建玉操作としてのナンピンについて

ナンピンと言えば、「絶対にダメ!」とか「3回までならOK」とか、人によって色々と違ったことを言われてますが、

「本当のところ、一体どうなの!?」

というお話を、今回はしようかと。闇雲にダメとか大丈夫とか言わずに、基本的なところを改めてイチから押さえながら、ナンピンに対する考え方を再構築していこうかと。

ナンピン(難平)とは?

概略

ナンピン(難平)とは、

買ったポジションよりも価格が下がった場合に、さらに当初よりも安い価格で買い増しし、さらに下がればそこでもまた買い増しするという売買方法です。

いわゆる買い下がりのことですね。

図にすると、こんな感じ。

もちろん、その逆もまた然り。売りでエントリーし、さらに価格が上がった場合により高い価格で売る行為も、同様にナンピンです。

で、このナンピンという行為には、利点と欠点があります。次にそれを見ていきましょう。

(※以下、基本的には「買い」によるナンピンで説明します。「売り」の場合も考え方は全く同様ですので、適宜読み替えてください)

ナンピンの利点

ナンピンによって買いエントリーを繰り返した場合、買った価格の平均値は低くなります。

100円で2ロット買ったとすると、1ロット当たりの平均額は、当たり前ですが100円です。

しかし、100円で1ロット買い、98円でもう1ロット買ったならば、1ロット当たりの平均購入額は、100円と98円の平均値である99円になります。

相対的に100円で2ロット購入するよりも安く購入できたことになります。

仮にその後、103円まで上がってそこで利確した場合、前者は差額3円の利益となりますが、ナンピンした後者は4円の利益となります。

また、97円で損切りした場合、前者は3円の損失、後者は2円の損失ですみます。

結果的に安く買った方がお得になるわけで、ナンピンにおける利点はまさに、買った金額の平均値を下げるというところにあります。

が、しかし・・・

ナンピンの欠点

買いポジションの平均価格を下げていくのがナンピンですが、もちろん利点ばかりではありません。致命的な欠点があります。

それは、価格が思惑通りにいかず下がり続けた場合、ポジションの量はどんどんと増えていくため、結果的に損失額が膨大になっていくということです。

確かにナンピンを繰り返せば、買いポジションの平均金額は下がっていくため、下がり続けても損失は軽減されている様な気になります。

しかし、それはあくまで現在価格とポジション平均値での表面的な差でしかありません。

ナンピンを繰り返していけば、ポジションの量はその分だけ増えていくわけですから、トータルの損失額は膨らむ一方です。

100円で1ロット買い、97円で損切りした場合は、

-300pips × 1ロット = -300pips

となり、損失は300pipsでおさまります。

しかし、100円で1ロット買い、上がると思ったのに下がったので99円でさらに1ロット買い増し、さらに98円で1ロット買い増し、結果的に耐えきれなくなって97円で損切りした場合は、

(100 – 97) + (99 – 97) + (98-97) =  3 + 2 + 1 = 6

となり、結果600pipsの損失を被るわけです。

ナンピンを行なうことで買いポジションの平均価格は下がりますが、それはあくまで表面上のこと。買い増せば買い増すほど玉数は増える一方で、表面上で誤魔化されている間に損失のトータル額はどんどんと膨らんでいくわけです。

ナンピンの心理的デメリット

利点と欠点、両方を見てきたわけですが、多くの人はこの時点で直観的に、

「ナンピンは、危険!」

と思ったんじゃないかと思います。

 

はい、正解。

 

ナンピンは、とっても危険な行為です。端的に言ってしまえば、ナンピンは破産に向かってアクセルを踏む行為になりかねないんですよ。

ナンピンの怖さは、その心理的なデメリットから来ます。大きく分けると2つかな。

まず1つめは、先ほども述べた様に、表面上は買いポジションの平均値が下がるため、それに誤魔化されて、どんどんと含み損のトータル額が増えてしまいやすくなるんですね。

こういったことって、日常生活でもよくあるじゃないですか。

100円ショップやセールなんかに行くと、安い安いと買っていって結果的にかなりの量の商品を買ってしまいがちになりますよね。で、レジに行って金額を聞いてから「結構買ってしまった・・・」って気が付いたりとか。

塵も積もれば山となるというのは、誰もが分かっていることですが、現実には表面上の小さな塵や目先の塵に誤魔化されてしまいがちになるのが、人の常ってやつです。

そしてナンピンは、まさしくそれにあたります。気が付いたら、にっちもさっちも行かない状況に追い込まれやすいのが、このナンピンという行為です。

2つ目の心理的デメリットですが、これは自分の誤った判断を認められずに、自分を誤魔化すためにナンピンが利用されやすいということです。

「損切りが出来ない!」

ってのは、トレードでよく聞く話です。身に覚えのある方もいるかもしれません。

上がると踏んで買ってみたものの、思惑とは反対に下落した場合、トレードの基本は「損切り」です。

しかし、含み損は損切りをしない限り、損失が確定しませんから、「損をしたくない!」という心理は、損切りという行為をなかなかさせてくれません。

そして、その心理に拍車をかけるのがナンピンです。

損をしたくないという心理に対して、ポジションの平均価格を下げるというナンピンは、安心材料の1つになります。(実際は、安心材料とは真逆なんですが)

つまり、一時しのぎに使われるわけです。

そして、どこかで踏ん切りをつけない限り、ナンピンは繰り返されます。最後には追証や強制ロスカットなど、自分の意志ではどうにもならないところまで追い込まれるまれることも、珍しくはありません。

ナンピンとは、その損切りできない心理状態にコッソリと入り込んで、さらに心と証拠金を蝕(むしば)んでいく行為だと、肝に銘じましょう。

ナンピンは原則禁止

以上を見ていけばお分かりの通り、ナンピンは原則として禁止です。

なぜなら、トレードとは自分の「損をしたくない」という心理を誤魔化すために売買をするものではないからです。

上がると判断して買ったのに下がったのであれば、それは見込み違いです。損切りする場面なんですよ。

ところが、その見込み違いを認めずにさらに買い増すというのは、理屈に合わないわけですよね。

自分の判断の過ちを認めず、現実に対応しないというのは、トレードの世界においては自殺行為です。

さらに言えば、含み損を抱えたままじっと堪えているだけの資金は、単なる死に金です。

それを「運用」とは呼びません。

早めに損切りをし、動かせるようになった資金で、新たに上がると判断した通貨ペアや株、商品を買うことの方が重要です。

そこで思惑通りに動けば、先の損失分を取り戻すことが出来るどころか、さらに利益を出すことも可能になります。

含み損という死に金を抱えたままの状態というのは、資金運用ならびにトレードの本質と全くかけ離れているんですね。

そういった意味で、ナンピンというのはトレードの基本から全くかけ離れてしまう可能性を大きく持った行為です。

ですから、ナンピンは原則として禁止です。これは、断言しておきましょう。

しかし・・・

ここでナンピンのお話を終わらせるつもりは、更々ありません。今回は、もうちょっとナンピンについて突っ込んだお話をしていくつもりです。

されどナンピン

繰り返し言いますが、ナンピンは原則として禁止です。

そう、原則として。

実はナンピンとは、トレードにおける建玉操作、つまり分割してポジションをとるやり方としては、結構有能な方法なんです。

実は僕も、時にナンピンをします。ただ、上記の様に自分の見込み違いを認めずに当初の考えに固執したナンピンではありません。計画的な建玉操作としてのナンピンを僕は用いたりするんですね。

もちろん先に説明した通り、ナンピンには潜在的にとっても大きな危険性を持っていますから、初心者にはお勧めしません。

ナンピンによる建て玉操作とは、トレードをきちんとした判断でエントリーでき、STOPもきちんと根拠のある位置に置き、そこに来たらきちんと損切り出来る人のみが扱える方法です。

ある程度トレードに習熟してきた場合に用いるやり方として、これからちょっと説明していきましょうかね。

建玉操作としてのナンピン

ご利用は計画的に

建玉操作としてナンピンを用いる場合、それは場当たり的ではなく、計画的に行います。つまり、最初にポジションを持つ前に、既にナンピンを想定してからエントリーを行なうというものです。

分かりづらい?分かりづらいですよねぇ。

では、実際のチャートを見ながら解説しましょうか。下の図は、ポンド円15分足。

上昇トレンド中に低値を付けた後に勢いよく上昇。前回高値を越えたところで買いエントリーしたとします。

ところが・・・

これからグングン上昇すると思ったのに、エントリーした途端に反転下落。先ほどの直近高値も下回ってしまいました。

・・・と、こんな感じなら、この後にナンピンするのは絶対にダメです。

見込み違いだったんだから、それを素直に認めないと。

しかし僕の場合、こういった考え方で買いポジションを持つことはあまりないんですね。

もう一度、先ほどの高値更新で買った場面を振り返ってみましょう。僕なら、こう考えます。

上昇トレンド継続中ということで、まずSTOPの位置が決まっています。

なので、この位置で買うとなるとSTOPまでの距離が結構あるわけで。仮に損切りになった場合は、これだけの値幅分が損失となり、あんまり良い気分はしません。出来れば、もっと安く買いたい。

しかし、だからと言ってエントリーを見送った場合、ここからたいした押し目も付けずに、急上昇を続けられたら、絶対後悔しますよねぇ。

じゃあ、どうしようか?

ということで、上図の緑色の矢印と文字を見てください。

上昇トレンドが継続するとしても、この緑色の矢印の範囲で下落する可能性はあるわけですよね。

もっと言えば、この緑色の矢印の範囲内では買い方針の根拠は継続します。で、買い方針が有効な範囲内であれば、安ければ安いほどお買い得なわけです。

  • ここから急上昇を続ける可能性もあるので、このタイミングを逃したくない
  • でも、下落リスクも大きい
  • しかし、買い根拠が失われないまま、もっと安く買える範囲がある

であれば、この範囲まで下落する可能性があることを予め想定してエントリーしちゃえば良いんじゃないですかね?

下落する可能性とその範囲を予め想定できるのであれば、1度にまとめてポジションを持つのではなく、何回かに分割して、その下落に合わせてポジションを建てるという方針をとるわけです。

僕の場合は、大体2~3分割を目安としています。つまり、ナンピンは3回まで。

理由は簡単。持ってるポジションを複雑にしたくないからです。複雑なことを僕は処理しきれませんし、そもそも面倒臭い。

「モノゴトは複雑にしても良いことない」

というのが僕の自論なので、出来るだけシンプルにしておきます。

で、このケースの場合、具体的に言えば、

  1. このままバイ~ンと急上昇されるのが嫌なので、まずは試し玉として通常1度に持つポジションの1/3を赤い丸の部分でエントリー。
  2. 下落した場合、そこから反転上昇する可能性のある個所で、1/3ずつをエントリー。
  3. 2回目のエントリーが、もっとも安い価格帯であり、尚且つ自信があるのであれば、2/3をエントリー。
  4. いずれのポジションにおいても、STOPの位置は直近低値を下回った箇所1ヶ所。

となります。

じゃあ、チャートの見える範囲をずらして説明していきましょうか。

実際の僕はこの時のトレードしていないので、「僕だったら、この場合・・・」という範囲でしか説明できないんですが、恐らく上図の様に2回目はここでエントリーしたんじゃないかと。

で、次ですが・・・

2回目のエントリーで上昇すると思ったら、ズルズルっと下がっていきました。3回目のエントリーは多分ここ。

(正直なところ、本チャンならもう少し慎重になって、この後に上昇したらエントリーするんでしょうが、そうすると2回目のエントリーよりも高い位置で買うことになるかもしれず、ナンピンの例としては成立しなくなるので、あえてここでエントリーです。ご了承ください。)

で、3回目のエントリーなので、これ以上は建てません。

そして、いずれのエントリーにおいても、STOPは赤いラインで示した位置です。

ということで結果を見てみると・・・

まぁ、これはナンピンによる建玉操作の例なので、結果上昇しようが下落しようがどちらでも良いのですが、

平均エントリー価格は1回目のエントリーでまとめて建てるよりも低く抑えられたので、

利確した場合も、安く買ったのでお得。
損切りした場合も、安く買ったのでお得。

ということになります。

こういった建玉操作は、1度にエントリーするよりも、価格面でもそうですが、むしろ

「下がっても、オッケ~!」(ローラ風)

といった具合に、精神的負担を軽減する方に大きなメリットがある様に感じます。

ただし、くれぐれも言っておきますが、

ナンピンによる建玉操作は、見込み違いを認めないために行うのではなく、あくまで予め想定した範囲で行うべきものである

ということです。別な言い方をするならば、

方針やシナリオは出来ているけど、エントリーポイントが1つに絞りづらい場合に、分散してエントリー。その際、ナンピンすることで、利確・損切り共に自分に有利に持っていくことができ、精神的にも負荷を軽減させることができる。

となりますかね。

でもまぁ何度も言いますが、初心者はやるべきではないでしょうねぇ。くれぐれも、トレードに習熟してからの建玉操作です。

ナンピンによる損切りの例

もちろん、ナンピンによって買いポジションの平均値は下がるわけですから、損切りした場合の損失額を減らすことも可能になります。

このナンピンによる建玉操作は、買い方針が既に決まっている時における分割エントリー方法です。

なので、どこでポジションを建てようが必ずSTOPの位置は一緒なわけです。

ナンピンによる建玉操作とは

  • 損切りする位置が一定のまま、買いポジションの平均値を下げていく建玉操作
  • 単純に買い増すのではなく、基本となるポジションのロットを分割して建てる方法

になるわけですから、利確の時に利幅を上げるだけでなく、損切りの時は損失を下げることができます。

では、実際のチャートで解説していきましょうか。今までは買いで説明していましたが、今回は売りで説明します。

で、説明に用いるのは、実際の僕のミストレードです。内容的にはお恥ずかしいトレードなんですが、そんなミスでも損失幅を少なく抑えられた例なので、ちょっとご紹介しようかと。

以下は、ポンド円15分足チャートです。

帰宅した僕がチャートを開いた時が、ちょうど緑色で囲った部分になります。強めに下落した後、一旦①のラインで跳ね返された辺りです。青色の斜めラインはその時点で引いたものになります。

その直後、次のロウソク足で再度①の水平線を抜けます。

で、この時点で僕はミスを犯します。

実は、注目すべきラインは①よりも②の方で、本来②のラインを抜けたら、その後は下落傾向が強まると判断すべきなんですが・・・

なぜか②ではなく①のラインを基準に見てしまっていました。

しかも、チャートを覗いた早々で慌ててしまったせいか、この①のラインをきちんと抜けきっていないのにも関わらず、売りエントリーしてしまったんですね。それが上図の赤丸の部分。

ただ、勘違いしていたとはいえ、

「チャネルとして引いた下のラインがすぐ傍にあるし、ストップまでは結構遠いよなぁ・・・。今エントリーしても、第1目標値までの値幅とストップまでの値幅は、ほぼ1:1だし、美味しくないんだよなぁ・・・」

という冷静な部分もあるわけで。

しかし、このまま強く下抜ける可能性も捨てきれなかった僕は、通常トレードする際に基本としているロット数の1/3だけを試し玉として入れることにしたんですね。エントリー価格は、146.371です。

では、その後どうなったかというと、

エントリー直後、見ての通り直ぐに反転上昇します。

ただ、この上昇は想定内。「ちっくしょ~!」と思うよりは「しめしめ」とニヤつく場面です。

で、価格はチャネルとは別に引いたもう1つのラインに当たり、チャネル上限のラインを抜けきれずに反転しました。

ここで再度ショート。この場面はチャネル上限ラインをきちんと反転したと判断できるところなので、残りの2/3の玉数を建てました。

エントリー価格は、146.535です。

この時点で、僕の売りポジションは平均で

(146.371 + 146.535 × 2) / 3 = 146.480

となり、最初にまとめて売るよりも10pips以上のお得感丸出しでポジションを持つことに成功しました。

で、見ての通りナンピンした直後に強く下げます。

ただ、先ほどのライン①を境に揉み合います。

本来は、ここで様子を見てポジションを解消するか検討する場面です。反転上昇しても、微益決済か損失0の建値決済で逃げることも可能ですしね。

しかし、僕はこの真っただ中に、仕事疲れもあって寝落ちしてしまいました・・・

ということで、この後の状況を見てみましょう。

ふと目が覚めて、チャートを覗いてみると価格は揉み合いを抜けて反転上昇していました。

「ヤベッ!」

ということで、STOPに届いていませんでしたが、チャネル上限のラインを越えたのを根拠に成行で損切りしました。正確に言えば、青い丸で囲ったロウソク足の次の足がチャネルとは別のもう1つのラインを抜けた瞬間に損切りです。

さて、ここまでの説明でお分かりの通り、最初のエントリーでまとめてポジションをとるよりも、ナンピンすることで僕は10pips以上も損失額を抑えることが出来ました。

この様に、予めエントリーの方針とSTOPの位置が定まっており、きちんと損切りが出来るのであれば、むしろナンピンは損失を小さく抑えるための建玉操作であると言えます。

建玉操作としてのナンピンの方法、理解してもらえたでしょうか?

 

と、ここで終わらせたいのですが・・・

この例として挙げたトレードでの損切り、実は僕はここでも痛恨のミスを犯してしまっています。気が付きましたか?

そもそも、僕はなぜSTOPの位置を予め上図チャートの赤いラインに置いたのでしょうか?

それは、そこを越えるまでは下降トレンドは継続すると踏んでいたからです。

そして、僕のトレードのやり方は、斜めラインよりも水平線を優先するというものです。

なのに、なぜ僕はあそこで損切りしてしまったのでしょうか?

まぁ、トレードは一時の感情に左右されやすいものですから、仕方がないっちゃ仕方がありません。

で、僕はこの誤った損切りを行なった直後に気が付きます。

「ヤバい。判断早すぎたかも・・・」

ということで、損切った後のチャートを見てみましょうか。

損切った直後に15分足レベルだと直近高値を越えますが、これは誤差の範疇。STOPを置く根拠となった高値を抜けることは出来ず、200SMAに頭を押さえられる形で反転下落を始めます。

ただまぁ僕も転んだ後にタダでは起き上がりません。

反転が始まったオレンジ色の丸Aのところで、すかさずショート。奇しくも、ナンピンした時と同じ価格でしたが、ここはかなり確信の持てる位置であり、STOPからも遠くないため、分割せずにエントリー。

さらにBで売り増ししました。もちろん、分割ではなく売り増しです。

で、結果は見ての通り。チャネルとして引いたラインと第1目標がちょうど重なったあたりで、ここを越えそうもなかったので青丸の部分で利確しました。

 

さて、最後は自慢話になっちゃいましたかね?

まぁ、そういうつもりではなく、建玉をどういった時に分割するか売り増しするかの例として参考にしてもらえたらな、と。

ということで、今回はここでお終いです。

くれぐれも、計画に沿ったトレードが出来るようになるまでは、ナンピンは行わない様にしてください。

それでは、また。

価格の値動きを生み出すゾーンのお話

本来なら「優位性」についてのお話をするつもりだったんですが、書いている途中で、僕の中の曖昧な部分が露呈してしまって、進行がストップした状態になっています。

まぁ、このブログは自分のために書いている様なものですから、更新するのは自由・・・

と言いたいところなんですが、このブログを印刷してテキスト代わりにしてくれている方が何人かいる様なので、このまましばらく放置というのも気が引けるわけで。

ということで、ちょっと場つなぎ的に、

値動きの見方、考え方

を一部分ですが、お話しようかと。

それでは、始まり始まり~。

値動きの規則性

とりあえずは、かなり基本的なお話から入っていきますが・・・

値動きを見る際、まずは高値低値に注目します。そしてそこに一定の規則性がある場合、僕らにとってそれはトレードをするための大きな手助けとなります。

例えば、これ。

ユーロドルの1時間足ですが、典型的な下降トレンドを描いています。

しかも、赤い実線で分かる通り、高値に規則性があるのでトレンドラインが比較的キレイに引けます。

トレンドラインの辺りで反転したら売り、という極めて教科書的な相場局面ですね。

おまけにこの下降トレンド、高値と同様の規則性が低値にもあり、破線で示した通り、トレンドラインと平行にラインを引くことができます。

ですから、短期売買の場合は、実線のトレンドラインで売って、この破線を目安に利確を繰り返すということも可能ですし、ずっと売りっぱなしでトレンドラインを上抜けたら利確するというトレードの仕方もあるわけです。

 

えっと、こんな基本的な話、退屈ですか?

 

退屈ですよね。

でも、「分かってる」「知ってる」と言いながら、こんな単純な相場つきですら獲れないのが、典型的な負け組の思考パターンです。

トレードに限らず、どの様な仕事であっても、基本は大切です。基本的なこと、当たり前のことを、当たり前に出来るようになって、初めて一人前と呼べるようになります。

そのためには、繰り返し繰り返し基本練習をするわけです。スポーツなんかも同じですよね。

 

では、話を元に戻します。

値動きを見る時は、高値低値に注目し、規則性があるなしを見極めます。そうやって、その局面がトレード可能かどうかの判断材料にするわけです。

上のチャート、もう少し時間を進めてみましょう。

先ほどのトレンドライン(赤色の実線)をブレイクした後の上昇局面でも、やはり高値低値に規則性があり、平行な線(青色の線)が引けます。

典型的な下降フラッグですね。下降トレンド途中の調整局面(戻し)ですから、この低値を結んだラインを下方ブレイクしたら、再び下降トレンドが始まります。

先人たちは、この様に相場をパターン化する知恵を、僕らの後世に残してくれたんですね。実にありがたいことです。

では、この後お話する内容を深く理解してもらうために、もう少し教科書的、基本的なお話を続けてみます。

下の図はドル円1時間足チャートですが、赤い丸で囲った部分を皆さんはどの様に見るでしょうか?

例えば、こんな感じでしょうかね?

レクタングル・フォーメーション、いわゆる平行レンジです。高値と低値が水平線で結ぶことができますね。 

しかし、こんな見方をする人もいるかもしれません。

変則的ですが、三角保ち合いですね。高値低値が徐々に狭まってきて、煮詰まったところで上方にブレイク、といった捉え方ができます。

平行レンジと三角保ち合い、2つの見方が出来るわけですが、どちらかが正解でどちらかが間違いというわけではありません。

両者の見方とも、高値低値に規則性を見出しているわけですから。

高値低値に規則性が続いている以上、高値で売って低値で買うというトレードが可能となりますし、その規則性が破られたら、破られた方向についていくというのが基本的(教科書的)な戦術となるわけです。

 

では、高値低値に規則性がない場合、どうトレードしたらよいでしょうか?

例えばこのチャートとか。

ユーロドルの15分足ですが、これだけを見る限り、このチャート全体の値動きに規則性があるとは、ちょっと言えません。

値動きに規則性がないということは、価格がどのタイミングでどちらの方向に進むかも予測できないということです。

こういった値動きの時にリアルタイムでトレードすると、買えば下がるし売れば上がるを繰り返したりします。出来れば手を出したくない相場つきです。

前々回も言いましたが、こういった規則性を見出せない局面は、「分からない」とハッキリと判別できる意識を持つことが大切です。

では、次のチャートはどうでしょうか?

これ、ポンド円の15分足ですが、この値動きを見てどう思いますかね?

全体的に見れば価格は下降している様に見えますが、上に跳ねてみたと思ったらガラッと下げてみたり。ポンド円らしく値動きが荒いですねぇ。

で、このチャートから見える値動きに、トレード可能な規則性はあるんでしょうか?

う~ん・・・ある様な、ない様な・・・

まぁ、「ない」と思えば、「ない」でOKです。トレードしなければ良いだけですから。問題なのは、「ある」とも「ない」とも判断せずにトレードしてしまうことです。

が、しかし

この値動きからは、未来の値動きを示唆する情報が見え隠れしているんですよ。目を凝らして見てください。このチャートからは、ある一定の規則性が導き出されます。

分かりましたか?

実は、このチャートは最近のもので、先週木曜日3月28日16時を過ぎた辺りからの値動きを敢えて隠しています。

なぜ隠したかというと、この28日16時までの値動きを見て、この後どの様に価格が推移するのかを考えてもらいたいからなんですね。

僕らトレーダーは、過去から現在までの価格の値動きを見て、未来の値動きを模索するのが仕事でから。

さて、このチャートから、値動きの規則性を見出すことが出来ましたか?

「できた様な、できない様な・・・」

そうですか。じゃあ、この値動きを僕が、

「これ、チャネルですよ。きっとそう。多分そう。いや、そうであってくれ・・・」

とか言ったら怒りますか?怒りますかね、冗談は後にしてくれって。

でも、本当にこの値動きは、チャネルを示唆しています。正確に言えば、チャネルを形成し始める直前の形です。

では、この値動きがこの後なぜチャネルを形成していくのかを、ちょっと解説していきましょうかね。

平行するラインの内部構造について

レクタングル・フォーメーションの内部構造

ちょっと先ほどのドル円1時間足チャートをもう一度見てもらいましょうか。

高値低値に水平線が引ける平行レンジでしたね。四角形で囲むことができるこの平行レンジのことを、レクタングル(四角形)・フォーメーションと言います。

で、こういった平行レンジの内側の値動きは比較的不規則に動くのが特徴です。なので、ライン際辺りで売買しないと痛い目を見たりします。

ただ、そんな平行レンジでも、その内部に1つのポイントが現れることが数多くあります。

それは、高値を結んだレジスタンス・ラインと低値を結んだサポート・ラインのちょうど真ん中、このレンジの半値部分です。

このレンジの半値に注目するというテクニカルは、まぁまぁ知られているので、ご存知の方も多いかもしれませんね。

では、ちょっと注目して見るために、30分足に切り替えて拡大してみましょうか。

このレンジの中値辺りに水平線を引いてみましたが、この真ん中のラインで何度も止められているのが分かると思います。

平行レンジを形成している場合、その中値に注目することは、トレードを行なう際に重要なポイントになるわけです。

では、この平行レンジの値動きをもう少し細かく見ていくと何が分るでしょうか?ちょっと、じっとこの値動きを見てください。

何やらレンジ上限で価格の揉み合った塊が、次はレンジ下限に移動して揉み合って塊を作り、次は再びレンジ上限に移動して揉み合って・・・

と、この赤いラインを境にして、揉み合っている価格の塊が上下に移動しているのが分かりますかね?

図にすると、こんな感じです。

こう見ていくと気が付く通り、

平行レンジとは、

  • レジスタンスとサポートラインの間を上下している
  • 中値を境にして、価格の揉み合いが上下に移動している

という2つの捉え方が出来ることになりますね。

もちろん、レクタングル・フォーメーションの内部では、こういった値動きが必ず起きるというわけではありません。

レンジ幅の大きなフォーメーションですと、内部では上昇トレンドと下降トレンドが繰り返されることも多く出てきます。

ただ、多くの傾向としてこの様な値動きが起こるということは、シッカリと頭の中に入れておいてください。

チャネル・ラインの内部構造

さて、レクタングル・フォーメーションの値動きは分かりました。

しかし、これは何も水平線で囲まれたレンジだけの現象とは限りません。斜め線であっても、高値低値を結んだラインが平行であれば、同じ様な現象が見受けられます。

ではここで、以前お話した「2017年12月14日午前まで続いた下降チャネルの内部構造について」の画像を見てもらいましょうか。

平行する2つの斜め線、いわゆる下降チャネルが展開されている局面ですが、これの内部構造はというと、

揉み合う価格帯(ゾーン)を形成しつつ、ジリ下がりになっていますよね。

ゾーンが上下に移動しているのが、先ほどのレクタングル・フォーメーションでしたが、このゾーンがジリ下がりになって形成されている値動きが、下降チャネルというわけです。

で、面白いことに、この移動するゾーンに注目してその節目をラインで結んでいくと、

上図の緑色ラインを見れば分かる通り、やっぱりこのチャネルラインの幅の真ん中あたりに、チャネルラインと平行の線が引けるわけです。

相場って、不思議ですね。テクニカルって、面白いですね。

ただし、ここで2つ注意点が。

チャネル・ラインの中央付近にできるラインですが、これは単にラインというわけでなく、この辺りで揉み合うことでゾーン(値動きの域帯)を形成することが多くなります。

上図のチャートで言えば、こんな感じになりますかね。

さらに、もう1点。

緩やかなチャネルの場合、先に見た様に水平な揉み合いの塊の移動になります。

ところが、チャネルの角度が急な場合は、この塊が水平な揉み合いではなく、視覚的に斜めの塊になるなど、変形してしまうことが俄然多くなります。

ラインの角度が急だということは、値動きが激しくなるわけですから、揉み合いの塊も水平ではなく変形してしまうのは、まぁ、当然と言えば当然なんですけどね。

また、レクタングル・フォーメーションと同様に、チャネル幅が大きい場合は、揉み合いの塊よりも、チャネル内での上昇トレンドと下降トレンドが数多く見受けられるようになり、レンジ半値にポイントとなるラインが引けない状態になったりします。これも、ちょっとチャート図を載せておきましょうか。

まぁ、単純化して言うと、レクタングル・フォーメーションにしろチャネルにしろ、高値低値に平行なラインが引けるフォーメーションの場合は、基本として

  • ライン内にトレンドを形成しながらキレイに上下するパターン
  • 揉み合いの塊を形成しながら、その塊が上下に移動していくパターン

の2パターンが両極にあるということを頭の中に入れておいてください。実際の相場では、それらのパターンが入り混じって値動きが形成されていきます。

逆説的に考えてみよう

実はこのレクタングル・フォーメーションとチャネル・ラインは、その展開が物凄くバラエティーに富んでいて、とても面白いんですが、

正直、このお話をしていくと、めっちゃ長くなってしまいます。

なので、ちょっとチャネルラインに対する根本的な発想の1つだけを、これからお話しようと思います。

 

まず、これまで解説してきたチャネルラインを端的にまとめると、

  • 高値低値に規則性があり、2つの平行な斜め線が引ける
  • 価格はその中を、トレンドを形成しながら上下に移動するか、揉み合いの塊を形成しながら移動する(両者混合あり)
  • チャネル幅の半値あたりに、チャネルラインと平行するラインが引ける

ということになります。これが基本形。

しかし、この発想は、

  1. 高値低値のラインがあって、その中で価格は移動する
  2. 移動している価格はチャネル幅の真ん中あたりにさらにラインが引ける値動きを形成する

という順番になるかと思います。

じゃあ、ここでこの発想を逆転してみたらどうでしょうかね?チャネルを形成する値動きの発想を、逆転させてみるんです。

どういうことかというと、先の順番とは逆に、

  1. まず、主軸となる価格帯(ゾーン)が形成される
  2. そのゾーンを時折、上下に大きくはみ出して値動きが形成される
  3. その上下にはみ出した高値と安値には規則性があって、よく見ると主軸となるゾーンと平行するラインが引ける

ということなんです。図を使って説明すると、

1.実は、主軸となる価格帯(ゾーン)が存在している。

2.そのゾーンを主軸にしつつ、価格は度々そこから大きく上下にブレながら価格は形成されていく。

3.しかし、その上下にブレた価格はゾーンに対して同じ値幅しか伸びないため、結果的に高値を結んだラインと低値を結んだラインは、ゾーンに対して平行になる。

という思考的過程を経て、チャネルラインは形成される。

・・・と、考えるわけです。

さて、この壮大な仮説、果たして実際の相場で使えるんでしょうか?

 

つか、僕もう実際のトレードに使ってますから、仮説じゃないです。

 

では、実際の相場に当てはめて、ちょっと解説していきましょう。ちょうど解説向きの相場が先週に展開されてたんで。

チャネルが形成される状況を実際に見ていこう

さて、それではこの記事の比較的最初の方に提示したポンド円の15分足チャートをもう1度見てみましょうか。

おやおや?

先ほどはこのチャート見せられても「?」な感じしかしてませんでしたが、ここまでこの記事を読んでいたら、なんか見えてきませんか?見えてきましたよね。

主軸となるゾーンが見えてきたと思います。

揉み合いながら推移する価格の塊が、規則性をもって並んでいる様に見えます。

これが価格推移の主軸となるゾーンだと仮定します。そしてこのゾーンは下降トレンドを形成していそうなので、トレンドラインを引いてみました。赤いラインがそれです。

次に、このゾーンからブレて飛び出た価格の高値に下降トレンドラインと平行の線を引いてみます。

次に、今度はゾーンから下の方向にもブレる可能性も考えます。最も多いパターンはこのゾーンのトレンドラインが、チャネルラインの半値になるパターンです。

なので、ゾーンから飛び出た価格の高値と同値幅を求め、そこにトレンドラインと平行なラインを引いてみます。

それでは、引いたチャネルラインが機能するかを確かめるために、時間をずらしてロウソク足を表示していきます。

チャネルの下方ラインが効いてそうな感じですが、まだ確かではありません。しかし、ゾーンのトレンドラインは確実に効いてますね。もう少し様子を見てみた方が良さそうです。

では、次を見てみましょう。

もう完全にチャネルとして引いた下方ラインが効いてますね。

この段階で、ゾーンのトレンドライン、そしてその上下に引いたラインに規則性があることが判明しました。

ここまでくれば、かなりの高確率でチャネルが形成されていると判断できますよね。

 

ということで、セットアップ完了。

 

後はトリガーを引くだけです。チャネル上部ラインで反転したら売るか、ゾーンを下抜けるかゾーンで反転下落したら売るという戦術になります。

チャネル下部ラインで反発上昇したら買うということもアリですが、この場合買った後にジリ下がりする可能性もあるので、あまりお勧めはできません。

ちなみに僕は、お勧めできないと言いつつも、上図の赤丸部分で2回に分けて買いました。

仕事の合間にチャートを見てたんですが、売るタイミングには出くわせなかったんですね。

トレードチャンスはないと諦めてたんですが、夜なかなか眠れなくて、未明までお酒を飲みながらチャートを覗いていたんですが、チャネル下方ラインに到達して下落が阻まれている場面にようやく出くわすことが出来ました。

「あと数時間で仕事の仕度しなくちゃいけないし、もうタイミングはここしかないかな」

ということで、買ったんですね。なので、自分でやっておきながら、こういったエントリーはリスク高めなので、あんまりお勧めはできません。

じゃあ、時間をもう少し経過させてみますか。

チャネルの下方ラインで反発した価格は、見事ゾーンのトレンドライン(チャネルの半値となるライン、以下ミドルライン)に到達しました。

ちょうどこの時、僕は休憩に入ったところで、スマホでこの瞬間を確認しました。しかし、利確はしなかったです。チャネル上方のラインに到達すると思ってたんで。

しかし、価格はミドルラインに阻まれて、再び下落。下値を試します。

では、この後、どうなったか見てみましょう。

その後、価格は一気に跳ね上がり、見事にチャネル上方ラインに到達してから反転下落を始めます。

まさに、チャネルとしてあるべき値動きとなったわけです。

ちなみに僕は、このチャネル上部のラインに到達するタイミングを、上図の青丸付近だと予想していました。これ、例の「水平線と斜め線が出会ったところ」ですね。今回はややズレてしまいましたが、まぁ誤差の範囲内かと。

ついでに言っておくと、僕は緑丸のところで利確しました。

この後、ドテン売りをしようか迷ったんですが、連日の仕事疲れと、前日ほとんど寝ていないのと、そしてエントリー後に一旦ジリ下がりして神経を使ったために、再度エントリーする気力はなく、諦めました。往復で獲れた場面でしたが、まぁ仕方がないですね。

 

とまぁ、以上で今回の解説は終わりにします。

ただ、繰り返し言いますが、「知ってる」と「使える」は天と地の差があります。

バットの振り方を「知ってる」からといってヒットが打てるわけではりません。使える様に、繰り返し繰り返し練習することでしか、ヒットを打てるようにはなりません。

そしてそれは、トレーダーも同じことです。

もちろん、チャネルの解説に関してはこれだけじゃ収まりきらないほどたくさんあります。

しかし、基本的な考え方、捉え方はある程度説明できたんじゃないかなと思います。この基本をしっかり身に着けて、実際の相場で応用を含め、使える様になってもらえたら、僕としては幸いでかなと。

それじゃあ、また。

環境認識から現状認識へ

さて、前回は相場の局面についてお話しました。今回は、より実際のトレードにつなげていける様に、もう少しこの局面についてを掘り下げていきたいと思います。

その前に、環境認識

本題に入る前に、ちょっと確認しておきたいことがあります。それは「環境認識」についてです。

今、トレーダーの間では当たり前の様に使われている「環境認識」の意味って、実はとっても曖昧な気がします。人によって結構差がある気が。

ただまぁ、他の人が使う「環境認識」はさておき、僕の場合は

環境認識とは、相場の秩序を見出すこと

としています。これに関しては、既に「これがBOZ流!ライントレードの基礎5」にて詳しく説明しています。必ず確認しておいてください。

僕が使う「環境認識」を、他の人たちが使っている環境認識と混同していると、後々、混乱を招く可能性がありますんで。

まずは、過去を知ろう

過去は知識

前回は、相場には様々な局面があることを見てきたわけですが、何だかんだ言っても、それは過去の局面でしかありません。既に終わった局面です。

僕らトレーダーは、今現在から未来の値動きに向けて売買を行なうわけで、過去に完成された局面でトレードするわけではありません。

「じゃあ、今まで見てきたことなんて、意味ないじゃん!」

ってことになりそうですが、確かにそこで終わらせたら意味はありません。

しかし、過去の局面が認識できる様にならないと、これから起こる局面も認識できるようにはなりません。完成した局面を知らないのに、形成途中の局面を知ることなど不可能です。

なので、僕らトレーダーは過去に起こった様々な局面を認識できる様に学習し、そしてトレーニングをしていくべきなんですね。

過去は、知識なんです。

  • 上昇トレンドが進行している局面
  • 下降トレンド中に戻しを形成した局面
  • レジスタンスで跳ね返された局面
  • サポートをブレイクした局面
  • 下降フラッグを形成している局面
  • 平行レンジ(レクタングル・フォーメーション)の局面
  • その他、様々な局面
  • そして、「分からない」という局面

トレードに携わった先人たちは、僕たちに様々な局面があることをパターン化し、形式化して残してくれました。

それらを、きちんと学び、過去のチャートからそれを読み取ることが出来るようになること。それが、知識であり、トレードをするうえでの下地となっていくわけです。

過去の局面を認識できる力を持つことで、過去から現在、そして未来へと繋げていく基礎体力を身に着けていく必要があります。

驕ることなく、過去から学びましょう。歴史は繰り返します。

現状認識

過去から現在へ

僕らトレーダーは、現在の価格と未来の価格との差益を得ることを目的としています。

しかし、未来のことは誰にも分かりません。

では、見えない未来をどうやって探っていくのでしょうか?

その一つの手段として、チャートがあり、テクニカルがあります。

過去から現在に至るまでの、価格が通ってきた道程を辿っていくことで、これから価格が向かうであろう道程を推測しようとすることです。

「過去から現在まで、価格は上昇を続けている。そして今現在も、その状況を維持している。であれば、今後も上昇を続ける可能性は高いだろう。」

「過去から現在まで、価格は一定の規則性をもって上下動を繰り返している。そして今現在は、その規則性に合わせて上昇から下落に転じる節目にきている。であれば、この後は下落に転じる可能性が高いだろう。」

その様に考えます。

過去から現在に至るまでの道のりを確認し、今現在はどの様な状況下にあるのかを把握することで、これから進むであろう道程を模索するんですね。

そして僕は、この模索する作業のことを、

「現状認識」

と勝手に呼んでいます。

現状認識とは

先ほど「現状認識」とは、

過去から現在に至るまでの道程を見ながら、現在はどの様な状況下にあるのかを明確化していくこと

と説明しました。これをちょっと別な角度で説明するならば、

現状認識とは、環境認識で見出した相場の秩序の中を移動する値動きを、実質トレード可能なところまで具体的に落とし込んでいくこと

になるかと思います。

何言ってるか分からない?

じゃあ、具体的に見ていきましょう。

局所しか見てないと・・・

下の図は、一昨日(2019年2月19日)朝のポンド円5分足チャートです。(画像を制作した日とこの記事をアップした日がずれてしまったため、画像で「昨日」となっているのは実質「一昨日」、画像で「一昨日」となっているのは実質「3日前」となります。その辺はご了承ください)

爆上げですね。1日で、2円ほどの値幅を上昇しました。

では、ちょっと時間を2019年2月19日の朝、窓を開けて始まるところ(赤丸で囲った部分)まで巻き戻します。

すると以下の様になりますね。

相場はアセンディングトライアングル(通常は上抜ける確率の高いパターン)を形成していて、朝イチで窓開けして下抜けしました。

窓埋めが完了した後は、このトライアングルがレジスタンスとなって下落を始めます。

上抜けではなく下抜けだったことを除けば、あとはセオリー通りの展開です。

ですから、これが5分足レベルの局所的な展開であると最初から心得ていて、この下落の波一辺を獲るだけのつもりなら、理想的なトレードになります。

しかし、この展開が極めて局所的なものであることを理解せずに、天井を獲った気になっていたなら、それは大きな問題です。

先のチャート図で分かる通り、この後に価格は3日前(2019年2月18日)の窓を埋めることなく、爆上げを始めるんですから。逃げきれなければ、大きな損失を被っていたことになります。

では、目先の値動きに惑わされず、全体の流れ、局所的な流れ、それらをどうやって把握していけば良いのでしょうか?

俯瞰して見よう

過去から現在の流れを見ようとして、チャートの左側から右側へと価格を追い、それでも足りないので、チャート左側からはみ出している過去をスクロールして巻き戻し、そうやって過去を辿っていくと・・・

迷子になります。

森の中を漂うかの様に、今自分がどこにいてどこに向かっているのか、分からなくなってしまうんですね。

なので、チャートを俯瞰して見ます。

そう、まるでナスカの地上絵を見るかの様にね。地上にいる時には、何も感じることが出来なかったものが、鳥の様に地上はるか上から見ると、1つの大きな絵であることに気づきます。

それと同じように、チャートも俯瞰して見ることで、全体像が浮かび上がってきます。

そして、チャートを俯瞰するということは、チャートの時間軸を上げていくということに他なりません。

ちょっと見てみましょうか。先ほどのポンド円5分足で見た状況を、俯瞰して見るとどうなるでしょう?

まずは、ポンド円日足から。(一昨日の朝以降の値動きは表示してません)

環境認識からすると、価格は3本の水平線からなる等間隔の値幅を移動しており、またその推移はチャネル構造を形成しています。

この環境の中、価格は具体的にどの様な動きを見せているんでしょうか?現状認識の作業を始めてみましょう。

まずは赤い丸に注目。これ、正月明けに大幅下落たんですが、結局は長い下ひげを付けて、当日中にチャネル内部に見事に収まってしまいました。

なので、この後はチャネル上限にむけて上昇を始めることになります。

ポイント1:日足ではチャネル下限から反発し、上限に向けて価格が上昇していることを認識

ところが、真ん中の水平線を越えた辺りで、チャネルラインに到達することなく反転下落。真ん中のラインをまたいで何やら揉み合ってます。やや尻下がりになってますねぇ。

今、この現状はどんな局面なんでしょう?

これは、反転下落の示唆?それとも、上昇途中の調整局面?

でも、よく見ると何だかこの揉み合いにも規則性がありそうです。

上昇フラッグっぽいですね。うん、上昇フラッグだ。

高度を下げて細部を確認

高いところから俯瞰することによって、全体像が掴めてきます。先ほどのポンド円ではチャネルの上限ラインに向かって価格が進んでいる最中でした。しかもその上昇途中で揉み合っている場面。形成しているのは、上昇フラッグです。

では、今現在の局面をもう少し詳しく見るために、時間軸を少し下げて見ることにしてみましょう。

イメージとしては、今飛行している高さよりも少し高度を下げることで、確認したい部分をよりハッキリと見ようとする行為ですね。

以下は、ポンド円の4時間足です。

やはり相場は秩序ある動きをしてますね。比較的キレイな上昇フラッグを形成しています。

上昇フラッグは、上昇の継続を表すパターン。上抜けする確率が高いわけですから、やはり上昇過程の調整局面。

しかも、赤い丸を見てください。ラインにタッチしている場面は結構ありますが、波形としての反転ポイントは上に3つ、下に3つの計6点。

トレンド継続を示唆するフォーメーションの基本形は、反転ポイントが6点です。つまり、7回目の反転はなく、ブレイクする可能性が高い。

おまけに、例の水平線と斜め線が出会うポイントに近づいてきています。

そして今、上昇フラッグの上限ラインにまさにタッチしている状態にあります。

ブレイクの可能性の高い局面に今、あるわけです。

ポイント2:現在は上昇フラッグを形成しており、上値ブレイクの可能性の高い局面にある

では、もう少し高度を下げて、この状態を見てみましょう。下の図は1時間足です。

俯瞰せずにいきなり1時間足を見ると、この平行する2つの斜めラインは、上昇フラッグには見えませんよねぇ。チャネルラインに見えてしまいます。

これ、大きな違いですよ。

チャネルラインとして見ていたら、反転下落が濃厚に思えてくる場面ですが、上昇フラッグとしてみると、ブレイクする可能性の強い場面です。

同じラインでも、全く違う意味合いに見えてくるわけですから、注意しなくちゃいけません。

では、現状認識の作業をさらに続けます。

4時間足以上で表示していた水平線は、1時間足レベルまで来ると、ゾーンとして認識した方が良く、水色の部分がそれにあたります。

それ以外は、50pips程度の間隔でラインが引けています。秩序ある動きです。

価格は上昇フラッグ下限のラインで反発した後は、押し目らしい押し目も付けずに強く上昇しています。上昇に対して強い動意があると考えられます。

そして現在は、上昇フラッグ上限の斜め線と1時間足で引ける水平線とが重なった赤い丸の部分で、揉み合ってます。この水平線を抜けたらブレイクと判断しても良さそうですね。

こうやって見ていくと、4時間足で見た時よりも、相場が煮詰まってきているのが分かります。ブレイクするか反転するのか?いずれにせよ、そろそろ決戦の時です。

ポイント3:強い上昇を伴って、フラッグ上限ラインまで達して揉み合っている。しかも、水平線と斜め線が出会っているところ。そろそろ決戦の時。

さて、俯瞰した状態から徐々に高度を下げていくことで、

全体から部分へ
過去から現在へ

と、現状を把握していきました。この様に、環境認識から、より具体的な値動きに対する考察を行っていくことが、現状認識となります。

では、ここまでの流れを、ちょっと復習していきましょうか。

全体像からの流れをきちんと把握しておこう

さて、今現在の状況を全体像から徐々に細部へと落とし込んでいったわけですが・・・

忘れてはならないのは、この全体像からの流れです。

僕なんか特にそうなんですが、俯瞰した状態から徐々に細部へと落とし込んでいっても、結構その流れを忘れがちになってしまうんですよ。

気が付くと、全体像を忘れて、分足なんかの局所的な流れだけで判断してしまいがちになります。

なので、この流れをきちんと踏まえておきましょう。忘れそうなら、各時間軸ごとにメモっておくことも大切です。

では、もう一度、全体像からの流れを振り返ってみましょう。

現状認識として、

  1. 日足:まず全体像として、チャネル構造の中でチャネルライン上限を目指して上昇中の局面。
  2. 4時間足:上昇途中の調整局面である上昇フラッグの局面。しかも、基本パターンとして上抜けの可能性の高い局面で、上昇フラッグのレジスタンスラインにタッチしている。
  3. 1時間足:強い上昇を伴って上昇フラッグ上限まで到達。水平線と斜め線が出会っているので、そろそろ決戦の時。

とまぁ、こんな感じになります。

現状認識のポイントは、

  • まず、環境認識によって、相場の秩序、規則性を確認する
  • 大きな時間軸から、徐々に小さな時間軸へと下げて確認していく
  • 各時間軸での局面をそれぞれ把握する
  • 全体から部分に向けて、その流れに整合性があるのか把握する

といったことになりますかね。

各時間軸において、局面を把握していくわけですが、分からない局面がその中にあれば、トレードは出来ません。だって、分からないんですから。

また、全体から部分に向けて、その流れの中に整合性がなければ、それも「分からない」ということになります。

例えば、全体像は上昇傾向にあるのに、高度を下げると途中で下げるのか上げるのかわからなくなる場面。つまり、調整局面なのか反転する局面なのかもハッキリしない場合。

こういった場合も、分かるまで待つ、その局面が調整局面なのか反転局面なのかハッキリするまでは、トレードは出来ないことになります。

では次に、実際にトレードを行なうための準備を始めます。

そして未来へ

現状認識は終わらない

僕らトレーダーは、現在の状況を把握して「はい、お終い」というわけではありません。

繰り返し言いますが、僕らトレーダーは、現在の価格から未来の価格への差額を利益とすることを目的しているわけですから、

未来に向かって、価格がどう進むであろうか?

を模索することが必要です。

そして、これがいわゆる「シナリオ作り」ということになります。

ところが、実際に未来に向かってトレードするには、先ほどまで行った現状認識レベルでは、まだまだ認識不足ということになります。

だって、

先ほどまでの現状認識レベルだと、単純にブレイクすることしか考えてないじゃないですか。

まぁ、単純にブレイクしてくれればしめたものですが、そうは問屋が卸さないのが相場というものです。

上がるのか、下がるのか?それともレンジなのか?

それぞれの可能性が模索できるところまで、現状認識を詰めて考えていかなくちゃいけないんですね。

そういった意味で言えば、

未来が模索できるレベルまで現状を把握できない限り、現状認識は終らない

とも言えます。

そして、そのレベルまで現状を把握できないのであれば、やはりそれは「分からない」局面であり、その人にとってはトレード不可能な局面ということになります。

トレード可能となるレベルとは?

では、トレード可能になるまでのレベルまで現状認識を行なうというのは、一体どういうことでしょう?

具体的に言うと、次の3点です。

  1. 価格がどちらの方向に進む可能性が高いか分かる
  2. 上がる、下がる、レンジの3パターンを想定できる
  3. 各パターンのリミット(目標値)とストップ(損切り値)を想定できるチャートポイントが認識できる

1の「価格がどちらの方向に進む可能性が高いか分かる」ということを、一般的に「優位性(エッジ)」と呼びますが、これに関しては次回説明するつもりです。今回は、軽く流して聞いておいてください。

2の「上がる、下がる、レンジの3パターンを想定できる」ですが、これは3の「各パターンのリミットとストップを想定できるチャートポイントが認識できる」ということが出来なければ、想定できません。

逆に言えば、3が想定できれば2は必然的に想定できるわけです。

なので、本来は1と3でOKなのですが、あえて2を用意しているのは、巷でいうシナリオ作りは、上がるか下がるかの2パターンしか用意しないからです。

僕はこれがいつも不思議でした。

相場は、「上がるか下がるか横ばいの3パターンしかない」ということを誰もがドヤ顔で説明するくせに、シナリオ作りに関しては上がるか下がるかの2パターンしか用意しない。

これって、おかしくないですか?おかしいですよね?

しかも、「トレンド3割、レンジは7割」と言われているんですよ。レンジに直面する機会がとっても多いはずなのに。

このレンジを想定せずに、エントリーポイントを決定するから、いざエントリーしてみたらレンジに巻き込まれて、

いつまで経っても決済できない。
結局は損切り。よくて建値や微益で決済。
ポジション解消した後に思惑通りに上昇。

といった「トレードあるある」が繰り返されるんじゃないかと。

ということで、現状認識をどこまで具体的に落とし込むかというと、

  • 価格がどちらの方向に進む可能性が高いか分かる
  • 上がる、下がる、レンジの3パターンを想定できる
  • 各パターンのリミットとストップを想定できるチャートポイントが認識できる

の3点になります。

では、先ほどのポンド円の局面を使って、未来を模索できるレベルまで現状認識を続けていきましょうか。

もう1度、ポンド円の1時間足を見てください。

先ほどお話した様に、価格は上昇フラッグの下のラインで反発してからは、ほぼ押し目を付けずに勢いよく上昇しています。4時間足で確認すると、大陽線が出ていますので、やはり強い上昇示唆となります。

なので、今まで見てきた現状認識からはこの上昇フラッグ上限を高い確率で上抜けることが想定できます。

しかし、絶対ではありません。あくまで可能性の話ですから。

なので、このラインに阻まれて反転下落した場合を考えてみましょう。

通常、パターンを形成している場合は、その上限ラインで反転すれば下限ラインまで向かいます。

なので、この場合も、フラッグの下限ラインまで進む可能性が考えられます。

しかし、そうなるにはちょっと気になるところがありますよねぇ?分かります?

水色のゾーンです。

ここは4時間足以上で認識できるラインで、幾度となく争った形跡が比較的広範囲にあるため、ライン一本よりもゾーンとして認識しておいた方が良いと判断したところです。

このゾーンは結構強い。

なので、フラッグ上限から反転下落しても、このゾーンに阻まれる可能性は高いわけで。

となれば、再び上昇を目指す可能性もあるし、先ほどの上値とこのゾーンの間でレンジとなる可能性もあるわけです。

さらにもう1つ。もしフラッグ上限のラインで阻まれて反転下落した場合、この上昇が完全に否定されるには、どの程度下げた時でしょうか?

やはり、水色のゾーンを下抜けたところですね。このゾーンを下抜けたら、次のラインに向けて下落する可能性が高くなり、完全な反転下落です。

しかし、このゾーンを抜けずに反発するなら、これは上昇途中の押し目かレンジ下限となることが想定されます。

イメージしてみましょう。

イメージをしてみる時、

誰の目から見ても、そう映るかどうか?

この視点は、結構大切です。

「ここまで落ちたら、誰が見ても反転下落だろう」
「ここで反発したら、あー、これ押し目だ。やっぱ上に向かうんだろな」

そんな風に、誰が見ても思えるポイントを見つけることは、とても重要です。

現状認識の必要性

さて、ここまで現状認識について、具体例を挙げながら説明してきました。要するに、実際のトレードに使えるシナリオ作りが出来るまで、具体的に落とし込む作業が、現状認識となるわけです。

で、全体から部分へと落とし込んでいく作業をしていけば、相場の局所的な状況に振り回されることは少なくなります。

これ、最初に見たポンド円5分足チャートですが、

この状況に直面しても、冷静に対処できるはずですよね。

アセンディング・トライアングルを窓を開けて下抜けた後の下落局面を獲りに行くつもりであれば、先ほどの水色ゾーンで利確できるはずです。

また、買い方針ならば、この下落局面は良い押し目買いのポイントとして捉えられていたと思います。

で、結果はもちろん、ご存知の通り。1時間足で確認すると、

素直に上にブレイクこそしませんでしたが、水色のゾーンで押し目を付けて、見事に上昇し、日足レベルのチャネルラインまで到達しています。

まさに、シナリオ通りの展開かと。(でも、僕自身まさか当日中に日足レベルのチャネルラインに到達するとは思ってませんでしたが)

全体を踏まえていれば、局所的な値動きに振り回されることは少なくなるんですね。大局を踏まえて局所で振る舞うことが、可能になります。


さて、今回はここまでです。環境認識から現状認識まで落とし込む作業を説明しました。

次回は、「優位性」についてお話します。セットアップについてまでは、まだまだかかりそうですが、お楽しみに。

それでは、また。