレードをしたいならエントリーすべきではない、ということです。
僕はこの記事の割と最初の方で、
「V字回復のイメージに囚われるな」
というお話をしたと思います。
実際の押し戻しというのは、V字回復だけではないし、むしろ揉み合いを挟んだりしてV字回復しないケースが結構多いということでしたよね。
ですから、保守的に手堅くトレードするのであれば、このクラスターを見て、反転確認を行なうべきというのが、ボブ・ボルマンの主張です。
上図を例に、ちょっと解説すると・・・
まず、上昇トレンド中に調整が始まったら、支持線(レジサポ)を確認し、さらにそのポイントがリトレースメント(押しも深さ)が40~60%程度あるのかを確認します。上図では、支持線の位置が40%程度リトレースされたものだと仮定します。
で、まずは最初にクラスターAが発生し、それをトレンド方向に向けてブレイクしますが、適切なリトレースの位置にある支持線にまで至ってないので、スルーします。
そして、そのブレイクがダマシとなって、今度は下落を強めて支持線まで到達しますが反発しても、エントリーはしません。クラスターが発生しビルドアップされるのを待ちます。
で、クラスターBがビルドアップされるわけですが、ここでパターンラインが引けます。
そして、このクラスターとパターンラインがブレイクされたところで、買いエントリーということになります。
ちなみに、上図の場合は、ブレイクした価格は一旦下落してますが、このクラスターBの上限がサポートとなって反転上昇(ロールリバーサル)してますね。
先のクラスターBでのブレイクを見逃したり、追撃買いをしたい人は、このロールリバーサルで買いエントリーをすることになります。
で、ボブ・ボルマンはこれを5分足チャートで解説しています。
なので、このクラスターは、何もある程度の値幅を持っていないと駄目ということではなく、結構小さな揉み合いでも有効です。
大切なのは、クラスターの値幅よりも、小競り合いの数(時間・ロウソク足の数)です。
上図は、ポンド円の1時間足ですが、例えばチャートを覗いたのが、ちょうど赤い丸の部分だとして、ここから押し目を拾ってエントリーを狙うことを考えるとしましょうか。
もちろん、先に説明した通り、下手に小さな時間軸を使うより、1時間足に上図の様にレジサポを引いて、そこに到達するまで鼻クソほじりながら待ってれば、それほど難しい局面ではないんですが、
それを言ったら解説にならないので、この部分を5分足に切り替えて説明していきます。
チャートを覗いた辺りが、ちょうど赤い丸の直前辺りだとして、そこから押し目を狙っていくんでしたね。
先ほど1時間足で引いたレジサポは、フィボを使うとちょうど50%付近になります。このラインの辺りまで押すというのが、一番濃厚だということを、まず頭の中に入れておいてください。
さて、赤い丸を頂点として、下がり出すとまず最初にフィボ23.6%あたりのAで止められてますね。下手クソな人は、この局面で少し価格が上がり出したところで直ぐに買っちゃいます。
しかし、この押しはまだ浅く、引いたレジサポからもまだ遠いですよね。
で、Aを良く見てください。小競り合いがあって、小さなクラスターが発生しています。
ただ、このクラスターはロウソク足3、4本で形成されているだけで、ビルドアップされたにしてはまだ弱いかなという印象。
押しは浅いしビルドアップもイマイチなので、スルーします。
すると、やはり微妙に上げただけで、直ぐにだだ下がりします。
ところが、今度はフィボ38.2の付近でクラスターBが発生しています。この小競り合いは比較的長く続いていて、ビルドアップがきちんと出来ています。
で、トレンド方向と同じく上にブレイクしました。
押しの深さは本願のレジサポまでは遠いですが、ビルドアップが確かなので、スキャや短いデイトレのつもりなら、ついていってもOKな局面でしょう。ただしこの局面は押しが浅いので、直近高値を越えることを無理に望んではいけません。
さて、見ての通り今回のブレイクは、ビルドアップが確かなので、比較的勢いよく価格は上昇します。
が、赤い丸に到達する前に、売り方の反撃にあって、再び価格は下降を始めます。
下降の途中でクラスターCが発生しますが、ここは売り方の勝利となり、とうとう本願のレジサポまで到達します。
で、この最重要ポイントで価格は止められ、クラスターDが発生します。結果、ダブルボトムを形成して上抜けました。ここで買いエントリーするのが王道ですかね。
ただ、もう少し解説すると・・・
上昇してダブルボトムの分の値幅を達成すると価格は上昇を止め、クラスターEが発生します。この戦いは、売り方が勝利し、下にブレイクします。
が、クラスターDの上限がレジサポとなって価格は止められ、クラスターFが発生します。
で、このクラスターFは圧力のある方向(トレンド方向)へと抜けたので、ここも絶好のエントリーポイントになります。
その後の展開を見ても、要所要所でクラスターを作りながら、価格は上昇を続けています。
とまぁ、クラスターを意識していると、こんな感じでトレードが可能になります。
もちろん、このクラスターは、大きな時間軸でも発生しているわけで、例えば先の1時間足のチャートでも、
この様にクラスターを確認してからパターンラインを引き、そこを勢力の強い方向(トレンド方向)にブレイクしたら、エントリーするという方法をとると、見ての通りダブルの圧力により、ブレイク直後は大きく価格が伸びていくんですね。
勝率を上げていきたいなら、
- トレンドの勢いが強いならV字回復を大いに狙って攻めの姿勢でエントリーするが
- そうでない場合は、このクラスターを確認できなければエントリーしない
という方法を取ることで、勝率は飛躍的に改善されるはずです。
なお、このビルドアップによって発生したクラスターのブレイクを利用したトレードは、トレンドの押しや戻しを捉えるだけじゃなく、様々な局面で応用が出来ます。
このビルドアップは、積極的に検証対象としていくことで、トレードチャンスと勝率のアップに繋がっていくと思います。
ただ、ボブ・ボルマンのこのロジックは、ここで紹介しただけではありませんので、興味のある方は、ぜひ彼の著書「5分足スキャルピング」を熟読してください。
スキャルピングに関係なくこのロジックは大変参考になりますし、パンローリング出版にありがちな読みにくさはありますが、僕自身、
「お勧めの書籍を3冊紹介するとすれば?」
と聞かれたら、この本は必ず挙げるくらいの内容です。
これを読むと、ロウソク足1本1本の意味を読み込もうという意識でチャートに向かう様になると思います。
このビルドアップという考え方ですが、別にボブ・ボルマンの考え方に沿わなくとも、「マーケットプロファイル」も、このビルドアップを視覚化したものになります。
(上図は、マーケットプロファイルを表示したチャートになります。マーケットプロファイルに関しては、解説すると長くなり過ぎるので割愛します。各自で調べてください)
ボブ・ボルマンのビルドアップにしろ、マーケットプロファイルにしろ、
売買が繰り返し行なわれる域帯ではポジションが積み重なり、結果としてその価格帯は抵抗帯となり、そこを抜けると抜けた方に大きく価格は進む
というのは、チャートを見る時のアプローチの仕方が違うだけで、実は見ているもの、考え方としてのロジックは同じ、ということになります。
僕自身は、マーケットプロファイルを見ながら気づいたのが、このクラスターなんですが、ボブ・ボルマンの解説の方が実践的で、出来ればこっちの方を早く知ってたら、もっと楽だったのになぁ~、というのが正直な気持ちです。
さて、例のごとく、お話が長くなってしまいましたので、今回はこの辺でお開きにしようかと思います。
実は予定としてはこの後に、「波動」による押しや戻しの判別の仕方をお話するつもりでした。
この「波動」というのは、エリオット波動のことではなく、解説すれば極めて「当たり前」と思われることなのに、誰もそこには触れていないという、恐らく誰も話をしていない内容になるかと思います。なので、公開すれば、僕オリジナルの波動論ということになるかもしれません。
このBOZ波動論に関しては、全てをお話することは今の段階ではちょっと難しいんですが、トレンド中の押し戻しに限って言えば、比較的容易に解説が可能だと思いますので、次回(になるかはわかりませんが)のエントリーポイントの狙い方シリーズの記事で、少し触れてみようかと思ってます。
ちなみに、僕の言うところの「クシ」というのは、この波動を見るために用いるものなので、今回の記事でそれらしきラインは敢えて「斜めに引いたパターンライン」として解説しています。この斜めに引いたパターンラインとはいわゆる「切下げ(切上げ)ライン」ということなんですけど、それとは区別したいんで。
と、ここまで話したところで、
そう言えば、今日はクリスマス・イヴだということに気が付きました。
この記事が、読者の方にとっての良いクリスマス・プレゼントになったとしたら幸いです。
それじゃあ、また。